2016年12月8日(木)



2016年12月8日(木)日本経済新聞
税制改正にらみ物色 株、保育・免税関連に買い
(記事)






【コメント】
記事の冒頭に書かれていることですが、与党が2016年12月8日(木)にまとめる2017年度の税制改正大綱を巡り、
2016年12月7日(水)の株式市場では関連銘柄を物色する動きが強まった、とのことです。
それで、記事には、このたびの税制改正に関連する主な銘柄が挙げられており、それぞれの株価の騰落率が記載されているわけです。
各騰落率を見てもおかしいなと感じる点はないのですが、酒税の改正に関してはビール会社の株価は下落し、
それら以外の税目の改正に関しては、各企業の株価は上昇しているわけです。
これはどういうことかと言うと、「税制の改正は、会社単位ではなく業界単位で影響を与える。」ということの表れなのです。
酒税の改正に関しては、改正の影響は特定のビール会社1社のみに及ぶのではなく、酒類製造業者全体に及ぶわけです。
そして、その酒類製造業者全体のことを、俗に「業界」と呼ぶわけです。
ですので、「税制の改正は、会社単位ではなく業界単位で影響を与える。」のです。
株価の騰落には、税制改正に関する思惑だけではなく他の様々な思惑も影響を与えるのだとは思いますが、
例えば株価ではなく実際の業績という意味においても、「税制の改正は、会社単位ではなく業界単位で影響を与える。」のです。

 

The reform of the tax system has an effect not on each company but on each industry.

税制の改正は、会社単位ではなく業界単位で影響を与えるのです。


 


2016年12月8日(木)日本経済新聞
データで読む商品
豚肉輸入価格「524円の壁」 国際相場、反映されにくく
(記事)



【コメント】
記事を読んで気になったことを2点書きます。
まず1点目は、豚肉の輸入価格は国によって定められている、という点です。
豚肉の輸入には、差額関税制度という国内養豚農家の保護が目的の関税制度があるようでして、記事には、

>輸入単価が国の定めた1`524円の基準価格を下回る場合、差額に応じた関税が課される。
>輸入単価が安くなるほど支払額は増える。

と書かれています。
記事を一読した時は、では輸入価格が1`524円の基準価格を上回る場合は国から購入資金の援助をもらえるのだろうか、
と思ってしまったのですが、これは輸入業者や小売店の保護ではなく、養豚農家の保護を目的とした関税制度なのですから、
そのような制度はないのだろうと、記事を読み直してみて分かったところです。
豚肉の輸入については詳しくはありませんが、豚肉の輸入価格が下がっても輸入業者にはメリットは小さい、
ということのようです。
この豚肉の輸入に関する差額関税制度というのは、輸入豚肉の国内における販売価格(例えば小売店での消費者への販売価格)には
理論上は含まれていない、ということを理解するのに役立つ(理解のヒントになる)かもしれません。
以前、理論上はビールの販売価格には実は酒税は含まれていない、という点について書きました。
酒税は酒類製造業者のみが負担するものであって、酒類卸売業者が酒類小売店や消費者が負担するものではない、と書きました。
酒税は、巷の教科書の記述とは異なり、間接税ではなく理論上は「直接税」だ(経営上は間接税の側面があるが)、と書きました。
関税も考え方は同じであり、関税の負担者は輸入業者のみであり、卸売業者や小売業者や消費者は関税を実は負担しないのです。
この記事で言えば、結局、524円との差額部分については輸入業者が負担する、という考え方になるわけですが、
理論上は輸入業者は負担した差額(関税)を卸売業者に転嫁したりはしないわけです。
輸入業者は負担した差額(関税)を、卸売業者に対し、販売価格に上乗せして販売することもできますし、
上乗せせずに販売することもできるわけです。
これは、関税の負担は輸入業者のみである、ということを端的に示しているでしょう。
関税もまた直接税である、という言い方ができると思います。

 


輸入業者が関税として税務当局に支払った金額(現金)というのは確かにある(金額も明確)のですが、
それは、買い手から見ると、輸入業者の営業費用の1項目、という位置付けに過ぎず、
卸売業者や小売業者や消費者が明示的に関税を支払うということは決してしないのです。
酒税や輸入豚肉であれば、酒税法や関税法を見れば、酒類製造業者や輸入業者が税務当局に納付したであろう税額がたまたま分かる、
というだけのことであって、特段の基準価格が設定されていない他の種類の輸入商品の場合は、
輸入業者が輸入に際しいくらの関税を支払ったのかを知る手段は、卸売業者や小売業者や消費者には実はないわけです。
輸入業者がいくら関税を支払ったのかを知っているのは、輸入業者自身のみなのです。
もちろん、経営上、「輸入業者の方でこれだけの関税を支払いましたので、関税分も販売価格に上乗せさせて下さい。」
という交渉を商取引上行うことはあるとは思います。
しかしそれは、売り手が営業費用を販売価格に上乗せして販売する、ということと実は全く同じであるわけです。
その営業費用やその内訳というのは、買い手には全く関係ないわけです。
その意味において、輸入商品の販売価格には関税は含まれておらず、
巷の教科書の記述とは異なり、関税は間接税ではなく理論上は「直接税」なのです。
概念上消費税に近いか遠いかで言えば、関税は消費税とは全く異なります。
消費税との比較で言えば、関税は概念上は酒税に相対的には近いのです。
理論上、消費税は次の販売先に必ず転嫁されます。
しかし、理論上は、酒税も関税も次の販売先に転嫁はされないのです。
この意味において、消費税は間接税中の間接税、酒税や関税は直接税なのです。
ちなみに、豚肉ということで、物品税(ぶっぴんぜい)はと言いますと、物品税は間接税です。
その理由は、物品税額はいくらであると消費者に明示的に示した形で、小売店から消費者に商品が販売される際の課税だからです。
消費者は小売店に物品税を支払い(負担)、小売店は税務当局に物品税を支払い(納付)ます。
物品税は、小売店の営業費用の一項目では決してないのです。
「小売店と消費者との間の販売」だけを見れば、
消費税と物品税は世のイメージ通り近いものがある(特に消費者から見ると)と思います。
ただ、これまでも何回も書きましたように、消費税と物品税は根底から異なる理論体系から構築されているものなのです。
意外に思うかもしれませんが、物品税は消費者を定義していますが、消費税は実は消費者を定義していないのです。
物品税は小売店で買ったから消費者なのですが、消費税は小売店で買ったからといって消費者ではないのです。
消費税では、最後に買った人が消費者なのです(結果的に消費者が決まるだけ)。

 



2点目ですが、記事を読んだ感想になりますが、
豚肉ということで、豚肉毎の品質や等級の違いのようなものは考慮されないのだろうか、と思いました。
同じ品種の豚の肉でも、良好な環境で育った豚は品質が良く価格も高い、というようなことはないのだろうか、とふと思いました。
生肉というのは、部位や品質や等級などで、非常に大きな価格差が生じるものではないだろうかと思いました。
「1`524円」の一言で片付けられる問題では全くないように思いました。
ただ、「1`524円」というのは、国内の養豚農家を保護するためのあくまでも最低価格という意味合いがあるので、
品質や等級が良い結果「1`524円」よりも高い価格で輸入する分には問題はない、ということだろうかとも思いました。
豚肉の輸入については詳しくはありませんが、何となくそのようなことを思いました。
株式には品質や等級はありませんが、生肉には品質や等級があるのではないかと思います。
記事には、豚肉の相場を表してグラフが載っていますが、これは「全く同じ等級かつ全く同じ品質」の場合にのみ、
価格をグラフで表現することができる(価格が比較可能、価格の推移の分析に意味がある)ものだと思います。
株式の品質や状態は一定(品質や状態という概念すらないでしょう)ですが、生肉の品質や状態は一定とは言えないでしょう。
株式の場合は株価の推移には意味がありますが、生肉の場合は価格の推移には意味がないのではないだろうか、と思いました。

 


The consumption tax doesn't define consumers.

消費税は消費者を定義してはいないのです。

 

One share is quite equal to another,
but one piece of pork is different from another piece of pork in condition.

株式1株は別の株式1株と全く同じですが、豚肉一片は別の豚肉一片とは状態という点において異なるのです。