2016年11月26日(土)
【コメント】
記事の主旨である新興国の通貨防衛については特にコメントはありませんが、
記事中に「ペソの対米ドル相場を示す銀行のボード」というタイトルの写真を見て
ふと思うことがありましたので、一言だけコメントします。
ボードを見ますと、「Buy」の価格は「1米ドル=19.85メキシコペソ」となっており、
「Sell」の価格は「1米ドル=20.85メキシコペソ」となっています。
この銀行では、お客さんが、米ドルを買いたい場合は1米ドル当たり19.85メキシコペソで買うことができ、
米ドルを売りたい場合は1米ドル当たり20.85メキシコペソで売ることができる、という意味なのだと思います。
本来であるならば、為替レートというのは1つしかありません。
つまり、ある時点において、買う場合の為替レートが「1米ドル=19.85メキシコペソ」であるならば、
売る場合の為替レートも「1米ドル=19.85メキシコペソ」となるわけです。
買い手がある目的物を100円で買うという場合、売り手はその目的物を100円で売るわけです。
買い手はある目的物を100円買うのだが、売り手はその目的物を110円で売る、などという話はないわけです。
取引は常に対称となるわけです。
その点から言えば、このボードの為替レートは少しはおかしいわけです。
銀行が米ドルの買い手の場合はお客さんは米ドルの売り手であり、
銀行が米ドルの売り手の場合はお客さんは米ドルの買い手であるからです。
このボードの用に、米ドルを買う場合の為替レートと米ドルを売る場合の為替レートとが異なる理由として考えられるのは、
銀行が受け取る手数料かと思います。
銀行は通貨の両替に際し両替手数料を受け取ることになるかと思いますが、
その両替手数料込みの価格を表示しているので、米ドルを買う場合の為替レートと米ドルを売る場合の為替レートとが
異なっているのだと思います。
ただ、これらの為替レートは交換手数料込みの価格を表示しているのだとしても、1つおかしいなと思う点があります。
それは、「米ドルを買う場合の為替レート<米ドルを売る場合の為替レート」となっている点です。
この写真はメキシコの写真であり、メキシコにあるモンテレー銀行における為替レートを表示しているわけです。
つまり、メキシコ・モンテレー銀行にとって、本国通貨は当然メキシコ・ペソであるわけです。
つまり、メキシコ・モンテレー銀行には本国通貨であるメキシコ・ペソは経常的に手元にあるのに対し、
他国通貨である米ドルは基本的には保有はしていない通貨であると言えるわけです。
メキシコ・モンテレー銀行が米ドルを必要以上に持っていても、メキシコ・ペソ通過に両替するだけであるわけです。
そうしますと、メキシコ・モンテレー銀行にとっては、常に「メキシコ・ペソに対する需要>米ドルに対する需要」という状態
になるわけですから、その点を鑑みれば、「米ドルを買う場合の為替レート>米ドルを売る場合の為替レート」になるはずなのです。
両替手数料というだけなら、買う場合と売る場合とで手数料は同じになるはずなので、通貨の需給という観点から考えてみました。