2016年11月24日(木)

2016年11月23日(水)日本経済新聞
仏ヴァレオの子会社に 市光工業、上場は維持 車部品大手
(記事)




2016年11月24日(木)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
ヴォレオ・バイエン
(記事)


2016年11月22日
市光工業株式会社
ヴァレオ・バイエンによる市光工業株式会社株券(証券コード 7244)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttp://ichikoh.com/common/pdf/news/161122.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)


2016年11月22日
市光工業株式会社
ヴァレオ・バイエンによる当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ
ttp://ichikoh.com/common/pdf/news/161122_2.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2016年11月22日
株式会社ヴァレオジャパン
ヴァレオは、東証一部上場、市光工業の連結子会社化を目的に、同社株式の公開買付を開始すると発表
ttp://www.valeo.co.jp/journalists/news/-10951.html
ttp://www.valeo.co.jp/medias/upload/2016/11/85839/media.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 


【コメント】
紹介している記事と実施される公開買付に関しては、
公開買付者がフランスの法人ということ以外は特に論じるべき論点はないように思いました。
ただ、プレスリリースを読んでいますと、「おや」と思う記述がありましたので、法律の観点から一言だけコメントします。

「ヴァレオ・バイエンによる市光工業株式会社株券(証券コード 7244)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
買付け等の期間
(3〜4/4ページ)


公開買付期間がお正月をまたぐのですが、「休日」の取り扱いが問題となっているようです。
行政機関の休日と公開買付の期間(応募可能期間)との関係について、注記がなされています。
注記の内容を踏まえますと、計3つの法律が関連していますので、該当する条文を引用し、この論点について考えたいと思います。

 

金融商品取引法施行令
(買付け等の期間等)
第八条  法第二十七条の二第二項 に規定する政令で定める期間は、公開買付者(法第二十七条の三第二項 に規定する
公開買付者をいう。以下この節において同じ。)が公開買付開始公告(法第二十七条の三第一項 の規定による公告をいう。
以下この節において同じ。)を行つた日から起算して二十日(行政機関の休日に関する法律 (昭和六十三年法律第九十一号)
第一条第一項 各号に掲げる日(以下「行政機関の休日」という。)の日数は、算入しない。)以上で
六十日(行政機関の休日の日数は、算入しない。)以内とする。


行政機関の休日に関する法律
(行政機関の休日)
第一条  次の各号に掲げる日は、行政機関の休日とし、行政機関の執務は、原則として行わないものとする。
一  日曜日及び土曜日
二  国民の祝日に関する法律 (昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日
三  十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)


国民の祝日に関する法律
第二条  「国民の祝日」を次のように定める。
元日 一月一日 年のはじめを祝う。

 



3つの法律の規定をまとめますと、金融商品の取引といった文脈においては、法律上は、
2017年1月1日(日)は「元日」ということで休日、
2017年1月2日(月)は「『元日』の『振り替え休日』」ということで休日、
2017年1月3日(火)は(祝日でも振り替え休日でもないので)平日、
となります。
行政機関に関しては、2017年1月3日(火)は「行政機関の休日に関する法律」に基づき確かに法律上の「休日」なのですが、
いわゆる私企業(民間部門)に関しては、2017年1月3日(火)は特段の法律の規定がありませんので、
実は法律上の「休日」ではないのです。
元日(1月1日)・1月2日・1月3日の3日間のことを、いわゆる「三が日」と呼びますが、これはあくまで文化的な話に過ぎません。
法律上は、実は休日は元日(1月1日)のみであって、1月2日と1月3日は法律上は休日ではないのです。
2017年はたまたま元日(1月1日)が日曜日ですので、1月2日も休日(振替休日)となるだけなのです。
参考までに言いますと、大晦日(12月31日)も法律上は休日ではありません。
したがって、@金融商品取引法施行令第8条第1項、A行政機関の休日に関する法律第1条第1項第3項、
そして、B国民の祝日に関する法律第2条、に基づき、
2017年1月3日に関しても、行政機関の休日となるため公開買付期間に算入してはならない、ということになるわけです。
そして、取扱いや判断がが難しいのが「応募の受付」に関してなのですが、
公開買付代理人による公開買付に応募する株主からの応募の受付は、法律上の話をすれば、
やはり「2017年1月3日」にも行われなければならない、という考え方になると思います。
なぜなら、法律上は「2017年1月3日」は休日ではないからです。
ただ、公開買付代理人(証券会社)の就業規則上は、正月三が日は”休日(休業日)”ということになっていますと、
当然、公開買付に応募する株主は「2017年1月3日」には応募ができない、ということになるわけです。
証券取引所は正月三が日は休み(取引がなされない、市場が開かれれていない)だと思いますので、
証券会社もそれに合わせて正月三が日は休業日(店舗が閉まっている)としていると思います。

 



ただ、証券取引所がたとえお休みであろうとも、公開買付はそもそも市場外(証券取引所は関係ない)の取引であるわけですから、
理論的には、やはり証券取引所がお休みの日でも投資家は公開買付への応募ができなくてはならないと思います。
そうしますと、証券会社の就業規則や労働基準法の取扱いや労働組合との交渉・許可などの問題は実務上あろうかと思いますが、
理論的には、「2017年1月3日」も証券会社は公開買付への投資家からの応募を受け付けなければならない、と思います。
さらに言えば、結局のところ、公開買付はそもそも市場外(証券取引所は関係ない)の取引であるわけですから、
証券取引所がお休みの日でも投資家は応募ができなければならない、ということになるわけです。
したがって、結局のところ、理論的には証券会社には休業日があってはならない(法律上の休日も開業しておかなければならない)、
ということになろうかと思います。
証券会社は、正月三が日も店舗を開けておかなければならないのです。
さらに理論的なことを言えば、公開買付はそもそも市場外(証券取引所は関係ない)の取引であるわけですから、
証券取引所における取引時間外であっても、投資家は応募ができなければならない、ということになるわけです。
したがって、理論的には、証券会社は24時間営業、公開買付の応募締切時間は最終日の24時00分、ということになると思います。
買付期間については、金融商品取引法が2006年に改正される前は、買付期間が「暦日」ベースで定められていましたが、
休日の多いゴールデンウィークなどに敵対的公開買付を行えば実質的に短い期間を設定できるといった指摘を受けて、
買付期間が「営業日」ベースに改められた、という経緯があります。
しかし、公開買付はそもそも市場外(証券取引所は関係ない)の取引であるわけですから、
実はこの考え方は間違いなのです。
公開買付に「休日」という概念はないのです。
市場には休日があるでしょう。
しかし、公開買付に「休日」という概念はないのです。
そういった点を踏まえますと、理論的には、買付期間は「開始日の0時00分から終了日の24時00分まで」
というふうに定めなければならないのだと思います。
考えてみますと、行政機関に休日という概念があるのもおかしいのだと思います。
行政機関もまた、24時間365日開いていなければならないのだと思います。
このたびの事例を通じて、行政機関に休日があることのおかしさにも気付けたような気がします。

 

Investors accept a tender offer not at an administrative organ but at a securities company.

投資家は、行政機関ではなく証券会社で公開買付に応募するのです。