2016年10月8日(土)



2016年10月8日(土)日本経済新聞
メガ銀劣後債に需要集中 「ドイツ銀騒動」どこ吹く風 日銀への不信感にじむ
(記事)




【コメント】
日本のメガバンクが発行する永久劣後債に国内投資家の需要が集中している、とのことです。
永久劣後債に関する結論だけを端的に言えば、永久劣後債に関しては法人税法上は定義されていないと思います。
法人税法が定義しているのは金銭の消費貸借に関してのみであって、永久劣後債については定義されていないと思います。
法人税法上、永久劣後債に関しては定義されていないということはどういうことかと言えば、
発行会社が永久劣後債の発行により調達した資金(現金の流入)は法人税法上は益金と見なされる、ということです。
さらに、会社清算時、永久劣後債の保有者には債務の弁済を受ける権利はない、ということになります。
他の言い方をすると、永久劣後債の保有者は債権者ではない、ということになります。
以前は「劣後債」を例に出して、「会社法上は、会社清算時の債務の弁済に順位などはない。」と書きましたが、
永久劣後債に至っては、会社清算時に債務の弁済は全くなされません。
会社清算時、清算人は、会社と債権者とが任意に合意した私的な弁済順位は一切考慮することなく(完全に度外視し)、
全債権者を平等に取り扱い、全ての債務を同順位で弁済していきます。
その際、永久劣後債はそもそも会社にとって債務ではない、という取り扱いになりますので、
会社清算時、永久劣後債には始めから1円も弁済されないことになります。
仮に、会社と債権者とが任意に合意した私的な弁済順位をできる限り実現させたい場合は、清算人による弁済手続きが完了した後に、
改めて債権者同士で当初合意した弁済順位に沿った弁済額になるよう、
私的に金銭のやり取り(弁済額の調整)をしなければなりません。
その金銭のやり取りは、法人税法もしくは所得税法上は寄付金のやりとりという取り扱いになりますので、
金銭を支払った側(弁済順位が低い債権者)にとっては、その現金支出は税務上損金不算入になりますし、
金銭を受け取った側(弁済順位が高い債権者)にとっては、その現金収入は税務上益金算入になります。
「各々の債務の各弁済額は当初合意した債務の弁済順位に沿っているだけです。」、という主張は税法上通りません。
一言で言えば、実は永久劣後債は貸借対照表に計上されない、ということになります。
また、法人税法上、永久劣後債は金銭の消費貸借の類型ではないと見なされるということは、
発行会社が永久劣後債の保有者に対して支払う利息は法人税法上は損金とはならない、ということになります。
端的に言えば、法人税法上定義された金銭の貸借方法に従っていなければ、
会社と投資家間の金銭のやり取り(元本部分と利息部分)は借入金や社債やその利息とは見なされない、ということになります。
任意に会社機関を設置しても会社法上は無効である(任意機関の決議は会社法上は無効(その決議はないことと同じ))ように、
会社と債権者とが債務の弁済の順位を任意に合意しても、会社法上そして法人税法上は無効なのです。
永久劣後債も含め、債務の弁済順位が設定された債務というのは、会社法上も法人税上も実はないのです。

 


On the Corporation Tax Act,
a cash-in-flow by the issue of a perpetual subordinated bond is regarded as a taxable income.

法人税法上は、永久劣後債の発行によるキャッシュ・イン・フローは課税所得と見なされます。

 


Neither the Companies Act nor the Corporation Tax Act takes the order of a settlement of debts into account.
For all that a company has in it is equiy and debts.
In a liquidation procedure, a settlement of debts is made only on the basis of the amount of the respective debts
as at the beginning date of the liquidation procedure.
For example, a transaction date, what kind of goods and services a creditor provided for a company,
how long a creditor has made a commercial transaction with a company, who a creditor is,
and a private agreement between creditors and a company, etc.
are all left out of consideration in a liquidation procedure completely.

会社法も法人税法も、どちらも債務の弁済順位は考慮しないのです。
というのは、会社には資本と負債しかないからです。
清算手続きにおいて、債務の弁済は、清算手続き開始日時点の各債務の金額のみに基づいて行われるのです。
例えば、取引日、どのような種類の財や役務を債権者は会社に提供したのか、
債権者と会社との付き合い(商取引)はどれくらい長いのか、債権者は誰なのか、
そして、債権者と会社との間の私的な合意などといったことはどれも、清算手続きにおいては完全に度外視されるのです。