2016年9月27日(火)



2016年9月27日(火)日本経済新聞
UCS、最終赤字15億円
(記事)




2016年9月26日
株式会社UCS
業績予想の修正に関するお知らせ
ttps://www.ucscard.co.jp/company/com/news/pdf/NewsRelease160926.pdf

 

2016年8月23日
株式会社UCS
利息返還損失引当金の追加繰入れ計上に関するお知らせ
ttps://www.ucscard.co.jp/company/com/news/pdf/NewsRelease160823.pdf

将来に関する注意事項
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【コメント】
株式会社UCSは、昨日、2017年2月期第2四半期において利息返還損失引当金の追加繰り入れを行う、と発表したとのことです。
これは、2017年2月期第2四半期の決算短信を発表したのではなく、
「業績予想の修正に関するお知らせ」という形で適時開示を行ったものという位置付けになっています。
ただ、業績予想の修正の主な原因である「利息返還損失引当金の追加繰入れ」については、
株式会社UCSは2016年8月23日の時点で発表していたことではあるようです。
ですので、株式会社UCSが2017年2月期第2四半期において利息返還損失引当金の追加繰り入れを行うことについては、
市場の投資家は適時情報開示を通じて1ヶ月以上前から知っていた、ということにはなると思います。
それで、この記事やプレスリリースを読んで、
今日改めて金融機関が請求を受けているといういわゆる過払金や利息の返還について、考えてみました。
特に、利息の返還を行った場合の現金支出(利息返還損失)の税務上の取り扱いについて考えてみました。
すると、理論的には、利息返還損失は税務上損金不算入になるのではないか、と思いました。
一見すると、利息の受取額が過大であったので返還した、という流れですので、
過大に受け取った利息を返しただけであるのならば、利息返還損失は税務上損金算入されなければならないのではないか、
と思われると思います。
しかし、そもそも利息の返還ということ自体が法的根拠を欠いているように思うわけです。
金融機関は、借入人と金銭消費貸借契約を締結し、借入人と締結したその金銭消費貸借契約に基づき利息を受け取っているわけです。
もちろん、借入人も、金融機関と締結した同じ内容の金銭消費貸借契約に基づき利息を支払っているわけです。
金融機関と借入人は、法律に従い金銭の貸借について合意をし、金銭消費貸借契約を締結したわけです。
金銭消費貸借契約の締結に伴い、元本部分はもちろん、
利息の部分についてもそれぞれが負っている債権債務は法的に確定するわけです。
一言で言えば、この金銭消費貸借契約や利息の支払いと受け取りに、法律違反の部分は一切ないわけです。
それにも関わらず、当初の金銭消費貸借契約とは言わば無関係に、金融機関から借入人に対し利息の返還という名目で金銭を支払う、
というのは、寄付金を支払ったことと同じ、という見方をしなければならないと思います。
このたびの一連の利息返還請求というのは、
「金融機関がこれまで受け取った利息は(合意した適法の金銭消費貸借契約に基づくものではあるものの)他の一定の法律の規定
に照らせば過大であると言えるので、金融機関は過大に受け取ったと言える利息を借入人に返還しなさい。」
という趣旨の判決が出たことが発端になっているのだろうと思います。
ここでは議論の都合上、この判決は妥当なものであり、判例というのは法律と同じものである、と考えることにしましょう。
しかし、たとえそのように考えたとしても、やはり一連の利息返還請求というのは法理的にはおかしいと言わざるを得ません。
なぜならば、このたびのいわゆるグレーゾーン金利と呼ばれる利息を禁止する旨の判例というのは、
金融機関と借入人が金銭消費貸借契約を締結した時点では、つくられていなかったからです。

 



もちろん、この判例がつくられた後であれば、判例に従い、判例に沿った金利の金銭消費貸借契約を締結しなければならないでしょう。
しかし、金融機関と借入人が金銭消費貸借契約を締結した時点では、判例そのものがつくられていなかったわけですから、
金融機関も借入人もその判例を守りようがないわけです。
一連の利息返還請求には、まさに「法の遡及適用」と全く同じ問題点があるわけです。
端的に言えば、新しく作られた判例を過去の(=判決日以前の)取引に適用するのは言わば「判例の遡及適用」であり間違いである、
となろうかと思います。
以上書きました内容を踏まえますと、
金銭消費貸借契約に基づかず金融機関が借入人に対し利息の返還という名目で金銭を支払った場合は、
少なくとも法理的な観点から言えばですが、判例に基づいた利息の返還という解釈は法理的にはできない以上、
やはり支払った金銭は寄付金という捉え方になり、税務上は損金算入はされない、という考え方になると思います。
このたびの一連の利息返還請求というのは、法律面からも会計面からも説明が付けづらいな、と思っていました。
確定した契約に基づき取引を行っただけなのに、利息を返還しなければならない、というのは、
どのように説明付けができるだろうか、と思っていました。
しかし、今日、「判例の遡及適用」という考え方を行えば、一連の利息返還請求の論理的なおかしさの説明が付くな、と思いました。
2016年8月23日に株式会社UCSが発表したプレスリリース「利息返還損失引当金の追加繰入れ計上に関するお知らせ」の最後には、

>上記の利息返還損失引当金追加繰入見込額は、本資料の発表時点において入手可能な情報に基づき記載しております。

と書かれています。
この文言を今日の議論になぞらえて言えば、
契約締結日時点において施行されている法律そしてつくられている判例に基づき、人は取引を行っていかねばならない、
となろうかと思います。
人は、将来施行される法律や将来つくられる判例に従う必要はないのです。

 



From a viewpoint of the Corporation Tax Act, what you call the refunding of interest overcharges
has nothing to do with past interests earned themselves.
It means that, on the principle of law, a loss on the refunding of interest overcharges is a non-deductible expense.

法人税法の立場から見ると、いわゆる過払金の返還というのは、過去に受け取った利息そのものとは関係がないのです。
つまり、法理的には、過払金返還損失は税務上損金算入されない費用だ、ということです。

 


Are what you call requests for the refunding of interest overcharges really lawful?
Even admitting that a judicial precedent is regarded as the same as law,
the fact that a judicial precedent after the event is applied to a transaction
is exactly a retroactive application of law.
People must obey law at that time and also obey a juridical precedent at that time.
People can't obey the future law nor obey the future juridical precedent.
To put it badly, claimants only jump on the bandwagon of a juridical precedent which has nothing to do with them.

過払金の返還請求というのは、本当に法律によって許可されているものなのですか?
よしんば判例というものを法律と同じであると見なすとしても、
取引に対し判例を事後的に適用するというのは、まさに法の遡及適用なのです。
人はその時の法律に従い、また、その時の判例に従わなければならないのです。
人は、将来の法律に従うことはできませんし、また、将来の判例に従うこともできないのです。
悪く言えば、返還請求をしている人達は、自分達とは関係がない判例に便乗しているだけなのです。

 


Is a new juridical precedent which may be established in the future
included in available information at the time of disclosure of this press release?
If the law concerning an interest rate is changed in the futrue,
do lenders have to refund interests to borrowers additionally?
No one can get a new juridical precedent established in the future.

将来においてつくられるかもしれない新しい判例は、このプレスリリースの発表時点において入手可能な情報に含まれますか?
仮に今後、金利に関する法律が変わったら、貸付人は借入人に利息を追加的に返還しなければならないのですか?
将来つくられる判例を入手することは、誰にもできないのです。