2016年9月22日(木)
2016年9月22日(木)日本経済新聞
広がる新型資金調達 新株予約権の第三者割当 株価下落リスクを緩和
(記事)
2016年8月17日
ゲンキー株式会社
第三者割当による行使価額修正条項付第6回乃至第8回新株予約権の発行に関するお知らせ
ttp://www.genky.co.jp/files/ir/temp/000390.pdf
2016年9月5日
ゲンキー株式会社
第三者割当による行使価額修正条項付第6回乃至第8回新株予約権の発行に係る払込完了に関するお知らせ
ttp://www.genky.co.jp/files/ir/temp/000420.pdf
2016年7月5日
株式会社じげん
「株価・トリプル25」達成条件型新株予約権の発行に関するお知らせ
(第三者割当による行使価額修正条項付第4回乃至第6回新株予約権の発行)
ttp://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80135/32ec9a02/ea9e/464d/9fe8/f9ed86dc40d6/140120160705443838.pdf
2016年7月5日
株式会社じげん
「株価・トリプル25」達成条件型新株予約権ご説明資料
ttp://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80135/91fccd9c/811d/47f9/9718/0fa513b17730/20160705182031750s.pdf
2016年9月22日(木)日本経済新聞
日本オラクル、最高益 6〜8月単独税引き 4%増77億円
(記事)
日本オラクル株式会社
平成29年5月期第1四半期業績(平成28年9月21日発表)
第1四半期決算短信
ttp://www.oracle.co.jp/corp/IR/doc/201609/FY17Q1_tanshin_JP.pdf
補足資料
ttp://www.oracle.co.jp/corp/IR/doc/201609/FY17Q1_supplemental.pdf
2016年9月21日
日本オラクル株式会社
当社取締役、執行役および従業員に対するストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ
ttp://www.oracle.co.jp/corp/IR/doc/201609/20160921_SOP_Release.pdf
【コメント】
1つ目の記事は、「第三者割当による行使価額修正条項付新株予約権」と呼ばれる新株予約権を用いた資金調達を行っている
上場企業が増えている、という内容です。
「第三者割当による行使価額修正条項付新株予約権」を発行している企業の例として、記事の中では、
ゲンキー株式会社と株式会社じげんが紹介されています。
また、2つ目の記事として日本オラクル株式会社に関する記事も紹介していますが、
記事中に、2016年6〜8月期の決算が過去最高となった理由として、
>ストックオプション(株式購入権)失効に伴う戻し入れ益も利益を押し上げた。
と書かれていましたので、何かの理解のヒントになると思いましたので、紹介しました。
それで、主に1つ目の記事を題材に一言だけ書きたいと思うのですが、
記事には、”新型資金調達”との見出しが載っていますが、
記事やゲンキー株式会社と株式会社じげんが発表しているプレスリリースを読む限り、
資金調達の新しい手法というほどのこともないように思います。
記事には、この「第三者割当による行使価額修正条項付新株予約権」のことを、
>いわば社債部分のない新株予約権付社債(転換社債=CB)だ。
と書かれています。
しかし、そもそも新株予約権と社債から新株予約権付社債(転換社債)が作られているわけです。
新株予約権付社債(転換社債)から社債を除いたものが新株予約権だ、などという考え方はないでしょう。
少しおかしなことが書かれてあるな、と思う部分もこの記事にはありました。
それで、私が最初記事の見出しと内容をざっと読んだ時は、新株予約権を発行することによる資金調達が行われている、
ということなのだろう、と思いました。
新株式発行をしない形での資金調達が記事では議論になっているのだろう、と実は私は最初思いました。
具体的には、権利行使価額は著しく低い(1円など)が新株予約権の発行価額が非常に高い(直近の株価水準に非常に近い水準)、
という内容の新株予約権が記事で議論になっているのだろうと思いました。
よく上場企業の増資の際には「時価発行増資」と言いますが、これは仮想的・擬似的な時価発行増資とでも言いましょうか、
新株予約権を株式の時価(直近の市場株価)で発行する、という手法により資金を調達する、
と記事では言っているのだろうと思いました。
新株予約権を株式の時価(直近の市場株価)と同水準で発行する代わりに(新株予約権を高い発行価額で引き受ける見返りとして)、
権利行使価額が著しく低い(1円など)、という内容になっているのだろうと思いました。
これならば、引き受け手にとっては、新株予約権を株式の時価(直近の市場株価)と同水準で引き受けたとしても、
財務上のインパクトは、株式を時価(直近の市場株価)で引き受けたことと同じになる、
すなわち、時価発行増資を引き受けたこと同じになる、ということではないかと思いました。
発行者にとっても、貸借対照表に与えるインパクトは、結果としては時価発行増資を行ったこと実質的に同じになる、
ということではないかと思いました。
権利行使価額が著しく低い(1円など)ならば、新株予約権者は将来必ず権利行使をすると言えます。
引き受け手にとって、新株予約権勘定が権利行使に伴い株式取得原価を構成するならば、
結果、新株予約権の引き受け手は株式の時価発行増資を引き受けたことと同じになると言えるでしょう。
また、発行者にとって、新株予約権勘定が権利行使に伴い資本金勘定を構成するならば、
結果、新株予約権の発行者は株式の時価発行増資を行ったことと同じになると言えるでしょう。
記事には、負債による資金調達は避けたいが通常の公募増資ほどは一気に希薄化が進まない形で資金を調達したい、
という意向がある場合に、新株予約権の発行により資金を調達する、といったことが書かれていますので、
私が以上書きましたような内容の新株予約権を発行する企業が増えている、ということなのだろうと最初は思いました。
新株予約権の行使期間を非常に長く設定しておけば、その期間内に渡り、漸次に(時間をかけて少しずつ)権利行使されていきます。
これならば、一気に希薄化が進むことはありませんし、株価への影響も非常に小さくて済みます。
そして、権利行使が全て完了した後は、財務的には時価発行増資を行ったことと同じ、という状態になるわけです。
そういった新株予約権発行を記事では新しい資金調達手法と呼んでいるのだろう、と最初思いました。
ところが、記事をよく読みますと、実は全く違っていました。
記事をよく読んでみますと、これの一体どこが新しい資金調達手法なのだろう、と思うくらいです。
現に、ゲンキー株式会社も株式会社じげんも、新株予約権発行による資金調達額は、
権利行使に伴い調達する資金調達額の1%にも満たないのです。
権利行使価額も低いということは全くありませんので、記事で言っている新株予約権は、
どちらかというと従来から実務上よくある新株予約権であるように思います。
手前味噌になりますが、「新株予約権を株式の時価で発行し権利行使価額は1円とする」という内容の新株予約権を発行する方が、
記事の中に出てくる企業の意向に合致しているのではないかと思います。
それで、以上の議論も踏まえつつ、新株予約権についてあることを思いました。
ゲンキー株式会社と株式会社じげんが発表しているプレスリリースを読みますと、
「新株予約権の譲渡制限」に関する定めが記載されています。
プレスリリース中に何ヶ所にも、
>割当予定先は、当社の取締役会の承認がない限り、割当を受けた本新株予約権を当社以外の第三者に譲渡することはできません。
と書かれています。
また、2016年9月21日に日本オラクル株式会社が発表したプレスリリース
「当社取締役、執行役および従業員に対するストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ」には、
新株予約権の行使について、以下のように書かれています。
>U.新株予約権発行要項
>9. 新株予約権の譲渡制限
>新株予約権を譲渡するときは取締役会の承認を要する。
と書かれています(3/6ページ)。
ゲンキー株式会社も株式会社じげんも日本オラクル株式会社も、発行者取締役会の承認は必要ではあるものの、
新株予約権は譲渡可能である、と言っているわけです。
そして、ゲンキー株式会社と株式会社じげんが発表しているプレスリリースには、新株予約権の譲渡制限に関連し、
>割当予定先は、当社の普通株式(本新株予約権の権利行使により取得したものを含みます。)を
>第三者に譲渡することは妨げられません。
とも書かれてあるわけです。
新株予約権の行使により取得した株式は、自由に譲渡してよい、と言っているわけです。
ゲンキー株式会社も株式会社じげんも上場企業ですので、取得した株式は市場で自由に売却してよいわけです。
それで、今日紹介した3社では新株予約権は譲渡できるということであるわけですが、一般論として、私は次のように思いました。
「新株予約権は譲渡できない。」という取り決めになっていたとしたら、会計上そして税務上の取り扱いはどうなるだろうか、と。
仮に、「新株予約権は譲渡できない。」となりますと、新株予約権者が取り得る行動は、
@権利を行使する、A権利を行使しない(新株予約権は失効する)、のどちらかしかないわけです。
トートロジーのようになりますが、新株予約権者が新株予約権を譲渡するという行動を取ることは起こり得ないわけです。
そうしますと、新株予約権者にとって、税務上新株予約権の引受価額が取得原価すなわち損金を構成することはあり得ない、
ということになるわけです。
このことは、新株予約権者が株式会社の場合、新株予約権勘定を貸借対照表の資産の部に計上することは間違っている、
ということを意味しないでしょうか。
「費用・収益対応の原則」から言えば、新株予約権の引受価額が収益と対応することはあり得ないわけです。
新株予約権の譲渡を行えば、新株予約権の引受価額は収益(新株予約権の譲渡価額)と対応するでしょう。
しかし、新株予約権の譲渡は行わないとなりますと、新株予約権の取得後、引受価額が収益と対応することはない以上、
新株予約権勘定を貸借対照表の資産の部に計上することはできない、ということになると思います。
現行の定めは分かりませんが、理論的には、新株予約権の引受価額が株式の取得価額を構成するのは間違いであるわけですが、
新株予約権の失効に伴う損失は、やはり税務上は損金不算入であるべきなのです。
その意味においても、新株予約権勘定を貸借対照表の資産の部に計上することは理論的には間違いであると思います。
譲渡を行えば費用と収益が対応するのですが、譲渡を行わない場合は費用と収益が対応のし様がないわけです。
逆から言えば、譲渡可能な資産のみ貸借対照表に計上できる、と言えると思います。
このことをさらに逆から言えば、譲渡不可能な資産勘定は貸借対照表に計上できない、となると思います。
新株予約権の引受に伴う現金支出額が、引受時もしくはその後において、税務上損金となるのか否かについては、
議論が非常に広がってしまう(元祖法人税法理論にまで話がさかのぼるでしょう)ので、一旦ここでは置いておきます。
ただ、譲渡できるのか否かで、新株予約権勘定を貸借対照表に計上できるのか否かが変わってくる、と理論上言えると思います。
それから、会計の観点から見て、発行者の側から新株予約権を見ますと、新株予約権勘定は負債にも資本にも分類されないと思います。
なぜなら、会社清算時、新株予約権者には何らかの弁済を受ける権利もなければ残余財産の分配を受ける権利もないからです。
発行者が新株式を発行する義務を負っているのは確かですが、新株予約権勘定の価額は義務の金銭的大きさを表してはいないのです。
端的に言えば、新株予約権と呼ばれるものは、会計では表現し切れないもの(一言で言えば金銭債務ではない)であろうと思います。
For an issuer, a share option is not classifed not as equity nor as
debts.
発行者にとって、新株予約権は資本であるとも分類されませんし負債であるとも分類されません。
For a holder, can a share option be transferred?
保有者にとって、新株予約権は譲渡できるものなのですか?