2016年9月15日(木)



2016年9月15日(木)日本経済新聞
上海の不思議な免税店 内需拡大へ政府禁じ手
(記事)


 


【コメント】
記事を一読してまず思ったのは、
「今年8月に上海に新しく開業したというこの免税店では何税が免除されるのだろうか?」
ということです。
記事を何回読んでも意味が分かりづらいのですが、どうやら、消費税が免除される、
という意味であると読めるようにも思えます。
記事の中ほどには、

>一般的な免税店は旅行などで訪れた外国人や、これから海外へ渡航する自国民などが対象。
>海外での消費を前提に通常は付加される関税などを免除する

と書かれていますが、この免税店では、免税の対象は「海外から戻ってきた中国人のみ」(帰国した中国人)とのことです。
帰国してしまったのであれば、その人にとっては消費税の免除も関税の免除もおかしいわけです。
免税店では何税が免除になるのかが論点としては非常に重要になろうかと思います。
免税店といいますと、一般には関税が免除されることではないか、と思うのですが、記事の内容は何か分かりづらいなと思います。
そう思ってグーグルで「免税店」というキーワードで検索しましたら、次のようなサイトがありました↓。

免税店とは|消費税免税店サイト - 国土交通省
ttp://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/about.html

>免税店とは
>免税店とは外国人旅行者等の非居住者に対して特定の物品を一定の方法で販売する場合に、
>消費税を免除して販売できる店舗のことです。
>ここでいう「免税店」とは、消費税法第8条に定める「輸出物品販売場」のことです。

このサイトは、記事の内容とダイレクトに関連・相関のある解説になっているように思います。
このサイトは国土交通省のサイトであるわけですが、税といいますと当然国税庁も関連してくるわけですが、
では国税庁では「免税店」とは何税が免除される店舗であると定義されているのだろか、と思うわけです。
もしくは、国税庁では特段「免税店」という定義の店舗はない、ということかもしれませんが。
いずれにせよ、「免税店では何税が免除されるのか?そして、その税免除の対象となるのは誰なのか?」が重要であろうと思います。
一般に日本で「免税店」と言いますと、「消費税が免除される店舗」を指す、ということになるのだろうと思います。
より厳密に言うと、上記のサイトは国土交通省ではなく、観光庁のサイトであるようです。
ですので、日本国内にある「免税店」とは、
主に「訪日した外国人観光客を対象に消費税を免除して商品を販売する店舗」を指すのだろうと思います。
逆から言えば、日本人が「消費税免税店」で商品を購入しても、消費税は免除されない、ということだと思います。
紹介した記事の内容が意味が分かりづらいため、私が書いているコメントも分かりづらくなっているかと思います。
以下、少し話を整理しましょう。

 



元来的な免税店とは、やはり「関税」が免除される店舗のことを指すと思います。
日本国内の店舗で輸入品を買いますと、輸入業者が商品輸入の支払った関税を消費者が負担することになるわけです。
厳密に言えば、関税は輸入業者のみが負担するものなのですが、輸入業者は支払った関税を商品販売価格に転嫁するわけです。
これは消費税とは異なり、輸入業者が関税を商品販売価格に転嫁しないことは全く自由といいますか、
輸入業者が輸入の際に支払った関税は、輸入という行為に税が課せられたものであって、
関税は理論的には次の流通段階へ転嫁するものでは全くないわけです。
ただ、経営上は、関税を営業上の一費用と考え、輸入業者は自分が支払った関税を回収できるだけの価格で販売しようとする、
というだけのことであるわけです。
端的に言えば、関税はそもそも消費者が負担するものではないわけです。
では、空港にある関税の免税店というのは何かと言いますと、
輸入業者としてではなく一消費者として購入する場合は関税を免除する、
という特別な取り扱いになっているだけなのだと思います。
本来ならば、一消費者(一観光客)が海外旅行をし海外で商品を購入してその商品を日本にお土産として持って帰ってくる場合でも、
関税はかかるわけです。
なぜならば、税務当局からすれば、その人が一消費者なのか輸入事業者なのかは分からないからです。
税務当局からすれば、商品を海外から国内へ持ち込んでいるということに関して、一律に関税を課する、ということになります。
ただ、関税法に、有り体に言えば「一消費者には関税は課さない」という意味合いの特別な定めがあるのだろうと思います。
先ほども書きましたように「一消費者」の定義はできませんので、より実務的には、
「許可を受けた店舗において、購入者1人当たり何点以下の購入の場合は関税は課さない」といった具合に定めることになるでしょう。
この辺り、「本来的には『免税店』と呼ばれる店舗などはない。」、というふうに考えれば分かりやすいと思います。
というのは、関税というのは、海外から日本国内に商品を持ち込む際に(持ち込むことに関して)税を課することであるわけですから、
日本人から見ると、海外にあるお店は全て実は始めから免税店であるからです。
関税は、そもそもお店で支払うものではありません。
海外から日本国内に商品を持ち込む際に(持ち込むことに関して)、持ち込む人が日本の税務当局に支払うものです。
本来は(現実にもそうですが)、たとえ正規の免税店で商品を買っても、商品を関税法の免除規定を超える点数購入した場合は、
その商品に関して成田空港で関税を支払うことになるわけです。
すなわち、その意味では、極論すれば、実ははじめから免税店などないわけです。
免除規定内の点数のみ商品を購入する消費者を想定すると、免税店という販売形態やその概念が成り立つだけなのです。

 

From a viewpoint of foreigners, all of the shops overseas or outside their home country are
duty-free shops from the beginning.
For they don't have to pay customs on goods from the beginning if they buy them overseas.

外国人の立場から見れば、海外にあるお店はすなわち本国外にあるお店は全て、始めから免税店なのです。
というのは、海外で商品を買えば始めから関税を支払う必要はないからです。