2016年8月19日(金)
2016年8月16日
グリー株式会社
子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1395905
2016年8月16日
グリー株式会社
業績予想の修正に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1395906
2.修正の理由
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【コメント】
グリー株式会社は、2016年8月16日に米国の連結子会社株式を売却した結果、
2017年6月期第1四半期(7〜9月)の連結当期純利益が従来予想に比べ大幅に増加する見通しとなっているわけですが、
その点について、記事には、
>これに伴う貸倒引当金繰入額などの費用が税務上の損金として認められる見込み。
>これにより税負担が大幅に軽減する。
と書かれています。
また、この点について、プレスリリースには、
>過去に計上した関係会社株式評価損および貸倒引当金繰入額が税務上認容される見込み
と書かれています。
当初の業績予想では、親会社株主に帰属する当期純利益は「0円」と発表していたわけですが、
連結子会社株式の売却の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は「90億円」になる見込みである、
と業績予想の修正をこのたびグリー株式会社は発表したわけです。
親会社株主に帰属する当期純利益が「0円」から「90億円」に増加する見込みとなっているわけですが、
その原因は「米国の連結子会社株式の売却」のみなのだと思います。
売上高と営業利益と経常利益は、従来予想と同じですので、当期純利益額急増の原因は他にはない、ということなのだと思います。
そうしますと、「米国の連結子会社株式の売却」の影響額が「90億円」ということになろうかと思いますが、
その「90億円」の内訳をもう少し細かく見てみましょう。
プレスリリースを読みますと、このたび株式を売却した米国の連結子会社というのは、「GREE
International, Inc.」のことです。
「GREE International,
Inc.」は、2015年6月期、2016年6月期と2年連続で当期純損失を計上しており、
2015年6月期より大幅な債務超過の状態にあります。
ですので、グリー株式会社はおそらく、「GREE
International, Inc.」を既に全額減損処理を行っており、
「GREE International,
Inc.」株式の貸借対照表価額は既に「0円」になっていると思います。
プレスリリースによりますと、この「GREE International,
Inc.」株式をグリー株式会社は「6百万USドル」で譲渡しています。
ですので、会計上の関係会社株式売却益の金額は、約6億円、ということになると思います。
プレスリリースには、親会社株主に帰属する当期純利益が増加する理由として、関係会社株式売却益に加え、
”為替換算調整勘定取崩益等の特別利益の計上を見込む”とも書かれていますが、
会計上、為替換算調整勘定には取り崩しという概念はないかと思いますので、
為替換算調整勘定取崩益という特別利益は一切計上されないと思います。
そうしますと、親会社株主に帰属する当期純利益の増加額「90億円」のうち、
会計上考えられる影響額は、関係会社株式売却益の「6億円」しかない、ということになります。
つまり、会計上は、関係会社株式売却益を「6億円」しか計上していないのに、
親会社株主に帰属する当期純利益は「90億円」も増加する、ということで、一見パラドックスであるかのように感じる思います。
このパラドックスの原因というのが、記事やプレスリリースに書いてあります法人税法上の取り扱いなのだろうと思います。
おそらく、過去に計上した貸倒引当金繰入額が2017年6月期に法人税法上損金として認容される見込みであるので、
法人税の負担が大幅に軽減する結果、当期は当期純利益が増加する、と記事やプレスリリースでは言っているのだろうと思います。
グリー株式会社が過去に計上した「GREE
International, Inc.」に対する貸倒引当金繰入額がいくらかは書かれていません。
また、「GREE International,
Inc.」の資本金額は「149百万USドル」とプレスリリースには書かれています。
つまり、元々の「GREE International,
Inc.」の価額は「149百万USドル」であったわけです。
すなわち、グリー株式会社が過去に計上した「GREE International,
Inc.」株式の関係会社株式評価損は
「149百万USドル」であったのだと思います。
関係会社株式評価損自体は法人税法上損金とはなりませんが、取得価額と譲渡価額との差額が法人税法上譲渡損(損金)となります。
すなわちこの場合、グリー株式会社には「143百万USドル(約143億円)」の株式譲渡損が法人税法上計上されます。
この辺りのことを合わせて考えて見ますと、「GREE
International,
Inc.」株式売却に伴い、
グリー株式会社には2017年6月期におい極めて多額の損金が法人税法上認識される、ということになると思います。
以上のようなことを考えますと、「GREE
International,
Inc.」株式の売却に関連し、2017年6月期において、
会計上は費用・損失はほとんど計上されない一方、法人税法上は極めて多額の損金が法人税法上認識される、
ということになるわけで、このことが原因で、当期純利益の増加額がおかしなことになっているのだと思います。
ただ、たとえ当期において会社には法人税法上極めて多額の損金が法人税法上認識されるとしても、
法人税法上の損金は会社の当期純利益の金額を直接に増加させる効果や損益計算過程(利益算定メカニズム)は全くありません。
このたびの事例で言えば、関係会社株式売却益の「6億円」には結果として法人税は全くかからない、ということになるわけです。
正確に言えば、会計上は株式売却益「6億円」なのだが法人税法上は株式譲渡損「143億円」、という状態であるわけです。
ですので、法人税法の観点から言えば、株式売却益「6億円」はそもそも全く課税の対象ではないわけです。
いずれにせよ、法人税法上の損金が損益計算書において利益として計上される、という考え方・計算過程などは全くないわけです。
ですので、過去に計上したそして当期に計上した項目について、会計上の取り扱いと法人税法上の取り扱いとで
一定の差異が生じている状態にあるのは確かだとしても、「GREE
International,
Inc.」株式の売却の結果、
グリー株式会社の当期純利益の金額が90億円も増加するというのは、絶対にあり得ないことかと思います。
また、2017年6月期には、グリー株式会社にはそれだけの損金を算入させるだけの十分な益金はないわけです。
このような場合は、端的に言いますと、グリー株式会社には多額の法人税法上の繰越欠損金が発生している状態になると思います。
次期以降、十分な益金が見込める場合は、法人税法上の繰越欠損金を根拠に、
税効果会計を適用し、当期において会計上繰延税金資産を計上することはできると思います。
その場合は、当期において、法人税法上の繰越欠損金の急増に伴い、当期純利益の金額も急増する、ということになります。
もしグリー株式会社においてもそうであれば、記事やプレスリリースの内容と合致するわけですが、
記事やプレスリリースには繰延税金資産については一言も書かれていません。
特別利益の金額上に当期純利益の金額が増加するというパラドックスについては、やはり説明は付かないままかと思います。
また、論点を絞るために将来の十分な益金を所与のこととしますと、
理論上は、一時差異の発生のみが繰延税金資産計上の要件になります。
法人税法上の繰越欠損金の発生は、繰延税金資産計上の要件ではありません。
つまり、グリー株式会社は、当期以前から、すなわち、貸倒引当金繰入額が法人税法上の損金として認められる以前から、
繰延税金資産を計上しても会計理論上は何らの問題もなかった、ということになります。
他の言い方をすると、過去に計上した貸倒引当金繰入額が当期に法人税法上の損金として認められることは、
当期から繰延税金資産を計上することとは何の関係もないのです。
グリー株式会社は、過年度から(過去に貸倒引当金繰入額を会計上計上した期から)繰延税金資産を計上しても、
実は何の問題もなったのです。
別の観点から簡単に言えば、法人税法上損金として認められる以前から繰延税金資産を計上することは、理論上は正しいのです。
一言で言えば、法人税法上の繰越欠損金と繰延税金資産の計上とは何の関係もないのです。
The cause for the fact that the subsidiary can't pay its debts lies in
the parent company.
子会社が債務を弁済できない原因は、親会社にあるのです。
It lies with the parent company to
have had potential insolvency happen in the subsidiary.
子会社に支払不能可能性が発生したのは親会社のせいなのです。