2016年8月13日(土)
【コメント】
ミャンマーには現在、株式取引に関わる厳しい外資規制が置かれているようです。
この厳しい外資規制を、ミャンマーでは年内に緩和する方針であるようです。
しかし、以前も書きましたが、どの国にも「外資」と呼ばれる資本などは実はないのです。
国内にある資本は全て国内の資本というだけなのです。
外国から資本が入ってくるという状態は実は観念されないわけです。
例えば、日本進出を考えているアメリカ企業が日本企業の株式を取得するとします。
その時、そのアメリカ企業は「日本円」で日本企業株式を取得するわけです。
すると、アメリカ企業はアメリカ(アメリカの外国為替市場)で米ドルを日本円に両替することになります。
それは結局のところ、アメリカ企業が日本円を持って日本にやってきた、ということと全く同じ状態であるわけです。
それは「外資の参入」という状態とは全く異なるのではないでしょうか。
また、アメリカ企業が新規に日本法人を設立するという場合でも、日本に法人を設立・登記するためには日本円が必要になります。
米ドルで法人に現金を払い込むことはできません(米ドル建ての資本金は日本の法令では認められない)。
結局、株式を取得するにせよ事業を展開するにせよ、日本での取引・行為には日本円が必要だ、というだけのことなのです。
率直に言えば、「外資」という概念自体がないわけです。
資本というのは全て、国内の資本というだけです。
敢えて「外資」と呼ばれるものに規制を課することを考えるならば、
それは結局のところ、「国内通貨と外国通貨との両替」に関する規制、ということになると思います。
英語で言えば、通貨の「exchange」(為替、両替)の部分を規制する、という考え方になると思います。
両替後に規制をすることを考えても、そこで用いられている通貨は国内通貨一種類だけなのですから、
資本(お金)を外資の部分と国内資本の部分とに区別することはそもそもできないわけです。
端的に言えば、”外資規制”では、そもそも国内通貨を海外通貨と両替させないことや
お金(国内通貨)を海外から国内に持ち込ませない(送金も含む)ことに重点を置く方が理論的だと思います。
法理的には、会社の株主というのは会社と同じ国にいる人なのです。
つまり、法理的には、いわゆる外国人株主というのは1人もいないのです。
Can U.S. dollars be used in Japan?
米ドルが日本で使えるでしょうか。
【コメント】
記事に記載のあります「マレーシアにおける自動車ローン債権」というのは、
いわゆるイスラム金融に類する債権ではなく、世界各国によくある通常の債権(ローン)なのだろうと思います。
その上で、三菱東京UFJ銀行は、「マレーシアにおける自動車ローン債権」をイスラム金融方式で証券化する、
と記事では言っているのだと思います。
「マレーシアにおける自動車ローン債権」を一種の担保とした(キャッシュフローの裏付けとした)債券を
三菱東京UFJ銀行(正確に言えば特別目的会社)は発行しようとしているわけですが、
その債券はイスラム債(スクーク)となるスキームだ、と記事では言っているのだと思います。
しかし、そうだとすると、話がおかしいな、と思いました。
自動車ローン債権からは利息が発生するわけですが、イスラム債の部分には利息は発生しないわけです。
これは本来の証券化とはかなり意味合いが異なるな、と思いました。
本来の証券化では、「自動車ローン債権からの利息」は、債券を引き受けた投資家が受け取るべきものだからです。
証券化前は、「自動車ローン債権からの利息」は、自動車ローン債権の直接の保有者(ここではCIMB社)のみが受け取るわけですが、
証券化後は、「自動車ローン債権からの利息」は、自動車ローン債権の直接の保有者(ここではCIMB社)は一切受け取らず、
債券を引き受けた複数の投資家が受け取ることになります。
証券化において分割されるのは、元本だけではなく、元本に附随する利息も、なのです。
「自動車ローン債権からの利息」は、債券の引受額に応じて、均等に投資家に分割されることになります。
ここでの論点を一般化して言えば、利息が付いている原資産を利息が付かないイスラム債で証券化することなどできない、
ということになろうかと思います。
仮に、利息が付いている原資産を利息が付かないイスラム債で証券化するとなりますと、
自動車ローン債権の直接の保有者(ここではCIMB社)が原資産からの利息部分をピンはねする、
という形になってしまうわけです。
それはイスラム債を引き受ける投資家にとっては全く面白くないことであろうと思います。
イスラム金融方式の証券化業務には欧米の主要金融機関も本格的には参入していない、と記事には書かれていますが、
その理由は、イスラム債を用いた原資産の証券化はただのピンはねだからではないでしょうか。
ただ、証券化の原資産である「マレーシアにおける自動車ローン債権」自体が、そもそも無利息の資産(債権)であるというのなら、
イスラム債を用いた原資産の証券化は可能であろうと思います。
ただ、その場合、債券を引き受ける投資家は何を目的に債券を引き受けるのかは不明ではありますが。
Investors who buy what you call an Islamic bond in this article can't receive an interest.
この記事にあるいわゆるイスラム債を購入した投資家は、利息を受け取れないわけです。
Conceotually speaking, securitization is to split a principal of an
original asset into a small amount.
The total amount of interests which
accrue from the original asset doesn't increase nor decrease
before and after
the split or securitization at all.
概念的に言えば、証券化というのは、ある原資産の元本を少額に分割することなのです。
その原資産から生じる利息の総額は、分割のすなわち証券化の前後で1円も増減はしないのです。
もし私が先ほどの記事の機関投資家の1人であるならば、CIMB社とその特別目的会社に対しこう言うでしょう。
「自動車ローンから生じている私の利息はどこへ消えた?」と。
「これは『上前をはねる』どころではない。CIMB社とその特別目的会社は、私の取り分の100%をせしめているではないか。」と。
「これは全く証券化ではない。上前をはねるを超えた上前をはねるだ。」と。
「老婆心ながら申し上げますと、証券化ではピンはねは一切行われません。
概念的には、原資産からの利息は全てSPCを通過し投資家へパススルーすることになります。
そうでなければ、投資家がバカを見ることになるからです。」と。
「これはスクーク(イスラム債)ではなくスティール(くすんだもの)だ。」と。
In case an original asset is with an interest, securitization by means of
what you call an Islamic bond can't be made.
Only in case an original asset
is without an interest, securitization by means of an Islamic bond can be
made.
原資産が利息付である場合は、いわゆるイスラム債を用いた証券化は不可能です。
原資産が利息なしである場合のみ、イスラム債を用いた証券化が可能なのです。