2016年8月6日(土)
2016年8月5日(金)日本経済新聞
東建物、純利益52%減
(記事)
2016年8月4日
東京建物株式会社
決算平成28年12月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://pdf.irpocket.com/C8804/xoy0/VKpm/oJMS.pdf
2016年8月4日
東京建物株式会社
2016年12月期第2四半期
決算補足説明資料
ttp://pdf.irpocket.com/C8804/xoy0/VKpm/rtuH.pdf
2016年3月29日
東京建物株式会社
有価証券報告書−第198期(平成27年1月1日−平成27年12月31日)
ttp://pdf.irpocket.com/C8804/lsfl/DP9l/Exks.pdf
【コメント】
東京建物株式会社の、2016年12月期第2四半期連結累計期間の連結業績が前年同期に比べ減収減益になった理由について、記事には、
>大型タワーマンションの完成の端境期で、収益に計上するマンションが大幅に減った。
>マンションの完成が少なく、収益への計上戸数は287戸と、前年同期の3割の水準にとどまった。
と書かれています。
また、決算短信には、この点について、
>住宅事業において分譲マンションの竣工戸数が前年同四半期に比べて少なく、売上計上戸数が大幅に減少した影響等により、
と書かれています(4/12ページ)。
まず、日本語の勉強からになりますが、「端境期」は「はざかいき」と読むようです。
辞書によりますと、「端境」(はざかい)とは、
>前年とれた米が乏しくなり、新米がまだ出回らないころのこと。〔季節の有る果物・野菜などにも言う〕
という意味とのことです。
「端境期」は英語で、「the preharvest
month(s)」というようです。
「端境期」とは「収穫期前」という意味なのでしょう。
東京建物株式会社の事例に即して言えば、大型タワーマンションは完成前の状態にある、という意味になるのだと思います。
以上のことを踏まえ、記事や決算短信を読んでみましょう。
記事だけを読んだ時は、東京建物株式会社は建設業を手がけている会社なのだろう、と思いました。
建物の完成に伴い収益を計上する、というビジネスモデルなのだろうと思ったからです。
ところが、決算短信や有価証券報告書を読みますと、東京建物株式会社は建設業ではなく、
ビル賃貸事業や住宅分譲事業を手がけているとのことです。
東京建物株式会社では、2016年12月期第2四半期は、住宅分譲事業が振るわなかった、ということであるようです。
ただ、東京建物株式会社は建設業を手がけている会社(建設会社)なのだろう、という私の考えは間違っていたわけですが、
記事の文脈はやはりおかしいと思います。
東京建物株式会社が建設業を手がけていようと住宅分譲事業を手がけていようと、
マンションの完成の端境期にあること(マンションが完成前の状態にあること)は、収益の計上とは実は関係がないのです。
なぜなら、東京建物株式会社が建設業を手がけていようと住宅分譲事業を手がけていようと、
「マンションが完成した」というだけでは収益を計上できないからです。
東京建物株式会社は住宅分譲事業を手がけているわけですが、建設会社に建設を依頼したマンションが完成したというだけでは、
東京建物株式会社は収益を計上することはできません。
東京建物株式会社は、マンション(会社にとっては棚卸資産)をお客様に販売して初めて、収益を計上することができるのです。
また、仮に東京建物株式会社が建設業を手がけている(建設会社である)と考えた場合でも、記事の文脈は間違っています。
建設会社は、建設を行いマンションを完成させた、というだけでは実は収益は計上できないのです。
建設会社は、完成させたマンションをお客様(主に不動産会社)に販売を行って初めて、収益を計上することができるのです。
一般的には、建設会社は、顧客から建設の発注を受けてから建設に取り掛かります。
つまり、建設会社は、完成させたマンションを完成後すぐに顧客に引き渡すことになります。
したがって、建設会社は、マンションを完成後顧客に引き渡して初めて、収益を計上することになります。
たとえ発注を受けて建設に取り掛かる場合でも、マンションを顧客に引渡すことが、収益計上の条件になるわけです。
現行の収益認識基準には「工事進行基準」という考え方があります(逆に、上記の考え方は「工事完成基準」と言います)が、
目的物を相手方に引き渡してもいないのに収益を計上するのは本来的にはおかしいわけです。
本来的には「工事完成基準」という考え方しかなく、理論的には「工事進行基準」は間違いであると考えるべきでしょう。
やや上げ足取りのようになりますが、「工事完成基準」においても「目的物の引渡し」が収益計上の条件になります。
一般的には、建設会社は顧客からの発注を受けてから建設に取り掛かりますので、
商慣習としては、「工事の完成=目的物の引渡し」ということになろうかと思います。
しかし、顧客からの発注はないまま建設会社が建物の見込建設を行う、という場面を想定してみますと、
その場合はたとえ工事が完成しても、建設会社は収益の計上はできないわけです。
その意味では、工事完成基準は、「顧客から発注を受けて建設を開始する」ということが暗に前提になっていると言えるでしょう。
そして、工事進行基準は、「無事に工事は完成し顧客に目的物を引渡す」ということが暗に前提になっていると言えるでしょう。
In case a construction company does make-to-stock construction of a
building,
neither the completed contracts method nor the percentage of
completion method can be applied.
建設会社が建物の見込建設を行う場合は、工事完成基準も工事進行基準も適用することはできません。