2016年7月30日(土)



2016年7月28日(木)日本経済新聞 公告
登録金融機関の吸収分割公告
みずほ信託銀行株式会社
信託業務を営む金融機関の吸収分割の公告
みずほ信託銀行株式会社
吸収分割公告
みずほ信託銀行株式会社
(記事)



 

From a viewpoint of the "possibility of an arrival of information,"
the purpose of a public announcement is not notice but a record, I suppose.
To put it badly, it's a performance.

「情報の到達可能性」という観点から言えば、公告の目的は、通知ではなく、記録なのだと思います。
悪く言えば、公告というのはパフォーマンスなのです。

 



【コメント】
3つの公告が並んでいますが、3つの公告の公告者と公告事由は全て同じです。
すなわち、「みずほ信託銀行株式会社が吸収分割によりみずほ投信投資顧問株式会社に対して
会社の資産運用事業に関する権利義務を承継させることにした」ことを事由として、
みずほ信託銀行株式会社が公告を行っている、という状況であるわけです。
ところが、この3つの公告は、公告の根拠法令は全て異なっています。
「登録金融機関の吸収分割公告」の根拠法令は「金融商品取引法」です。
「信託業務を営む金融機関の吸収分割の公告」の根拠法令は「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」です。
「吸収分割公告」の根拠法令は「会社法」です。
資産運用事業(信託業務)を営んでいるみずほ信託銀行株式会社が他社に資産運用事業を承継させる、となりますと、
公告に関連し計3つの法律が絡んでくる、というわけです。
みずほ信託銀行株式会社は、このたび、金融商品取引法に基づき公告を行う義務があり、
さらに金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に基づき公告を行う義務があり、
さらに会社法に基づき公告を行う義務があるわけです。
しかし、考えてみますと、これら3つの公告というのは、
みずほ信託銀行株式会社が吸収分割を行うことを通知することを目的としているわけです。
いや、そもそも公告というのは全て、何らかの事実を通知するために行われるものでしょう。
そのことを考えますと、みずほ信託銀行株式会社が吸収分割を行うことを通知しなければならない相手というのは、
資産運用事業を営む上で始めから明確なのではないだろかと思います。
すなわち、資産運用に関する信託をみずほ信託銀行株式会社に行っている当事者(顧客)に対して
吸収分割を行うことを通知しさえすれば、それで事足りるわけです。
そうであるならば、みずほ信託銀行株式会社は、「公告」という手段ではなく、
「個別通知」という手段で吸収分割の事実を通知すれば、それで十分なのではないだろうか、と思ったわけです。
もちろん、各種法令に公告義務が定められている以上、
法令順守の観点から言えばみずほ信託銀行株式会社は当然公告を行わねばなりません。
しかし、ここでは、そもそも公告を行う目的というのは何なのだろうな、と私は思っているわけです。
「必要な相手に事実を通知する」というだけであれば、公告ではなく個別の通知の方がはるかに相手への情報到達力は高いわけです。
現実的なことを考えれば、官報に掲載されている全ての公告に漏れなく目を通すことは難しいですし、
日刊新聞紙に記載されている全ての記事を隈なく読むということは難しいわけですが、
自分に届いた郵便物の全てを詳細に読むことは十分可能であるわけです。
「必要な相手に事実を通知する」ことを目的としているのならば、むしろ「個別の通知」という手段を取るべきであるわけです。
さらに言えば、現実的なことを考えれば、「公告を行った」は「必要な相手に事実を通知した」とは異なると思うわけです。
そういったことを考えますと、各種法令では、公告ではなく個別の通知を行うよう、義務付けるべきなのだと思います。
通知を行う文書の中に、金融商品取引法及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に基づき通知をいたします、と記載し、
また、会社法に基づき個別催告をいたします、と記載するよう、各種法令では義務付けるべきなのです。
関係当事者全てに個別に通知をするよりも、日刊新聞紙に3つだけ公告を掲載する方が手間がかからず楽かもしれませんが、
しかしそれでは「必要な相手に事実を通知する」というそもそもの目的を現実には果たしていないと言わねばならないわけです。
「公告」は、「公に対して」告げる目的で行うのであって、「必要な相手に対して」告げる目的で行うわけではないのだと思います。