2016年7月12日(火)
2016年5月12日
住友電設株式会社
平成28年3月期
決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.sem.co.jp/ir/finance/pdf/1603-1.pdf
↓
2016年6月2日
住友電設株式会社
子会社における不適切な会計処理の判明に関する件
ttp://www.sem.co.jp/news/news/pdf/news174.pdf
2016年6月17日
住友電設株式会社
子会社における不適切な会計処理の判明に関する経過事項と今後の予定に関するお知らせ
ttp://www.sem.co.jp/news/news/pdf/news175.pdf
2016年6月28日
住友電設株式会社
平成28年3月期有価証券報告書の提出期限延長に関する承認申請書提出のお知らせ
ttp://www.sem.co.jp/news/news/pdf/news177.pdf
2016年6月29日
住友電設株式会社
平成28年3月期有価証券報告書の提出期限延長申請に係る承認のお知らせ
ttp://www.sem.co.jp/news/news/pdf/news178.pdf
>弊社は平成28 年3月期決算を平成28 年5月12
日に発表致しましたが、以降、
>当社の連結子会社であるインドネシア子会社P.T.タイヨー シナール ラヤ テクニク
において、
>不適切な会計処理がおこなわれていたことが判明致しました。
>社内調査による事実関係の解明に取り組んでおりますが、
>現時点で判明している内容及び今後の対応等につきまして下記のとおりお知らせ致します。
と書かれています。
話の流れを簡単に書きますと、住友電設株式会社は3月期決算の企業であるわけですが、
住友電設株式会社は2016年5月12日に「2016年3月期決算短信」を発表したわけですが、
その決算短信の発表後、2016年6月2日になって、連結子会社において不適切な会計処理が行われていたことが判明した、
という流れになっています。
住友電設株式会社は、本来ならば決算短信発表後2016年6月30日に有価証券報告書を提出する予定であったわけですが、
2016年6月2日に連結子会社において不適切な会計処理が行われていたことが判明したことを受け、
有価証券報告書の提出を遅らせる、と発表を行っているところであるわけです。
以上の流れを踏まえますと、2016年5月12日に発表した「2016年3月期決算短信」に記載している財務諸表から間違っている、
ということになるわけでして、正しい内容を記載した有価証券報告書の提出と共に、
発表済みの決算短信についても何らかの訂正を行っていかねばならないのではないか、と思われるかもしれません。
ところが、この点について、法理的な観点から考えてみますと、有価証券報告書は予定通り提出すればよい、
という結論になるように思います。
なぜならば、会社は、この場合、2016年3月31日時点において把握している事実に基づいて有価証券報告書を作成すればよいからです。
確かに、2016年6月2日になって連結子会社において不適切な会計処理が行われていた事実が判明したわけなのですが、
その判明した事実は、2016年3月31日を期末日とする財務諸表に反映させる必要は全くないわけです。
「2016年6月2日になって判明した事実」は、(本来の意味とは異なりますが)一種の「後発事象」である
という捉え方をしなければならないと思います。
「2016年6月2日になって判明した事実」については、注記なり別途適時情報開示なり行っていく必要はもちろんありますが、
少なくとも2016年3月31日を期末日とする財務諸表に反映させる必要は全くないわけです。
連結子会社において行われていた不適切な会計処理に関しては、2017年3月期の財務諸表において、
過年度の修正という形で正しい数値に修正を行っていくべきなのです。
他の言い方をすれば、「2016年3月31日を期末日とする財務諸表は既に確定している」のです。
間違っていても、確定しているのです。
確定している財務諸表を後になって修正するという考え方はないわけです。
間違っていた分は、後の期の財務諸表において修正をする、という修正方法しか行えないのです。
ですので、住友電設株式会社は、
2016年6月2日になって連結子会社において不適切な会計処理が行われていたことが判明したのだとしても、
当初の予定通り有価証券報告書(判明した不適切な会計処理は当期の財務諸表に一切反映させなくてよい)を提出すればよいのです。
住友電設株式会社の事例は、「有価証券報告書の提出が遅れること」についての事例であるわけですが、
有価証券報告書は従来、定時株主総会終結後に提出するスケジュールになっていました。
2010年2月3日
有価証券報告書の総会前提出について
(株式会社大和総研コラム)
ttps://www.dir.co.jp/library/column/100203.html
有価証券報告書には定時株主総会に報告した(承認を受けた)計算書類・事業報告の添付が要求されていた関係で、
有価証券報告書を例に出しますと、論点がややぼやけてしまい分かりづらくなりますので、
特段他の法定要件とは関連がない「決算短信」を題材にして一言だけ書きたいと思います。
株式会社あみやき亭は3月期決算の企業なのですが、何と期末日の翌日である2016年4年1月に決算短信を発表しています。
2016年4月1日
株式会社あみやき亭
平成28年3月期
決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.amiyakitei.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/04/d19bd20c90869dd10faf699456f71e0c.pdf
株式会社あみやき亭は、四半期決算も含め、毎年常に「期末日の翌日」に決算短信を発表しています。
一方で、3月期決算の企業は、5月15日までに決算短信を発表するよう証券取引所から要請されています。
株式会社あみやき亭と同じ3月期決算の企業の中には、2016年5月13日に「2016年3月期決算短信」を発表した企業もあるわけです。
それで、私が上記の議論の中で言いたいことというのは、
「仮に、株式会社あみやき亭が2016年5月13日に『2016年3月期決算短信』を発表したとしても、
その決算短信の記載内容は2016年4月1日に発表した決算短信と全く同じでなければならない。」
ということなのです。
逆から言えば、2016年4月1日に発表した2016年3月期決算短信と2016年5月13日に発表した2016年3月期決算短信とは内容が異なる、
というのは、論理的に考えておかしい、ということになるわけです。
どの企業にとっても、「2016年3月期決算短信」というのは1つしかないわけです。
発表日によって決算短信の内容が違う、などというのは、論理的に考えておかしいでしょう。
それなのに、「期末日以降になって判明した事実」を決算短信に織り込むとなりますと、
発表日によって決算短信の内容が違う、ということになっていまいます。
これは矛盾でしょう。
ですので、「期末日以降になって判明した事実」は決算短信には一切反映させなくてよいのです。
もちろん、「期末日以降になって判明した事実」については、注記なり別途適時情報開示なり行っていく必要はありますが、
少なくとも「期末日以降になって判明した事実」を基に財務諸表そのものに修正を加える、
ということは一切行ってはならないのです。
この場合、会社は、開示している財務諸表は虚偽であると分かっていても、そのまま開示しなければならないのです。
開示している財務諸表には虚偽の部分がある旨、適切・公正に開示しさえば、法理的には虚偽記載を行ったことにはならないのです。
Theoretically, financial statemetns are prepared
based on all of the facts
that a company has grasped as at a closing date.
Facts that a company newly
grasps after the closing date are not reflected into the financial
statements.
理論的には、財務諸表は、決算期末日時点において会社が把握している全ての事実に基づいて作成します。
決算期末日以降に会社が新たに把握した事実については、財務諸表に反映させないのです。
A company discloses its Brief Financial Results not on the basis of the
grased facts as at the disclosure date
but on the basis of the grased facts
as at the closing date.
And, a company submits its Comprehensive Report not
on the basis of the grased facts as at the submission date
but on the basis
of the grased facts as at the closing date.
For example, a balance sheet
stated in Brief Financial Results and a balance sheet stated in a Comprehensive
Report
are both one as at a closing date.
Theoretically, in case that a
company discovers some mistakes about its financial statements after the closing
date,
the company should disclose or submit its required legal documents
(Brief Financial Results or Comprehensive Report)
as at the closing date
notwithstanding the fact that the company acknowledges the financial statements
to be false.
会社は、発表日時点において把握している事実に基づいて決算短信を発表するのではなく、
期末日時点において把握している事実に基づいて決算短信を発表するのです。
また、会社は、提出日時点において把握している事実に基づいて有価証券報告書を提出するのではなく、
期末日時点において把握している事実に基づいて有価証券報告書を提出するのです。
例えば、決算短信に記載されている貸借対照表も有価証券報告書に記載されている貸借対照表も、
どちらも期末日時点における貸借対照表です。
理論的には、期末日以降に財務諸表に間違いがあることを会社が発見した場合には、
たとえその財務諸表は虚偽であることを会社が分かっていようとも、
期末日時点における法定書類(決算短信や有価証券報告書)を会社は発表したり提出したりしなければなりません。
As long as a company properly makes timely disclosure saying "These
financial statements are partly false,"
it's false but it's not false.
「この財務諸表には虚偽の部分がある」旨、会社が適切に適時開示を行いさえすれば、
それは虚偽なのですが虚偽ではないのです。