2016年7月2日(土)
深証券取引所、敵対的買収巡り指摘
■深証券取引所(中国) 敵対的な買収を仕掛けられている中国不動産最大手の万科企業(広東省)の大株主2社に対し、
両社が目的を共にした万科の株式の「共同保有者」に当たる可能性があると指摘した。
29日までに両社に回答を求める質問状を送付した。
同取引所は、万科の筆頭株主の宝能投資集団(保有比率24.29%)と、同2位の華潤集団系の華潤股有限公司(同15.24%)の
2社に対し、27日付で質問状を送った。29日までに両社に回答を求めている。
同取引所は、万科に対して敵対的な買収を仕掛けている宝能と、宝能に筆頭株主の座を奪われた華潤の両社が最近急接近し、
万科の経営を追い詰めているのではないかという疑問の目を向け、調査に乗り出した。
万科が17日発表した新たな大株主(深?市地鉄集団)を迎え入れる新経営計画には宝能と華潤がそろって反対姿勢を示したほか、
26日には両社は万科の経営陣の総退陣を求め、臨時株主総会の開催を要求した。
27日開催された万科の株主総会では、両社の反対で、採決が行われた5つの議案のうち、董事会(取締役会)報告など
2つの議案が否決されるなど、万科の経営の混乱に拍車がかかっている。
共同保有者は、株券を共同で取得したり、譲渡したり、議決権の行使を行うことについて合意をしている者を指す。
共同保有者である場合は、情報開示義務があり、それを怠った場合、
今後、宝能と華潤の両社の行動が厳しく制限される可能性がある。
中国の複数メディアは、27日の万科の株主総会以降、
宝能と華潤はあたかも別々の動きをしているように装うが、実は目的を共にした共同保有者で、
裏で動きを共にすることで万科の経営を支配しようとしているとの見方を示していた。(広州=中村裕)
(日本経済新聞 2016/6/29
22:06)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDX29H16_Z20C16A6FFE000/
2016年7月2日(土)日本経済新聞
■万科企業(中国の不動産最大手) 2社、「共同保有者」否定
(記事)
万科の大株主2社、「共同保有者」否定
■万科企業(中国の不動産最大手) 同社が敵対的買収を仕掛けられている件について、
深証券取引所はこのほど万科の大株主2社に対し「両社は万科株の『共同保有者』か」と書面で質問したが、
両社はそろって否定した。
同取引所が質問状を送ったのは、万科の筆頭株主の宝能投資集団(保有比率24.29%)と、
同2位の華潤集団系の華潤股有限公司(同15.24%)の2社。
両社には、協力して万科の経営を追い詰めているという疑いの目が向けられていた。
同取引所は、万科に対して敵対的買収を仕掛けている宝能と、宝能に筆頭株主の座を奪われた華潤の両社が最近接近し、
裏で行動を共にして万科の経営を協力して追い詰めている実質的な「共同保有者」に当たるのではないかという疑問の目を向け、
調査に乗り出していた。
共同保有者とは一般に、株券を共同で取得したり、譲渡したり、議決権の行使を行うことについて、
事前に合意をしている複数の保有者のことを指す。
宝能は、万科の経営陣の総退陣を求めていることについても回答し、
「万科の現在の経営が混乱しており、それを正すため」とした。(広州=中村裕)
(日本経済新聞 2016/7/1
21:01)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDX01H1W_R00C16A7FFE000/
「ゼミナール 金融商品取引法」 宍戸善一、大崎貞和 著 (日本経済新聞社)
第7章 株式公開買付け(TOB)をめぐる規制
1. 大量保有報告制度
(2) 大量保有報告書と変更報告書
「スキャン」
「共同保有者」の定義については、紹介している記事にも説明がある通りなのですが、
特に「共同保有者」が問題になる場面というのは、「議決権の行使について合意している」という場面ではないかと思います。
形式上はどちらも半数未満の株式しか所有していないのだが、2人合わせれば所有株式数が過半数に達する、
というような場合ですと、2人を「共同保有者」と見なし、
金融商品取引法上は、あたかも1人で過半数を所有しているかのように取り扱う、というふうに考えるわけです。
紹介している教科書の脚注には、
>保有者の配偶者や、保有者である法人の親子会社や兄弟会社などは、
>株式の取得や議決権行使についての合意がなくても共同保有者とみなされます。
と書かれています。
一番典型的な例を言えば、ある上場企業の株式を、夫が4.9%、妻も4.9%保有している場合は、
夫も妻もどちらも、「共同保有者の保有分を合わせれば、上場企業の株式を私は9.8%保有しています。」
という旨の大量保有報告書を提出する義務があるわけです。
また、大量保有報告書の提出後、例えば妻が売買等によって株式等の保有割合に上下1%以上の変動が生じた場合には、
妻だけではなく夫も、5営業日以内に変更報告書を提出することが求められると思います。
妻の株式の売買の結果、夫が提出すべき変更報告書を提出しない場合には、金融商品取引法の定めにより、
夫には刑事罰が課されるほか、課徴金納付命令の対象となると思います。
自動的に共同保有者と見なされる以上、「株式の売買は妻が行ったことであり、私は株式の買い増しは行っていない。」と
夫がいくら主張しても、それは通らないわけです。
金融商品取引法上は、夫も株式を買い増した、というふうに見なされるわけです。
以上のように書きますと、やはり何かおかしいなと感じると思います。
妻が行った株式の売買を、なぜ夫も共同で行ったかのように取り扱われるのか、という問題があるわけです。
以上の議論は、現行の金融商品取引法の規定に沿った解釈であるわけですが、
「共同保有者」という考え方については、理論的には議論の余地があると思います。
確かに、「共同保有者」に関する定めがないと、親子会社や兄弟会社に分散して株式を保有するようにすれば、
大量保有報告書の提出義務を潜脱的に回避することができます。
一般投資家への情報開示という観点から言えば、「共同保有者」という考え方に基づく大量保有状況の開示というのは、
確かに意味があることなのかもしれません。
ただ、「共同保有者」という考え方には概念的におかしな点もあると思います。
それは、共同保有者の一方は自分自身の利益を最大化しようとしますし、
共同保有者の他方もまた自分自身の利益を最大化しようとする、という点です。
こう書きますと、どちらも自分の利益を最大化しようとするのは当たり前ではないか、
どちらも自分の利益を最大化しようとするからこそ、協力して共同戦線を張るのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、それぞれが自由意志に基づいて行動を取るという状況を想定してみますと、
協力して共同戦線を張ることが必ずしも自分の利益を最大化させることにつながるとは限らないわけです。
「船頭多くして舟山に上る」ということわざがありますが、結局のところ、
自分の利益が最大化される意思決定・行動と共同保有者の利益が最大化される意思決定・行動とは、
常に一致するとは限らないわけです。
議決権の行使に関する合意であれば、両者は議案を見て初めて議決権の行使について協調するよう合意できるわけです。
議案も見ていないのに、事前に議決権の行使について合意をすることなどできないでしょう。
つまり、現実には、事前に議決権の行使について合意をするということ自体が不可能である(概念的にあり得ない)と思うわけです。
株式の売買についても同じであり、自分の利益が最大化される株式の売買と共同保有者の利益が最大化される株式の売買は、
常に一致するとは限らないわけです。
事前に株式の売買について合意をするということ自体が不可能である(概念的にあり得ない)と思うわけです。
以前も書きましたが、法人をたくさん設立し、法人に株式を分散させて保有させる、という潜脱的な行為に関しては、
「共同保有者」という考え方を用いるべきだと思いますが、
自然人同士や資本関係のない独立した法人同士の場合については、「共同保有者」という考え方を用いるべきではないと思います。
なぜなら、概念的に言えば、法人の意思決定は株主が行うのに対し、自然人の意思決定は他の誰かが行うわけではないからです。
他人と協力して共同戦線を張れるのは、極めて局地的な場合だけだと思います。
「同じ議決権行使を行う者」と金融商品取引法上定義されてしまいますと、今度は、
共同保有者と異なった議決権行使はしてはならない、という考え方すら出てくるように思います。
本来的に異なった議決権行使を行えるのに、「同じ議決権行使を行う者」と金融商品取引法で定義すること自体がおかしいわけです。
紹介した教科書では、「共同保有者」という考え方どころか、大量保有報告制度の意義にすら疑問を投げかけています。
考えてみますと、株式会社では、「誰が株主か?」は問われないはずです。
株式を買い占めるにしても、他の誰かが株式を買わないことには、利益は得られないわけです。
ただ単に株式を買い占めたというだけでは、利益は得られないわけです。
株式を買い占めて会社を清算させた方が利益になるというのなら、その株式の買い占めもまた立派な株式投資ではないでしょうか。
本質的には、会社の業績が株式の価値に影響を与えるのであって、「誰が株主か」は理論的には株式の価値には全く無関係なのです。
On the principle of law, persons can share one objective, but they can't share one object.
法理的には、人は目的を共にすることはできますが、1つの目的物を共有することはできないのです。
On the principle of law, a decision on an object is made based on the
right of ownership.
法理的には、目的物に関する意思決定は、所有権に基づいて行われます。
One party of a joint holder tries to mazimize his own intersts
and the
other party of the joint holder also tries to maximize his own interests.
共同保有者の一方は自分自身の利益を最大化しようとしますし、
共同保有者の他方もまた自分自身の利益を最大化しようとするのです。