2016年5月31日(火)



2016年5月31日(火)日本経済新聞
新規制、破綻時に債権者ら負担 欧州銀「負債の8%以上に」 税金救済巡り単一処理委
(記事)


 

European Banking Authority (EBA)
Regulatory Technical Standards on minimum requirement for own funds and eligible liabilities (MREL)
ttps://www.eba.europa.eu/regulation-and-policy/recovery-and-resolution/
regulatory-technical-standards-on-minimum-requirement-for-own-funds-and-eligible-liabilities-mrel-

These draft Regulatory Technical Standards (RTS) aim to specify the criteria
to set the minimum requirement for own funds and eligible liabilities (MREL)
laid down in the Bank Recovery and Resolution Directive (BRRD).
They clarify how the institution’s capital requirements should be linked to
the amount of MREL needed to absorb losses and, where necessary, recapitalise a firm after resolution.
Finally, the RTS propose that for systemic institutions,
resolution authorities should consider the potential need to be able to access the resolution financing arrangement
if a resolution relying solely on the institution’s own resources is not possible.


【参謀訳】
欧州銀行監督機構(EBA)
自己資本及び適格負債に課せられる最低条件に関する規制当局からの技術的基準

以下の規制当局による技術的基準(RTS)の草案は、自己資本及び適格負債に課せられる最低条件(MREL)を
銀行救済及び問題解決に関する指導(BRRD)の中に定められるよう、基準を明記することを目的にしています。
これらの草案では、金融機関の資本に関する必要条件は、
損失を吸収するために必要な、また、必要な場合は問題解決後銀行に資本を再投入するために必要なMRELの金額と
どのように関連していなければならないのかについて明確に説明しています。
最終的には、RTSは、金融機関の全てを対象として、
金融機関自身の財源にのみに頼る問題解決は可能ではない場合は、問題解決当局は、
問題解決のための資金調達の準備を行っていけるように将来必要となる金額を熟慮しなければならない旨、提案しています。

 



【コメント】
銀行破綻時に、銀行に投入する公的資金の金額をできる限り少なくするために、
自己資本を積み増したり弁済順位の低い債券を発行するよう、
金融規制当局が金融機関に対し新たな資本規制を課そうとしているとのことです。
この種の新規制については以前もコメントを書いたかと思います。
結論だけ言えば、これは全く意味のない資本規制です。
公的資金の投入というのは、まさに金融機関の資本を増強することを目的としています。
しかし、資本がどれだけ痛んでいるかは、資本そのものでは決まりません。
資本がどれだけ痛んでいるかは、実は資産の側で決まるのです。
ですので、以前も書きましたが、金融機関に資本規制を課したいのならば、
資本規制ではなく、実は「資産規制」を課さねばならないのです。
貸出先を慎重に精査した上で貸し出すように行政指導を行うであったり、
融資の審査に問題が生じるようであれば、窓口での貸し出しそのものを行わないように行政指導を行うようにするべきなのです。
銀行倒産時の救済云々の話に限らず、会社がどれだけ健全か・資本を正常な状態に戻すためにはどれだけの資金が必要かは、
資本ではなく、実は資産できまるのです。
資本そのものは、損失を計上した結果減少するというだけの現象しか呈しません。
つまり、厳密に言えば、資本が痛むという会計現象は実はないのです。
しかし、資産は、資産毎に個別に損失を計上することになります。
資産は資産毎に痛みます。
ですので、いかに健全な資産を経営上保有するか、により、経営の健全性や資本の健全性は決まるのです。
結論を繰り返しますが、銀行の財務上の健全性は、資本ではなく、資産で決まるのです。

 



以上の議論を、貸借対照表を用いて説明を試みてみました。
参考にしていただければと思います。


「つまり、『資産の部』で決まるということです。」

(PDFファイル)

 

(キャプチャー画像)




In a liquidation procedure, cash in a company is determined only by assets of the company,
not by debts nor equity of the company.

清算手続きにおいては、会社内にある現金は会社財産のみによって決まります。
会社の負債や資本によって決まるわけではありません。

 

An equity ratio has nothing to do with assets of a company in liquidation.

自己資本比率は、清算時の会社財産とは関係がないのです。