2016年5月25日(水)
【コメント】
法人税法には、負債の弁済順位に関する定めはありましたでしょうか。
もしあるのなら、それはそれで、法人税法の定めに従った法定弁済額というのが各負債毎に決まるわけなのですが、
もしないのなら、弁済順位を付けた負債の弁済を行うと、法定弁済額と実際の弁済額との差額は寄付金になります。
法人税法に負債の弁済順位に関する定めがないままに弁済順位を付けた負債の弁済が行われた場合、
各債権者の法人税法上の取り扱いはどうなるのかについて考えてみました。
基本的には、次の資料を見ていただければ論点となっている相違点は分かるかと思います。
法人税法に負債の弁済順位に関する定めがない場合は、負債の弁済順位に関する「会社と債権者との間の契約」は、
会社清算という場面では、法理的には清算法人には法人税(法人所得)は関係なくなる(法人をパススルーする)ため、
結果的には、劣後債権者と優先債権者(さらには株主(残余財産分配請求権者))との間の寄付金の授受(債権者間の相対取引)、
という形で現れる(そのような捉え方になる)、ということになると思います。
負債の弁済順位の問題点を簡単に言うと、所得額を任意に決めてはいけないように、弁済額を任意に決めてはならないわけです。
資料では、株主(残余財産分配請求権者)に対する残余財産の分配については度外視しました。
株主の税務上の取り扱いについてですが、一言で言えば、株式取得価額の全額が税務上損金となります。
ただし、株主が複数の場合(株式取得価額が異なる場合)は、株主毎に損金額は異なることになる、という点には注意が必要です。
Seniority is composed of donations from junior creditors to senior
creditors.
(負債の弁済順位というのは、劣後債権者から優先債権者への寄付金で成り立っているのです。)
「PDFファイル」
「キャプチャー画像」
平時であろうが清算時であろうが、債権の弁済額は、当事者間の合意によってではなく会社法に基づき、常に一意に決まります。
Can a person who has a receivable whose face value is 100 yen receive
more than 100 yen at the repayment?
額面金額100円の債権を持っている人が、弁済時に100円以上受け取ることなどできるでしょうか。
Private mutual consent has no effect on the legal amount of a
repayment.
私的な合意は、法定弁済額に影響を与えないのです。