2016年5月23日(月)


2016年5月21日(土)日本経済新聞
光通信、純利益21%増 前期
(記事)


2016年5月20日
株式会社光通信
平成28年3月期 決算短信
ttp://www.hikari.co.jp/ir/press_release/file/20160520_1.pdf

 

2016年5月20日
株式会社光通信
国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に関するお知らせ
ttp://www.hikari.co.jp/ir/press_release/file/20160520_2.pdf

 

2016年5月20日
株式会社光通信
剰余金の配当に関するお知らせ
ttp://www.hikari.co.jp/ir/press_release/file/20160520_3.pdf

 


【コメント】
記事には、株式会社光通信が2017年3月期から国際財務報告基準(IFRS)を任意適用することに関して、

>国際会計基準では携帯電話端末の代理店の売上高が売上原価を除く純額のみの計上となる。
>見かけ上1500億円程度減るという。

と書かれています。
論点を一般化して言えば、売上高を純額表示するべきかそれとも総額表示するべきか、となろうかと思います。
決算短信には、携帯電話端末の販売について、株式会社光通信は「メーカーの販売代理店事業」を行っていると書かれています。
また、同じような文脈になりますが、

>当社グループは、通信事業者やメーカー等の販売代理店業務を行う他に、
>主に法人事業において、自社サービスの販売も行っております。

とも書かれています。
株式会社光通信は、携帯電話端末の販売については「販売代理店」という位置付けで事業を手がけているようです。
さらに、携帯電話販売に関連して、「実質0円端末」(の販売を従来は行っていた旨)という言葉も書かれています。
「実質0円端末」の販売を行えるということは、やはり「販売代理店」という位置付けで事業を手がけているのでしょう。
要するに、何が言いたいのかと言えば、携帯電話端末の販売については、
株式会社光通信は、商品を仕入れて販売したりはしておらず、あくまで販売代理店として商品の販売を手がけているだけだ、
という点を強調したいわけです。
商品を仕入れて販売する場合と販売代理店として商品を販売する場合との差異については、法律面と会計面から説明できます。
まず、法律面の差異とは、所有権の有無です。
商品を仕入れて販売する場合には、商品の所有権は会社にあります。
一方、販売代理店として商品を販売する場合は、商品の所有権はメーカーやキャリアにあり、少なくとも会社にはありません。
そして、会計面の差異とは、まさに紹介している記事に記載があるように、売上高として認識する金額です。
商品を仕入れて販売する場合には、販売の実現に伴い、商品の取得原価は売上原価を構成しますし、
また、販売代金の全てが売上高を構成します。
通常は取得原価以上の価格で販売を行うわけですから、売上高>売上原価(商品の取得原価)、となります。
一方、販売代理店として商品を販売する場合は、販売が実現しても、売上や売上原価に相当する収益や費用は認識しません。
「販売代理店」という位置付けで商品の販売を行った場合は、契約内容にもよるでしょうが、
基本的には、メーカーやキャリアといった販売の委託を行っている相手方から受け取る手数料のみが売上高になります。
顧客から受け取った商品の販売代金は、販売代理業務上一時的に受け取るだけであり、
そのまますぐにメーカーやキャリアといった販売の委託を行っている相手方へ送金するだけになります。

 



ですので、本来的な話をすれば、売上高の計上方法が純額表示になるのか総額表示になるのかは、
適用する会計基準によって変わるのではなく、販売形態によって一意に決まる話なのです。
株式会社光通信は従来から「販売代理店」という位置付けで携帯電話端末の販売を行ってきたのなら、
売上高の計上は、本来は従来から純額表示でなければならなかったわけです。
顧客から受け取った商品の販売代金を会社の売上高に含めるのは間違いであったわけです。
また、そもそも代理で販売を行っていく商品は会社は仕入れてはいないわけです。
つまり、その商品の取得原価はそもそも0円であるわけです。
ですから、理論上も実務上も、代理で販売した商品の売上原価の金額は分からない(算定されようがない)はずなのです。
株式会社光通信は今まで、一体どうやって売上原価を算定していたのでしょうか。
「顧客から受け取った商品の販売代金−受け取った委託販売手数料」という逆算でもして、
架空の売上原価を算定していたのでしょうか。
そのような逆算を行って売上原価を算定しても、売上総利益ベースでは金額としては同じにはなるでしょうが、
商品を仕入れて販売する場合と販売代理店として商品を販売する場合とでは、
収益や費用の認識方法、そして、利益の計算過程が根本的に異なるわけです。
売上総利益ベースの金額が同じになればよい、という問題では決してないわけです。
商品を仕入れて販売する場合、
商品の仕入れにより商品の所有権を取得した、だから、商品の取得原価が貸借対照表に計上されるわけです。
そして、仕入れた商品の販売の実現により商品の所有権が販売先に移転した、だから、
貸借対照表に計上されている商品の取得原価が売上原価に振り替えられ、
そして、商品の所有権が販売先に移転した(商品を販売先に引き渡した)ことの対価として受け取った販売代金が、
売上高として認識される、という一連の流れがあるわけです。
販売代理店として商品を販売する場合には、この一連の流れは一切ありません。
販売代理店として商品を販売する場合にあるのは、
メーカーやキャリアといった販売の委託を行っている相手方から受け取る手数料のみなのです。
販売代理店として商品を販売する場合には、顧客から受け取る商品の販売代金や
メーカーの製品製造原価やメーカーからの卸値などは一切関係ないのです。
他の言い方をすれば、ある金額が売上原価を構成するとは、
その金額は売上原価を構成する前はある棚卸資産の取得原価を構成していた、という意味であり、
会社はその棚卸資産の所有権を現に有していた、という意味なのです。
貸借対照表の棚卸資産は所有権を取得したことの結果であり、
損益計算書の売上原価と売上高はその棚卸資産の所有権を譲渡したことの結果なのです。
売上原価はその譲渡した棚卸資産の取得原価を表し、そして、売上高はその棚卸資産の譲渡の対価の金額を表しているのです。

 

In the case of what you call a consignment sale, the amount of sales of a seller is a commission only.

いわゆる委託販売の場合は、販売業者の売上高の金額は委託販売手数料のみなのです。