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2016年4月26日(火)
2016年4月26日(火)日本経済新聞
■メトロ・パシフィック・インベストメンツ(フィリピンの公益事業運営、MPIC) 値上げ遅れで政府を提訴
(記事)
MPIC、値上げ遅れで政府を提訴
■メトロ・パシフィック・インベストメンツ(フィリピンの公益事業運営、MPIC)
傘下の有料道路運営会社が値上げの認可が遅れて売り上げが30億ペソ(約70億円)減ったとして、フィリピン政府を提訴した。
道路運営会社のマニラ・ノース・トールウェイズ(MNTC)は、2012年に定期的な料金改定を申請、
13年の1月から値上げを実施する予定だったが、フィリピン政府の通行料規制委員会(TRB)が認可しなかったため
実施できていないとしている。
TRBはコメントを控えたが、以前、値上げに関する最高裁の判決から生じた手続き上の問題が遅れの原因だと説明していた。
MNTCは5日、証券取引所への届け出の中で「法的要件を満たし、適切な嘆願書を提出し、
TRBの要請で示談の期間を90日以上延ばしたにもかかわらず、MNTCはTRBから具体的な解決提案を受けていない」という。
MPIC傘下の別会社、メイニラド・ウオーター・サービシズと、同国の複合企業アヤラ・コーポレーション傘下の
マニラ・ウオーターも、政府が料金改定を却下したことを受け仲裁を申し立てている。(マニラ=クリフ・ベンゾン)
(日本経済新聞 2016/4/25
21:59)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDX06H0S_V20C16A4FFE000/
しかし、そもそもの話をすると、国民の生活のために政府が競争を制限しているわけです。
ですので、料金に関しては、政府からの認可ありき(政府からの認可が事業の前提)、であるわけです。
この事例の場合は政府からの認可が遅れた理由なども鑑みないといけないのかもしれませんが、
事業運営上は政府からの認可が遅れたことも含めて認可だと思うしかないように思います。
ですので、この場合、現実にはその料金によるサービス提供のみがあり得た、すなわち、現実にはその売り上げしかあり得なかった、
と考えるしかないと思います。
現実にはその料金によるサービス提供のみがあり得た、すなわち、現実にはその売り上げしかあり得なかった、、と考えれば、
この公益事業運営会社が計上した売り上げに、差額はない、すなわち、
政府は売り上げの減少額をこの公益事業運営会社に補填する必要はない、と考えるべきでしょう。
また、今日の論点について理解をさらに深めるならば、この事例の逆の場合を考えてみるとよいでしょう。
すなわち、この公益事業運営会社は政府に料金の値下げを申請したのだが、
政府からの認可が予定よりも遅れてしまい値下げができなかった、という場合を考えてみるとよいでしょう。
この場合、この公益事業運営会社の売り上げは、予定通り値下げをした場合よりも大きくなっているわけです。
では、その時、この公益事業運営会社は過大となった売り上げ(差額相当分)を政府に納付するでしょうか。
おそらくしないでしょう。
自分が儲けている時は何も言わず損をしたように思える時だけ文句を言うのは少し違うのではないかと思いました。
また、この記事のように、公益性が高いとされる、政府からの認可が前提の消費財の価格というのは、
一般的な理論は当てはまらないことが多いと思います。
仮に、値上げや値下げの認可が遅れた場合、差額に相当する分をどのように考えるか・取り扱うべきかについては
現実には非常に難しい部分があると思います。
上記の議論では、価格の決定権は政府にあることを理由に、値上げの認可が遅れた場合は政府から差額の補填を受け、
値下げの認可が遅れた場合は政府へ差額の納付を行う、という想定をしたわけですが、
公益事業運営会社は消費者から提供している財やサービスの対価を受け取る、という点に着目しますと、
政府からの値上げの認可が遅れた場合は、遅れた期間の分、消費者に価格転嫁する(その期間の分、二重に値上げをして調整する)、
政府からの値下げの認可が遅れた場合は、遅れた期間の分、消費者に価格転嫁する(その期間の分、二重に値下げをして調整する)、
という考え方もあるように思いました。
現実には、差額の調整のため一定期間だけ価格転嫁をする、ということについても政府からの認可がいる、
ということになってしまうかもしれませんが、1つの考え方としては、上記のような差額調整方法もあるなと思いました。
Then, the company will deliver up its proceeds to the government
if the
approval of a cut in the fare is delayed, won't it?
それなら、この会社は、道路料金の値下げの認可が遅れた場合は、収益金を政府に納付するのでしょうね。
2016年4月26日(火)日本経済新聞
■オシム・インターナショナル(シンガポールの健康機器大手) 投資家に差額補填の意向
(記事)
オシム・インターナショナル、投資家に差額補填の意向
■オシム・インターナショナル(シンガポールの健康器具大手)
ロン・シム最高経営責任者(CEO)はMBO(経営陣が参加する買収)の
最終買い取り価格より安く株式を売却していた投資家に差額を埋め合わせする意向だ。
買い付けを主導するシム氏の投資目的会社、ビジョン・スリーは18日に
「4月5日にシンガポール証券取引所で1.39シンガポールドルを下回る取引価格でオシムの株式を売却した全株主に対して
善意に基づき支払いを行う」意向を明らかにした。
また、「売却先がビジョン・スリーであるか第三者であるかに関わらず、影響を受けたすべての株主に追加の支払いを行う」
とも付け加えた。シム氏は約15万シンガポールドル(約1220万円)相当の金額を補償として支払うことになる。
業績不振が続いているため、同氏は自らが創業したオシムを非上場化したい考えだが、プロセスは順調には進んでいない。
同氏は先月末にTOB(株式公開買い付け)に乗り出した。
当初の買い取り提示価格は1株当たり1.32シンガポールドルだったが、後に1.37シンガポールドルに引き上げる結果になった。
その後、ビジョン・スリーが「不注意に」1.38シンガポールドル~1.39シンガポールドルで多くの株式を買い取ったことが
明らかになった。同社は、一部の売り主から提示価格より高値で株式を買い取ったことから、シンガポールのTOB法規に従い、
最終提示価格を全株主に対して1.39シンガポールドルに引き上げた。
オシムは19日に第1四半期の純利益が市場全体での売り上げ減少により、前年同期比42%減の780万シンガポールドルになったと
発表した。売上高は7.6%減の1億3830万シンガポールドルだった。主要市場の北アジアでは売り上げが若干伸びたが、
全体の減少を埋め合わせるには不十分だった。(シンガポール=ジャスティナ・リー)
(日本経済新聞 2016/4/25
22:02)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDX21H0S_V20C16A4FFE000/
簡単に要約しますと、ビジョン・スリーという会社がオシム・インターナショナル株式に対し公開買付を実施しているわけですが、
どうやらビジョン・スリーは公開買付実施中に市場内でオシム・インターナショナル株式を取得した、ということのようです。
ビジョン・スリーはいわゆる別途買付を行った、ということなのだと思います。
当初、買付価格は1.37シンガポールドルであったわけですが、
別途買付では1.38シンガポールドル~1.39シンガポールドルで多くの株式を買い取った、とのことです。
シンガポールの公開買付の法規では、別途買付を行った場合は、
買い取った最も高い価格に買付価格を引き上げなければならない、と定められているようです。
それで、現在の買付価格は1.39シンガポールドルに設定されているようです。
そのことを記事では、”最終提示価格を全株主に対して1.39シンガポールドルに引き上げた。”と書かれてあるわけです。
それでこの別途買付に関連して、ビジョン・スリーが別途買付を行ったのは4月5日であったわけですが、
市場には4月5日に1.39シンガポールドル未満でオシム・インターナショナル株式を売却した投資家がいたので、
差額を補填するためにその投資家に対し差額を支払う、とビジョン・スリーは言っているわけです。
論点としては、ビジョン・スリーが支払う差額はどのような取り扱いとなるのか、という点になると思います。
結論を言えば、ビジョン・スリーが投資家に対して支払う差額は、全て寄付金、という取り扱いになると思います。
つまり、投資家に対して支払う差額はビジョン・スリーにとって株式の取得原価を構成しない、ということです。
その理由は、「株式の取得・取得の対価の支払い」という一連の取引は既に完了しているからです。
確かに、”条件付取得対価”という考え方は現行の会計基準にもあるわけですが、
”条件付取得対価”は、株式取得の前に、当事者間で事前に対価の支払い条件を定めておかなければならないと思います。
株式取得の前に、当事者間で事前に対価の支払い条件を定めておけば、追加的な対価の支払いは対価の後払いの一種と見なせる
と思いますが、4月5日にオシム・インターナショナル株式の売り手は1.38シンガポールドルでの売却に合意をしたわけですから、
それで取引として完了であるわけです。
逆から言えば、”条件付取得対価”に基づく取引の場合は、株式の売り手は、当初の対価だけでは対価として不十分だ、
条件が発動したのだから追加的に対価を受け取って初めて合意をした契約に従った対価を受け取ったことになるのだ、
という考え方になるわけです。
株式の買い手は、追加的に対価を支払って初めて合意をした契約に従った対価を支払ったことになるのですから、
その追加的に支払った対価は株式の取得原価を構成するわけです。
ビジョン・スリーと投資家とは4月5日、特段追加的な対価の支払いについて合意はしていないわけですから、
ビジョン・スリーが投資家に対して支払う差額は、全て寄付金、という考え方になると思います。
詳しい言葉の意味は分かりませんが、”善意に基づき”という言葉は寄付であるというニュアンスなのかもしれません。
一方、”条件付取得対価”に基づく追加的な対価の支払いは、当初の債務の履行です。
当初の債務の履行だからこそ、追加的な対価の支払いは株式の取得原価を構成するのです。
記事には、ビジョン・スリーは、
>売却先がビジョン・スリーであるか第三者であるかに関わらず、影響を受けたすべての株主に追加の支払いを行う
と書かれていますが、投資家の株式売却先がビジョン・スリー以外の第三者である場合は、
その支払いはビジョン・スリーにとって完全に寄付以外の解釈はできないと思います。
投資家の株式売却先がビジョン・スリー以外の第三者である場合は、
ビジョン・スリーはもはや”追加的に”対価を支払うわけですらないでしょう。
ビジョン・スリーはその投資家にそもそも1円も対価を支払っていないわけです。
ビジョン・スリーはその投資家から株式を1株も取得してはいないわけですから、それは当たり前のことでしょう。
投資家の株式売却先がビジョン・スリー以外の第三者である場合は、今日の議論においてはもはや論外と言っていいと思います。
投資家の株式売却先がビジョン・スリー以外の第三者である場合というのは、別途買付とは何の関係もない論点であるわけです。
このたびビジョン・スリーが発表した”追加的な対価の支払い”は全て、寄付という取り扱いになると思います。
ところで、元祖民法理論に基づけば、”条件付取得対価”という考え方は全く行えないと思います。
なぜなら、元祖民法理論においては、「目的物の引き渡しと同時に支払う対価のみ」を目的物の対価と定義しているからです。
”今後、次のような条件が発動した場合は”という考え方自体を元祖民法理論では行えないわけです。
同様に、たとえ当事者間で事前に合意をしていても、元祖民法理論では掛取引は行えなかった、ということになると思います。
たとえ、当事者間で事前に現代でいう”条件付取得対価”について合意を行っていても、
「目的物の引き渡しの後に支払う対価」については、全て寄付という考え方になっていたと思います。
元祖民法理論では、「目的物の対価」の定義そのものが、現代の考え方とは大きく異なっていた、ということだと思います。
The additional consideration of an object which a buyer pays to a seller
is no more than a donation.
買い手が売り手に追加的に支払う目的物の対価は、寄付に過ぎません。