2016年4月14日(木)
2016年4月14日(木)日本経済新聞 公告
発行価格等の決定に関するお知らせ
ケネディクス商業リート投資法人
投資主総会開催及び基準日設定公告
日本ロジスティクスファンド投資法人
(記事)
【コメント】
記事の趣旨・内容は、昨日のロイターの記事と同じです。
記事についてのコメントは基本的には昨日書いた通りですが、少しだけ追記をしたいと思います。
記事には、
>決算短信は監査が不要であることを明確にして、迅速な開示につなげる。
と書かれています。
これは、簡単に言いますと、決算短信は監査を受けていなくてよいので早期に開示するべきだ、
と金融審議会は言っているということです。
昨日紹介した「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)−建設的な対話の促進に向けて−」には、
>決算短信については、約4割の上場会社が監査後に公表しているなど、
>迅速に公表すべき決算の内容が既に定まっているにも関わらず決算短信が公表されていない場合も多いのではないかとの指摘がある。
と書かれています(6/18ページ)。
金融審議会としては、上場企業に対し、決算短信をできるだけ早期に開示するよう、求めているわけです。
同報告書の同じページには、
>決算の内容が定まったときに、直ちにその内容を開示することが義務付けられている。
とあります。
おそらく、証券取引所の上場規則に、決算の内容が定まったときに、直ちにその内容を開示するよう、
定められている(上場企業に義務付けている)のだと思います。
現時点で義務付けられていることではありますが、遵守していない上場企業が多数ありますので、
金融審議会としては今回改めてその点を明確化している、ということなのだと思います。
現在、決算短信に記載されている財務諸表(現行制度では上場規則上は連結財務諸表のみ)は
まだ監査法人による会計監査を受けていないものである、ということが前提になっていると思います。
ただ、同報告書によると、約4割の上場会社の決算短信は実は監査法人による会計監査が既に完了しているものであるとのことです。
私としては、むしろそのことの方が意外でした。
どの決算短信を見ても、”監査法人による監査はまだ実施中です”という旨の注記が記載されているように思います。
ただ、そもそも決算短信は未監査の状態で発表してよいものなのか、という、
この報告書の記載内容を根本的に否定してしまう考え方も実はあると思います。
この財務諸表は監査を受けていませんと言っているということは、
この財務諸表は間違っているかもしれませんと言っているようなものなのです。
財務情報の早期開示は大切なことですが、間違っているかもしれない情報をわざわざ開示するのもおかしいわけです。
端的に言えば、決算短信に記載する財務諸表は監査済みのものでなければならない、というふうに考えるべきでしょう。
少しだけ関連する論点になりますが、同報告書には、上場企業からの指摘として、
>決算短信の記載内容が多く、「決算長信」となっていることから、その記載内容を合理化すべきではないか
と書かれています(4/18ページ)。
決算短信が「決算長信」となっている理由は、財務諸表の注記事項が極めて多くなっているからだと思います。
かと言って、現代の会計基準は極めて複雑です(行っている会計処理が極めて多い)ので、
注記事項なしでは、財務諸表を読み解くことはできません。
財務諸表だけを開示されても、投資家には分かりづらいというより分からないと思います。
ですので、決算短信が「決算長信」になってしまうのは現代の会計基準の複雑さを鑑みれば、致し方ないことだと思います。
ただ、財務諸表の注記事項は、日々の会計処理の結果を表しているわけですから、
どのような会計処理を行ったのかをそのまま書けばよいだけであり、
注記を記載するために特段に作文をしなければならないなどということはないわけです。
決算短信の分量が多いか少ないかには全く意味はないでしょう。
それよりも、財務諸表が監査を受けているか否かの方がはるかに重要であるわけです。
間違っているかもしれない詳細な財務諸表と注記よりも、
監査を受けている簡潔な財務諸表と注記の方が投資家にとってははるかに有用であると思います。
どんなに早く財務諸表を開示しても、間違っているのでは意味がありません。
たとえ早期開示が一番に求められる決算短信であっても、監査を受けた財務諸表のみを開示するようにするべきだと思います。
Brief financial resulets presuppose
that investors demand that brief
financial results should be disclosed as early as possible even though they are
wrong.
決算短信は、間違っていてもいいから早く開示してくれという投資家からの需要を前提としています。
(直訳:「決算短信は、たとえ間違っていようとも決算短信はできるだけ早く開示されるべきだ
と投資家が要求するということが前提になっています。」)