2016年4月11日(月)



昨日の株式会社フェリシモのコメントに一言だけ追記します。
株式会社フェリシモは本日2016年4月11日(月)から公開買付を開始します。
本日2016年4月11日(月)が公開買付の開始日なのです。
ところが、本日2016年4月11日(月)は日刊新聞の休刊日なのです。
つまり、株式会社フェリシモは開始日である2016年4月11日(月)時点ではまだ公開買付の公告を行っていないわけです。
おそらく、明日2016年4月12日(火)の日本経済新聞には、
株式会社フェリシモが2016年4月11日(月)から開始する公開買付についての公告が掲載されていると思いますが、
金融商品取引法上の義務(法定開示)の点から言えば、
本日2016年4月11日(月)の時点では投資家は株式会社フェリシモが本日から開始する公開買付のことをまだ知らない、
という状態であるわけです。
それで昨日は、これは買付期間が「19営業日」の公開買付だ、と書いたわけです。
では、金融商品取引法上の義務(法定開示)に加え、インターネットがある現在では、
投資家はどのような形で株式会社フェリシモが本日から開始する公開買付のことを知るでしょうか。
昨日は、2016年4月8日に株式会社フェリシモが発表した「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知せ」
というプレスリリースを紹介したわけですが、これは法定開示ではなく任意開示です。
ですので、金融商品取引法上の義務(法定開示)の点から言えば、
実は投資家は2016年4月8日の時点でも、株式会社フェリシモが本日から開始する公開買付のことを知らないのです。
では、日刊新聞に掲載される公告以外の公告について考えてみましょう。
まず、「官報公告」はどうなっているでしょうか。
現在では、実際の「官報公告」の内容をインターネット上で見れるようになっています。
どちらも官報の公式サイトと言っていい(事実上同じサイト)と思いますが、以下の2つのサイトが官報公告を閲覧できるサイトです。

官報
ttp://kanpoo.jp/

インターネット版「官報」
ttp://kanpou.npb.go.jp/

上記2つのサイトで本日の官報を見てみましたが、株式会社フェリシモが行う公開買付に関する公告は掲載されていません。
2016年4月8日に株式会社フェリシモが発表した「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知せ」には、
2016年4月11日(月)に”電子公告を行い、その旨を日本経済新聞に掲載します。”と書かれていますので、
株式会社フェリシモとしては始めから官報公告を行うつもりはないのだと思います。
ただ、電子公告を行うURLは、EDINETになっています。
株式会社フェリシモはEDINETにて電子公告を行う、と言っているわけです。

 


ちなみに、株式会社フェリシモのウェブサイト上の電子公告のページはこちらです↓。

電子公告
ttp://www.felissimo.co.jp/ir/publicnotice/

2016年4月11日(月)現在、株式会社フェリシモのウェブサイト上の電子公告のページには、
公開買付に関する電子公告は掲載されていません。
官報公告同様、株式会社フェリシモとしては始めから自社ウェブサイト上で電子公告を行うつもりはないのだと思います。
それで、EDINETを見てみますと、株式会社フェリシモが公告している2016年4月11日(月)付けの電子公告が掲載されています。
そのままでは取り扱いが不便(アップロード等が行にくい)ですので、私参謀がPDFファイルに変換・出力しました。
もちろん、記載内容はEDINET掲載の電子公告と全く同じです。

2016年4月11日
株式会社フェリシモ
公開買付開始公告
(EDINET掲載の電子公告をPDF形式に参謀が出力したファイル)


文字を大きくしたり小さくしたり(記載内容はもちろん)書式を変更したりは一切しておらず、
EDINET掲載の電子公告をインターネット・エクスプローラーで表示し、
ブラウザからそのまま標準的な設定で印刷(PDF出力)したファイルです。
PDFファイトして全7ページもあるわけですが、官報公告や日刊新聞掲載の公告からすると、
これが本当に公告なのか、と言いたくなるほど著しく長い公告かと思います。
2016年4月8日に株式会社フェリシモが発表した「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知せ」
というプレスリリースは全8ページであったわけですが、主旨・内容は実質的に同じであり、そしてそれに分量も匹敵します。
これほど分量の多い公告は、官報公告や日刊新聞掲載の公告では行えないような気もしますが、電子公告ならではでしょうか。
いずれにせよ、株式会社フェリシモは、EDINETに公開買付に関する電子公告を掲載したことにより、
金融商品取引法上の法定開示義務を果たした、ということなのだと思います。
つまり、公開買付者は、いずれかの方法で公告を行えば、金融商品取引法上の法定開示義務を果たしたことになるわけですが、
株式会社フェリシモは、EDINETに公開買付に関する電子公告を掲載するという方法を選択した、ということになると思います。
他の言い方をすれば、株式会社フェリシモにとっては、この場合、EDINETに電子公告を掲載することが手続き上の主であり、
日刊新聞への公告の掲載は副次的・補足的な位置付けに過ぎない、という法的位置付けになるのだと思います。
本日2016年4月11日(月)にEDINETに電子公告を掲載することで金融商品取引法上の法定開示に関する義務としては事足りており、
したがって、日刊新聞への公告の掲載が1日遅れていても、金融商品取引法上は問題ない、ということなのだと思います。
昨日は、金融商品取引法の定めは時代遅れなのではないか、といったことを書きましたが、
現在では金融商品取引法も、投資家はインターネットを活用する(EDINETを閲覧できる)ということを法制度の前提にしている、
と実は言っていいのだと思います。
今では電子公告も法定開示として認められている(電子データの形でも法定開示に堪えられる)となりますと、
現在では日刊新聞への公告の掲載は参考情報程度の位置付けになってしまうのかもしれません。
ただ、EDINETへの掲載が本当に投資家に対する通知になっているのかというと、実は通知にはなっていないようにも思います。

 



次に、公開買付を実施する際のもう1つの法定開示文書である公開買付届出書についてです。
昨日は、公開買付届出書について、

>公開買付届出書の提出は、公開買付が行われることの通知ではない、と言えると思います。

と書きました。
これは、特にインターネットが存在しない状況下を想定して(財務支局でのみ閲覧できることを想定して)書いたわけですが、
投資家は公開買付届出書が金融庁に提出されたこと自体を知らないわけですから、これは通知ではない、と書いたわけです。
本日2016年4月11日(月)に金融庁に提出された公開買付届出書はこちらです。


提出日時 H28.04.11 10:49
提出者  株式会社フェリシモ
公開買付届出書
(EDINETと同じPDFファイル)



電子公告とは異なり、公開買付届出書はそのままPDFファイルの形式でダウンロードできました。
提出日時は「H28.04.11 10:49」ということですが、提出が午前10時49分では、株式会社フェリシモが提出した公開買付届出書を
今日の朝一番(午前9時)に財務支局に見に行ったが閲覧できなかった、ということになると思います。
朝一番から閲覧できないといけないわけですから、やはり、開始日よりも前に公開買付届出書は提出するようにするべきでしょう。
公開買付届出書もPDFファイルで全12ページということで、プレスリリースや電子公告と概ね同じ分量になっています。
表示形式・書式の違いはありますが、どれも記載内容に大きな違いはないと思います。
公開買付届出書に関しても、EDINETに掲載すれば金融商品取引法上の法定開示義務は果たしている、ということになります。
この辺りの論点は、先ほどの電子公告の場合と全く同じかと思います。
「通知」という意味合いでは、やはり特に「株主」に公開買付について個別・直接の通知が必要なのではないかと思います。
公開買付とは言いますが、公開買付に応募できるのは今現在の株主だけです。
広く投資家保護の観点から、公告や公開買付届出書の提出を義務付けることはもちろん大切ですが、理論的に考えてみると、
公開買付に応募できる株主を確定するために、株主総会同様、「公開買付の基準日」を設ける必要があるように思います。
現行の制度では、公開買付期間中に市場で株式を買い即公開買付に応募する、ということができるわけですが、
そのことが原因で買付期間中は株価が買付価格に張り付く、という事態が生じてしまうわけです。
これは、市場外の取引が結局のところ市場株価に極めて大きな影響を与えている、という言い方ができるわけでして、
公開買付が健全な市場株価形成・円滑な株式の取引に悪影響を及ぼしている、と言ってもいいように思います。
公開買付は実は相対取引の側面が強いと書きましたが、公開買付が市場株価に影響を与えないようにするべきではないかと思います。
そのためには、公開買付者は「公開買付の基準日」を設けるようにするべきだと思います。

 


最後に、公開買付届出書の意味合い・位置付けについてです。
昨日は、”「公開買付届出書」は公開買付をこれから行うことを当局に事前に届け出るという意味合いがある”と書きました。
この点について英訳から考えてみますと、「公開買付届出書」の公式英訳は「Tender Offer Notification」となっています。
この英訳からは、「公開買付届出書」の意味・役割は、「通知」にあるように思います。
ただ、公式英訳ではないのですが、「公開買付届出書」には「Tender Offer Registration Statement」という英訳もあるようです。
この英訳からは、「公開買付届出書」の目的は当局への登録であるというようなニュアンスが感じられ、
「公開買付届出書」には通知の意味合いはあまりないように思います。
元来的には、「公開買付届出書」の目的は当局への届け出・登録なのではないか(そしてそれを投資家は開示文書として公に読める)
という気もしますが、
インターネットが前提の今日では、公告と公開買付届出書の役割の違いは薄れているのかもしれません。

 


Public announcement uploaded into EDINET.

EDINETにアップロードされた公告

 

Tender offer registration statement.

公開買付届出書