2016年4月10日(日)


2016年4月8日(金)日本経済新聞
■オプテックス シーシーエスを買収
(記事)

2016年4月8日(金)日本経済新聞
▼シーシーエスへのTOB
買い手=オプテックス
(記事)

2016年4月8日(金)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
オプテックス株式会社
(記事)


2016年4月7日
オプテックス株式会社
シーシーエス株式会社株券(証券コード6669)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttp://www.optex.co.jp/cgifile/whatsnew/20160407150214_1.pdf


2016年4月7日
シーシーエス株式会社
オプテックス株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ
及びオプテックス・エフエー株式会社との業務提携契約締結のお知らせ
ttp://www.ccs-inc.co.jp/s3_ir/press/160407PressRelease_1.pdf

 


2016年4月9日(土)の日本経済新聞の朝刊に以下のような記事が載っていました。


>(短信)フェリシモへのTOB
>▼フェリシモへのTOB 買い手=自社、株数=320万株を上限、価格=普通株式909円、総額=29億3080万円、
>期間=4月11日〜5月12日


記事をスキャンするのは忘れてしまいましたので、電子版からの引用になります。
電子版では記事の全文は有料会員限定となっているようですが、朝刊の記事の内容も事実上同じ長さ・文言です。
電子版でも、2016年4月9日(土)の早朝にこの記事は読めるようになっていたのだろうと思います。
このたびフェリシモが実施する公開買付について記載のある記事をインターネットで検索してみましたら、
以下の一件だけがヒットしました。


【材料】フェリシモ、16年2月期は営業黒字転換、17年2月期は増収増益を計画

 フェリシモ<3396>は引け後、16年2月期業績と17年2月期業績見通しを発表。
16年2月期は売上高が前の期比8.2%減の346億900万円、営業損益は前の期の6億3100万円の赤字から
2億7500万円の黒字となり、17年2月期見通しは、売上高が前期比1.6%増の351億5000万円、
営業利益が同87.2%増の5億1400万円を計画している。
 今期見通しとして、主力の定期便事業に関しては年間の延べ顧客数合計が16年2月期を下回る見込みとしながらも、
新たにWebを主力にしたスポット販売及び、O2O事業との連動による接点開発や販売チャネルを広げることで
新規顧客の獲得及び顧客の継続利用率を向上させ、顧客数の回復を目指すと発表。
 同社はあわせて、発行済株式総数の31.86%、320万100株を上限とした自社株買いを発表している。
(株探ニュース 2016年04月08日16時00分)
ttp://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201604080416


株探という株式投資専門の情報サイトの記事になりますが、「2016年04月08日16時00分」発信の記事になるわけです。

 



そして、フェリシモのウェブサイトでは、次のプレスリリースが発表されています。


2016年4月8日
株式会社フェリシモ
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://v3.eir-parts.net/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=1343010


プレスリリース発表の日付は「2016年4月8日」になっています。
開示の時間(ウェブサイトにてプレスリリースの閲覧が可能になった時間)までは分かりません(16:00以前なのだと思います)。
さらに、東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス「TDnet」(ttps://www.release.tdnet.info/)を見てみますと、
株式会社フェリシモが「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ」をTDnetに開示したのは、
「2016年4月8日 15:00」になっています。

 


先ほどから、記事やプレスリリースの日付や時間にこだわっているなと思われるかもしれませんが、
今日の論点はまさに「日付」にあるわけです。
2016年4月8日に株式会社フェリシモが発表した「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ」には、
公開買付の日程について次のように記載があります。


3.買付け等の概要
(1)日程等
(3/8ページ)



公開買付に関する取締役会決議は2016年4月8日(金)であったようで、取締役会決議を受けて、
同日2016年4月8日(金)に公開買付に関する開示・プレスリリースの発表を行った、という流れかと思います。
問題は、その後の日程であるわけです。
「公開買付開始公告日」、「公開買付届出書提出日」、「公開買付の開始日」は、
いずれも「2016年4月11日(月曜日)」となっているわけです。
「公開買付届出書提出日」は、現行法令上はともかく、もっと早い方が望ましい(例えば開始日の1週間前など)ような気もします。
「公開買付届出書」は、公開買付をこれから行うことを当局に事前に届け出るという意味合いがあるのではないかと思います。
これは私見になりますが、「公開買付届出書提出日」は「公開買付の開始日」と同日ではなくもっとも前であるべきだと思います。
私の私見のことはともかく、このたびの公開買付の日程は実務上はよくある日程なのだと思います。
ただ、このたび株式会社フェリシモが実施する公開買付の日程には、やはり1つ問題があるように思います。

 



2016年4月10日(日)午後5時現在、
開示書類(提出書類)に関する金融庁の電子開示システム「EDINET」(ttp://disclosure.edinet-fsa.go.jp/)には、
このたびの公開買付に関して株式会社フェリシモからはまだ何の書類も提出されていません。
つまり、EDINETでは、公開買付の開始に関する電子公告もまだ行われていませんし、公開買付届出書もまだ提出されていません。
プレスリリースに記載されている「日程」の通り、株式会社フェリシモは、明日2016年4月11日(月)の朝一番にでも
EDINETにて電子公告を行いそして公開買付届出書を提出する、という手はずを整えているのだと思います。
私が今思っているのは、「投資家はどの手段によって公開買付が開始されたことを知るのか?」という点なのです。
仮に、投資家は、日刊新聞に掲載される公告によって公開買付が開始されたことを知るだとすれば、
このたび株式会社フェリシモが実施する公開買付を投資家が知るのは、2016年4月12日(火)ということになります。
そうしますと、「投資家にとって」の公開買付の期間は「2016年4月12日(火曜日)から2016年5月12日(木曜日)まで」、
ということになります。
なぜなら、まだ公告はなされていない以上、投資家は公開買付の存在(開始されている事実)自体を知らないわけですから、
投資家が2016年4月11日(月)に公開買付に応募することはあり得ないからです。
投資家にとっての公開買付の開始日は2016年4月12日(火曜日)ということになります。
すると、公開買付の期間は「19営業日」ということになるわけです。
金融商品取引法では、公開買付の期間は20営業日以上と定められているわけですが、
これでは期間が「19営業日」の公開買付を実施すると言っているようなものかと思います。
悪い言い方をすると、株式会社フェリシモは投資家に公開買付を実施することを知らせなかった、という言い方ができるわけです。
さらに悪い言い方をすると、「休刊日を狙って公開買付を開始したのではないか。」という言い方ができるわけです。
つまり、「公開買付期間の短縮を図ったのではないか。」という言い方ができるわけです。
このたびの公開買付は、筆頭株主と第2位株主から、所有する株式を売却する意向がある旨の連絡を受けて実施されるわけですが、
市場価格に一定のディスカウントを行った価格により買い付けることになっているわけですので、
他の株主には応募して欲しくない(他の株主に売却益を与えたくない)という動機はないと思います。
ですので、株式会社フェリシモとしては、公開買付を実施していることを一般投資家には隠したいという気持ちはないわけです。
しかし、高い買付価格を設定しているので一部の特定の株主のみから応募があるようにしたい、
という動機がある場合などは、
できる限り公開買付を実施していることを隠しできる限り買付期間も短くしたい、という考えが当事者に出てくるわけです。
そのような場合ですと、法定開示は必要最少限にして、
買付期間も法定の最短の日数のみとし、さらに何か方法があればもっと短くしたい、という話になってくるわけです。

 



「公開買付を行うことを開示する」という観点から見ますと、このたびの事例では、
実は、株式会社フェリシモ自身が開示・発表したプレスリリースが、投資家が公開買付を知る第一報、ということになっています。
株式会社フェリシモのウェブサイトには、「株主・投資家情報」のページがあり、そこに「ニュース」が開示されています。

株主・投資家情報 > ニュース
ttp://www.felissimo.co.jp/ir/press/

このたびの公開買付についても、上記のページにプレスリリースが開示・発表されているわけです。
しかし、おそらく、会社のウェブサイトにて公開買付を実施することを開示・発表することは、法令上の義務ではないと思います。
会社のウェブサイト上でのプレスリリースの発表は、法律上は任意開示という位置付けなのではないかと思います。
むしろ、会社のウェブサイトにて公開買付を実施することを開示・発表することが法令上の義務となりますと、
今度は逆に、例えば公告を行う義務は法令上は必要ない、という考え方になってくるように思います。
私のこの考えが正しいとしますと、株式会社フェリシモは法令上は公開買付を実施することをプレスリリースで発表する必要はない、
ということになります。
そうしますと、一般の投資家が株式会社フェリシモが公開買付を実施することを知る手段というのは、
まさに公告しかない、ということになると思います。
金融庁に提出された公開買付届出書を読むことも、EDINETを通じて以外では一般投資家には現実にはできないと思います。
金融庁が公開買付が実施されることを発表するわけでもないわけです。
一般投資家にとっては、証券会社の営業マンが営業・顧客サポートの一環ということで、
公開買付について知らせてくれるであったり、
営業マンが金融庁の財務支局まで赴いて公開買付届出書の写しをもらってきてくれたので、それで読むことができ知ることができた、
というようなことは、証券会社からの証券投資に関する情報提供の1つということで、
現実にあり得ることなのではないかとは思いますが、そういった証券会社の営業マンからのサポートがないとすると、
公開買付が実施されることを知ること自体が現実には困難な部分があると思います。
特に、インターネットが存在する以前のことを想定しますと、
一般投資家が公開買付が実施されることを知る手段というのは、
現実には新聞記事と新聞に掲載される公告くらいしかない、ということになると思います。
また、インターネットが存在する以前は、現実には証券会社の営業マンが情報伝達の役割を果たしていた、と言えると思います。
以上のようなことを考えますと、証券投資に関する理論上は、株式市場に開示された情報は投資家は全て知っている、
という前提はあるものの、現実世界のことを考えますと、
「どのような手段で開示を行えば、『投資家はその情報を知っている』ということが担保されると言えるのか?」
という点が1つの大きな論点になるわけです。
「株式市場に開示された情報は投資家は全て知っている」という理論的前提に立つのは決して間違ってはいないわけですが、
株式市場に開示された情報を投資家が知る手段というものを用意しなければ、その理論的前提は成り立たないわけです。
開示はされたが投資家その情報を知りようがない、では現実には意味がないわけです。

 



その辺り、インターネットが普及した現在から見ると、
インターネットを使えば、リアルタイムでネット上の記事も見れるウェブサイトも見れるEDINETも見れるTDnetも見れる、
というように、結局、現在ではその理論的前提が成り立っている環境が現実に既に訪れていると言えるのかもしれません。
ただ、法令上の義務という観点から言えば、まだ公告を行うことと公開買付届出書を提出することとなっているようでして、
情報伝達手段(インターネット)の進化と法令の定めとの間に乖離が生じている状態と言ってもいいのかもしれません。
いずれにせよ、今日は「投資家が開示された情報を知る手段」は、法定開示である公告と公開買付届出書のみである、
という前提に立って考えてみたわけです。
このことは逆から言えば、金融商品取引法は、公告と公開買付届出書の提出さえ行えば、
投資家は開示された情報を知ることができる、ということを前提にしているわけです。
このうち、「公開買付届出書が提出されたこと」自体を投資家は知ることはできないわけですから、
「公開買付届出書が提出されたこと」も含め、公開買付が実施されることを投資家が知る手段というのは、
金融商品取引法では公告のみを前提としている、ということだと思います。
ただ、細かいことを言えば、全ての日刊紙に公告が掲載されるわけではない(掲載は基本的には日本経済新聞のみ)ことを考えれば、
公告さえ行えば投資家は公開買付のことを知ることができる、という現行法の前提は現実には非常に難しい部分があると思います。
要するに、法律・法令を定める上では、「ここまで開示させれば投資家は情報を知っていると見なすことができる」
という情報開示の手段・情報の到達の可能性を考慮しなければならないわけです。
法理的に言えば、法律・法令上は、任意開示を当てにしてはならないわけです。
法律・法令上は、法定開示のみによって、「投資家はその情報を必ず知っている」という状況を作り出さねばならないわけです。
そうでなければ、法定開示の意味がないわけです。
現在行われているウェブサイト上のプレスリリースの発表は、投資家がその情報を知るのに有用だ(情報が到達するのに有用だ)、
と言えるのであれば、現行の公告に替えて、ウェブサイト上のプレスリリースの発表のみを法定開示とする、
という考え方もあると思います。
金融商品取引法では、公告のみを法定開示としています。
これは、投資家は日刊新聞を読むということを前提にしているということです。
現在であれば、法律・法令の観点から言っても、
投資家はインターネットを使うということを前提にしても決して間違いではないでしょう。

 



情報到達の可能性という点から言えば、公開買付届出書の提出は、開示とはいえないと思います。
なぜなら、投資家は、通常、公開買付届出書が提出されたこと自体を知らない(知り得ない・提出の情報が到達しない)からです。
インターネットがない状況を想定してみますと、金融商品取引法は、
投資家は公告を見て公開買付が実施されることを知り、さらに詳しい情報を知りたい場合は投資家は最寄の財務支局まで赴き、
公開買付届出書を閲覧する、という投資家の投資行動を前提にしているわけです。
公開買付届出書の提出は、公開買付が行われることの通知ではない、と言えると思います。
投資家が公開買付が行われることを知った後の詳細情報、という位置付けではないかと思います。
投資家に対する公開買付が行われることの通知という意味では、金融商品取引法は公告のみを想定している、と言っていいでしょう。
そういったことを踏まえますと、公開買付の開始日が休刊日となりますと、
投資家に対する通知が遅れる、ということを意味するわけです。
つまり、公告が投資家への通知の役割を果たしていないわけです。
公告日になって投資家が初めて公開買付のことを知っても、投資家にとってはその分公開買付の期間は短くなっているわけです。
そういった意味では、公開買付の公告は、公開買付の開始日以前に行うべきなのだと思います。
公開買付の開始日が休刊日なのであれば、例えば開始日の前営業日に公告を行うようにしなければならないわけです。
以上のようなことを考えた上で、このたび株式会社フェリシモが実施する公開買付は、買付期間が「19営業日」の公開買付だ、
と最初に書いたわけです。
インターネットがない状況を想定してみますと、このたびの事例では、
「公告はまだなのですが、実は本日から公開買付が開始されていますよ。」
と証券会社の営業マンが投資家に知らせ、それで投資家は公開買付のことを初めて知った、
というようなことになろうかと思います。
これでは全く法定開示になっていないでしょう。
果たして公告のみで投資家に対し情報が到達する手段として十分なのか、という論点も従来からあったのではないかと思いますが、
その論点も踏まえ、インターネットの時代でもありますので、
「投資家に対し情報が到達する手段」を公告以外に考えることも現実に十分にできるのではないかと思います。

 

In this case, a takeover bid has already begun
when shareholders notice that a takeover bid for their shares is being made
at their glance at a public announcement appearing in daily newspapers.

この事例では、株主が日刊新聞に掲載されている公告を見て
所有している株式に対し公開買付が実施されているということを知るのは、
公開買付は既に開始された後だということになるのです。