2016年3月18日(金)

2016年3月15日(火)日本経済新聞
TCリース タイバーツ債32億円 「ニッポンレンタカー」強化
(記事) 


 

2016/03/15 18:00
東京センチュリーリース株式会社
タイ市場におけるバーツ建無担保普通社債の発行に関するお知らせ
(TDnetと同じPDFファイル)


 



【コメント】
3日前の記事になりますが、記事だけを読んだ時は、どういう取引なのか分かりませんでした。
最初は、東京センチュリーリース・グループがタイで事業を展開するに際し、
タイ現地法人がバーツ建ての社債を発行し、東京センチュリーリース株式会社が引き受ける、
という取引なのだろうか、と思いました。
また、東京センチュリーリース株式会社がタイ現地法人発行の社債を引き受けるに際し、
東京センチュリーリース株式会社が円建てかバーツ建てで資金調達をするのだろうか、と思いました。
つまり、東京センチュリーリース株式会社は新たに自社が調達した資金をタイ現地法人に供給する、
というような取引なのだろうか、と思いました。
それで、お金の流れを概念的に考えて、記事の表題を

In this case, a parent company lends money which it borrows from investors to its subsidiary.
(この場合、親会社は、投資家から借り入れたお金を子会社に貸し付けるのです。)

と書いたわけです。
しかし、プレスリリースを読みますと、
東京センチュリーリース株式会社は社債は発行しないようです。
東京センチュリーリース株式会社の連結子会社であるタイ現地法人TISCO Tokyo Leasing Co., Ltd.が、
タイ市場においてバーツ建無担保普通社債を発行する、と書かれています。
東京センチュリーリース株式会社が日本円建てもしくはバーツ建ての社債を発行するわけではないようです。
東京センチュリーリース株式会社は、このたびのバーツ建無担保普通社債の保証会社、という位置付けとなっているようです。
東京センチュリーリース・グループとしては、タイでの事業展開に必要な資金はタイ国内での調達で賄う、ということのようです。
私が最初考えたことと表題は間違っているようです。
記事には、タイ現地法人が発行する社債について、

>現地の機関投資家向けに販売する。

と書かれています。
タイ現地法人が発行する社債をタイの機関投資家が引き受ける、という取引であるわけです。
私はここで、ふと次のようなことを思いました。
タイ現地法人が発行する社債をタイの機関投資家が引き受けることは、直接金融なのだろうか、と。
日本の親会社が日本で調達した資金でタイ現地法人発行の社債を引き受けるとしたら、それは直接金融なのだろうか、と。
日本の親会社が日本で調達した資金をタイ現地法人に貸し付けるとしたら、それは間接金融なのだろうか、と。
直接金融や間接金融という言葉はそれこそ小学校で習うわけですが、
改めて考えてみると直接金融と間接金融の違いはどこにあるのだろうか、とふと思ったのです。

 


一般には、銀行からの融資を間接金融と呼び、株式による資金調達を直接金融と呼ぶことが多いな、
投資家から直接資金を調達することを直接金融と呼び、預金者のお金を銀行を通じて間接的に融資を受けることを間接金融と呼ぶ、
と説明されることが多いと思うのだが、と頭の中で2日間ほど考えていましたら、昨日は次のような記事がありました↓。

 

2016年3月17日(木)日本経済新聞
■三菱東京UFJ銀行 人民元建て社債引き受け
(記事)



三菱東京UFJ銀、人民元建て社債引き受け

 ■三菱東京UFJ銀行 16日、トヨタファイナンスの中国現地法人が発行条件を決めた人民元建て社債の一部を引き受けた。
日本の銀行が中国で事業会社の人民元建て社債を引き受けるのは初めてとなる。
 これまで外資系では英HSBCと英スタンダードチャータード銀行しか実績がなかった。
 中国は海外中央銀行や政府系ファンド(SWF)、年金基金など長期投資家に限定して債券市場の対外開放を始めた。
中国にとっては外資系の引受金融機関を増やし、外国人投資家の人民元建て債券投資を促す狙いがある。
 社債発行額は20億元(約350億円)で一部を同行が取得し、投資家に転売する。表面利率は3.28%。
(日本経済新聞 2016/3/16 21:03)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDX16H1M_W6A310C1FFE000/

 

この記事を読んで、まさに、

In this case, is it direct financing or indirect financing?
(この場合、これは直接金融なのですか、それとも、間接金融なのですか?)

と思いました。
これは、三菱東京UFJ銀行の中国現地法人が、トヨタファイナンスの中国現地法人が発行する人民元建て社債を引き受けた、
という取引であるわけですが、三菱東京UFJ銀行の中国現地法人は一体どうやって社債を引き受けたのでしょうか。
三菱東京UFJ銀行の中国現地法人の手元にある(社債引受に使える)現金は、
基本的には三菱東京UFJ銀行(親会社)からの出資(資本金)しかないのでないだろうか、と思うのですが、
現地の預金者からの預金も一定額はあるのかもしれません。
いずれにせよ、三菱東京UFJ銀行の中国現地法人にお金がなければ、そもそも社債を引き受けられないわけです。
では、三菱東京UFJ銀行の中国現地法人は、一体どうやって資金を調達したのだろうか、と思ったわけです。
そして、三菱東京UFJ銀行の中国現地法人の資金調達は、調達手段にもよる(資本が預金か等)のだろうが、
直接金融と呼ばれるのだろうかそれとも間接金融と呼ばれるのだろうか、と思ったわけです。

 


3日間ほど直接金融と間接金融の違いについて考えていましたら、今日はさらに次のような記事があったわけです↓。

 

2016年3月18日(金)日本経済新聞
出光が1700億円調達 劣後ローンなど 昭シェル株取得へ
(記事)


2016年3月18日
出光興産株式会社
劣後特約付シンジケートローンによる資金調達のお知らせ
ttp://www.idemitsu.co.jp/company/news/2015/160318.pdf

 

出光興産株式会社は、劣後特約付シンジケートローンによる資金調達を金融機関から行うとのことですが、
記事によりますと、この劣後特約付シンジケートローンとは別に、金融機関から借り入れも行う、と書かれています。
会社倒産時の弁済順位の違いはあるものの、シンジケートローンと借入金とは、
どちらも借入金という点において同じ意味なのだと思います。
ですので、出光興産株式会社にとって、劣後特約付シンジケートローンも借入金も、
どちらも間接金融と呼んでよいのだろうと思いました。
では仮に、出光興産株式会社が、借入金ではなく、金融機関を引き受け先として社債を発行したとしたら、
それは直接金融なのだろうかそれとも間接金融なのだろうか、と思いました。
一番最初に紹介した東京センチュリーリース株式会社の事例では、
タイ現地法人が発行する社債の引受先は機関投資家だと書かれていました。
また、次の記事では、トヨタファイナンスの中国現地法人が発行する社債の引受手は三菱東京UFJ銀行の中国現地法人です。
銀行も、社債の引き受けという文脈では、機関投資家と表現してもよいのではないか、と思ったわけです。
そうすると、直接金融と間接金融の本質的違いはどこにあるのだろうか、と思ったわけです。

 


それで、私が今日辿り着いた結論は、次のようなものです。


To invest money of your own is called direct financing, and to invest money of others' is called indirect financing.

自分の金を投資することを直接金融と呼び、人の金を投資することを間接金融と呼ぶのだ。


端的に言えば、直接金融か間接金融かは、「資金の出し手」の側から見た分類なのだと思います。
「資金を調達する側」(資金の供給を受ける側)から見た分類なのではないわけです。
investor の側から見た分類であって、investee の側から見た分類ではないわけです。
「資金を調達する側」(資金の供給を受ける側)からは、そのお金がどこから来ているのかは分かりませんし関係もないわけです。
直接金融か間接金融かは、世のお金の流れを大きな視点で見た場合の表現であって、
「資金の出し手」は、自分のお金を投資しているのか、それとも、他者のお金を投資しているのか、
で直接金融か間接金融かを分けているわけです。
ここでの「invest」(投資)には、出資(株式の取得)と融資(お金を貸し付けること)と債券の購入等の全てを含みます。
「収益の獲得を目的にお金を何かに投じること」全般を「投資」(invest)と呼びます。
ここでは主に「収益の獲得を目的にお金を証券に投じること」(証券投資)を「投資」(invest)と呼びます。
例えば工場を建設することも「設備投資」と呼びますが、「設備投資」はここでいう「投資」には含まれません。
また、「invest」は口語表現で「〜を買う」という意味があり、「invest in a new car」で「新車を買う」という意味になりますが、
自分が使用するために(個人として使用する目的で)自動車や家を買うことも、ここでいう「投資」には含まれません。
”人の金を投資する”ということがあるのかと思われるかもしれませんが、一番分かりやすい例は銀行でしょう。
銀行からは預金者から預かったお金を投資している(貸し付けを行っている)わけです。
銀行のお金は、法的側面からは確かに銀行のお金ですが、
お金の大きな流れや返済の義務(預金の引き出しに応じなければならないこと)の観点から見ると、
銀行のお金は預金者のお金なのです。
銀行が行う投資は全て、間接金融ということになります。

 


逆に、いわゆる負債が一切なく、資本のみの会社が行う投資は全て直接金融です。
法的側面から言えば、銀洋の場合同様、確かに出資者のお金と会社(法人)のお金は別なのですが、
概念的には会社のお金は出資者の意思に基づいて投資が行われるという点や
資本に返済の義務はない(会社は資本の払戻しを行う必要はない)といった点から見ると、
会社のお金は出資者のお金なのです。
会社は出資のための器に過ぎないのです。
ですので、会社が資本を投資する場合は、直接金融なのです。
これも逆から言えば、会社が負債を投資する場合は、間接金融なのです。
会社が、資本と負債の両方から構成されるお金を投資するという場合は、直接金融と間接金融が混合しているもの(mix)なのです。
その意味では、極めて厳密に言えば、この世の金融のほとんどは、実は直接金融と間接金融が混合しているもの(mix)となっている、
と言わなければならないのかもしれません。
例えば銀行融資も、貸出金を資本部分と預金部分とに区別はできないわけです。
負債が1円もない会社が投資を行う場合のみ、直接金融と呼べるのだと思います。
また、負債が1円もない自然人が投資を行う場合も直接金融です。
むしろ、小学校の教科書などでは、負債が1円もない自然人が行う資金供給活動のことを直接金融と呼んでいると思います。
自然人がお金を借り入れて、そのお金を投資する(又貸しする等)場合は、間接金融と呼ぶことになると思います。
なぜなら、その自然人が投資したお金はその自然人のお金ではないからです。
自然人が資金供給活動を行えばそれは全て直接金融だ、というわけではないわけです。
直接金融と間接金融という言葉は、マクロ経済における概念であるわけです。
ある会社が資金の供給を受けたのだが、そのお金は煎じ詰めればどこから供給されたものなのか、
という観点から、金融を区分しているわけです。
ですので、資金の供給を受けた側(資金を調達した側)からは、その金融が直接金融なのか間接金融なのかは分からないわけです。
株式を発行すれば直接金融、というわけでは決してないわけです。
「大本の資金の出し手」の意思に基づき最終的な資金供給先へ投資がなされた場合を直接金融と呼んでいるわけです。
「大本の資金の出し手」の意思には基づかず資金が次の供給先へ投資される場合を間接金融と呼んでいるわけです。
その意味では、証券投資信託など、投資方針は信託会社へ一任するという場合における投資(信託会社による投資・運用)は、
直接金融とも間接金融とも定義されない(どちらの側面もある)ように思います。
そういう意味では、厳密な意味での直接金融は、金額としては非常に少ないのかもしれません。
「お金は本源的な意味での所有者の意思に基づいて使われるものだ」という意味では、
法理的には直接金融しかあり得ないはずだ、と言っていいと思います。
「お金の使い道を他の人に任せる」ということを前提にして初めて、間接金融という概念が生まれたのだと思います。

 


In case a company issues new shares in order to raise funds, that is what you call equity financing,
and a financial institution subscribes for the shares, it is called "indirect financing," actually.
For the financial institution acquires the share by means of money which depositors deposit in it.

資金を調達するために会社が新株式を発行し、つまりこれはいわゆる資本による資金調達のことですが、
そして金融機関がその株式を引き受けるという場合、実はその資金調達は「間接金融」と呼ばれるのです。
なぜなら、金融機関は預金者から預かっているお金で株式を取得するからです。

 

Equity financing is not always direct financing.
Debt financing is not always indirect financing.
Whether a company raise funds through equity or a debt has nothing to do with
the fact that it is called direct financing or indirect financing.
Whether raising funds is called direct financing or indirect financing depends on
the fact that a supplier of cash supplies cash of its own or cash of others'.

資本による資金調達は直接金融であるとは限りません。
負債による資金調達は間接金融であるとは限りません。
会社が資本を通じて資金を調達するのか負債を通じて資金を調達するのかは、
その資金調達が直接金融と呼ばれるのか間接金融と呼ばれるのかとは関係ありません。
資金の調達が直接金融と呼ばれるのか間接金融と呼ばれるのかは、
現金の出し手が自分自身のお金を供給するのか他の人のお金を供給するのかで決まります。

 


Generally speaking, from a viewpoint of a supplier of cash,
whether a financial institution lends money or subscribes corporate bonds or acquires shares,
all of them are called indirect financing.
And, whether what you call a small and medium‐sized enterprise around you gives money to charity
or buy government bonds or invests in subsidiaries, all of them are called direct financing.
For money of a small and medium‐sized enterprise is virtually personal money of a boss of the enterprise.

一般的なことを言えば、資金の出し手の観点から言うと、
金融機関がお金を貸し付けようが社債を引き受けようが株式を取得しようが、それらはすべて間接金融と飛ばれるのです。
そして、いわゆる世の中小企業が慈善のためにお金を出そうが国債を買おうが子会社に出資をしようが、
それらは全て直接金融と呼ばれるのです。
なぜなら、中小企業のお金というのは、事実上社長さん個人のお金だからです。

 

The concept "indirect financing" presupposes that a direct lender doesn't have money.
In other words, the lender lends money of others' to a borrower.

「間接金融」という概念は、直接の貸し手はお金を持っていない、ということを前提にしています。
他の言い方をすれば、貸し手は他の人のお金を借り手に貸しているのです。