2016年2月29日(月)


2016年2月29日(月)日本経済新聞 公告
金融商品取引業者の吸収合併の公告
アムンディ・ジャパン証券株式会社
合併公告
アムンディ・ジャパン株式会社
アムンディ・ジャパン証券株式会社
証券投資信託の信託終了のお知らせ
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
(記事)

 

 



昨日のコメントに一言だけ追記します。
昨日のコメントの最後に、会社倒産時の「CoCo債(ココ債)」の取り扱いについて書きました。
昨日のコメントを書いた時に私の頭の中にあったことというのは、主に、

>一度元本の削減を行った後でも、削減前の(すなわち当初の)元本金額を
>債権者の請求権(金額)とする、という取り扱いは法律上可能なのだろうか、と思ったからです。
>元本の削減に応じたのは、その時の会社の窮状を鑑みた金融支援の側面があったわけですから、
>会社倒産時の債務の弁済という場面であれば、発行者としても保有者としても、
>削減前の(すなわち当初の)元本金額を債権者の請求権(金額)としたい、という考えが出てくるのはおかしな話ではないわけです。
>債権放棄を行った挙句に、会社倒産時には少ない金額の弁済しか受けられないでは、
>踏んだり蹴ったりと言いますか、泣きっ面に蜂と言いますか、会社窮状時の恩や厚意があまりにも報われないように思えるわけです。

という点であったわけです。
昨日の要点を端的に言えば、元本を削減(債務を一定額免除した・債権を一定額放棄した)した後、
会社の清算手続きにおいて、債権者の債権金額を元本削減前(債務免除実施前・債権放棄実施前)の金額とすることは、
法人税法上可能なのだろうか、となるわけです。
その結論としては、そのような取り扱いは法人税法上不可能である、となるわけです。
では今日は、昨日の取り扱いの逆の場合を考えてみましょう。
”逆の場合”というのは、会社倒産時における以下のような場合です。
会社倒産時点において債権者は債務者に対しある一定金額の債権を有していたのだが、
清算手続きを進めていく中で、債権者は債権の弁済を債務者に求めないという場合、です。
そんなことがあるのか、と思われるかもしれませんが、例えば、以下のような場合にそのようなことが考えられます。

【設例】
”債権者と債務者(会社)の株主とは旧知の仲であり、自然人同士としても様々な商取引をこれまでに行ってきており、
またこれからも様々な形で商取引を行っていきたいと考えている。
債務者(会社)の倒産時の状況としては、債務者(会社)の株主は1人だけであり、
また、話の簡単のため、債権者も1人だけであるとする。
従来から債務者(会社)の株主のお世話になっている債権者は、今般会社は倒産してしまったものの、
何らかの形で債務者(会社)の株主に恩返しや支援を行いたいと思っている。
そこで債権者が思い付いたのが、「清算手続き中における債権放棄」である。
通常、債権放棄というと、通常営業時における自主的な債権放棄(税法上は寄付金(損金不算入))を指すわけであるが、
ここで考えているのは、会社倒産という場面であり、なおかつ、清算手続きにおける自主的な債権放棄である。
債務者が債権者に対し債務の弁済を行わない場合は、債務者(会社)の残余財産はその分債務者(会社)の株主に多く分配される。
債権者が債務者から債権の弁済を受けないならば、債務者(会社)の株主は、より多くの残余財産の分配を受けられるわけである。
したがって、債権者は、日頃の恩に報いるため、債権の弁済を債務者に求めないことにした。”

 


通常営業中ではなく、清算手続き中に自主的に債権放棄を行う、という事例(設例)になります。
先ほども書きましたように、通常営業時における自主的な債権放棄というのは、税法上は寄付金(損金不算入)になります。
債務者(会社)にとっては、法人税法上は債務の免除ということで、益金になるわけです。
では、清算手続き中の自主的な債権放棄の場合はどのような取り扱いとなるでしょうか。
例によってと言いますか、いつもの通り現行の法人税法と現行の所得税法の定めは、さらには現行会社法の定めは見ておりません。
ここでは法理的な考え方を書きたいと思います。
この場合の取り扱いについて結論を先に言えば、基本的考え方として、
「清算手続き中に自主的に債権放棄を行うことはできない。」
ということになります。
法理的には、清算人が債務者の債務を管理したり保全したりするわけです。
その時に重要なことは、債務者の債務の金額は確定していること、すなわち、金額が変動しないことであるわけです。
そうでなければ、清算人は平等な債務の弁済を行えないからです。
ですので、清算人としては、清算手続き中に債務者の債務の金額が変動するような状態を認めることはできないわけです。
ですので、会社が正式に清算手続きに入ったならば、資産(会社財産)の散逸は一切生じてはならないことと同じように、
負債(債務)についても完全に確定させなければならないわけです。
会社が正式に清算手続きに入ると同時に、会社の資産も保全されなければならず、会社の債務も保全されなければならないわけです。
このことは逆から言えば、「会社の債権者は、債権金額に応じた平等な債権の弁済を必ず受けなければならない。」ということです。
現行の倒産法制では、債権者の方が清算人に債権を届け出なければならない、というような考え方になっているようです。
そのような文脈では、自主的に債権放棄したいのならば、
債権者は清算人に債権を届け出なければよいのではないか、という考え方も出てくるのかもしれません。
しかし、少なくとも法理的には、清算人は会社の全債務を把握している、という考え方になるでしょう。
ですので、法理的には、債権者は清算人に債権を届け出ない、という考え方はないと思います。
したがって、法理的には、「会社の債権者は、債権金額に応じた平等な債権の弁済を必ず受けなければならない。」
ということになるわけです。

 



そうしますと、「清算手続きを進めていく中で、債権者は債権の弁済を債務者に求めないという場合」
すなわち、「債権者は債務者(会社)の株主に対し日頃の恩に報いたいという場合」はどのように考えるのかと言えば、
結局のところ、債権者から債務者(会社)の株主に対し直接に寄付を行う(現金を手渡す)、という形になろうかと思います。
会社の債権者は、債権金額に応じた平等な債権の弁済を受けた結果、いくらかの現金を債務者(会社)から受け取ったかと思います。
結局、債務者(会社)から受け取ったその現金(弁済金額)を、債権者は債務者(会社)の株主に対し寄付としてそのまま手渡す、
ということしか行えない、ということになると思います。
会社倒産(法人清算)という場面なので、債権の全額が弁済されない場合は、債権者にとって差額は税法上損金にはなります。
債権者が債権金額以上の弁済を受けることはあり得ませんので、債権の弁済を受けることが税法上益金になることはあり得ません。
ただ、会社倒産(法人清算)という場面ではありますが、
債務者(会社)から受け取ったその現金(弁済金額)を、債権者が債務者(会社)の株主にそのまま手渡しても、
すなわち、清算手続きを通じて、
一種の債権放棄の結果債権者は1円も現金を受け取っていない(弁済は受けていない)という状態にはなっても、
債権者が債務者(会社)の株主に手渡した現金は税法上は寄付金(損金不算入)という取り扱いになります。
弁済は受けていないわけだから、債権金額は全額は税法上損金なのではないか、という理屈は通らないわけです。
債権者が債務者(会社)の株主に手渡した現金は、債務者(会社)は確かに清算されていますが、税法上損金にはなりません。
法理的には、債権者が債務者(会社)の株主に現金(弁済を受けた金額)を手渡すことは、
債務者(会社)の清算手続きとは無関係、という捉え方になるわけです。

 



では、債権者の相手方、すなわち、債務者(会社)の株主の取り扱いはこの場合どのようになるでしょうか。
「会社の債権者は、債権金額に応じた平等な債権の弁済を必ず受けなければならない。」ということになりますと、
債務者(会社)の株主は、清算手続きを通じてより多くの残余財産の分配を受け取るということは不可能、ということになります。
結局のところ、債務者(会社)の株主が債権者からの日頃の恩に報いたいという旨の意向に配慮したいならば、
債務者(会社)の株主は、債権者が弁済を受けた金額の現金を債権者から直接に受け取る、ということが必要になるわけです。
債務者(会社)の株主が、この時債権者から受け取った金額は、「全額」が税法上益金になります。
清算手続きにおいて、株主が受け取る残余財産の分配金額というのは、実は全額が税法上益金になるわけではありません。
株主が所有していた株式の取得原価は、会社清算(株式の償却)に伴い、税法上損金になります。
つまり、「残余財産の分配金額−株式の取得原価」が、清算手続きを通じた株主の税法上の益金額になるわけです。
清算手続きにおいては、「残余財産の分配金額−株式の取得原価」で1取引、という捉え方になるわけです。
会社法制上そして税制上、残余財産の分配と株式の償却とは極めて一体的である、という捉え方になるわけです。
ところが、先ほど書きましたように、債務者(会社)の株主が債権者から受け取った金額は、「全額」が税法上益金になります。
清算手続きにおける「株式の取得原価」(税法上の損金)との通算は、取引としては通算はできないのです。
ただ、「納税者の1年間の課税所得額の計算」としては、結果的に、それらの通算は現行税制上はできてしまうとは思います。
しかし、取引としては、やはりそれらの通算はできません。
取引として、残余財産の分配と株式の償却とは極めて一体的であるのに対し、
”残余財産の分配や株式の償却”と債権者から弁済金額の現金を受け取ることとは全く一体的ではない(全く別の取引だ)、
という見方をしなければならないわけです。
これはこれで、「取引とは何か?」という観点からは重要なことだと思います。
仮に、一般に、清算手続きにおいて、
債権者が債権の弁済を債務者に求めない(債権者が債権の弁済を受けない)ということが可能であるとします。
その場合、その債権者が債権の弁済を受けない分、他の債権者が債権の弁済をより多く受けることになりますし、
また、残余財産がある場合は、株主がその分より多くの残余財産の分配を受けることになります。
このことは、概念的には、やはり債権の弁済を受けなかった債権者から他の債権者や株主に対する寄付である、
という見方になると思います。
そのような見方から言っても、債権者が債権の弁済を受けなかったことは、
債権者にとっては、ただの寄付、すなわち、税法上は弁済を受けなかった金額は損金不算入、という考え方になろうかと思います。
そして、話の簡単のため、債務者(会社)の株主は1人、債権者も1人であるとします。
この場合は、清算手続きにおいて会社の残余財産が、債権者が債権の弁済を受けない分、増加することになります。
それはその分、株主が受け取る残余財産の金額が増加する、ということです。
そのことは、受け取る残余財産の金額が増加する結果、株主の益金額が増加する、ということであるわけです。
その意味では、清算手続きにおいて株主が受け取る残余財産の金額が増加しようが、
同じ金額だけ債権者から直接現金を受け取ろうが、株主にとって税法上の益金額に与える影響額は同じになると言えるわけです。
ただ、税法上の益金額はどちらの場合も同じになるからよいと考えるのは、理解としては不十分です。
「取引の捉え方」として、やはり、法理的には、債務者(会社)の株主が債権者から現金(弁済を受けた金額)を受け取ることは、
債務者(会社)の清算手続きとは無関係である、というふうに取引を捉えるようにするべきだと思います。
最後に、今日の関連する商取引上の結論を言いますと、「清算手続き中に自主的に債権放棄を行うことはできない。」のだから、
仮に債権者が自主的に債権放棄を行いたい場合は、債務者(会社)が清算手続きに入る前に行わなければならない、となります。
「清算手続き中に自主的に債権放棄を行うことはできない。」という点が、法理上の倒産手続きの重要な点かと思います。