2016年1月9日(土)
2016年1月8日
三菱地所株式会社
公募ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)の発行に関するお知らせ
ttp://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec20160108_hybridbonds.pdf
2015年11月13日(金)
のコメントで、支払手形を題材に、会計上用いる勘定科目名はその証券の根拠法令に基づくのではなく、
財務諸表利用者の立場に立った、財務情報開示の観点から見た、より実態(取引)に即した勘定科目名を用いるべきだ、と書きました。
永久劣後債は何という法令に基づいて発行されるのは知りませんが、会計上は資本だと言わねばならないと思います。
また、現代会計では、事業継続を前提として会計処理を行います。
事業継続を前提としているからこそ、有形固定資産は取得後減価償却手続きを行うものとして貸借対照表に資産計上されますし、
棚卸資産も次期以降に販売を行うものとして貸借対照表に資産計上されるわけです。
これは資産勘定だけではなく負債勘定に関しても同じことが言えるわけです。
すなわち、事業継続を前提としているからこそ、負債の部に次期以降に弁済や返済や償還を行う負債勘定が計上されているわけです。
この意味において、負債というのはその後必ず弁済・返済・償還されるものなのです。
このことは、現代会計では、会社倒産や債務不履行や清算手続きを前提として会計処理を行うわけではない、ということです。
この観点から見ますと、特約や条項などで”永久劣後債は会社倒産時には弁済を受ける権利がある”というふうに考えますと
それは現代会計上の矛盾であると言いますか、現代会計では会社倒産を前提にした会計処理は行えないわけですから、
永久劣後債は少なくとも平時の貸借対照表には計上されようがない(反映させられない)もの、と言わねばならないと思います。
一言で言えば、永久劣後債は貸借対照表に計上できない、となると思います。
永久劣後債を発行した場合は、負債の部には計上できず、また、(株式は発行しない以上)資本金勘定にも計上できない、となりますと、
明治三十二年所得税法ではありませんが、現代会計でも収益として認識する他ない、という考え方になると思います。
その後の認識の事象自体がありませんので、収益の繰り延べ(負債計上)のようなこと(会計処理)も考えられないかと思います。
永久劣後債を定義できないとは、永久劣後債を論理的に考えることができない、という意味です。
会社倒産時、会社法で言うところの”知れたる債権者”に永久劣後債の所有者を加えることは、法手続き上はできるのかもしれません。
そしてその債権の金額を、引受価額(会社から見れば発行価額)とすることは、法手続き上はできるのかもしれません。
しかしながら、現代会計においては、貸借対照表に永久劣後債を計上することはできないのです。
法律上は永久劣後債を定義できるのかもしれませんが、会計上は永久劣後債を定義できないのです。
現行法人税法上は、会社が永久劣後債を発行しても負債という取り扱いになる(すなわち、法人税法上収益を認識する必要はない)、
とは思いますが、法人税法では貸借対照表と呼ばれる計算書類を考えませんので、そういった取り扱いになっているだけであり、
企業会計上(例えば会社計算規則等)は、永久劣後債をどのように貸借対照表に計上するべきかについては答えはないように思います。
実務上は、一応負債の部に計上ということにはなるでしょうが、以上書きましたように、それは論理的な答えではないわけです。
昨日と今日の結論を一言で言えば、煎じ詰めれば、負債か資本かは償還されるか否かで決まる、と言っていいと思います。
たとえ、償還期限が1000年であっても、です。
現行所得税法上、自然人が個人として返済期限1000年の借り入れを行ったとしたらどうなるでしょうか。
条文は見ていませんが、現代会計を踏まえた理屈を言えば、その借り入れはやはり借り入れであり、収益(寄付等)ではないでしょう。
その考え方はおかしいと言うのなら、論理的には明治三十二年まで戻るしかない、ということになると思います。
An equity ratio itself has nothing to do with bankruptcy.
自己資本比率そのものは、破産とは関係ありません。