2015年12月28日(月)
2015年12月28日(月)日本経済新聞 公告
事業の譲受けに関する公告
株式会社三菱東京UFJ銀行
自動車損害賠償責任保険基準料率届出公告
損害保険料率算出機構
(記事)
【コメント】
株式会社三菱東京UFJ銀行が公告しています「事業の譲受けに関する公告」について一言だけコメントします。
公告によりますと、
譲受人は株式会社三菱東京UFJ銀行、譲渡人(譲受けの相手方)は
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (Canada)、
譲受けの対象は Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ
(Canada)の事業のすべて、
と書かれています。
株式会社三菱東京UFJ銀行は日本の法人、Bank of Tokyo-Mitsubishi
UFJ (Canada)
はカナダの法人となりますので、
これは、カナダから日本へ事業を譲渡する、という取引になります。
カナダと日本の銀行法では、国際的な事業の譲渡が行えるのかどうかは知りませんが、
法理的には国際的な事業の譲渡はできない、ということになると思います。
なぜなら、ある国の法人は他の国では所有権を持てないからです。
このたびの事例で言えば、株式会社三菱東京UFJ銀行が
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (Canada)
から事業を譲受けるとなりますと、
株式会社三菱東京UFJ銀行はカナダ国内において所有権を持てないといけないわけです。
しかし、株式会社三菱東京UFJ銀行は日本の法人ですから、カナダ国内では所有権は持てないわけです。
ですから、国際的な事業の譲渡は行えないのです。
Bank
of Tokyo-Mitsubishi UFJ
(Canada)は株式会社三菱東京UFJ銀行の完全子会社であろうと思いますが、
株式会社三菱東京UFJ銀行はカナダでは所有権を持てないので
株式会社三菱東京UFJ銀行はBank
of Tokyo-Mitsubishi UFJ
(Canada)というカナダ法人を現地に設立したのではないでしょうか。
取引というの全て同一の法律に基づいて行わなければなりません。
したがって、法理的には、国際間の取引というのは一切行えないのです。
以上がこのたびの公告に関するコメントになるわけなのですが、以上のコメントをヒントにもう一歩会計について考えてみますと、
会社の貸借対照表の資産の部に計上されるのは「会社が所有権を有している資産」である、という言い方ができると思います。
こう書くと当たり前ではないか、と思われるかもしれませんが、この「所有権」という観点から見ますと、
実は昨日のコメントで書きました、付随費用の取得価額算入や私が提唱しました繰延資産計上(付随費用を別途資産計上すること)が、
法理的にはおかしな点がある、ということの説明になると思います。
昨日のコメントや私が書きました図(「付随費用の概念図」)を見て欲しいのですが、結局のところ、
付随費用というのは全て、取引としては完了してしまっている形としては残らないサービス(の代価)、であるわけです。
一言で言えば、付随費用には会社の所有権はないわけです。
有体物(「目的物」そのもの)であれば(もしくは拡張させて考えれば株式等の有価証券を含む)、会社の所有権があるわけですが、
付随費用の部分には、会社が所有権を有すると言える類のものは何1つないわけです。
付随費用の部分というのは、財ではなく「サービス」、有体物ではなく「有体物ではないもの」、であるわけです。
そうしますと、
@会社の貸借対照表の資産の部に計上されるのは「会社が所有権を有している資産」である。
A付随費用には会社の所有権はない。
という会計における2つの基本概念を合わせて考えれば、「付随費用は貸借対照表に計上できない。」という結論になるわけです。
昨日は、
@目的物の売却による利益額を適正に計算するという会計上の目的がある。
という理由から、付随費用を目的物の取得価額に算入することは正しい、と書きました。
さらに、A売り手との間で行われた目的物の等価交換部分を目的物の価額とするべき。
という理由から言えば、付随費用は別途繰延資産として計上するべきだ、と1つの案として私は提唱しました。
以上2つのどちらの会計処理方法を行おうが、目的物の売却による利益額は同じになるわけですが、いずれにせよ、
付随費用を目的物の取得価額に算入するか別途繰延資産に計上するかのどちらかの会計処理方法により、
「付随費用を資産計上することは現代会計においては理論上は正しい」、と昨日は書きました。
昨日書いた内容は正しいわけですが、今日はさらに新たな切り口から付随費用の会計処理方法について考えているわけですが、
会計上の目的や等価交換取引という見方とは別に、「所有権」という切り口から付随費用を見ますと、
B付随費用には会社の所有権はない。
という理由により、付随費用はいかなる勘定科目であろうとも資産計上はするべきではない、という結論になるわけです。
当然、付随費用を取得価額に算入することも行ってはならない、ということになります。
付随費用には会社の所有権はない本質的理由は、付随費用はサービスの結果だからです。
目的物の取得、財の取得、有体物の取得の結果ではないからです。
元祖所得税法(明治三十二年所得税法)では付随費用という考え方は一切なかったという点については図書館に行くまでもありませんが、
そこまで時代をさかのぼらなくても、例えば一番最初の法人税法では付随費用に関してはどのような定めになっていたでしょうか。
税法理や課税理論から考えても、現代会計の前提を踏まれば、理論上の答えは実は一意には決まらないように思います。
今日書きました上記3つの理由どれもが、十分な論拠になり得るように思います。
ただ、例えば、付随費用は税法上損金ではない、と考えますと、付随費用を取得価額に算入するという考え方はあり得ませんし、
繰延資産として資産計上するという考え方もあり得ません。
なぜなら、付随費用を目的物の取得時に費用計上しようが販売時に費用計上しようが、
目的物の販売による利益額(課税所得額)には無関係だからです。
他の言い方をすると、付随費用は課税関係の議論の対象外だ、ということになるからです。
企業会計上の話をすると、保守主義の原則の観点から、将来損金とはならない費用を資産計上することは認められない、
という考え方になりますから、企業会計上も付随費用は取得価額に算入できませんし繰延資産にも資産計上できません。
このことを別の観点から見ると、企業会計上、資産計上してよいのは将来税務上損金となる費用(取得価額)だけだ、
という言い方になると思います。
これは税務会計と企業会計の調整を図っているというより、保守主義の原則の観点からそう言える、と考えるべきでしょう。
逆から言えば、将来税務上損金となる費用(取得価額)であれば資産計上を行っても保守主義の原則には反しない、
という考え方・前提が現代会計にはある、ということになると思います。
この考え方・前提が現代会計にはある、となりますと、
実は現代会計は将来税法上の益金があることを前提として理論が構築されている、という言い方ができると思います。
いわゆる資産の減損処理では、大まかに言えば回収可能な額まで資産の価額を切り下げる、という考え方をしますが、
それは資産の価額を将来損金算入が可能な価額まで切り下げる、という意味なのではないでしょうか。
ただ、損金算入を行うのはあくまで会社(法人)であるわけです。
そうすると、資産単位で価額を切り下げることとは整合性を欠く部分が出てくるわけです。
ある事業の業績が不振であり資産単位で言えばある資産は全く回収が不可能であるのだが、
他の事業では十分に益金を獲得できる見通しとなっている、という場合、その資産は減損処理を行う必要はあるのか、
という問題が生じるわけです。
企業会計上求められている資産の減損処理は、税法上の損金算入可能性とは無関係に行わなければならない、
と考えれば、減損処理は資産単位で行う、ということになるとは思いますが。
話が複雑に過ぎるため資産の減損処理のことはここでは議論しないこととしますが、いずれにせよ、
現代会計では、将来損金算入される費用や取得価額だけが貸借対照表に資産として計上することができる(保守主義の原則に反しない)、
という理論上の前提があるように思います。
このことは、貸借対照表の資産勘定というのは全て、将来税法上損金算入を行うためだけに、
次期以降に費用や取得価額を繰り越しているに過ぎないからだ(言わば、貸借対照表の資産の部全体が一種の繰延資産だ)、
という見方が、どこが理論の基底にあるようにも思います。
この見方から言えば、貸借対照表の資産勘定は、何ら将来の収益の獲得要因(収益力を表すもの)ではなく、
ただの将来の損金算入の要因を表しているに過ぎない、ということになります。
この見方は実は現代会計論の根本部分なのではないだろうか、という気もするわけですが、
何を資産計上してよく何は資産計上してはならないのかは、将来税法上損金算入されるか否かで決まる、
という基本概念が実はあるのではないか、というふうに思います。
ただし、現金は除く、だと思います。
ここでも、"All
that exist in this world are cash and the
others."(この世には現金と現金以外しかありません。)、
ということになると思います。
つまり、現金は持っているだけでは益金でも損金でもありませんから、現金勘定だけは無条件に資産計上してよいわけです。
しかし、現金勘定以外の勘定科目については、その勘定科目が将来税法上損金算入されるのなら資産計上してよく、
その勘定科目が将来税法上損金算入されないのなら資産計上はできない、
という現代会計における理論的前提があるように思います。
理論上は、その勘定科目が将来税法上損金算入されるとなりますと、その勘定科目の価額を上回る収益を会社は獲得できる、
ということを意味しますから、結果、保守主義の原則には反しない(だから資産計上してよい)、
という論理立てがあるのではないでしょうか。
そういった、現代会計や貸借対照表の構造の基底部分には法人税法の考え方(損金算入可能性)が実はあるのではないか、と思います。
”その勘定科目の価額を上回る収益を会社は将来獲得できる”ということに根拠はあるのかというと、確かに難しい部分はありますが、
理論的な整合性としては、税法上将来損金算入されるのであれば資産計上をしてよい、と考えることの背景には、
その資産の売却(もしくは稼動など)により将来十分な益金を獲得できるからだ、という考え方があるのだと思います。
逆から言えば、ある勘定科目が税法上将来損金算入されないとなりますと、将来十分な益金を獲得できない、ということを意味しますので、
その勘定科目は資産計上はできない(企業会計上はその時に費用計上しなければならない)、という考え方になるのだと思います。
将来十分な益金を獲得できない理由は、主には、@そもそも収益の獲得には寄与しない現金支出である(寄付のようなものだとみなす)、
A事業が不振で十分な価額で資産を売却できない、という理由になると思います。
@の理由は、収益の獲得との関連性がないため、支出額はそもそも資産として計上できない、という考え方になるでしょう。
Aの理由は、資産の減損処理と関連する論点になると思います。
結局、税法の場合は、どれを損金としどれを損金とはしないのか、で話が大きく変わってしまうのだと思います。
それが企業会計にも大きな影響を与えているのだと思います。
付随費用との関連で言えば、付随費用は税法上損金ではないのなら、はじめから資産計上の話は出てこないわけです。
ところが、付随費用は税法上損金であるとなりますと、途端に付随費用をどのように会計処理するべきか、
が問題になるわけです。
単純に、営業費用ということで付随費用を支払った期の損金とする、という考え方もあるでしょう。
または、付随費用は目的物の取得価額に算入し、目的物が売却された期の損金とする、という考え方もあるでしょう。
または、それでは等価交換の考え方に反する(目的物の価額が売り手から取得した価額になっていない)、というのなら、
付随費用は販売時まで一旦繰延資産に計上する、という考え方もあるでしょう。
または、付随費用には会社の所有権はないではないか、だから、付随費用はいかなる形であれ資産計上してはならず、
付随費用を支払った期の損金としなければならない、という考え方もあるでしょう。
この会計処理方法のどれもに、現代会計上は十分な根拠があると言えるわけです。
あとは、せいぜい(と言っても課税理論上は重要な論点ですが)、目的物を売却したことによる利益額というものを
どのように捉えるか・計算するか、により、相対的に正しいと言える会計処理方法が決まる、というだけであるわけです。
獲得した収益に対する付随費用の位置付け、と表現してもいいと思います。
付随費用は目的物を取得した期の損金となりますと、付随費用は収益の獲得とは関係がない、とみなしていることになるでしょう。
逆に、付随費用は目的物を販売した期の損金となりますと、付随費用は収益の獲得と関係がある(だから益金と損金の期を対応させた)、
とみなしていることになるでしょう。
このどちらが正しいかについては絶対的な判断はないかとは思いますが、
目的物との関連性や一体性(”直接要した”等の意味)なども考慮すれば、
付随費用は目的物を販売した期の損金とすると考える方に分があるように思います。
では販売時まで付随費用をどのように資産計上するかとなりますと、先ほど書きましたように、
取得価額に算入するという方法と繰延資産に計上するという方法が考えられる、ということになるわけです。
この場合も、このどちらが正しいかについては絶対的な判断はないわけです。
繰延資産と言いますと、企業会計原則や法人税法には、極限られた限定的な項目のみを繰延資産として定めてあるわけですが、
それも結局のところは定義の話に過ぎないわけです。
現行の定めから言えば、付随費用は繰延資産には該当しない、というだけのことであって、
概念的には、費用計上の繰り延べとは、既に行った現金支出をどのように将来費用計上するか、の話に過ぎないわけです。
他の繰延資産勘定とは異なり、ある定まった期間内において規則的な償却を行うわけではありませんが、
付随費用を繰延資産として定義し、目的物の販売時に償却する(販売時に売上原価に振り替える)、
というふうに考えることは理論上は何ら間違ってはいないわけです。
例えば、現行の繰延資産の「創立費」は、会社設立後5年間に獲得する収益と関連がある、と定義しているに過ぎないわけです。
繰延資産を広く捉えれば(広く再定義すれば)、繰延資産は等価交換取引との整合性を図る上でも有用な勘定となるように思います。
様々な論点についても書きましたが、昨日のコメントとは別の観点からになりますが、今日は、
会社の貸借対照表の資産の部に計上されるのは「会社が所有権を有している資産」である、
という観点から、付随費用についての会計処理方法を考えました。