2015年12月26日(土)



2015年12月21日(月)日本経済新聞
総会議案の早期ネット開示進むが・・・ 公開期間、欧米より短く 義務化へ法改正も選択肢
(記事)






【コメント】
株主総会議案を、株主に発送する前に自社サイトにてネットで早期開示する上場企業が増えている、という記事です。
ネット開示に関連した法改正も検討されているとのことですが、に記事を読んで思った論点は2つです。
1つ目は、仮に、株主総会議案をネットで開示するということが、法律的にも有効な議案の閲覧ということになりますと、
会社は株主に対し個別に株主総会議案を発送する必要性がなくなるのではないか、という点です。
会社がネット上に開示した情報が正しい情報である、というふうに、会社法上も定義されるならば、
会社はわざわざ株主に対し個別に株主総会議案を発送する必要はないわけです。
現在の会社法では、「株主は会社が発送した郵便物を無事受け取ることができる」ということを前提にしており、
ネットでの開示情報に関しては特段会社法では定義はしていない(有効とも無効とも定めていない)、ということかと思いますが、
同様に前提を置き、「株主は会社がネット上に開示した情報を無事閲覧することができる」ということを前提にして、
個別に株主総会議案を発送する必要はなくネットでの開示で十分に有効だ、というふうに会社法を改正することはできるわけです。
さらに、株主がIDとパスワード等を入力することで、ネット上で議決権行使を行うことも有効だ、と言えるようにもなるわけです。
要するに、1点目は、早期開示というよりも、ネット開示だけで事足りる、という考え方が出てくるのではないか、
というふうに思ったわけです。
これならば、会社がネット上に株主総会議案を開示した日が、現在で言うところの株主総会招集通知発送日、となるわけです。
ネット上の開示だけで法律的に有効だとなりますと、書類発送のための手間や郵送費などが削減されます。
また、郵便物が株主に届くまでに遠方ですとは2〜3日ほどかかるわけですが、ネット上での開示ですとまさに瞬時であるわけです。
会社がネット上に開示した情報の会社法上の有効性、といった点が気になりました。

 



2点目も1点目と関連する内容になるのですが、
仮に株主総会議案をネット上で開示することを会社法上義務化するとなりますと、
今度は逆に、会社は株主に対し個別に株主総会議案を発送してはならない、という考え方が出てくるのかもしれないな、と思いました。
というのは、今度は、会社法上の「開示日」(現在で言うところの発送日)が問題になるように感じるからです。
現在の規定では、会社は株主総会招集通知を株主総会日の2週間前までに発送しなければなりませんが、
会社法上は郵便物が瞬時に届くことは法理上想定していないと思われまして(要するに数日後に株主に届くことを想定している)、
何と言いますか、ネット開示が義務となりますと、「株主にとっての情報開示日」が一体いつなのかが明確ではなくなる、
というふうに感じるわけです。
ただ単に自主的な「早期」開示というだけであれば、あくまで株主総会招集通知発送日が発送日というだけであるわけです。
つまり、「早期」開示というだけなら、ネット開示日は会社法上は株主総会招集通知発送日でも何でもないわけです。
ところが、ネットでの開示が会社法上の義務となりますと、ネット開示日が会社法上の有効な開示日の1つというふうに位置付けられる、
というふうに感じられまして、そうしますと、
株主総会招集通知発送日とは会社法上は一体何の日なのか、という疑問が出てくるわけです。
実務上のことを考えますと、株主総会招集通知発送日とネット開示日は同じでなければならない、
といった具合に定めれば、「株主総会招集通知発送日=ネット開示日」は株主総会開催日の2週間前まででなければならない、
という解釈ができるのかもしれないな、と思うわけですが、
その場合は既に「早期」開示という捉え方ではなく、会社法上株主総会招集通知発送と全く同等の意味・効力を持つ有効な開示、
というふうに、株主総会招集通知発送とネット開示とを整理しないといけないのではないか、と思いました。
最初の方で、会社は株主に対し個別に株主総会議案を発送してはならないのではないか、と書きましたが、
それはやや言い過ぎになるのかもしれないと言いますか、会社法上義務化となりますと、
例えば株主総会招集通知発送日よりもネット開示日が遅い場合が問題になるのかもしれないと思いまして、
要するに、「株主総会開催日の2週間前までに行わなければならない」のはどちらの日付になるのか、
という点を明確にしておかなければ、株主総会の招集手続きに瑕疵が生じる場面が出てくるのではないか、と思いました。


 

At which range should a listed company disclose its information to the public?

上場企業は、どの範囲の情報を広く一般に開示をするべきなのか。