2015年12月25日(金)


2015年12月25日(金)日本経済新聞 公告
株主名簿管理人事務取扱場所の変更のお知らせ
三京化成株式会社
株主名簿管理人事務取扱場所の変更のお知らせ
デンヨー株式会社
所属外国銀行の本店所在地変更に関する公告
株式会社三菱東京UFJ銀行
(記事)



【コメント】
「株主名簿管理人事務取扱場所の変更のお知らせ」は、会社ではなく、「株主名簿管理人」が本店を移転した、という旨の公告です。
公告の「株主名簿管理人」とは、「東京証券代行株式会社」です。
しかし、「東京証券代行株式会社」を「株主名簿管理人」にしている上場企業は何百社もあるのではないでしょうか。
もしそうだとすると、「東京証券代行株式会社」の本社移転に伴い、
「東京証券代行株式会社」を「株主名簿管理人」にしている上場企業数百社は全て、
「株主名簿管理人事務取扱場所の変更のお知らせ」を公告しなければならない、ということになると思います。
現に、三京化成株式会社とデンヨー株式会社とでは、公告の文面が全く同じであるかと思います。
やはり理屈では、そういうことになると思います。


 



2015年12月25日(金)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
日本管理センター株式会社
(記事)




2015年12月24日
日本管理センター株式会社
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://pdf.irpocket.com/C3276/OumS/P48N/RamI.pdf

 


関連する公告

2015年12月25日(金)日本経済新聞 公告
証券投資信託の信託終了のお知らせ
NNインベストメンツ・パートナー株式会社
(記事)

 



【コメント】
日本管理センター株式会社による自己株式の公開買付けは、筆頭株主からの株式を取得することを目的としたものです。
買付価格は、直近の株価水準よりも7%ほど低い価格となっています。
筆頭株主以外の株主が公開買付に応募することは基本的には想定はしていないわけです。
ただ、筆頭株主の現在の株式所有割合は25.23%である一方、応募予定の株式は4.03%のみということで、
筆頭株主の目的はいまいち分からないように思います。
このたびの日本管理センター株式会社による自己株式の公開買付けを題材に思ったことは2つあります。
1つは、そもそも日本管理センター株式会社は公開買付という手法を用いて自己株式の取得をするのではなく、
相対取引で筆頭株主と自己株式の取得をすればいいのではないか、という点です。
上場株式は、どの程度・どのような場合に相対取引で取引を行ってよいのか、については現行の定めについては分かりませんが、
まさにプレスリリースに書かれていますように、このたびわざわざ公開買付により自己株式を取得する理由というのは、
”一時的にまとまった数量の株式が市場に放出されることによる当社普通株式の流動性及び市場価格に与える影響”
を考慮してのことであるわけです。
このことは逆から言えば、会社が筆頭株主から株式を買い取ることで市場株価や他の取引に影響を与えたくない、
と言っていることと同じであるわけですから、有体に言えばそれは「市場取引は行いたくない」と言っていることと同じであるわけです。
上場株式は市場取引のみが認められる、という観点から言えば、「市場取引は行いたくない」と考えること自体が間違いである、
と言わねばならないかもしれませんが、しかしそれを言うなら、公開買付とは一体何だ、という話にもなるわけです。
公開買付とは、市場外で株式を買い付ける行為です。
公開買付では、不特定多数の相手から買い付けるので、市場取引に近いのではないか、と思ってしまうだけなのです。
ただ、特定の相手と特定の価格(ただし市場株価よりも低い価格であることが言わば条件ですが)での売買に合意がある場合ですと、
このたびのように実質的に特定の相手のみを対象とした公開買付が実施できるわけですが、
それは結局のところ、相対取引と同じであるわけです。
「上場株式は、どの程度・どのような場合に相対取引で取引を行ってよいのか。」、については自分でもまだ答えは出ていませんし、
何を所与の事とするかで、法理上の答えも変わってくると思います。
たとえ”一時的にまとまった数量の株式が市場に放出されることによる当社普通株式の流動性及び市場価格に与える影響”
が非常に大きかろうと、それはあくまで市場取引の結果なのですから、
会社も株主にも投資家も証券会社その他も日本経済も、甘んじて受けるしかない、という考え方もあるわけです。
ですので、そのあたりで何か現実的な妥協をするのであれば、上場株式の取引にも一定度の相対取引を認めるしかないように思います。
その答えはまだ私には出ていませんが、例えば、まさにこのたびの事例のように、
「特定の取引相手がいる場合」は、会社と株主との間だけではなく、株主と株主との間の取引に関しても、
上場株式の自由な条件による相対取引を認めるべきであると思います。
投資家保護というのなら、株式を自由な価格で売買する権利も認められるべきではないか、という気がします。
株式市場というのは、あくまで「見ず知らずの不特定多数の投資家が出会う場」であるわけです。
特定の取引相手がいないのであれば、株式市場で上場株式を売買すればいいと思いますが、
特定の取引相手がいるのであれば、上場株式の売買は株式市場のみに制限される必要はないように思います。

 


2点目ですが、自己株式の取得そのものについてです。
自己株式の取得は、理論的にはいくつかの点から問題点を指摘できるかと思いますが、
今日は「株主平等の原則」の観点から問題点を指摘したいと思います。
このように書くとすぐに分かるかと思いますが、自己株式の取得は「株主平等の原則」に反するわけです。
「株主平等の原則」は「全ての株式は会社から全く同一の取り扱いを受けなければならない」という原則です。
他の言い方をすれば、全ての株式は無差別だ、という意味です。
理論的には、株主間での株式の譲渡価額が株主毎に異なることは、
会社からの取り扱いが異なっていることとは異なるため(あくまで株主間の問題に過ぎない)、
「株主平等の原則」には反しない、と考えられます。
ここで、自己株式の取得ということについて考えますと、自己株式の取得とは会社が一部の株式のみを買い取ることを意味するわけです。
他の言い方をすれば、自己株式の取得とは一部の株式のみを社外に流通されていない状態にすることを意味するわけです。
厳密な会計用語としての「retirement」は「(取得した)自己株式を(その後)消却すること」を意味しますが、
一般的な意味合い・使い方をすれば、自己株式の取得により株式の一部を「retire」させる(使われない状態にする)わけです。
これは、「全ての株式は会社から全く同一の取り扱いを受けねばならない」という考え方に反するわけです。
理論的には、自己株式の取得は「all or nothing」(全ての株式を取得するか、全く取得しないか)になる、と言えるでしょう。
一方で、最初に「関連する公告」として紹介しています「証券投資信託の信託終了のお知らせ」では、
ファンドの受益権口の払戻しについて書かれています。
該当する証券投資信託では、出資者からの請求により受益権口の払戻しが続いている状態であるようです。
それで、証券投資信託自体を終了することにしたようです。
証券投資信託の詳しい仕組みについては分かりませんが、
株式会社とは異なり、証券投資信託では受益権口の任意の払戻しは前提のことなのだとすれば、
それは、理論的には「証券投資信託への出資者は制度上平等ではない」ということが前提だ、と表現できると思います。
これは株式会社における「株主平等の原則」と対比させた場合の考え方になります。
他の言い方をすれば、証券投資信託では、出資者は証券投資信託から同一の取り扱いを受けることは前提とはされていない、
という言い方ができると思います。
もちろん、同一時点において受益権口の払戻し金額が出資者毎に異なることは制度上・約款上認められないとは思いますが、
早期に払戻しを受けた出資者は多くの払戻しを受けたが、終了時に払戻しを受けた出資者わずかな払戻ししか受けられなかった、
というようなことは、現実には起こり得ることだと言えるでしょう。
それは、「出資者は平等ではない」ということを前提にしている、と表現できるでしょう。
そして、株式会社においても、自己株式の取得を所与のこととするならば、
株式会社においても「株主は平等ではない」ということを前提としている、と言わねばならないでしょう。

 



煎じ詰めれば、今日書きました自己株式の取得の問題点とは、清算時の残余財産の分配額と関係してくる論点なのだと思います。
会社清算時、全ての株式は同一の残余財産の分配額を受けねばならないわけです。
しかし、一部の株式を会社が取得してしまいますと、
その時点で(自己株式の取得前を含む)全ての株式が同一の残余財産の分配額を受けることができなくなるわけです。
簡単に言えば、自己株式の取得に応じた株主のみが会社清算前に会社財産を受け取り、
残りの株主は残余財産を受け取れない、という事態が生じ得るわけです。
自己株式の取得は、全ての株式は無差別である、という株式会社における原理原則に反する行為だ、と言わねばならないと思います。

 


The fact that only a part of the investors to an entity can be repaid their money invested means
that the investors are not equal.
If the investors are equal, all the investors should be repaid their money invested at the same time.

事業体への出資者のうち一部の出資者にだけ出資金を払い戻すことができるということは、出資者は平等ではない、という意味です。
もしも出資者は平等だというのなら、全ての出資者は同時に出資金の払戻しを受けなければならないのです。