2015年11月29日(日)
2015年11月2日(月)日本経済新聞
セミナール 国際通貨の条件 H
外貨準備は緊急時の備え
(記事)
2015年11月3日(火)日本経済新聞
ゼミナール 国際通貨の条件 I
協調と相互信頼が不可欠
(記事)
【コメント】
各国の中央銀行が持っている「外貨準備」や、
国際通貨基金(IMF)を通じて外貨に余裕がある大国から外貨を一時的に借り入れることができる権利である「特別引き出し権(SDR)」
については詳しくは分かりません。
特に、国際通貨基金(IMF)の「特別引き出し権(SDR)」については今回の記事で初めて聞いたような気がします。
「特別引き出し権(SDR)」自体は1969年からあるようなのですが、私は今まで一度も聞いたことがありませんでした。
記事には、「特別引き出し権(SDR)」の仕組みとして”SDRと外貨の交換(スワップ)”を行う(スワップ取引を行う)、
と書かれていますが、「特別引き出し権(SDR)」というのは、他国から外貨を借りることだ、と理解していいように思います。
例えば、日本の中央銀行の外貨準備として米ドルが不足しているとします。
この時、日本の中央銀行は「特別引き出し権(SDR)」を行使し、米ドルを十分に保有している他国の中央銀行から
米ドルを借り入れることができるのだと思います。
これは一時的に米ドルを借りているだけなのですから、日本の中央銀行がその後十分な米ドルを保有することができたら、
米ドルを貸してくれた他国の中央銀行に返済しなければなりません。
人民元がSDR構成通貨に入るとは、SDRを行使することで他国の中央銀行から人民元を借りることができる、という意味だと思います。
逆から言えば、今までは、SDRを行使しても他国の中央銀行から人民元を借り入れることはできなかった、ということです。
ただ、各国の中央銀行間で通貨(自国通貨や他国通貨)の融通(貸し借り)をどれくらい行っているのかは分かりませんが、
SDRという形ではなく言わば相対取引で人民元を借り入れることは今までもできた、ということではないかと思います。
SDRについてはこのたび初めて聞いたものですから、間違っている点もあるかもしれませんが、
大まかに言うと以上のようなことではないだろうかと思います。
SDRについてもう少しだけ追記しますと、記事には「現在のSDR構成比」の円グラフが載っています。
米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4通貨に、このたび人民元が追加されようとしているわけです。
ただ、「外貨」ということについて改めて考えてみますと、「外貨」が必要になる時というのは基本的には貿易の時だけであるわけです。
ではその貿易の時に用いられる通貨はと言えば、結局のところ基軸通貨である米ドルということになるのではないでしょうか。
つまり、「外貨が必要だ」という時には、事実上「米ドルが必要だ」と言っているに等しいのではないかと思います。
日本企業が貿易のため米ドルを保有することはあると思います。
しかし、たとえユーロ圏との貿易でも決済は米ドルで行うというのなら、
ユーロ圏との貿易でもユーロは必要なく、やはり必要な外貨というのは米ドルになるわけです。
これは世界各国全ての国について同じことが言えるでしょう。
むしろ、貿易で使う通貨は統一するべきであり、そして事実上米ドルが基軸通貨になっているわけです。
そうしますと、国家間で米ドル以外の通貨が取引されることはないのではないか、という話になってくるわけです。
それはイコール、SDRでも米ドル以外の通貨が取引されることはない、ということではないでしょうか。
この考えが正しいなら、「SDR構成比」は米ドルが100%、ということになると思います。
貿易の際、米ドル以外の通貨で決済するということもあるとは思いますが、
マクロ的な視点から言えば、貿易の決済は米ドルのみで行っている、と言っていいと思います。
それから、外貨準備ということについても思うところがあるのですが、そもそも中央銀行はなぜ外貨準備を持っているのでしょうか。
その目的を一言で言えば、為替相場安定のため、ということになるのでしょうが、
それを言うなら、固定為替相場制にすれば為替相場は始めから安定しているわけです。
変動為替相場制を採用しておきながら、為替相場を安定させるというのは矛盾ではないでしょうか。
また、民間企業が外貨が必要になった時に緊急時には中央銀行がその売り手となるため、
という目的も外貨準備にはあるのだと思いますが、
そもそも中央銀行が外貨を市中に提供する役割を負う必要があるのでしょうか。
中央銀行が市中に提供しなければならないのは自国通貨だけではないでしょうか。
民間企業が貿易の決済のために外貨が必要だというのなら、その民間企業の責任において外貨を入手すべき話でしょう。
「手許に十分な外貨がなくこのままでは決済ができませんので、中央銀行さん、私に外貨を売ってください。」、というのは、
商取引の基本ができていないと言わねばならないのではないでしょうか。
本来的なことを言えば、中央銀行の取引相手は市中銀行(それも通貨は自国通貨のみ)のみであるはずです。
中央銀行が外国通貨取引の市場で外貨の取引相手になる(それにより市中に外貨を供給する・市中から外貨を吸収する)、
というのはおかしな話ではないでしょうか。
外貨の供給・吸収とは、”外貨版売りオペ・買いオペ”(外貨版公開市場操作)だ、とでも言うのでしょうか。
本来の公開市場操作とは、国内における日本円の供給量の調整ということかと思いますが、
中央銀行が外貨準備を持つ(そして市場で外貨を売買する)ということは、公開市場操作の外貨版だ、ということと同じでしょう。
日本の中央銀行であれば、本来的には国内における日本円の供給量・流通量に責任を負うということではないでしょうか。
日本国内における外貨の供給量・流通量の調整をも、中央銀行が担う必要があるのか、という問題はあろうかと思います。
国際化の昨今ですから、ということで、中央銀行が担うべき役割も拡大している、ということかとは思いますが、
民間企業の商取引という観点から見ますと、外貨にまで中央銀行が面倒を見る、というのはおかしな話だと思います。
外貨供給も中央銀行の役割だというのなら、例えば日本銀行で米ドル紙幣を印際し日本国内に供給する、
ということが、米国政府からそして国際的に認められなければならない、ということになるのではないでしょうか。
端的に言えば、日本銀行の担当範囲は日本円だけだ、ということではないでしょうか。
輸入も輸出も為替レートには影響を与えません。
なぜなら、ドルを稼いだ輸出業者はその後そのドルを本国通貨に両替するからです。
The only currency which you can trust is your home country's currency.
信用してよい唯一の通貨は、本国通貨のみです。
The reason for the concept above is that your central bank guarantees your home country's currency.
上記のように考えてよい理由は、中央銀行が自国通貨を保証しているからです。