2015年11月2日(月)
それから、最初の方で少し書きましたが、消費税は、消費者ではなく事業者にとっては、
手許現金を本体価格よりも消費税分常に多めに持っておかなければならないという、
一種の”担税力”が要求されるものだ、表現できるでしょう。
この”担税力”は、事業者の資金繰りをその分圧迫します。
事業者は、消費税を最終的には「負担」しはしないのですが、商品を仕入れる際に消費税を一旦「支払い」はするわけです。
なぜなら、仕入価格(仕入先に対して支払う現金)には消費税が含まれているからです。
この一旦支払った消費税は、次の販売相手(事業者もしくは消費者)に消費税を付加した価格で商品を販売することにより回収されます。
確かに、最終的には事業者が消費税を「負担」することはないわけですが、
一時的に消費税を支払っていることには変わりないわけです。
これは言わば”担税力”と表現してもよいものだと思います。
本来、100円の商品を仕入れたければ、100円だけ持っていればいいはずです。
しかし、自分が負担するわけでもない税目を一時的であるにせよ支払わなければならないために、
100円だけでなくプラス8円持っていなければ商品を仕入れられないわけです。
小売段階であれば、消費者が100円だけでなくプラス8円持っていなければ商品を買えない、ということには合理性があります。
なぜなら、その8円は消費者自身が負担するものだからです。
極端な話、消費者にはその8円が消費税なのか小売店による営業費用の転嫁なのかに区別はないわけです。
わざわざ店頭で、「本体価格100円、消費税8円」などと表示するから、消費者は「別途8円を支払った」、感じるだけなのです。
「消費者が税務当局に納付をするわけではない」という一点で、実は消費者には本体価格も消費税額もないわけです。
小売業者が消費者から受け取った消費税を正しく納付していることを明確に示すために、
値札やレシートその他で「本体価格100円、消費税8円」と表示する必要があるだけのことなのです。
今まで100円だったお菓子が110円に値上げされたとします。
その時、消費者は10円値上げするのはおかしい、と言うでしょうか。
消費税も同じであり、消費税導入によりお菓子が100円から103円になったとしても、
そのことをおかしいと消費者がいうのはおかしいわけです。
通常の値上げと何が違うのか、という話になるわけです。
究極的なことを言えば、消費者は消費税を支払うということを意識しないし意識できないのです。
理由は2つあり、1つは消費税額は営業費用(原価の上昇等)の転嫁と区別は付かないからであり、
もう1つは消費者が消費税を納付するからではないからです。
この点、小売業者は消費税ということを明確に意識します。
なぜなら、小売業者は消費者から受け取った消費税を税務当局に納付するからです。
小売業者にとっては、消費税額と営業費用(原価の上昇等)の転嫁とは、明確に区別されるものなのです。
お客さんから受け取る現金は一緒だ、などということは決してないわけです。
消費者には、100円も103円も110円も同じです。
しかし、小売業者には、100円と103円と110円は全て完全に意味が異なるのです。
100円の商品を110円に値上げしたというだけでは、小売業者は消費税を納付する必要はありません。
しかし、本体価格100円の商品を103円で販売した場合は、小売業者は消費税を3円納付しなければならないのですから、
記事の内容についても一言だけコメントします。
話の腰を折ってしまうと、国際間の取引は税法理上は定義できない、となります。
税法理上は、「国内で行われる取引が課税の対象であり、なおかつ取引を行う双方がその同一国の人であること。」が前提となります。
たた、ここでは国際間の取引を所与のこととしますと、理論上の結論としては、
事業者は、販売相手がどの国の誰であろうとも、
消費税を付加した価格で販売し、相手方から受け取った消費税を税務当局に納付しなければならない、となります。
その理由は、販売はその国内で実現したからです。
ですから、外国人訪日客が日本の小売店で商品を購入しても、理論上は消費税はかかるのです。
問題は事業者が海外から商品を仕入れた場合です。
仕入先は、各国の消費税を付加した価格で事業者に販売するわけです。
その時の消費税額が、その仕入先にとっての仮受消費税額です。
それで、本来(国内における取引)ならば、仕入先にとっての仮受消費税額=事業者にとっての仮払消費税額、
となるわけです(「仕入先にとっての仮受消費税額=事業者にとっての仮払消費税額」だから消費税の概念が成り立つ)が、
海外と国内とで消費税率が異なる場合、もしくは、海外では消費税はかからないが国内では消費税がかかるなどという場合には、
仕入先にとっての仮受消費税額=事業者にとっての仮払消費税額、とはならないため、
事業者にとっての仮払消費税額がいくらか不明となるわけです。
そもそも、仕入先と事業者とで消費税の納付先(税務当局)が同じだから、消費税の概念が成り立つわけです。
なぜ事業者が納付するべき消費税額から仮払消費税額は控除されるのか。
その理由は、仮払消費税額分は、仕入先が(仮受消費税として)支払うからでしょう。
この(消費税の連鎖の)結果、税務当局が徴税する合計の消費税額は消費者が小売業者に支払う消費税額と一致するわけです。
ところが、国際間の取引となりますと、この仮受と仮払にまつわる消費税の連鎖自体が断ち切られてしまうわけです。
こうなりますと、理論上は「海外から仕入れた商品に関しては仮払消費税を認識しない。」、という考え方になると思います。
その海外取引で発生した消費税は、仕入先にとっては仮受消費税かもしれないが、事業者にとっては仮払消費税ではない、
と考えるわけです(その事業者はその国際取引に関して仮払消費税を支払わない言わば「原始事業者」だ、と考える)。
その事業者にとってはその時支払った消費税は納付の際控除されない(仮払消費税ではない)、と考えるわけです。
ただ、この考え方では極端だと言うのなら、実務上の対応策としては、
「その海外の仕入先にとっての仮受消費税額を事業者にとっての仮払消費税額であるとみなす。」
という方法になると思います。
理論上は、取引当事者間で適用される消費税法が異なっているわけですから、消費税の連鎖は断ち切られてしまっていますので、
そのようにみなすのも理論上はおかしいわけですが、
国際取引を所与のこととし、さらに、商取引において事業者は消費税を負担しないという点に重点を置くのなら、
苦肉の策として、そのような言わば”みなし仮払消費税額”を認識する、という方法になると思います。
記事にはいろいろと書かれていますが、
左上の図に関して言えば、消費税では、理論上、サービスが「消費者向け」か「事業者向け」かは全く関係ありません。
誰から対価を受け取ろうが(消費者であろうと事業者であろうと)、その事業者(サービス提供者)にとっては、
仮受消費税になる、というだけです。
販売(収益を受け取る)に関しては話は簡単だと思います。
消費税では、「仕入れ」(仮払消費税をどう認識するか)が問題になると思います。
右下の図には、仕入れ税額控除に関して、”海外の電子書店が国税庁に登録していないと引けなくなる”と書かれていますが、
「海外の電子書店が国税庁に登録する」とはおそらく、
海外の仕入先と国内の事業者とで、擬似的に適用される消費税法を同じにするための方策、ということだと思います。
このような方策を用いる場合は、その海外の仕入先(海外の電子書店)は、販売相手(米国内か日本か)により、
言わば適用される消費税法が異なる、ということになるのだと思います。
米国内の取引相手に販売する場合は米国の消費税法に従った消費税率で販売し、米国の税務当局に消費税を納付し、
日本の取引相手に販売する場合は日本の消費税法に従った消費税率で販売し、日本の税務当局に消費税を納付する、
ということなのだと思います。
法理的には、米国法人(米国自然人)が日本の税務当局に納税をすることはできないわけですが、
商取引上は日本の取引相手から商品代金を徴収できるのと同じように、
記事にあります国税庁への登録制度を活用すれば、
米国法人(米国自然人)が日本の税務当局に納税をすることが可能になるのだと思います。
ただ、その場合、日本の事業者にとっては仮払消費税額が明確なってめでたしめでたしであるわけですが、
その海外の事業者にとっては、その販売した商品に関する(仮受消費税ではなく)仮払消費税が今度は問題になるでしょう。
その海外(米国)の事業者は、米国の消費税法に従って商品を仕入れたが日本の消費税法に従って販売をした、
では、整合性が取れない(やはり消費税の連鎖がそこで途切れている)ことになるでしょう。
結局のところ、消費税では、「全事業者が同じ消費税法に従っていなければならない。」ということになるわけです。
国際間の取引となりますと消費税の連鎖が途切れてしまうのは道理であるわけです。
適用される消費税法が途切れるわけですから。
仮払消費税を支払うに際し適用される消費税法と、仮受消費税を受け取るに際し適用される消費税法は同じでなければならないわけです。
たとえ記事にあります国税庁への登録制度を活用しても、
流通段階をさかのぼれば米国の消費税法に基づき仮払・仮受が行われた消費税があるわけです。
そこでの「仮受消費税−仮払消費税」は国税庁には納付されない(米国の税務当局に納税される)わけです。
その海外(米国)の仕入先(海外の事業者)が「原始事業者」であれば、米国法に基づいた仮払消費税がないわけですから、
日本においても米国においても問題(消費税の連鎖が途切れること)はないわけですが。
海外から商品を仕入れた国内の事業者を消費税に関しては原始事業者と考えざるを得ないのもまた道理であろうと思います。
原始事業者とみなせば、(それ以前の流通段階における)仮払消費税は問題にならないわけですから。
消費税では、価値の連鎖や付加価値という考え方をするわけですが、その概念が成り立つためには、
原始事業者から消費者まで全当事者が同一の消費税法に従っている必要があるのです。
理論上は、記事にあります国税庁への登録制度では整合性は何ら取れていないのです。
仮に整合性を取ろうと思えば、取引に関わった米国の各流通段階の全事業者を登録する必要がある、ということになるのです。