2015年11月18日(水)
2015年11月18日(水)日本経済新聞
もしものホーム法務 深刻な相続争い 遺言書は兄が偽造?
有効か無効か、地裁が判断
(記事)
>公証役場において専門家が本人確認や証人の立ち会いなどを経て作成し、厳格に保管するため、偽造が疑われることはまずありません。
とのことです。
確かに、「公正証書遺言」という形式を取れば、「間違いなく本人の意思である。」ということが公にも担保・証明されます。
ところが、この「公正証書遺言」にも問題が実はあるのです。
それは、「遺言書の内容が本人の最後の意思であることの確認は誰にも取れない。」という点です。
遺言書というのは、遺産相続といったことも含め「俺が死んだらこうしてくれ。」と、
死にいく者の最後の意思をしたためたものであるわけです。
死にいく者の意思を表したものであるわけですから、当然、最後の意思であることが大切であるわけです。
しかし、人は遺言書を書いた直後に死ぬわけではありません。
遺言書を公証役場で書いた後、最後の日々を送る中で、今まで忘れていたことをふと思い出し、
「遺言書の内容を変更したい。」と思うことはあるわけです。
「公正証書遺言」という制度においても、遺言書の内容を変更することはできると思います。
その時、本人が公証役場まで行き、正式に遺言書の内容を変更する手続きを取れればいいのですが、
例えば既に病院のベッドの中にいて、遺言書の内容を変更したくても変更できない、ということはあるわけです。
仮に病室でも遺言書の内容は変更できるとしても、
結局、最後の最後は、遺言書の内容が本人の最後の意思かどうかは誰にも分からないわけです。
辞書を引きますと、遺言書は正式には英語で「one’s last will and
testament」というようです。
文字通り、遺言書は死にいく者の最後の意思であるわけです。
「公正証書遺言」の内容は一切変更できない(「公正証書遺言」の内容が法律上の本人の最後の意思だ)、
というふうに決めてしまうという方法もあるかとは思いますが、遺言書は特に最後の意思という点に重点があるのだと思います。
遺言書の内容は、本人が死んだ後に実現されていく事柄であるだけに、とりわけ「最後の意思」ということが大切なのだと思います。
以上のような理由により、遺言書は実際には使われていないのだと思います。
Even if a written will which the deceased wrote is genuine, no one can certify the will as his last will.
たとえ亡くなった方が書いた遺言書が本物なのだとしても、誰もその遺言書がその人の最後の意思であることを証明できません。
2015年11月17日
新日本空調株式会社
株主優待制度および長期保有優待制度の導入に関するお知らせ
ttp://v3.eir-parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=tdnet&sid=1305691&code=1952&ln=ja&disp=simple
【コメント】
株主優待制度の問題点については今までに何回か書いてきたかと思います。
これまでに挙げた問題点を大まかに書けば、以下のようになります。
@株主に対するただの寄付ではないか。
A利益剰余金がない状態でも株主に利益を与えることができてしまうのではないか。
B少数株主の意向は反映されていない、大株主のみが希望する株主優待制度が導入されてしまうのでないか。
C優待品が現金だと考えてみれば株主優待制度はおかしいと分かるのではないか。
今日は、これまでとはまた違った切り口から株主優待制度の問題点について見てみたいと思います。
今日の切り口は、最近話題の「消費税」です。
新日本空調株式会社は、株主優待制度の優待品としてカタログギフト2,000円相当を贈呈するとのことですが、
そのカタログの商品には東北地方の特産品を含める予定だ、とのことです。
また、長期保有優待制度の優待品としてキッズスマイルQUO
カード1,000
円分を贈呈するとのことです。
つまり、新日本空調株式会社は、優待品として株主に贈呈するために、
東北地方の特産品とキッズスマイルQUO
カードを購入しなければならないわけです。
このことを一般化して言えば、会社は優待品として株主に贈呈するために品物を購入しなければならない、となるわけです。
このような場合に、品物の購入に際して会社が支払う「消費税」が、株主優待制度の問題点の1つの切り口になると思いました。
結論を端的に言えば、この時に会社が支払う消費税は、仮払消費税とはなりません。
なぜなら、会社は販売を目的として品物を購入するわけではないからです。
会社が支払った消費税が仮払消費税となるのは、販売を目的として商品を仕入れる場合のみです。
販売を目的としていない場合は、会社が支払った消費税は、純粋に自社消費のための購入に伴う消費税ということになりますから、
一種の租税公課ということになるわけです。
当然、税を支払っただけなのですから、その消費税の支払いは税務上損金にはなりません。
そして、それらの品物を購入するのにかかった費用も、税務上は損金にはなりません。
企業会計上は一種の交際費になると思います。
大まかにまとめれば、次のようになります。
○販売を目的とした商品の購入
→商品の原価は(販売実現に伴い)売上原価(税務上は損金)になり、その際支払った消費税は仮払消費税(税納付額が減る)となる。
○販売を目的とはしていない商品の購入
→商品の原価は交際費等(税務上は損金不算入)になり、その際支払った消費税は純粋に自社負担(税務上は損金不算入)となる。
購入商品の原価とその際の消費税の税務上の取り扱いが互いに整合性が取れている、ということが分かると思います。
商法理的には、商取引を行うことを目的としている以上、会社は販売を目的とはしていない物品は購入してはならない、
ということになると思います(ただ、自社内での稼動が前提の固定資産や業務上の消耗品等の購入は現実には行わざるを得ないでしょうが)。
ところで、このQUOカード1
枚に付き50
円が活動に寄附されます、とプレスリリースには書かれていますが、
これは、QUOカードを発行している会社が、QUOカードが販売されるのに伴い、目的の相手に寄付をする、という意味だと思います。
何か新日本空調株式会社が誰かに寄付をする、という意味ではないと思います。
A purchase of goods for the purpose of complimentary gifts for shareholders
is
self-use or self-consumption for a company.
It means that the cost of
the goods is a nondeductible expense (i.e. it's an entertainment cost or a
donation)
and the consumption tax which the company pays then is not a
suspense payment of a consumption tax
but purely a cash expenditure for
itself (i.e. it's a nondeductible expense
and it is recorded on a "taxes and
dues" account on the corporate accounting.
I want to suggest that it should
be recorded on an "extraordinary loss" account, though.).
But, at the same
time, if a brewer gifts its shareholders with beer tickets as a complimentary
gift,
as it were the "cost" can't be recognized on the corporate accounting
nor on the Corporation Tax Act.
After all, concerning complimentary gifts for
shareholders, in case a company purchases some goods from the outside,
the
cost is a nondeductible expense totally (including a consumption tax),
and in
case a company doesn't purchase any goods from the outside
or the gifts for
shareholders themselves are cost-free for a company,
as it were the "cost"
(including the relative reduction of sales) is not recognized
on the
corporate accounting nor on the Corporation Tax Act.
To coclude, what I want
to say here is
that a consumption tax which a company pays for the purpose of
complimentary gifts for shareholders
is not a suspense payment of a
consumption tax but purely a cash expenditure for itself (a nondeductible
expense.).
株主優待品という目的のために物を購入することは、会社にとって自己使用や自己消費になります。
つまり、株主優待品の原価は税務上は損金不算入費用(すなわち、交際費や寄付)ということになり、
会社が購入時に支払った消費税は仮払消費税ではなく、純粋に自分のための現金支出だ(すなわち、税務上は損金不算入費用であり、
企業会計上は「租税公課」勘定に計上されます。もっとも、「特別損失」勘定に計上するべきだと提案したいところですが)、
ということになります。
しかし同時に、ビール会社が自社株主に株主優待品としてビール券を贈呈した場合は、
言わばその「コスト」は企業会計上も法人税法上も認識することはできません。
結局、株主優待品に関して言えば、会社が何か物を社外から購入する場合は、
その費用は(消費税も含めた)全額が税務上損金不算入費用となります。
そして、会社が物を社外からは一切購入しない場合は、すなわち、株主への優待品自体は会社にとって費用がかからないという場合は、
言わばその「コスト」(売上高の相対的な減少も含みます)は、企業会計上も法人税法上も認識されません。
結論としては、私がここで言いたかったのは、
株主に優待品を贈呈するためという目的のために会社が支払った消費税は、
仮払消費税ではなく、純粋に自社のための現金支出(税務上損金不算入の費用)だ、ということです。