2015年11月2日(月)
【問題】
次の問1と問2に答えよ。
問1
株式会社Aが、ある固定資産を100円で仕入れ、200円で譲渡した。
この時、株式会社Aの法人税額はいくらか。
ただし、法人税率を40%とする。
問2
消費税率が8%の場合はどうか。
【解答】
問1
課税所得額は、譲渡価額−取得価額=200円−100円=100円、である。
したがって、法人税額は、100円×40%=40円、である。
問2
課税所得額は、譲渡価額−取得価額=200円×1.08−100円×1.08=216円−108円=108円、である。
したがって、法人税額は、108×40%=4.32円、である。
・・・と言いたいところであるが、これは間違いである。
そもそも消費税は法人(会社)が負担するものではない。
つまり、法人(会社)の所得の金額に消費税は何らの影響も与えない。
したがって、正しい答えは、「問1」同様、課税所得額は100円であり、法人税額は40円である。
【解説】
結局のところ、株式会社Aが固定資産の譲渡時に受け取った消費税額「16円」は、仮受消費税ということになり、
消費税という形で税務当局に納税することになる。
問題は、取得時に支払った消費税額「8円」の取り扱いについてであるが、
仮払消費税ということなるのかどうかは意見が分かれるように思える。
というのは、株式会社Aがその資産を自己で使用・消費するという場合は、支払った消費税額は仮払消費税にならないからである。
この場合株式会社Aが支払った消費税額は、決して仮払などではなく、純粋に自分自身が負担した消費税、ということになる。
別の言い方をすれば、この場合は、株式会社A自身が「消費者」になるわけである。
簡単に言えば、株式会社Aが支払った消費税は、事業者として支払ったのであれば仮払消費税ということになり、
消費者として支払ったのであれば純粋なる消費税負担ということになる。
このことを踏まえると、ある1つの結論が導かれる。
それは、「固定資産の全取得価額のうち、消費税分は減価償却の対象ではない。」という結論だ。
なぜならば、減価償却を行うということは、固定資産を自己で使用しているという意味であり、
したがって、固定資産取得の際に支払った消費税は、税務上損金を構成するものではないからである。
消費税というのは、事業者として受け取り支払った場合も課税所得額に影響を与えず、
また、消費者として支払った場合も課税所得額に影響を与えないのだ。
所得とは無関係のある税目を支払ったわけだが、その税の支払額が損金になるという考え方はそもそもない。
簡単に言えば、税が損金になることはないのだ。
以上の議論を踏まえると、消費税は固定資産の取得価額を構成しない、と考えるべきである。
会社が支払った消費税は、「販売費及び一般管理費」の一項目(一種の租税公課)として、
企業会計上はその期に費用処理するべきであろう。
ただし、税務上は、この消費税は損金不算入の費用である。
会社が受け取ったり支払ったりした消費税は、どのような場合であっても、益金でもないし損金でもない、ということだ。
別の言い方をすれば、消費税は法人税とは別個の完全に独立した税目だ、消費税と法人税は互いに影響を全く与えない税目だ、
ということになる。
現行法人税法は見ていないが、税務理論上は以上のような考え方になろう。