2015年10月3日(土)



2015年10月3日(土)日本経済新聞
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(記事)

 

 



2015年10月3日(土)日本経済新聞
店頭サーチ ANA株主優待券
品薄で前年比8〜9割高
(記事)






【コメント】
航空会社の株主優待券があると、普通運賃の半額で国内航空券を買うことができるのですが、
その株主優待券の金券ショップでの販売価格が、前年同時期比で8〜9割も高い価格で推移している、とのことです。
その理由は、株主優待券の供給量が例年より少なく、品薄状態にあるからだ、とのことです。
株主優待券の販売価格も需要と供給で決まる(販売価格は単に売り手と買い手が合意した価格だ)と言われればそれまでのことですが、
この株主優待券には、少なくとも売買価格を決めるのに参考となる「基準となる金額」というのはない、と言えるでしょう。
なぜなら、「普通運賃の半額」がいくらかは買い手により大きく異なるからです。
普通運賃が4万円の便に搭乗する計画を持っている買い手もいれば、
普通運賃が1万円の便に搭乗する計画を持っている買い手もいるわけです。
前者の買い手にとって許容できる株主優待券の最大購入価格は2万円であるわけですが、
後者の買い手にとって許容できる株主優待券の最大購入価格は5000円であるわけです。
一方で、株主優待券の売り手(金券ショップ)の立場からすると、
買い手が購入した株主優待券をどのように使用するかは全く関係がないわけです。
つまり、株主優待券を購入した後、買い手が普通運賃が4万円の便に搭乗しようが1万円の便に搭乗しようが関係がないわけです。
逆から言えば、売り手は、買い手が許容できる株主優待券の最大購入価格を知らないわけです。
そうしますと、売り手(金券ショップ)はいくらで株主優待券を仕入れればよいか、分からない、ということになります。
記事の株主優待券は、目下5600円〜6000円で販売されているようですが、売り手(金券ショップ)はいくらで仕入れたのでしょうか。
例えば、普通運賃が1万円の便に搭乗する計画を持っている買い手は、この株主優待券を絶対にその価格では買わないわけです。
かと言って、売り手(金券ショップ)は誰が株主優待券を買うのかは事前には分からないわけです。
そうすると、売り手(金券ショップ)は、株主優待券をいくらで何枚仕入れればよいかは分からない、ということになります。
この論点を一般化して言えば、「商人は販売する目的物を販売する前に仕入れることはできない。」、となるでしょう。
もちろん、商人は販売する目的物を販売した後に仕入れることもできませんから、
結局、「商人は販売する目的物を販売する時に仕入れる(仕入と販売が同時)。」、という考え方になるわけです。
これが元祖会計理論の考え方です。
そして、以前、プット・オプションには売買金額を決定するための基準となる金額があるが、
コール・オプションには売買金額を決定するための基準となる金額はないのではないか、といったことを書きました。
その理由は、プット・オプションを持っていると
権利行使価格に等しいキャッシュ・イン・フローがある(目的物を権利行使価格で売却できる)のに対し、
コール・オプションを持っているというだけでは何らのキャッシュ・イン・フローも想定されないからです。
別の言い方をすれば、プット・オプションの保有者には目的物の売却相手が既に決まっているのに対し、
コール・オプションの保有者には目的物の売却相手は全く決まっていない(逆に目的物の購入相手が決まっている)わけです。
このことは、元祖会計理論の観点から見ると、
「商人は目的物のプット・オプションを持っている場合にのみ目的物を仕入れる(そして仕入と同時にプット・オプションを行使する)。」
と表現できるでしょう。
元祖会計理論では、商人には売らないという選択はできないわけですから、オプションを例に出したのは実は間違いかもしれませんが。

 



要するに、ここで言いたいのは、元祖会計理論では、
「商人は買い手が決まっている(販売されることが決まっている)場合のみ目的物を仕入れる。」
と考えるということです。
最後に、記事の株主優待券のことは、「実際の航空券を普通運賃の半額が買うことができる権利」のことだ、と表現できるでしょう。
株主優待券の買い手は権利を行使しなくてもいいわけです。
すなわち、買い手は、株主優待券を買った後、使用しなくてもよいわけです。
その意味において、株主優待券は実は新株予約権に非常によく似た性質を持っていると言えるでしょう。
では、この”新株予約権”の売買価格はいくらであるべきでしょうか。
答えはないでしょう。
なぜなら、普通運賃の価格が一定ではない(買い手により異なる)からです。
航空会社の普通運賃の最大値が4万円、最小値が1万円だとしますと、
この”新株予約権”の売買価格は、5000円から2万円の間になる(売り手も最小値は1万円であることは知っているとします)、
ということくらいしか分からないわけです。
ここでの議論のポイントは、買い手が目的物そのものをそのまま使用するわけではない、という点なのだと思います。
売買において、買い手が目的物そのものをそのまま使用する場合は、ある意味基準となる金額など法理的にはどこにもないわけです。
しかし、この場合は、ある目的物(A)を買うことによりさらに別の目的物(B)を買うことを買い手は考えているわけです。
そうしますと、「別の目的物(B)を買う」ということが「ある目的物(A)を買う」際の売買価格に影響を与えることになるのです。
他の言い方をすれば、「別の目的物(B)を買う」ということが、
「ある目的物(A)を買う」際の売買価格の一種の基準となってしまう、ということになるわけです。
別の言い方をすれば、買い手の取引は2段階になっている、と表現できるでしょう。
取引が1段階(1回で完結する取引)の場合は、取引価格には法理上何らの基準もありません。
しかし、取引が2段階(計2回の取引により買い手は最終目的物を買うという取引)の場合は、
1段階目の取引価格は、必然的に2段階目の取引価格の影響を受けてしまうことになるわけです。
”2段階目の取引”と言っている時点で、
1段階目の取引時点から見ると将来の取引の話をしている(2つの取引は少なくとも1まとまりの取引ではない)ことになりますので、
この現象は元祖会計理論では説明が付けられない部分になると思います。

 


Then, let's think about a stock purchase right
that an obligee can buy a stock at the half price of the previous closing price.

では、権利者が前日終値の半額で株式を買うことができるという新株予約権について考えてみましょう。