2015年7月4日(土)



2015年7月4日(土)日本経済新聞
東ソー最大351億円調達 41年ぶり公募増資 増産投資など
(記事)





2015年7月3日
東ソー株式会社
新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ
ttp://www.tosoh.co.jp/news/assets/newsrelease20150703.pdf

 



【コメント】
東ソー株式会社は、増資で調達した資金を、設備投資と借入金の返済に充てるようです。
このうち、借入金の返済について考えてみましょう。
東ソー株式会社は過去に借入金を借り入れたわけですが、その使途としてはおそらく設備投資を行ったのではないかと思います。
つまり、東ソー株式会社が借入金により調達した現金は、現在有形固定資産になっているわけです。
東ソー株式会社としては、当初の計画では、将来増資を行って借入金を返済するつもりは全くなかったのだと思います。
なぜなら、増資を行って借入金を返済するつもりなら、はじめから増資を行って設備投資を行った方が早いからです。
まあ、借入金で資金を調達してしまうと将来借入金を返済できないような設備投資は、
たとえ増資で資金を調達するとしても、行うべきではない、と言わねばならないかもしれませんが。
借入金で資金を賄おうが増資で資金を賄おうが、設備そのものの収益性は全く同じであるわけです。
借入金で資金を賄ってしまった場合は債務不履行になるが、増資で資金を賄っていた場合は債務不履行を避けられるのだとしても、
設備投資額を回収するに十分なだけの現金は獲得できないことには変わりないわけです。
損益計算書上の損益(営業利益以上の各損益項目)は、借入金で資金を賄おうが増資で資金を賄おうが、全く同じです。
端的に言えば、借入金で資金を賄った場合赤字なら、増資で資金を賄っていても赤字です。
事業の収益性は資金の調達源泉に依存しない、と言われる所以はここにあるわけです。
また、このたびのように、当初の計画とは異なり、増資により借入金を返済する場合に関してですが、
これは「増資によっても借入金は返済できる。」と言わねばならないと思います。
つまり、借入金は有形固定資産の取得に投じたにも関わらず、
有形固定資産の稼動から獲得した現金以外の現金も借入金の返済に充てることができる、と言わねばならないわけです。
さらに他の言い方をすれば、借入金とその借入金を裏付けとした有形固定資産とは実ははじめから財務上切れている・関連性がない、
と言っていいわけです。
借入金により取得した有形固定資産は、借入金からは独立している、という言い方ができるのだと思います。
取引の相手方すなわち貸付人から見ると、貸付金の使途には関心がなく、貸付人が関心があるのは貸付金が無事返済されることだけだ、
ということになると思います。
この観点から見ても、貸付金と、その使途である有形固定資産とは無関係である、と表現できるでしょう。
貸付人の立場からすると、借入人は、有形固定資産の稼動により貸付金を返済しようが、増資により貸付金を返済しようが、
どちらでも構わないわけです。
金銭消費貸借契約では、同じ金額の金銭が返済されればよいわけであって、
貸付金の使途からの金銭が返済されねばならないわけではないわけです。
一見当たり前ではないかと思ってしまうかもしれませんが、
実は「増資によっても借入金は返済できる。」ということには、ちゃんとした理由があるわけです。
今日は「独立」をテーマに書いてみました。

 

The Independent Debit and the Independent Debt.

資金の調達源泉から独立している資産勘定と資金の使途から独立している借入金勘定。