2015年4月28日(火)
2015年4月28日(火)日本経済新聞
ガイシの前期 特損93億円計上 「競争法関連」で
(記事)
2015年4月27日
日本ガイシ株式会社
通期業績予想(連結)の修正に関するお知らせ
ttp://www.ngk.co.jp/news/2015/pdf/20150427_02.pdf
2015年4月27日
日本ガイシ株式会社
特別損失(競争法関連損失引当金繰入額)の計上に関するお知らせ
ttp://www.ngk.co.jp/news/2015/pdf/20150427_01.pdf
2014年12月10日
日本ガイシ株式会社
持分法適用会社の新株式発行及び自己株式処分に伴う持分変動利益計上に関するお知らせ
ttp://www.ngk.co.jp/news/2014/pdf/20141210.pdf
>1.
当該事象の内容
>当社の持分法適用関連会社であるメタウォーター株式会社が実施する公募による新株式発行及び公募による
>自己株式の処分(売出価格 1株につき2400円、新株式発行株数500万株、自己株式処分数500万株、株式受渡期日 平成26年12月19日)
>により、当社の同社に対する持分比率は低下しますが、一方、同社の純資産額増加により、当社の持分額は増加します。
>このため平成27年3月期第3四半期連結決算において、「持分変動利益」を特別利益に計上いたします。
正確に言えば、持分法適用関連会社が増資をした結果、親会社の持分額が増加したので、
連結上「持分変動利益」を特別利益に計上する、ということのようです。
厳密に言えば、その持分法適用関連会社が上場したこと自体は利益の計上とは全く関係ないのです。
また、連結上計上する特別利益の名称は会計基準上は確かに「持分変動利益」ではありますが、
持分法は「一行連結」と呼ばれるように、結局のところ、連結上の資産負債と損益の計上を、
「関連会社株式」勘定と「持分法による投資損益」勘定のみで表現しようとする会計処理方法なのだと思います。
すなわち、持分法における会計処理とは、この2種類の勘定科目しか使用しない会計処理方法のことであり、
借方に「関連会社株式」勘定がくる場合は必ず「持分法による投資損益」勘定が貸方にきて、
借方に「持分法による投資損益」勘定がくる場合は必ず「関連会社株式」勘定が借方にくる、
というだけなのだと思います。
「持分法による投資損益」のより具体的な中身は問わない(表示しない)のが、持分法と呼ばれる会計処理方法なのだと思います。
仮に、「持分法による投資損益」勘定の代わりに、より具体的な利益内容を表した「持分変動利益」勘定を使用することを考えるとします。
しかしそうしますと、持分法の全ての会計処理において、「持分法による投資損益」勘定の代わりに、
より具体的な資本変動の内容を表した勘定科目を使用していかなくてはならなくなるわけです。
例えば、”当期純利益計上利益”勘定であったり、”剰余金の配当損失”勘定であったり、”投資差額償却損失”勘定・・・、
といった具合に、持分法適用関連会社の資本額が増減した理由・内容を付した勘定科目名を使っていくことになるでしょう。
しかし、持分法という会計処理方法では、そういったより具体的な内容を表示することはせずに、
投下資本の運用形態は全て投資勘定(関連会社株式)に集約して表示し、
投下資本の運用成果は全て持分法による投資損益勘定に集約して表示する、
という会計処理方法であるわけです。
ですので、持分法適用関連会社が増資をした結果、たとえ親会社の持分額が増減しようとも、
損益計上の結果として親会社の持分額が増減した場合と全く同じ様に、
「持分法による投資損益」勘定一本で連結上の損益を表示するべきなのです(つまり、「持分変動利益」勘定は用いない)。
次に、競争法関連損失引当金についてです。
記事には、
>同社は「法令違反があったかについてはコメントできないが、国際的な調査で重要性のある損失が発生する可能性が高い」(広報室)
>と説明している。詳細は明らかにしなかった。
と書かれています。
2015年4月27日にが発表した「特別損失(競争法関連損失引当金繰入額)の計上に関するお知らせ」には、
”当社グループは競争状況に関する国際的な調査の対象となっており”と書かれています。
同日の「通期業績予想(連結)の修正に関するお知らせ」には、
”国際的な競争状況に関する調査の進捗に伴い”と書かれています。
詳しくは分かりませんが、日本ガイシ株式会社は主に国外で競争法に関して調査を受けているようです。
それで、このたびの競争法関連損失引当金の計上に関してなのですが、
競争法に関連する損失の発生が仮に国外でのことになるのであれば、
少なくとも日本ガイシ株式会社個別上は競争法関連損失引当金は計上できません。
なぜなら、競争法に関連する損失を負担するのは、日本ガイシ株式会社ではなく、現地法人だからです。
競争法に関連する損失というのは、規制当局に対して支払う罰金のようなものなのだろうと思いますが、
その罰金を支払うのは、競争法に違反した法的主体その人、すなわち、日本ガイシの現地法人なのです。
日本ガイシ株式会社は、競争法違反以前に、国外では商行為を行うことすらできません。
なぜなら、日本ガイシ株式会社は、国内でのみ商行為を行うことを認められた日本の法律上の人だからです。
仮に、国外で商行為を行ったり競争法違反を行える人がいるとすれば、
それは日本ガイシ株式会社ではなく、日本ガイシの現地法人なのです。
日本ガイシ株式会社は、日本ガイシの現地法人の株主に過ぎません。
したがって、日本ガイシの現地法人に代わり、日本ガイシ株式会社単体が競争法違反の罰金を現地当局に支払うことなどできないのです。
規制当局の立場・規制の趣旨から言っても、法律に違反した人その人から罰金を支払ってもらわないと、罰金の意味がないわけです。
株主から罰金を支払ってもらっても意味がないわけです。
確かに、日本ガイシ株式会社は現地法人の意思決定機関を完全に支配している、というようなことは商法理上は言えるでしょうが、
実際に現地で不当な競争(公正ではないとされる取引)を行ったのは、意思決定者ではなく、現地法人であるわけです。
規制当局としては、誰が不当な競争(公正ではないとされる取引)を行ったのか、で判断するしかないわけです。
例えば、現地の消費者に悪い影響を与えたのはどちらなのかを踏まえると、
やはり規制の対象は現地法人その人であるべきなのだと思います。、
また仮に、意思決定者の方に罰金を支払ってもらうことにするにしても、日本ガイシ株式会社はあくまで日本の会社です。
現地の競争法や罰金を強制的に支払わせる法的権限が、海外である日本国内にまで及ぶのか、という議論はあると思います。
@意思決定者と法律行為を行った者とが異なる場合、責任の所在はどちらにあるのか。
A国内の法的な効力はどの程度海外にまで及ぶのか。
という2つの問題が、国外における競争法違反には隠れているのだと思います。
やや乱暴に言えば、意思決定機関の支配は相対的には目に見えづらいが、不当な競争(公正ではないとされる取引)は目に見える、
したがって、規制当局としては、
競争法上は意思決定者ではなく消費者にとっても目に見える行為者の方に罰金を科する、という考え方になるのだと思います。
Conduct is more visible than decision.
行為は決定よりも目に見える。