2015年4月23日(木)
2015年4月23日(木)日本経済新聞
塩野義、一転増益に 前期最終 6円増の年52円配
(記事)
2015年4月22日
塩野義製薬株式会社
業績予想及び期末配当予想の修正に関するお知らせ
ttp://www.shionogi.co.jp/company/news/2015/qdv9fu000000omw6-att/20150422.pdf
2012年10月29日
塩野義製薬株式会社
ViiV Healthcare Ltd.
との新たな枠組みに関するお知らせ
ttp://www.shionogi.co.jp/company/news/2012/g0l2sg00000016op-att/121029.pdf
【コメント】
記事には、
>塩野義は12年に商業権などをViiV社に譲る代わりに同社の株式10%を取得し、ロイヤルティー収入や配当を受け取る契約を結んだ。
と書かれています。
この点については、2012年10月29日に塩野義製薬株式会社が発表した「ViiV Healthcare Ltd.
との新たな枠組みに関するお知らせ」
にその内容が書かれています。
「ViiV Healthcare Ltd. との新たな枠組みに関するお知らせ」
2. 新たな枠組みの内容等
(2/3ページ)
ViiV
Healthcare Ltd.株式の価額とShionogi-ViiV Healthcare
LP持分の価額は異なるとしましょう。
この取引の完了日である2012年10月31日の塩野義製薬株式会社の仕訳は以下のようになります。
(ViiV Healthcare Ltd.株式) xxx / (Shionogi-ViiV Healthcare LP持分) xxx
新たに株式交換により取得するViiV Healthcare
Ltd.の株式の価額については、プレスリリースに書かれていないので分かりませんが、
ViiV Healthcare
Limitedが対価となる新株式をいくらで発行しようとも、すなわち、
ViiV Healthcare
Limitedの対価支払い時の資本金の増加額がいくらであろうとも、
塩野義製薬株式会社としては、新たに取得するViiV Healthcare
Ltd.株式の価額(取得価額)は、
Shionogi-ViiV Healthcare
LPの持分の帳簿価額を引き継ぐことになると思います。
つまり、譲渡する株式(持分)の価額と新たに取得する株式の価額に差異があろうとも、
両有価証券の価額は承継される、と考えるのだと思います。
仮に、両有価証券の価額は承継されないと考えますと、仕訳は以下のようになってしまうわけです。
(Shionogi-ViiV Healthcare LP持分売却損) xxx / (Shionogi-ViiV Healthcare
LP持分) xxx
(ViiV Healthcare Ltd.株式) 0円
Shionogi-ViiV Healthcare LP持分は無償で譲渡し(差額は売却損)、ViiV Healthcare
Ltd.株式は無償取得した、
という考え方になると思います。
一方で、この取引の完了日である2012年10月31日のViiV Healthcare
Limitedの仕訳は以下のようになると思います。
(Shionogi-ViiV Healthcare LP持分) yyy / (資本金) yyy
(ViiV Healthcare Ltd.株式) yyy / (Shionogi-ViiV Healthcare
LP持分) xxx
(株式交換差益) zzz
さて、いくつか仕訳を書きましたが、実は、会計理論上正しい仕訳はどの仕訳になるだろうか、と思っているところです。
塩野義製薬株式会社が従来より保有してきた「Shionogi-ViiV
Healthcare LP
の持分」の価額(xxx)だけは確かであると言えるでしょう。
しかし、それ以外の価額はどれも確かだとは言えない部分があります。
ViiV
Healthcare
Limitedの資本金の増加額に関しても、
これだけの価額の資産を取得したからその対価として自社株式を割り当て交付したのだ、
と会社が言えば、その価額が資本金の増加額となってしまうと言えるでしょう。
現に、合併や株式交換などの際には、存続会社や完全親会社は、株式の価額を任意に決めて資本金の金額を増加させています。
特に合併であれば、差額が生じたらのれんとして処理しているわけです。
そのことを踏まえれば、Shionogi-ViiV
Healthcare LP持分の価額とViiV Healthcare
Ltd.株式の価額が異なっていても、
ある意味おかしくはないわけです。
それで、合併における会計処理方法を参考にすれば、株式の価額は承継される、と考えるべきだろうか、と思ったわけです。
また、厳密に「対価の有無」すなわち「現金による決済の有無」という点を踏まえるならば、
所有していた株式は無償譲渡(差額は売却損)、新たに取得した株式は無償取得、という考え方にも行き着くわけです。
さらには、新たに取得した株式の価額は、相手方が発行した新株式の発行価額(資本金の増加額)である、という点に重きを置くならば、
株式交換差益を認識することで処理する、という考え方もあるかもしれません。
なぜ以上のように資産の価額が決まらないのかと言えば、その理由は、結局のところ、「現金による決済を行っていないからだ。」
という点に行き着くように思います。
純粋な物々交換であれば、譲渡価額は0円、取得価額も0円というだけだ、という考え方になるわけですが、
譲渡した物に価額があれば(その物に取得価額があれば)、その価額は物々交換に伴い全額が譲渡損ということになってしまうでしょう。
何が言いたいのかと言えば、「現金は絶対に意見が分かれない。」ということです。
むしろ逆に、「現金の金額によって、資産の価額が決まるのだ。」と考えなければならないのだと思います。
さらには、「資産の価額を決めるために現金があるのだ。」、という言い方をしてもいいのだと思います。
資産の価額は任意に決めてよいものではありませんし、また、物々交換を行ったからと言って価額を承継してよいものでもありません。
「現金で価額を決める。」という考え方をしなければならないのだと思います。
現金による決済を行えば、こちらの受け取り価額と相手方の支払い価額とが必ず一致します。
現金による決済を行わないから、合併の場合やこのたびの塩野義製薬株式会社の事例のように、
こちらの受け取り価額と相手方の支払い価額とが異なり得る、ということになってしまうわけです。
「代物弁済」は英語で「accord
and satisfaction」というようですが、
取引の際に
accord(一致)しなければならないのは、お互いの意思や考えではなく(もちろんこちらもですが)、「価額」なのです。
「代物弁済」という法律行為に関しても、厳密に言えば「代物の価額」が法理上やはり問題になると思います。
なぜなら、その「代物の価額」自体が、本来は現金によって(他の言い方をすれば、取引の結果として物の「価額」は)決まるのですから。
Cash determines the value of an asset.
現金が資産の価額を決めるのです。
There is no substitute for cash.
現金を代替するものはない。
A settlement by means of a substitute.
代わりとなる物による決済。
Shionogi is at once one of the shareholders and a potential creditor for
ViiV.
塩野義製薬は、ViiV社にとって、株主の1人であると同時に将来の債権者でもある。