2015年3月14日(土)



2015年3月14日(土)日本経済新聞 公告
第52期決算公告(9か月決算)
トラスコ中山株式会社
(記事)




株主総会
ttp://www.trusco.co.jp/ir/meeting.html

 


【コメント】
トラスコ中山株式会社は、第52期定時株主総会を昨日2015年3月13日に開催したようです。
詳しい資料等は上記のリンクを見て下さい。
ただ、1つ気になる点があります。
それは、株主総会の開催場所です。
なんと株主総会の開催場所が2ヵ所に分かれています。
開催日時はどちらも「平成27年(2015) 3月13日(金曜日)午前10時」で共通なのですが、
@大阪会場(議長出席会場)(大阪市中央区)とA東京会場(東京都千代田区)の2会場で株主総会を同時に開催したようです。
@大阪会場(議長出席会場)(大阪市中央区)が本会場、A東京会場(東京都千代田区)が副会場、といった位置付けなのでしょう。
東京と大阪ということで、地理的には遠く離れてはいますが、

>※両会場ともにそれぞれの会場の様子をスクリーンを通してご覧いただけます。
>いずれの会場におきましても、ご質問、賛否等株主権のご行使は可能。

ということで、たとえ株主がA東京会場にいても、@大阪会場(議長出席会場)にいるかのような状況を技術的に作り出していたようです。
それで、それぞれの会場の入場者数に関してですが、出席総株主数は1,244名だったのですが

>大阪会場出席株主数 650名
>東京会場出席株主数 594名

という内訳であったようです。
会社法上は、株主総会の開催場所に特段の制限はありません。
会社法が適用される範囲内であれば、すなわち、日本国内であれば、株式会社はどこで株主総会を開催しても会社法上は問題ありません。
北海道に登記されている株式会社が沖縄県で株主総会を開催しても会社法上は何の問題もありません。
すなわち、北海道に登記されている株式会社が沖縄県で株主総会を開催しても会社法上は法的に有効な株主総会だということになります。

 



では、株主総会を海外で開催するとしたらどうなるでしょうか。
会社法には明文の禁止規定はないでしょうが、会社法上は海外では株主総会は開催できないと思います。
すなわち、海外で株主総会を開催すると、会社法上は法的には無効な株主総会だということになると思います。
その理由は、結局のところ、会社法の適用範囲が理由だと思います。
海外では会社法は適用されないわけです。
株主総会の招集や開催そして運営(決議等)の根拠法は会社法です。
株式会社はあくまで会社法に従って、株主総会の招集や開催そして運営(決議等)はなされなければならないのです。
株式会社が会社法に従って株主総会の招集や開催そして運営(決議等)を行わない場合は、その株主総会は無効なのです。
一言で言えば、海外では会社法に従えないのです。
法の適用範囲のことを例えて言うなら、携帯電話の電波が届く範囲に例えられると思います。
携帯電話は電波の届く範囲でしか使えません。
同様に、株式会社は会社法が適用される範囲でしか(広義の)商行為を行えないのです。
根拠法が適用されない場所で株主総会を開催しても、その株主総会は法的にそもそも無効なのです。
たとえ厳密に議事録を作成していたとしても、その開催場所に会社法が適用されないわけですから、株主総会は無効となるのです。

 


次に、2つの会場で株主総会を開催することについてですが、
会社法には明文の禁止規定はないでしょうが、会社法上は複数の場所で株主総会を開催することはできないと思います。
すなわち、複数の場所で株主総会を開催すると、会社法上は法的には無効な株主総会だということになると思います。
その理由は、結局のところ、株主総会という会社機関はあくまで1つだからだ、が理由だと思います。
「株主総会」という法律用語は、文脈によって、
株主が集まって重要な事柄について相談したり決定したりする「会議」を指す場合もあれば
概念的な存在としての「会社機関」を指す場合もあります。
しかし、それはあくまで前後の文脈や場面により話し手・書き手が表そうとしている内容に若干の違いが生じるというだけです。
「株主総会」が複数あることとは全く異なるわけです。
「株主総会」という言葉や概念が表すものはあくまで1つであるわけです。
株式会社に「株主総会」は1つしかないわけです。
当世では、株主総会とは別に種類株主総会などという株主総会が別にある場合もあるようですが、一歩譲ってたとえそう考えたとしても、
普通株主総会という会社機関はやはり1つしかないわけです。
これも会社法に明文の規定はないでしょうが、普通株主総会と種類株主総会を全く別の会場で開催しても法的には有効だと思います。
なぜなら、普通株主総会と種類株主総会とは、結局のところ会社機関としては別だからです。
しかし、普通株主総会を複数の会場で開催することは、法的には無効なのです。
なぜなら、普通株主総会という会社機関は2つに分けられないからです。
自然人に所在地は1つしかないように、会社にも所在地は1つしかないわけです。
したがって、言わば「株主総会の所在地」も1つしかない、と言わねばならないのだと思います。
ですから、会社法には明文の禁止規定はないでしょうが、会社法上は複数の場所で株主総会を開催することはできないと思います。

 


また、上記の考え方を押し進めていきますと、ある1つの結論が頭に浮かびます。
ここから先は、実際の法の規定の話ではなく法理・法概念の話になりますが。
その結論とは、実は株主総会は「会社の所在地」で行わなければならない、という結論です。
ここでいう会社の所在地とは、当世風に言えば、本店所在地です。
文字通り、登記がなされている本社・本店の一室で株主総会を開催しなければならない、という結論に行き着く気がします。
私が思うに、要するところ、いわゆる商業登記とは「商行為が行われる場所」を明確にすることなのだと思います。
ここでいう商行為には、商品の仕入れ・販売はもちろんですが、株主総会をはじめとする会社に関する意思決定全ても含みます。
要するに、商業登記がなされることにより、会社は会社の体をなし、会社は商法に従った商行為を行えるようになるのだと思います。
この場合、会社が法人かどうかは全く関係がありません。
法人としてなどということではなく、会社として会社は商業登記を行わねばならないのだと思います。
当世ではたまたま会社が法人だというだけなのだと思います。
商業登記を行わない限り、会社は商法に従えないのだと思います。
会社だけではなく、自然人が商法に従った商行為を行う場合にも、一商人として商業登記を行わなければならないのだと思います。
会社にせよ自然人にせよ、商法に従うための法的資格が、商業登記がなされていることだ、と理解しなければならないのだと思います。
商法が実体法、商業登記法は手続法ということで、どちらかと言えば、商法が主、商業登記法が従、
といったイメージがあるかもしれませんが、両者は実は相互に補完的な関係にあるのだと思います。
商法に定めてあることを具体的に実行に移すための手続きが定められているのが商業登記法であると同時に、
(法人設立という意味ではなく)会社設立・商人となるという場面では、
商人として商法に従うためには、まず商人として商業登記がなされていなければならない、という関係にもあると思います。
そして商業登記を行った上で、商人が商行為を行ってよい場所は商業登記がなされている場所だけだ、
という論理が出てくるのだと思います。
商品の仕入れを行ってよいのも商業登記がなされている場所だけ、商品の販売を行ってよいのも商業登記がなされている場所だけ、
会社に関する意思決定を行ってよいのも商業登記がなされている場所だけ、株主総会を行ってよいのも商業登記がなされている場所だけ
結局、商人が何かを行ってよいのは商業登記がなされているその1つの場所だけだ、
という商行為に関する論理のつながりが、そして商人の定義が導き出されるのではないか、と思います。

 


この商行為に関する論理のつながりと商人の定義から言えば、
「会社は商法上支店を開設できない」
という結論に行き着くわけです。
なぜなら、支店は商業登記がなされていないからです。
所得税法の法理・観点から言えば、
「商業登記がなされていない場所で商行為に関する益金が発生することは認められない」、
ということになると思います。
ここは商法と所得税法とが考え方として整合している部分なのだと思います。
今日のまとめとしては、株主総会は、会社法上は海外では行えないし複数の会場で行うこともできない、
そして、究極的には法理上は株主総会は商業登記がなされている場所でしか行えない、ということになります。
そして、さらに究極的なことを言えば、商法理上は、
商人として商法が適用される場所(根拠法の適用範囲)というのは、商業登記がなされている場所だけだ、
ということであるように思います。
そして、所得税法の法理・観点から言えば、商行為に関する益金が発生することは認められるのは、商業登記がなされている場所だけだ、
ということであるように思います。