「ゼミナール 現代会計入門(第5版)」 伊藤邦雄 著 (日本経済新聞社)
第V部 資源ストックの会計
第9章 持分の会計
THEORY AND HISTORY
2. 額面主義との決別
(スキャン)
When retained earnings are presupposed, a stock don't have a face
value.
When distribution of all profits is presupposed, a stock has a
face value.
内部留保が前提の場合は、株式には額面はありません。
全ての利益を分配することが前提の場合は、株式には額面があるのです。
2014年12月12日
SBIライフリビング株式会社
株式会社LLホールディングスによる当社株券等に対する公開買付けの実施及び応募推奨に関するお知らせ
ttp://www.sbi-lifeliving.co.jp/ir/materials/images/release141212.pdf
(ホームページと同じPDFファイル)
2014年12月11日
SBIホールディングス株式会社
SBIライフリビング株式会社の株式等に対する公開買付けへの応募に関するお知らせ
ttp://www.sbigroup.co.jp/news/2014/1211_8765.html
(ホームページと同じPDFファイル)
(ホームページと同じPDFファイル)
2015年2月3日
SBIライフリビング株式会社
親会社及び主要株主である筆頭株主の異動等に関するお知らせ
ttp://www.sbi-lifeliving.co.jp/ir/materials/images/release150203_a.pdf
(ホームページと同じPDFファイル)
H27.02.03 16:47
株式会社LLホールディングス
公開買付報告書
(EDINETと同じPDFファイル)
2015年2月3日
SBIホールディングス株式会社
子会社の異動を伴う子会社株式の公開買付け応募の結果に関するお知らせ
ttp://www.sbigroup.co.jp/news/2015/0203_8953.html
(ホームページと同じPDFファイル)
(ホームページと同じPDFファイル)
H27.02.05 09:43
株式会社LLホールディングス
大量保有報告書
(EDINETと同じPDFファイル)
2015年3月2日
SBIライフリビング株式会社
定款の一部変更及び全部取得条項付普通株式の取得等に関するお知らせ
ttp://www.sbi-lifeliving.co.jp/ir/materials/images/release150302a.pdf
(ホームページと同じPDFファイル)
このことは、完全子会社化を進める上では大きな障害になるでしょうし、
場合によっては完全子会社化を断念せざるを得ないという場面もあると思います。
もちろん、相手が友好的であれば、新株予約権や新株予約権が付属した証券の譲渡に応じてくれるでしょう。
しかし、法律というのは、相手が敵対的であった場合を想定して制定されるべきものです。
相手が皆友好的なのであれば、世の中法律は始めからいらないわけです。
議決権に関連する証券の全部を強制的に取得することを所与のこととするならば
(株式に関してその趣旨の規定が会社法にあるということはまさしくそれが所与のことだということでしょう)、
会社法には明らかに条文が不足していると思います。
新株予約権単体にせよ転換社債にせよ転換条項付優先株式にせよ、それらの証券の所有者は、
市場にいる投資家(上場企業の株主)に比べれば著しく少数の者に過ぎない、という言い方はできると思います。
それらの証券の所有者は、どちらかと言えば、会社(発行者)に対して友好的と言いますか、
会社(発行者)がそれらの所有者に対しその種の証券を割り当てたという時点で、
ある意味その人達は会社の経営に理解がある人達だという言い方ができるのかもしれません。
敵対的買収という場面でもない限り、新株予約権単体にせよ転換社債にせよ転換条項付優先株式にせよ、
単体の譲渡なり新株予約権部分の無効化なり、会社からの条件変更その他の依頼にその人達は応じてくれるとは思います。
ただ、ここでは、友好的か敵対的かに関わらず、とにかく株主が全ての議決権を取得したいと考える場面は買収戦略上あるわけです。
会社の意思は株主が決定するということを考えれば、株式取得や議決権行使に敵対的も友好的もないわけです。
そんな時、株主が組織再編行為を柔軟かつ円滑に行えるための手続きが会社法には求められるわけです。
株式に関して全部取得に関する手続きが整備されているのなら、
新株予約権に関しても全部取得に関する手続きが整備されていなければ、補完的ではないと思います。
次に、「A対象者は既存筆頭株主のグループ子会社である。」という点についてです。
このたびの公開買付価格は、普通株式1株につき、1,070円、とのことです。
この公開買付価格は、前営業日の終値に対して6.8%のプレミアム、過去1か月間の終値単純平均株価に対して12.4%のプレミアム、
過去3か月間の終値単純平均株価に対して22.7%のプレミアム、過去6か月間の終値単純平均株価に対して35.3%のプレミアム、
となっています。
市場株価には今現在の市場株価にしか意味はないわけですが、
参考値ということで過去1ヶ月間〜6ヶ月間の市場株価から見ても一定以上のプレミアムが付けられています。
一言で言えば、公開買付者は市場における公正な価格よりも高い価格で株式を買うと言っている、という状態であるわけです。
上場株式の場合は結局のところ市場株価で公正な価額を判断するしかないということなのだろうと思いますので、結局のところ、
投資家保護その他の観点から言えば、直近の市場株価よりも高い水準の価格による公開買付であれば何ら問題ない、とは言えると思います。
公開買付に応じるか応じないかは株主が自由に決めてよいわけですから、
その買付価格で十分かどうかは各株主が判断すればよいというだけのことであるわけです。
ただ、対象者であるSBIライフリビング株式会社はSBIホールディングス株式会社のグループ子会社であるわけです。
SBIライフリビング株式会社の有価証券報告書によりますと、
SBIライフリビング株式会社は元々、SBIホールディングス株式会社の子会社ではなかったようです。
現在のSBIライフリビング株式会社は1990年に創業なのですが、2006年6月に東京証券取引所マザーズに上場、
2007年9月にSBIホールディングス株式会社の子会社となった、という経緯があるようです。
SBIホールディングス株式会社から見ると、上場企業の株式を取得して子会社化した、という形になりますので、
SBIホールディングス株式会社のSBIライフリビング株式の取得価額は一定以上に大きいものであろうと思います。
ですので、このたびのSBIライフリビング株式会社の事例では当てはまらないのですが、
より一般的な話をすると、親会社のグループ子会社株式の取得価額は非常に小さい、ということが多いわけです。
なぜなら、親会社が子会社を設立することが多いからです。
子会社の内部留保の厚さであったり子会社株式の市場株価の高さというのは、親会社のグループ子会社株式の取得価額には含まれないわけです。
そうしますと、親会社から見ると、少々子会社株式の市場株価や買付価格が低くても、株式売却益としては一定以上に獲得できる、
ということになるわけです。
このことは考えてみますと、上場を果たしたベンチャー企業における創業者利潤に概念的に近いと考えてもいいと思います。
端的に言えば、既存株主(会社設立株主)から見ると、出資額としては小さいのだが、市場で保有株式に付いている価格が非常に大きい、
という状態であるわけです。
そうしますと、たとえ直近の市場株価よりも非常に低い水準の買付価格であろうとも、その公開買付に応じることで、
親会社(もしくは会社設立株主)から見ると十分に株式売却益を獲得できる、という状況が生じるわけです。
プレスリリースによりますと、SBIホールディングス株式会社は、SBIライフリビング株式を67.60%も保有しています。
そして、公開買付者はこのたびの公開買付けに際し、SBIホールディングス株式会社との間で、
その保有する普通株式の全てについて、本公開買付けに応募すること等を内容とする公開買付応募契約を締結したとのことです。
公開買付者は当然、できるだけ低い価格でSBIライフリビング株式を取得していきたい、と考えます。
親会社としては、できるだけ高い価格で株式を売却したいのは当然ですが、低い買付価格でも十分に株式売却益を計上していけるのだから、
公開買付者も親会社も双方そのことを見越した上で、
市場株価とは異なる株式の価格を買付価格を設定する際の基準とする恐れが生じるように思います。
ここでいう”市場株価とは異なる株式の価格”とは、親会社の小さな出資額のことです。
市場では一単元単位でしか子会社株式を売却できないが、公開買付への応募なら全株式を買い取ってくれると言っている、
よし、この際、低い買付価格による公開買付価格に応じることにしよう、そちらの方が、我が社にとって利益は最大化される、
親会社(もしくは会社設立株主)がそう考えたとしても何ら不思議ではないでしょう。
公開買付への応募に関する交渉の際、双方にとってもはや市場株価はどうでもいいのです。
我々の利益が最大化される買付価格は市場株価ではないのだ、と。
この場面において、市場の投資家(親会社以外の少数株主)は完全に蚊帳の外であるわけです。
対象者の意思決定機関は親会社が支配していますから、対象者の経営陣は株主に対し、公開買付に応募するよう推奨すらすることでしょう。
そして、市場株価よりも低い価格による公開買付は堂々と実施されるでしょう。
そして、当初の計画通り、公開買付は無事成立することでしょう。
そして、何ら問題のない公開買付であったと言われることでしょう。
特定の株主のみを優遇したり、不透明な取引が横行したりは一切なかった、
金融商品取引法は遵守され、情報は適切に開示され、株主間の取扱いの平等(公平な売却機会)は確保された、
と、こう評されることでしょう。
上記の問題が生じる原因は、親会社の出資額が小さいことではもちろんなく、対象者に一定規模以上の大株主がいることだと思います。
上場企業に特定の支配株主がいる状況下では、支配株主の利益と少数株主の利益を両立させるのは困難な場面が多いのだと思います。
親会社の出資額は小さいこと、そして、投資家毎に株式の取得額は異なること、すなわち、たとえ買付価格が市場株価よりも高くても、
株主によっては売却損となってしまうことは、さすがに投資家保護の範囲を超える事柄であろうと思います。
つまり、1つの公開買付の中で、売却益を計上できる株主もいれば売却損を計上することになる株主もいる、
というのは、投資家保護の範囲内の事柄だ(投資家の利益は保護されている)、という解釈になるのだと思います。
しかし、上場企業に特定の支配株主がいるという状況下ですと、公開買付制度によっても、
確かに株主間の取扱いは平等であり公平な売却機会は与えられるのだとしても、
そもそも買付価格が少数株主にとって平等でも公平でもない、という場面が生じ得るわけです。
上場企業には特定の支配株主はいてはならない、というのが証券市場における法理上そして概念上の答えなのだと思います。
また、他の論点として、例えば、買付価格は直近の市場株価よりも高い価格でなければならない、と定めるというのも、
投資家保護のための1つの目安になるとは思います。
もしくは、買付価格は全ての株主が売却損を計上しない価格でなければならない、と定めるというのも、
投資家保護だというのなら考え方としてあり得るのではないかと思います。
何が言いたいかと言うと、市場株価=投資家保護、という考え方は絶対的だとは限らない、ということです。
例えば、所有している株式を市場株価よりも低い価格で特定の相手に譲渡したい、というニーズもあると思います。
逆に、所有している株式を市場株価よりも高い価格で特定の相手に譲渡したい、というニーズもあると思います。
その場合、相対取引による上場株式の譲渡をどの程度認めるかが問題になるのだろうと思います。
そもそもの話をすれば、株式市場とは「不特定多数の者」が上場株式の売買のために出会う場であるわけです。
特定の譲渡相手が既にいる場合は、株式市場で上場株式を譲渡する必要はないのではないだろうか、と私は思うわけです。
言い方を変えれば、株式市場とは特定の譲渡相手がいない場合に上場株式を売買する相手と出会う場である、と私は思うわけです。
ある投資家Aさんとある投資家Bさんが市場株価とは異なる価格で上場株式を売買したからと言って、
株式市場の他の投資家達は不平等な取り扱いを受けたり不利益を被ったりしたということになるでしょうか。
同一の上場株式について、市場株価が高い時に買った投資家もいれば市場株価が低い時に買った投資家もいるように、
そしてそのことは投資家保護の観点に反しているとは言わないように、
同一の上場株式について、特定の譲渡相手がいる投資家もいれば特定の譲渡相手がいない投資家もいる、ということは、
投資家保護の観点に反しているとは言わないのではないでしょうか。
上場株式の売買は必ず市場取引によらなければならない、というのが基本的考え方かもしれませんが、
その考え方は見方を変えれば、上場株式の売買においては特定の譲渡相手との取引は認めない、と言っていることと同じであるわけです。
上場株式は、金融商品であると同時に、一私人の所有物でもあるわけです。
市場株価というのは、特定の譲渡相手がいない投資家達の間における上場株式取引価格に過ぎない、という見方もあると思います。
市場株価の形成は競り(オークション)方式によるといいますが、特定の譲渡相手がいるのなら、
そもそも対象物をオークションに出す必要はない、という見方もあると思います。
特定の譲渡相手がいる場合といない場合とで上場株式の譲渡価格が異なることは、投資家保護の観点には反さないように思います。
最後は、投資家保護の定義や範囲をどのように定めるのかの話になると思いますが、
相対取引による上場株式の譲渡は自由に認められるべきではないだろうか、と個人的には思います。
例えば、投資家Aさんが投資家Bさんから上場株式を市場株価よりも低い価格で買ったとします。
確かに、投資家Aさんは株式市場の他の投資家よりも有利な価格で上場株式を買ったことになります。
しかしその取引が成立するためには、実は「上場株式を市場株価よりも低い価格で売る」人がいることが必要であるわけです。
投資家Aさんに投資家Bさんという「上場株式を市場株価よりも低い価格で売る」人がいたからこそ、
投資家Aさんは株式市場の他の投資家よりも有利な価格で上場株式を買えたわけです。
この時、投資家Bさんは、投資家Aさんにその上場株式をその価格で譲渡することが自分の利益を最大化する取引だ、と判断したことでしょう。
そうでなければ、投資家Bさんは投資家Aさんにその上場株式をその価格で譲渡したりはしなかったでしょう。
投資家Bさんが投資家Aさんにその上場株式をその価格で譲渡した理由は、
いつもお世話になっているからであったり、今度は逆にAさんからある物品を安く売ってもらうためであったり、
もしくは、株式市場に行ってはみたものの株式の買い手が誰もいなかったからかもしれません。
株式市場とはいっても、いつも取引相手がいるとは限りません。
現に、地方の証券取引所では、売り手も買い手も株式市場にはいないということなのでしょうが、
1週間以上も1単元も売買されない上場株式が上場されています。
その上場株式に市場株価が付いているとはいっても、それは1週間以上も前の終値かもしれないわけです。
上場株式を売却するのに、株式市場に取引相手が現れるまで1週間以上も待ち続けなければならない、
という方がよっぽど投資家保護の観点に反するのではないでしょうか。
煎じ詰めれば、特定の譲渡相手がいるのならその相手と全く自由に上場株式は売買してよい、と考えるべきであり、
そして、その時の売買価格は市場株価には何らの影響も及ぼすものではない、と考えるべきなのだと思います。