2015年3月7日(土)
昨日、新華ホールディングス・リミテッドについて書きましたが、
新華ホールディングス・リミテッドのサイトには以下のようなプレスリリースがありました。
新華ホールディングス・リミテッドは現在、減資を実施することを計画しているようです。
減資実施のための株主総会決議は2014年10月7日に終了しているようで、
減資の効力発生日は2015年3月頃(見込み)、というスケジュールになっているようです。
新華ホールディングス・リミテッドの減資はケイマン諸島の会社法に基づく減資であり、日本の会社法に基づく減資とは多くの点で異なります。
プレスリリースを読みながら、ケイマン諸島法と日本法の減資の手続きの違いについて、一言だけコメントしたいと思います。
2014年9月1日
新華ホールディングス・リミテッド
減資に関するお知らせ
ttp://www.xinhuaholdings.com/uploadedFiles/media-center/news-and-events/press-releases/2014/20140901192010344.pdf
(ホームページと同じPDFファイル)
2014年9月1日
新華ホールディングス・リミテッド
「当社の定時株主総会及び定款の一部変更のお知らせ
ttp://www.xinhuaholdings.com/uploadedFiles/media-center/news-and-events/press-releases/2014/20140901191917269.pdf
(ホームページと同じPDFファイル)
2015年3月6日
新華ホールディングス・リミテッド
「減資に関するお知らせ」の経過及び株式の額面の減少について
ttp://www.xinhuaholdings.com/uploadedFiles/media-center/news-and-events/press-releases/2015/20150306172036544.pdf
(ホームページと同じPDFファイル)
【コメント】
2014年9月1日に発表された「減資に関するお知らせ」から、「1.減資の目的」の記述の要点だけを書き出したいと思います。
当社の普通株式及び優先株式の額面は現在20香港ドルであり、ケイマン諸島の法令に基づき、
これが当社が新株を発行する際の一株当たりの払込金額の下限となっております。
この点、近時の当社の業績及び株価の低迷に伴い、今後の当社が株式を発行して資金を調達する際に、
現在の額面である20香港ドル以下での新株発行が必要となってくる場合も想定されます。
そこで、取締役会は、将来における資金調達に対する制限が生じないようにするため、
株主総会の特別決議により承認されることを条件として、
額面20香港ドルの払込済株式の額面を1株あたり19.99
香港ドル減額し、1株あたり払込済額面を0.01香港ドルとすることにより、
発行済普通株式の株式資本を45,499,995.80香港ドルから22,750.00香港ドルに、
また発行済優先株式の株式資本を4,500,000.00香港ドルから2,250.00香港ドルにそれぞれ減額し、
当該減額分を発行可能株式資本として、額面0.01香港ドルの新たな株式の発行を可能とすることを決議いたしました。
これは発行済株式の額面のみを減少するものであり、発行済株式数は減少しません。
純資産の部の計数の変動については、発行済株式の額面の減少により生じる資本金の減少額は、当社の資本剰余金に振り替えるものとします。
端的に言えば、ケイマン諸島法における減資とは、「発行済株式の額面の減少」のことを指すようです。
さらに、この「発行済株式の額面の減少」と合わせて、「未発行株式の額面の減少」も実施するようです。
「未発行株式の額面の減少」についての記述を書き出します。
取締役会は、1株につき額面20香港ドルの未発行の発行可能株式を額面0.01香港ドルの2,000株に変更し、
授権株式を総額200,000,000香港ドル、額面0.01香港ドル18,200,000,000株の普通株式
及び額面0.01香港ドル1,800,000,000株の優先株式に変更し、一株あたりの額面価額を減少することを決議いたしました。
会社財産や利害関係者に与える影響については以下のように記載があります(要約)。
上記の「発行済株式の額面の減少」は、株主に対して払込を受けた資本金の払戻をしたりするものではありません。
また、上記の「発行済株式の額面の減少」及び「未発行株式の額面の減少」を実施しても、
既存の普通株主及び優先株主の利益並びに権利に変動は生じません。
さらに、上記の「発行済株式の額面の減少」は、当社の原資産、事業活動、財政状態管理に変更を与えるものではありません。
また、新華ホールディングス・リミテッドの普通株式は現在、東証マザーズに上場しています。
プレスリリースには明示的には記載はありませんが、
上記の「発行済株式の額面の減少」を実施しても、
新華ホールディングス・リミテッドのいわゆる市場株価には一切変動は生じないようです。
”減資に伴い市場株価が切り下げられる”という旨の記載がないからといって、
減資を実施しても市場株価は切り下げられないとは限らないわけですが、
この点について会社からの発表を好意的に解釈すれば、”減資を実施しても市場株価は切り下げられない”だと思います。
上記の私が要約した、
>上記の「発行済株式の額面の減少」及び「未発行株式の額面の減少」を実施しても、
>既存の普通株主及び優先株主の利益並びに権利に変動は生じません。
という記載内容のことを、”減資を実施しても市場株価は切り下げられない”という意味だ、とも解釈できるかとは思います。
既存株主の利益・権利に変動は生じない、とは、”減資を実施しても市場株価は切り下げられない”という意味だ、とも取れます。
ひょっとすると、実は新華ホールディングス・リミテッド自身、
この文脈は、”減資を実施しても市場株価は切り下げられない”という意味のつもりで書いたのかもしれません。
ただ、私個人としましては、上記の文脈は、第一義的には、
株主の持株数や議決権割合や利益剰余金の帰属割合(簿価に関する議論)、についての記述であろうと思いました。
新華ホールディングス・リミテッドは上場企業であるという点を改めて考えてみますと、
上記の文脈は、第一義的には、むしろ、株主の持株数や市場株価に変動はない、という意味に重きが置かれているのかもしれません。
参考までに言いますと、日本の旧商法そして会社法における減資では、
上場企業の市場株価は切り下げられない、という取り扱いになっています(ただ、株主の持株数は旧商法では減少するという取り扱いでした)。
新華ホールディングス・リミテッドが現在計画している減資の概要は以上のようになります。
ケイマン諸島法における減資は日本法における減資とは極めて多くの点で異なっているな、というのが第一印象です。
共通点と言えば、「資本金の金額」が減少する、という点くらいだと思います。
減資というくらいですから、減資により「資本金の金額」が減少するのは、ある意味当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが。
ただ、「株式の取り扱い」が両法では根本的に異なるようです。
他の言い方をすれば、ケイマン諸島法と日本法とでは、
「資本金が減少することをどう捉えているか」が根本的に異なる、と言えると思います。
両法の減資における最大の相違点はやはり、ケイマン諸島法の減資は「発行済株式の額面の減少」のことを指す、という点だと思います。
日本法の減資では、「株式の額面」のことは減資とは全く関係がありません。
煎じ詰めれば、日本法においては、株式に額面はない、という考え方・株式の定義の仕方になっていると思います。
これは会社法の規定や旧商法の規定がそうであったからというより、株式の定義がそうであった(ある)から、と言わねばならないわけです。
日本法の考え方・定義の仕方に沿って概念的に言えば、株式会社は任意の価額で株式を発行できます。
それは、株式に額面はない、という意味です。
しかるに、ケイマン諸島法の考え方・定義の仕方に沿って概念的に言えば、株式会社はある一定の価額以上でなければ株式を発行できない、
という、発行価額の規定の仕方・株式の定義の仕方がなされています。
それは、株式に額面がある、という意味でしょう。
要するに、日本法とケイマン諸島法とでは、「株式の定義の仕方」そのものが違う、ということなのだと思います。
ケイマン諸島における会計理論上は、元来は、株式は額面でしか発行できないのだと思います。
つまり、ケイマン諸島における会計理論上は、元来は、株式の発行価額は常に一定だ、という意味です。
ケイマン諸島における会計理論上は、元来は、常に「資本金の金額=発行価額(一定)×発行済株式数」が成り立っていたのだと思います。
一方で、日本における会計理論上は、株式の発行価額は任意であると思います。
つまり、日本における会計理論上は、株式の発行価額は発行毎に異なる、という意味です。
日本における会計理論上は、資本金の金額は、発行価額が株式毎に異なるため「発行済株式数」では全く判断ができないわけです。
ケイマン諸島における会計理論では、株式1株1株は全て同じ価値(同じ権利・同じ利益)を持つ、
という点に重きを置いているのだと思います。
ですから、株式に「額面」というある定まった価額があるのだと思います。
一方、日本における会計理論では、どちらかと言えば、株式の価値を平均的に考えているのだと思います。
日本における会計理論では、「株式は会社に対する権利を表象したもの」に過ぎない、という捉え方・定義の仕方をしており、
株式1株当たりの価額は再計算の結果、結果的に決まるだけだ、という捉え方・定義の仕方をしているのだと思います。
ですから、株式に「額面」という考え方はないのだと思います。
日本における会計理論では、減資において「発行済株式の額面」を減少させるということはできない、という考え方になると思います。
そして、「発行済の株式数」に関してですが、ケイマン諸島法の減資では「発行済株式の額面」が減少するという考え方であるため、
「発行済の株式数」が減少するという考え方は全くしないようです。
逆に、日本法の減資では、「発行済株式の額面」が減少するという考え方はしないため、
「発行済の株式数」が減少する、という考え方をします。
正確に言うと、旧商法では、減資に伴い「発行済の株式数」が減少する、という捉え方をしていました。
しかし、会社法では、減資を行っても「発行済の株式数」は減少しない、という捉え方に変わりました。
減資のことは、会社法では、純資産の部の計数の変動に過ぎない、という捉え方になるのだと思います。
会社法では、減資を行っても株式は全く影響を受けないわけです。
旧商法と会社法とでは、「資本金が減少することをどう捉えているか」の定義が異なる、という言い方をしていいのだと思います。
会社法では減資を行っても「発行済の株式数」は減少しないという捉え方に関してですが、
昨日のコメントでも書きましたが、増資(新株式の発行)という場面では、株式と資本金とはつながりがあるわけですが、
減資となりますと、結局のところ会計理論上説明がつかない、という側面が強いように思えます。
というより、結論らしい結論にはなっていないかもしれませんが、
煎じ詰めれば、資本金を減少させるとして、その減少した資本金はどこへ行くのか、という、
会計理論上のそもそもの問題があるように思えます。
新華ホールディングス・リミテッドの事例では、減少した資本金は資本剰余金に振り替える、と書かれています。
減少した資本金を資本剰余金に振り替えるだけならまだ意味が分かるように思います。
しかし、資本剰余金を利益剰余金に振り替えるとなると、やはり意味が分からないように思えます。
端的に言えば、払い込み資本が利益となることは会計理論上あり得ないのではないか、と思うわけです。
払い込み資本はあくまで払い込み資本です。
株主が事業で活用するために会社に払い込んだお金です。
そのことを証するものが株式であるわけです。
株主は間違いなく100円会社に払い込んだ、それなのに、減資の結果、会社に払い込まれているお金は現在10円になった、
という状態自体がおかしいのではないでしょうか。
90円は利益になりました、と言われても意味不明であるわけです。
率直に言えば、「資本金を減少させること」自体に説明が付けづらいのだと思います。
ですから、「資本金を減少させること」を株式の側にどのように反映させるかの説明・論理立ても十分には付けづらいのだと思います。
まとめらしいまとめにはなっていませんが、今日はこれで終わりたいと思います。
ケイマン諸島の会社法やケイマン諸島の会計理論については、プレスリリースの記載内容から自分が分かることを書いただけに過ぎません。
日本の会社法や日本の会計理論との対比等、記述内容に間違いがありましたらご容赦いただきたいと思います。