2015年2月28日(土)



2015年2月28日(土)日本経済新聞
りそな 公的資金完済 6月の株主総会後 2生保が865億円出資
(記事)





2015年2月28日(土)日本経済新聞
りそな、3兆円完済へ 回収額、注入上回る 公的資金の返済進む 新生銀はメド立たず
りそな銀社長「攻めに転じる」 国有化12年で独り立ち
(記事)

 

2015年2月27日
株式会社りそなホールディングス
公的資金の完済と新たな中期経営計画の策定について 〜『リテールNo.1』の実現に向けて〜
ttp://www.resona-gr.co.jp/holdings/news/newsrelease/pdf/20150227_1a.pdf

プレゼンテーション資料
ttp://www.resona-gr.co.jp/holdings/investors/ir/presentation/pdf/20150227_13a.pdf

 



【コメント】
株式会社りそなホールディングスが、公的資金完済に向けた取組みを公表したようです。
株式会社りそなホールディングスは、2015年6月開催予定の第14期定時株主総会における承認等を前提に、
同株主総会後速やかに、公的資金の全額を返済する、としています。
ただ、いくつか気になる論点があります。
まず第一に、このたび公的資金を返済するといっているのはあくまで「株式会社りそなホールディングス」だ、という点です。
つまり、公的資金を返済するのは、株式会社りそな銀行や株式会社埼玉りそな銀行や株式会社近畿大阪銀行ではない、という点です。
不良債権が発生したり資本が傷んでしまったのは、株式会社りそな銀行や株式会社埼玉りそな銀行や株式会社近畿大阪銀行です。
株式会社りそなホールディングスは持株会社ですから、
株式会社りそなホールディングスには実は不良債権は1つもなかった(今も1つもない)わけです。
多額の不良債権処理損失を計上したり資本が減少したりということは、株式会社りそなホールディングスでは全く起こっていないわけです。
バブル崩壊後に不良債権問題が発生したのは、銀行業を行っている会社においてであって、持株会社においてではなかったのです。
したがって、仮に公的資金を投入するとしたら、株式会社りそなホールディングスにではなく、
株式会社りそな銀行や株式会社埼玉りそな銀行や株式会社近畿大阪銀行でなければならなかった、ということになるわけです。
公的資金の投入時期や持株会社設立の経緯や時期その他、事情はいろいろとあるかとは思いますが、
基本的考え方は、銀行業を行っている会社自身の資本を増強することであって、持株会社の資本を増強することではない、
という点に変わりはないわけです。
持株式会社傘下の銀行事業子会社は、経営上持株会社の100%子会社でなければならない、
というのは経営戦略上の意味としては分かりますが、
持株会社の資本が増強されることと持株式会社傘下の銀行事業子会社の資本が増強されることは全く別であるわけです。
たとえ完全親子会社の関係にあろうとも、親会社の資本と子会社の資本とは全く関係がないわけです。
親会社の資本が増加することは子会社の資本が増加することを全く意味しないのです。
したがって、銀行破綻の危機だ公的資金だ国有化だという場面・文脈であれば、
持株式会社傘下の銀行事業子会社は持株会社の100%子会社であるべきだという、経営戦略上のあるべき組織体制にこだわるのではなく、
「資本を増強すべき会社に公的資金を投入する」という形の政府による出資が大切であったであろうと思います。
不良債権1つ抱えていない会社が増資をしてどうするというのでしょうか。

 


公的資金の投入では、株式会社りそなホールディングスは何らかの株式を政府に対して割り当て交付し、
株式会社りそなホールディングスは株式発行で調達した資金を使って、
本当に資本増強が必要な傘下の株式会社りそな銀行などの増資を改めて引き受ける、という図式であったわけです。
つまり、増資(資本の増強)が2段階になっているわけです。
持株会社は傘下の事業子会社の株式を保有することが存在理由なのは分かりますが、
この文脈では持株会社が増資を行う必要は全くないわけです。
経営再建という文脈なのであれば、政府は銀行業を行っている会社の方へ直接に公的資金を投入するべきであったと思います。
「屋上屋を架す」という慣用句があります。
すでに同類の物が有る上にまた同じ物を作る、無駄なことをする、という意味です。
持株会社への公的資金投入は、まさに「株主が増資をする」という状態であったと思います。

That's like a cash supplier is supplied with cash. (資金の出し手が資金を供給してもらっているようなものだ。)

株主は資金を出す側です。
決して資金を供給してもらう側ではありません。
仮に会社に投じるお金は株主にはもはやないというのなら、他の資金の出し手が会社の新しい株主になるべきなのです。
他の資金の出し手は、会社に資金を投じるべきです。
他の資金の出し手が株主に資金を投じるのは誤りです。

 



それから、りそな銀行のことではなく新生銀行のことに関してですが、
公的資金を返済するに際して、株価が低過ぎるため返済したくても返済できない状態だ、といったことが書かれています。
これはおそらく、政府は公的資金を新生銀行の普通株式の形で保有しているため、
現在の株価で新生銀行が公的資金(普通株式)を政府から買い取ると、
政府としては売却損(公的資金が全額回収されない状態)が生じてしまうことになる、という意味だと思います。
かと言って、株価を無視して高い価格で新生銀行が公的資金(普通株式)を政府から買い取ると、
投資家保護の観点に反する、ということだと思います。
確かに、会社が一部の株主からのみ株価よりも高い価格で株式を取得するのは、投資家保護の観点に反すると思います。
会社は全株主に対して平等でなければなりません。
株価を無視した価格での買い取りはしてはならないと思います。
この点、優先株式であれば、普通株式とは異なり株価は関係がありませんから、
簿価による株式の買い取り(公的資金の返済)が可能であるわけです。
ただ、昨日も書きましたが、普通株式の株価が変動したり会社の資本が変動したりしているのに、
優先株式の価額は全く変動しない、というのはやはりおかしな点があると思います。
価額は決して変動しないということであれば、やはりその資金は負債という色彩が本質的に強いのではないかと思います。

 



資金を返済するということに関連して、次のような記事もありました。

 

2015年2月28日(土)日本経済新聞
フォスター繰り上げ償還
(記事)


2015年2月27日
フォスター電機株式会社
2017年満期円貨建転換社債型新株予約権付社債の120%コールオプション条項による繰上償還の権利発生と行使に関するお知らせ
ttp://www.foster.co.jp/news/pdf/20150227_2017tenkansyasai_call.pdf

 

これは社債の繰上償還ですが、株式への転換もあるわけです。
負債の株式への転換は、「負債と資本を交換する」と表現されますが、総称して「デット・エクイティ・スワップ」と呼ばれます。

 


ただ、税務理論の観点から言えば、「デット・エクイティ・スワップ」は、
債務免除と株式の無償交付の組み合わせに過ぎない、というふうに見えると思います。
なぜなら、債務は現に弁済しないことになりましたし、株式は現に無償で受け取っているからです。
「デット・エクイティ・スワップ」とやらの税務理論上の正しい仕訳は、

(負債) xxx / (資本金) xxx

ではなく(上記は企業会計上の仕訳です)、

(負債) xxx / (債務免除益) xxx

であるわけです。
税務理論上は、債務免除益は益金という形になり(税引後は利益剰余金を増加させる項目)、資本金は増加しない、と考えます。
仮に会社が同時に株式を発行していたとしたら、それは単なる株式の無償発行です(と税務理論上は考えます)。
税務理論上は、端的に言えば、「現金がどう動いたか?」でその取引を見るようにしていると考えればよいでしょう。
負債の弁済という形で会社からは本来その後現金が支出されるはずだった、しかし結局負債は弁済しないことになった、
だから、その分は寄附だ、と税務理論上は考えるわけです。
負債弁済のための現金支出は負っている義務を果たしただけ(以前入ってきたお金を返しただけ)ですので、当然損金にはなりませんが。
資本金であれば、資本の払い込みという形で現に現金が会社に払い込まれればそれは資本金だ、と考えるわけです。
現に現金が会社に払い込まれたわけでもないのに、資本金が増加するのはおかしい、と税務理論上は考えるわけです。
債務の免除の代わりに、他の言い方をすれば、寄附をしてもらったことの代償・お礼として(寄附だから対価・報酬はそもそもないはず)、
株式を発行する(資本金が増加する)という考え方は、税務理論上はしないわけです。
以上の「税務理論上の考え方」は、実はどちらかと言うと、
「株式会社制度の基本概念・株式会社の原理・基礎概念に沿った考え方」と言わねばならないのだと思います。

 

On the tax theory, a debt equity swap is composed of debt exemption and free distribution of shares.
Or rather it "should be interpreted as such transactions 'on the concept of a stock company.'"

税務理論上は、デット・エクイティ・スワップは債務免除と株式の無償交付で構成されているものなのです。
いやむしろ、「『株式会社の概念上』そのような行為であると解釈される」と言わねばならないでしょう。


 



2015年2月28日(土)日本経済新聞
丹青社の前期 純利益53%増
(記事)




2015年2月27日
株式会社丹青社
本社移転に伴う固定資産の譲渡に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1220668

 


【コメント】
記事には、

>15年9月に本社を移転する予定で現本社の土地・建物の売却に伴い、
>繰り延べ税金資産17億円を15年1月期に計上することも純利益を押し上げた。

と書かれています。
この点については、プレスリリースには、

>当社は平成13年3月期に当該土地を時価評価し簿価を切り下げており、
>当該固定資産譲渡契約の締結に伴い土地評価損に係る繰延税金資産1,776百万円を、
>平成27年1月期の個別決算および連結決算において計上(法人税等調整額が同額減少)する見込みであります。

>また、当該固定資産の譲渡に伴い、平成28年1月期の個別決算および連結決算において、
>固定資産売却益3,578百万円を計上する見込みであります。

と書かれています。
しかし、記事やプレスリリースの記述内容は、どんなに考えても、辻褄が合うように解釈できないように思います。

 



例えば、土地は2000年3月期以前に100円で取得したとしましょう。
その後、土地の価格(時価)が下落したので、2001年3月期に土地減損損失を計上したようです。
減損処理後の土地の簿価を80円(20円だけ土地減損損失を計上した)としましょう。
そして、このたび、当該土地の譲渡契約を締結したわけですが、土地の譲渡価額も確定したわけです。
ここで、過年度の土地減損損失が今後損金算入される見込みとなったので当期に繰延税金資産を計上する、と言っているわけです。
そうしますと、土地の譲渡価額は少なくとも当初の取得価額である100円よりも小さな価額であることだけは確かでしょう。
例えば土地の譲渡価額は120円である計画なら、土地減損損失が今後損金算入されること自体がないわけです。
当期に繰延税金資産を計上するということは、土地売却損を企業会計上、過年度に既に計上済みだ、というような意味になるでしょう。
2015年10月の土地の譲渡時に、土地譲渡損が損金算入される見通しだ、ということでしょう。
そして、当期には土地減損損失を追加的に計上するわけではないということは、
土地の譲渡価額は、減損処理後の簿価よりも大きい、ということでしょう。
また、企業会計上、土地売却益を計上する見込みであるということも、土地の譲渡価額は、減損処理後の簿価よりも大きい、
ということを示しているでしょう。
以上の話をまとめますと、土地の譲渡価額は、元々の取得価額よりも大きく減損処理後の簿価よりも大きい、ということになると思います。
ここまでであれば、以上のように好意的に解釈すれば何となく辻褄は合っているようにも感じますが、
実はある問題点を上記の推論では度外視しています。
その問題点とは、土地の譲渡損は法人税法上損金算入されない、という点です。
それは、過年度の土地減損損失が今後損金算入されること自体がない、ということとイコールであり、
したがって、土地減損損失に関して繰延税金資産が計上されること自体がない(土地売却損は永久差異)、ということとイコールなのです。
このたび譲渡される資産が土地や建物ではなく、機械や設備類であれば、考えられる会計処理であろうとは思いますが。

 


参考までに、「土地の譲渡損は法人税法上損金算入される」と想定した場合の各期の仕訳は以下のようになります。
法人税率は40%、このたびの固定資産の譲渡は土地のみ(建物等はここでは無視します)、そして個別上の仕訳のみを考えるとします。

 

@2000年3月期以前の土地の取得時の仕訳

(土地) 7,077百万円 / (現金) 7,077百万円

 

A2001年3月期の土地減損損失を計上した時の仕訳

(土地減損損失) 4,440百万円 / (土地) 4,440百万円

 

B当期2015年1月期の繰延税金資産計上に関する仕訳

(繰延税金資産) 1,776百万円 / (法人税等調整額) 1,776百万円

 

C土地の譲渡日である2015年10月30日の仕訳

(現金) 6,215百万円 / (土地) 2,637百万円
                    (土地売却益) 3,578百万円

C´次期2016年1月期の、一時差異の解消に伴う(土地減損損失の損金算入に伴う)繰延税金資産の取り崩しに関する仕訳

(法人税等調整額) 1,776百万円 / (繰延税金資産) 1,776百万円

 


【計算過程】
Cから算出していく形になります。
Cの仕訳の数値は、基本的にはプレスリリースに記載されている数値そのままです。
現在の土地の帳簿価額2,637百万円と土地売却益3,578百万円の合計額6,215百万円が現金受取額(=土地の譲渡価額)となります。
Bの仕訳の数値も、プレスリリースに記載されている数値そのままです。
C´の仕訳はBの仕訳の逆仕訳になります。
Aは税効果会計の理屈が分かっていないと分からないと思います。
繰延税金資産を1,776百万円計上したということは、「今後減少見込みの法人税額は1,776百万円だ」という意味です。
法人税率は40%であり、「今後減少見込みの法人税額は1,776百万円だ」ということは、

法人税法上今後損金算入される見込みである金額×法人税率(40%)=今後減少見込みの法人税額(1,776百万円)

という式が成り立つということでしょう。
つまり、今後減少見込みの法人税額を0.4で割り戻すことで、そもそも企業会計上計上した費用の金額が算出(逆算)されるわけです。
発生した一時差異の金額(企業会計上の土地減損損失の金額)は、1,776百万円÷0.4=4,440百万円であった、と計算されるわけです。
最後に@になりますが、土地の減損損失額が4,440百万円であり現在の土地の帳簿価額は2,637百万円であるわけですから、
土地の減損処理前の価額(=土地のそもそもの取得価額)は、これらの和である7,077百万円と計算されます。
以上の話を簡単にまとめますと、株式会社丹青社は、
7,077百万円で買った土地を結局6,215百万円で売却した、ということになります。
つまり、法人税法上の土地の譲渡損は862百万円、ということになります。
ただ、法人税法上の土地の譲渡損は862百万円なのに、計上される繰延税金資産が1,776百万円なのは絶対にあり得ない話です。
上記@からC´までの5つの仕訳や考え方は合っているのではないかと思いますが、
私が便宜上設定した「40%」という法人税率が間違っているのだと思います。
また、土地減損損失は今後損金算入されること自体がない(土地減損損失は法人税法上は実は永久差異)という点も、
そもそも計算結果が合わない理由だと思います。

 

A loss on a sale of immovables is not taxable or is not a deductible expense.

不動産売却損は、課税の対象ではない、すなわち、損金算入されない費用です。