2015年2月20日(金)


2015年2月17日(火)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
フジッコ株式会社
(記事)


 

2015年2月16日
フジッコ株式会社
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://www.fujicco.co.jp/cms_news/news/upload/ir_20150216.pdf

 


【コメント】
フジッコ株式会社がこのたび実施する自己株式の公開買付けに関してはコメントはありません。
フジッコ株式会社は、同じ日に次のようなプレスリリースを発表していますので、このプレスリリースについて一言だけコメントします。


2015年2月16日
フジッコ株式会社
執行役員制度の導入に関するお知らせ
ttp://www.fujicco.co.jp/cms_news/news/upload/20150216.pdf


プレスリリースのタイトルの通り、フジッコ株式会社はこのたび執行役員制度を導入することを決定したようです。
それがどうかしたのかと思われるかもしれませんが、このプレスリリースの文面を参考にして、
次のような会社発表(以下、会社名を「株式会社A社」とします)を考えてみました↓。


「従業員雇用制度の導入に関するお知らせ」



株式会社A社では、これまで従業員を雇用してこなかったのですが、
業務の遂行に優れた人材を登用することで、会社の競争力を強化し、業績の向上を図るため、
従業員雇用制度を導入することを取締役会で決議した、という内容になります。
この「従業員雇用制度の導入に関するお知らせ」を改めて読んでみると、
「会社が従業員を雇用するとはどういうことか?」という点について気付きや理解が得られるのではないでしょうか。
明治三十二年商法や当時の所得税法の考え方とも関連してくる論点になろうかと思いますが、
執行役員というのは法的地位としては会社役員ではなく被雇用者という位置付けになりますので、
実は執行役員制度の導入と従業員の雇用とは法的側面としては非常にたくさんの共通点があると言えると思います。
ですので、今日は主に現代の株式会社制度を中心に簡単に一言だけ書きたいと思います。

 


まず、会社に出資をしているのは株主であるわけです。
有り体に言えば、会社のお金とは株主のお金であるわけです。
株主としては、会社のお金を大切に使って欲しいわけですが、誰を雇用するかは取締役会で決定すると言っているわけです。
現代の株式会社制度では、株主は業務を執行しませんので、従業員の雇用も含めて株主は業務執行者に委任を行っているのだ、
というふうに解釈する他ないわけです。
しかし、会社が雇用する従業員は何らかの業務に従事をするということでしょうから、
株主は業務執行者を選任するのと全く同じように、株主は被雇用者も自分で決定をしたいと思うものではないでしょうか。
株式会社の場合、被雇用者の雇用主は会社(法人)になると思います。
そして株式会社において会社の最高の意思決定者は他ならぬ株主であるわけです。
「株式会社において人を雇用すると意思決定できるのは誰か?」という議論になるかと思いますが、
従業員数が少ない中小企業であれば社長の一存でということもあろうかと思いますが、
大企業であれば、この人を雇うと誰に決める権限があるのだろうか、とふと思ったわけです。
「雇用契約の締結」というのは、会社(法人)自身はしゃべったり動いたりできませんから、
実際には代表取締役が会社を代表して行うことになるのだと思います。
そうしますと、「雇用契約の締結」自体がある1つの会社の業務執行ということになるのだろうか、と思いまして、
代表取締役が行う業務執行ということであるならば、その都度取締役会決議が必要、
というような考え方になるのだろうか、と思ったわけです。
もしそうだとすると、会社のおける人の雇用は取締役会決議により決める、ということになるように思います。
要するに、「雇用契約の締結」は株式会社内においてどのような法的位置づけのものとなるのだろうかと思ったわけです。
株主としては、業務執行者を自分で選任したい(実際選任しますが)ように、被雇用者も自分で決めたい、
と思うのではないかと思いましたので、株主の立場・観点から、会社が行う「雇用契約の締結」について考えてみたわけです。

 



例えば、株主がある人を雇用することを株主総会で決議したとします。
会社はその株主総会決議に従わねばならないのでしょうか。
概念的には、株主総会では、株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について、決議をすることができます。
ですので、株主総会である人を雇用することが決議されたならば、会社はその人を雇用する義務を負うような形にはなると思います。
しかし、ここで問題となるのが、大げさに言えばその法的根拠である気がするわけです。
というのは、
「株式会社が株主総会で決議を取ることができるのは、実は会社法に規定された事項のみなのではないか?」
と最近思うようになったからです。
一般には、株主総会決議には法的拘束力があるわけです。
しかし、株主総会決議に法的拘束力があるのは、会社法に規定された事項に関する決議だけになるのではないだろうか、
と最近思うようになったのです。
他の言い方をすると、株式会社は会社法の規定に忠実に従って運営されねばならない、ということではないかと思っているところなのです。
株式会社が会社法の規定を遵守するのは当たり前ではないかと思われるかもしれませんが、
私がここで言いたいのは、会社法の規定に違反していなければよいということではなく、
会社法に規定されていないことは株式会社はそもそも行うことができないのではないか、ということなのです。
株主総会である人を雇用することを決議すること自体は会社法の規定には違反しません。
しかし、ある人を雇用することを株主総会で決議することは会社法の規定にないことですから、
その株主総会決議自体が法的に意味を持たない、ということではないでしょうか。
役員の報酬決定、役員の選任や解任、定款の変更、事業の譲渡や組織再編行為の承認、配当金の支払額、
これからは会社法に規定がある株主総会決議です。
株主総会決議を取らなければ法的に無効ですし、逆に、株主総会決議を取ったならば会社は決議内容に従う法的義務があるでしょう。
しかし、会社法に規定がない事柄に関する株主総会決議となりますと、その株主総会決議の法的位置付けが不明確な気がします。

 


極端な話、株主総会である人を雇用することが決議されたのに会社が従わなかった場合、
株主としては最後は役員の解任という手段に訴えるしかないわけです。
少なくとも、株主総会決議を取っているから会社とその雇用予定者との間の雇用契約が有効になる、というわけではないわけです。
株主は会社の代表者ではないわけですから。
会社と会社の代表者の署名・捺印が雇用契約書には必要なのであって、雇用契約書に株主の署名・捺印があっても意味がないのです。
つまり、「ある人を雇用する」という株主総会決議に、有効も無効もない、という考え方になるように思うのです。
「ある人を雇用する」という株主総会決議は、会社にとってどんな意味があるのか、という話になるように思うのです。
「所有と経営の分離」といいますが、株主は会社経営に関与することは、実は半ば否定されているのだと思います。
株主が会社経営に関与できることは、会社法に規定された極一部のことだけに限られる、ということだと思います。
株主は紛れもなく会社の出資者であり会社の最高の意思決定者であるわけですが、
株主と会社の距離は、一千光年よりも遥かに遠いのかもしれません。
株主総会決議に従わなかったからといって特に何もないというのは、法的には意味がないというのと同じではないでしょうか。
株式会社が行う1つ1つの行為全てに、会社法の法的裏付けが必要だ、
株式会社が行うことができるのは、会社法に規定があることだけだ、
というふうに考えないといけないのかもしれません。

 



以上書きましたことは、別に私個人の経験その他のことから考えたことではなく、
会社法上定義される「業務の執行」とは何を意味するのだろうか、といつも考えていたからなのです。
これまでも私は何回か「会社法の条文にある業務の執行の業務が何を意味するのか不明確である気がする」と書いたかと思います。
今だにこの答えは出ていないのですが、例のごとく、明治三十二年商法でも業務という文言はあったであろうと思うわけです。
明治三十二年商法でいう業務も何を指すのか漠然としているかとは思いますが、
私が思うに、明治三十二年商法でいう業務とは「商取引を行うに当たり必要となる活動全般」を広範に指すのだろうと思います。
それで、明治三十二年商法では、出資者が業務を執行すると定められていたと思います。
これは、商法上、出資者のみが業務を執行できる、という意味なのだと思います。
商法上、出資者以外は業務を執行できません、という意味だと思います。
もし私の以上の解釈が正しいとすると、明治三十二年商法における会社では、従業員は雇用できなかったことになると思います。
従業員を雇用することは商法違反であったと思います。
明治三十二年商法の会社においては、出資者の誰かがポケットマネーで雇うのなら問題ないのではないかと思った時もあったのですが、
「会社において出資者以外の人物が会社の業務を行っていること自体が商法違反なのだ。
なぜなら、会社において会社の業務を行ってよいのは商法上出資者だけだからだ。」
という解釈になると今では考えを新たにしたところです。
弁護士や公認会計士をはじめ、「業務独占」という言葉があります。
ウィキペディアによりますと、
>業務独占資格(ぎょうむどくせんしかく、occupational licensing)とは、
>ある業務に対して、ある資格を有する者のみが行うことができる旨の法令の定めがある場合における、その資格をいう。
とのことです。
明治三十二年商法においては、会社の業務を行う資格を有するのは出資者だけであった(根拠法令は商法そのもの)、
というふうに解釈するとよいのではないでしょうか。
明治三十二年商法においては、会社の業務を行うためには出資者という資格が必要だったのです。

 


The announcement that we will frame an employment system of full-time workers.

全時間就業従業員雇用制度導入に関するお知らせ