2015年2月13日(金)
【コメント】
株式会社文藝春秋と大幸商工株式会社が合併するようですが、大幸商工株式会社は株式会社文藝春秋の完全子会社であるとのことです。
そして、株式会社文藝春秋と大幸商工株式会社は完全に同一の住所となっています。
社長さんが複数の会社を経営しているなど、中小企業であればこのように同一の住所に複数の会社があることはよくあります。
また、上場企業・大企業でも、持株会社制において、持株会社とその傘下の主要事業子会社とが同一住所ということはよくあります。
「会社」というのは、基本的・第一次的にはその「商号」によって一意に識別するものであろうと思います。
その住所(所在場所)は、会社を一意に識別するための、補足的・第二次的な属性・情報の意味合いが相対的には強いと思います。
自然人であっても、同一の住所に複数の人間が住んでいるわけです。
そのことを考えますと、同一の住所に複数の法人が設立されていても、おかしいとは言えないとも言えます。
ただ、日常生活を送る自然人とは異なり、ここでは商行為を営む「商人」の話をしているわけです。
商人が自己を表示するために用いる商号については、「商号単一の原則」という考え方があります。
「商号単一の原則」とは、商人は、複数の商号を保有することができるが、
同一営業については同一営業所で複数の商号をもつことはできない、という商行為を営む上での原則です。
この原則の趣旨は、取引の相手方を広く保護し取引上誤認が生じないよう広く商行為の円滑化を図ること、だと思います。
営業場所・営業店舗といったことを考えますと、商人の住所(所在場所)もまた、商号と全く同じ様に、
その商人を一意に識別するために必要な重要な属性・情報だということなのだろうと思います。
その意味ではやはり、同一住所に複数の会社が存在することは、商法概念上・商取引上はおかしい、ということになると思います。
Just as two juridical persons of the same name are not able to exist in this
world,
two juridical persons of the same address are not able to exist
there.
同一商号を持つ二つの法人はこの世に存在し得ないように、
同一住所を持つ二つの法人はそこに存在してはならないのです。
参考までに、実務上株主総会の基準日はどのように設定されるのか、三菱商事株式会社の定款を見てみましょう。
三菱商事株式会社 [ご参考]定款(平成26年6月20日改定)
ttp://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/articles/pdf/articles.pdf
第2章 株式
(基準日)
「第12条」
簡単にまとめますと、三菱商事株式会社は、基準日の設定に関して、定時株主総会の場合は、
毎事業年度末日の株主をその事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主と定める、とのことです。
臨時株主総会の場合は、取締役会の決議によって、あらかじめ公告して、
ある一定の日の株主を臨時株主総会において権利を行使することができる株主と定める、とのことです。
キャプチャーした上記「第12条」(基準日)の前半(1文目)は、文言通り定時株主総会の場合の基準日設定方法です。
キャプチャーした上記「第12条」(基準日)の後半(2文目)は、”前項その他”云々と難しく書かれていますが、
要するところ臨時株主総会の場合の基準日設定方法です。
臨時株主総会の場合、基準日をいつの日取りに設定するかについては、定款には「一定の日」としか書かれていません。
取締役会決議日から1週間なり10日なり過ぎたある一定の日という意味だと思います。
実務上は、諸般の事情その他があるということでしょうから、そのような設定方法にならざるを得ないということだとは思います。
しかし、法理上は、上の方で書きましたように、臨時株主総会は基準日も招集日も開催日も「可及的速やかに」が基本的考え方になります。
A record date should be determined and is arranged as a matter of course.
基準日は決めなければなりませんし、また、自然に決まるものなのです。
第3章 株主総会
(決議の要件)
「第17条」
>株主総会の特別決議(会社法第309条第2項に規定する決議をいう)は、
>議決権を行使することができる株主の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上で行う。
>前項以外の株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席株主の議決権の過半数で行う。
まず、この定款第17条(決議の要件)の後半(2文目)の”前項以外の〜”は、いわゆる株主総会普通決議を指しています。
三菱商事株式会社では、株主総会普通決議は、出席株主の議決権の過半数で行う、と言っているわけです。
そして、この定款第17条(決議の要件)の前半(1文目)は、文言通り株主総会特別決議に関する定めとなっています。
三菱商事株式会社では、株主総会特別決議は、出席株主の議決権の3分の2以上で行う、と言っているわけです。
この定款第17条(決議の要件)の定めにおいて法理上問題であると私が考えるのは、
”議決権を行使することができる株主の3分の1以上を有する株主が出席し”の部分です。
これはいわゆる定足数の定めであるわけです。
三菱商事株式会社では、株主総会普通決議も株主総会特別決議も、
「議決権を行使することができる株主の3分の1以上を有する株主が出席すること」が第一条件だ、
と定款で定められているわけです。
株主総会決議の第二条件は、最初に書きましたいわゆる決議要件(それぞれ出席株主の「過半数」と「3分の2以上」)であるわけです。
三菱商事株式会社のこの「議決権を行使することができる株主の3分の1以上を有する株主が出席すること」という定足数の定めの
どこがおかしいのかと言えば、定足数の要件を軽減していることそのことであるわけです。
The requirements for resolution can only get tightened up further or can
only become advantageous to minority shareholders.
決議要件は、さらに厳しくすることだけが、すなわち、少数株主に有利な方へと修正することだけが認められます。