2015年1月27日(火)



2015年1月27日(火)日本経済新聞
KOA、2円増の24円配
(記事)





2015年1月26日
KOA株式会社
平成27年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://navigator.eir-parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=tdnet&sid=1207254&code=6999&ln=ja&disp=simple

 

2015年1月26日
KOA株式会社
平成27年3月期 業績予想および期末配当予想に関するお知らせ
ttp://navigator.eir-parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=tdnet&sid=1207255&code=6999&ln=ja&disp=simple

 


【コメント】
昨日のコメントで、「当期純利益」について、以下のよう書きました。

>業種業界などにもよるでしょうが、一般に、当期純利益は全ての損益項目の中で一番変動が激しい損益項目だと思います。
>一般的に言えば、当期純利益は毎年、規則性がないランダムな金額となりやすいのです。
>毎年横ばいであったり、数年にわたり単調増加であったり単調減少ということはあまりないのです。


2015年1月26日にKOA株式会社が発表した決算短信には、この論点と関連することが記載されていました。

1.平成27年3月期第3四半期の連結業績(平成26年4月1日〜平成26年12月31日)
(1)連結経営成績(累計)
(1/10ページ)



このたび発表されたのはあくまで「平成27年3月期第3四半期」の決算短信なので、
その点には注意が必要です(つまり、以下の話は1年前の決算の話になります)が、
何と、平成26年3月期第3四半期の営業利益、経常利益、四半期純利益は、
前年同四半期に比べそれぞれ、101.3%増、96.4%増、101.9%増、となっています。
増加率が100%というのは、簡単に言えば「2倍になった」という意味です。
KOA株式会社の平成26年3月期第3四半期の営業利益は前年同期比2倍になった、ということで、
上場企業の決算においては非常に珍しい増加率なのではないかと思います。
特に、売上高は15.4%しか増加していないにも関わらず営業利益は100%以上も増加しているということで、
売上原価そして販売費及び一般管理費の増加はどのような具合であったのか、気になるところです。
特に、KOA株式会社は生産拠点を複数有している製造業(事業内容は「各種電子部品の開発・製造・販売」)であるわけです。
そして、製造業でも卸売業でも小売業でも同じですが、売上高が増加する場合には必ず販売に対応する売上原価も増加するわけです。
財務分析の観点から費用構造を分析すると、大まかに言うと、KOA株式会社は、
「固定費が大きく変動費率が小さい」、という特徴があるのだと思います。
つまり、KOA株式会社は、固定費が大きいので売上高の減少に弱い(販売が落ち込むとすぐに赤字転落しやすい、損益分岐点が高い)一方、
変動費率が小さいので一旦売上高が損益分岐点を越えると利益額が一気に伸びる(売上高の増加率以上に営業利益の増加率が大きい)、
という特徴があるのだと思います。
他の言い方をすれば、KOA株式会社は「営業レバレッジ」が非常に大きい、という特徴があるのだと思います。

 



参考までに、「平成26年3月期」の決算短信も見ておきましょう。


2014年4月21日
KOA株式会社
平成26年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://navigator.eir-parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=tdnet&sid=1140165&code=6999&ln=ja&disp=simple

1.平成26年3月期の連結業績(平成25年4月1日〜平成26年3月31日)
(1)連結経営成績
(10/20ページ)



平成26年3月期の通期で見ますと、営業利益や経常利益や当期純利益の増加率は先ほどの第3四半期に比べマイルドになっているようです。
それでも、売上高の増加率(15.2%)以上に、営業利益の増加率(89.7%)の方がはるかに大きいことには変わりありません。
会社自体は全く同じなのである意味当たり前のことかもしれませんが、平成26年3月期の通期で見ても、先ほどの第3四半期同様、
KOA株式会社は、「固定費が大きく変動費率が小さい」=「営業レバレッジ」が非常に大きい、という特徴があると言えます。
それで、昨日は当期純利益の変化率は他の損益項目の変化率に比べて非常に大きい、と書きましたが、
KOA株式会社は、上記の表のように、営業利益の増加率(89.7%)が一番大きく、次に経常利益の増加率(70.0%)が大きく、
そして当期純利益の増加率(52.9%)が一番小さい、という結果になっています。
この傾向は、さらに1年前の「平成25年3月期」の決算でも同じです。
これは昨日書いた内容とはある意味正反対であるわけですが、言い訳に聞こえるかもしれませんが、
昨日書いたことはあくまで一般論(一般的傾向)であって、会社の損益状況や業績の変化度合いによって増減率は逆転することはあります。

 



以上の点について追加で書きますと、よく上場企業では、「益出し」を行い、営業利益が落ち込んだ時は保有有価証券を売却し、
投資有価証券売却益を計上することで、当期純利益の金額を平準化すると共に配当の原資を作り出す、ということを行うことがあります。
営業利益の状況を見て経営上の判断で保有有価証券を売却すること自体は、特段粉飾決算などではありません。
ただ、これも一般論になりますが、保有している有価証券に含み益が生じるということは、含み損も生じ得る、ということです。
有価証券を保有しているからといって、投資有価証券売却益を計上できるとは全く限らないわけです。
基本的には、投資有価証券売却益の計上などによる「益出し」は行えないと考えるべきだと思います。
さらに、投資有価証券売却益の計上などによる利益の操作は基本的には行えないということを踏まえてのことになりますが、
昨日、当期純利益の変化率は他の損益項目の変化率に比べて非常に大きい、と書きましたが、
この理由についてもう少し書きますと、この理由は、

@いわゆる特別損益というのは売上高の増減とは無関係な損益項目である、
A法人税を引き算した後の金額である、

の2つになります。
特別損益に計上される損益項目というのは、固定資産売却損益、固定資産減損損失、投資有価証券売却損益、投資有価証券評価損、
といった項目になると思います。
これらは全て、基本的には売上高とは無関係であるわけです。
売上総利益は売上高と極めて強い相関関係があるわけですが、
固定費と呼ばれる費用は確かにあるもの、営業利益も経常利益も売上高と一定以上に強い関係にあるわけです。
それに比べると、特別損益は売上高とは直接的には関係ありませんから、当期純利益は売上高とは無関係に増減しやすいのです。

 



さらに、「法人税」があります。
法人税の金額は、当たり前かもしれませんが法人税法のみに従って算出されます。
売上高の概念は基本的には企業会計と法人税法で同じでしょうが、
少なくとも、法人税法上は、企業会計上の営業利益や経常利益の金額の水準というのは、課税所得額・法人税額とは全く関係がないわけです。
つまり、企業会計上の損益計算書において、法人税額は、企業会計上の損益計算とは全く無関係に、
悪く言えば割り込んでくるかのように、言わば独立した(企業会計からは独立した計算過程を経て算出した)金額として、
損益計算書に計上されてくるわけです。
ですので、当期純利益の金額は、損益計算書において、営業利益や経常利益の金額に比べ非常に変動しやすいわけです。
損益計算書で言えば、税引前当期純利益までは純粋に企業会計上の数値・金額です。
しかし、当期純利益の金額は、企業会計上の数値・金額と法人税法上の数値・金額の合算値・通算金額なのです。
もちろん、法人税の金額は、会社法上定義のしようがなく、法人税の金額は法人税法によるしかありません。
その意味では、法人税の金額も、企業会計上の数値・金額の1つだ、と解釈する他ないのかもしれません。
しかし、その数値・金額の計算過程は他の損益項目とは根底から異なるのもまた事実ですので、
少なくとも、当期純利益の金額は営業利益や経常利益の金額に比べ非常に変動しやすいというのは、会計理論上は確かなことだと思います。
また、この「法人税の金額は企業会計からは独立した計算過程を経て算出した金額である」という部分(一種の齟齬)を緩和するために、
税効果会計という会計処理方法が導入されています。
確かに、税効果会計を適用すれば、企業会計上の収益・費用の計上のタイミングと、法人税法上の益金・損金の計上のタイミングのズレを、
繰延税金資産・負債と法人税等調整額という勘定科目を用いて、緩和することができます。
つまり、税効果会計により、法人税法の基準の影響を小さくし、当期純利益の金額を企業会計上の金額に近づけることができるわけです。
繰延税金資産の回収可能性の問題など、保守主義の原則の観点からは、税効果会計は問題がないわけではないのですが、
その点の除けば、税効果会計の適用により法人税額の独立性は縮小されるわけです。
つまり、税効果会計の適用により、法人税の金額は企業会計上の処理に整合した擬似的な法人税額となるわけです。

 


しかし、ここで1つ本質的な問題点があります。
それは、厳密に言えば、企業会計上の費用の金額と法人税法上の損金の金額とは、絶対に一致しない、という点です。
いわゆる「永久差異」がその理由です。
実は税効果会計は「一時差異」のみが適用対象なのです。
「永久差異」は調整のしようがない差異です。
これは損金算入に関する「要件」の問題であって、「タイミング」の問題ではないのです。
つまり、企業会計上の損益と法人税法上の損益とは、はじめからズレる(一致しない)ことが、会計理論上の前提とも言えるわけです。
税効果会計の適用により、一時差異のみを緩和しても、企業会計上の損益と法人税法上の損益は煎じ詰めれば最後まで一致はしないのです。
企業会計上の損益と法人税法上の損益とをどうしても一致させたいならば、
企業会計上の会計処理を法人税法上の基準に合わせるしかないと思います。
つまり、企業会計上、損金算入は未来永劫に認められないことが分かっている永久差異はもちろん計上しないということになりますし、
一時差異に関しても、当期に損金算入されないことが分かっているのなら当期には計上しない、ということになるわけです。
その費用が損金算入されるか否かは法人税法に予め定められていますので、判断に迷うことはないと思います。
その場合、影響として大きいのは、資産の減損処理になると思います。
この場合の結論を端的に言えば、資産の減損処理は一切行わない、ということになります。
永久差異も一時差異も一切計上しないとなりますと、企業会計上の損益=法人税法上の損益、ということになり、
当期純利益の増減は、基本的には売上高の増減に整合した増減になると思います。
固定資産売却益(固定資産譲渡益)等はありますので、確かに一部の損益項目については、売上高そのものとは無関係な側面も出てきますが、
あくまで法人税法の定めに合致した形で固定資産売却益(固定資産譲渡益)等を計上していくわけですから、
少なくとも企業会計上の損益が法人税の金額に大きく左右されるということは決して生じないわけです。
この場合の企業会計上の損益計算書は、いわゆる中小企業(非上場企業)が作成している損益計算書と同じになると言っていいでしょう。
ただ、中小企業(非上場企業)においても、損金算入されない費用を計上することは極端に言えば自由と言えば自由ですので、
やはり法人税法の定めをそのまま適用することを考えても、どうしてもズレる部分があることには変わりないわけです。
話が最初に戻ってしまいますが、企業会計上の損益と法人税法上の損益とは、はじめからズレる(一致しない)ことが、
やはり会計理論上の前提(企業会計上の前提、法人税法の前提)、ということになるのかもしれないな、と思います。
損金算入されない費用は計上してはならない、と法人税法で定めるのは法人税法の趣旨とは異なるでしょうし、
会社法でそう定めるのも、株式会社の定義や運営方法を定めたものという法目的を考えると、何かそぐわないものがあるでしょう。
企業会計上の損益と法人税法上の損益とははじめからズレる(一致しない)ものだ、ということを前提・所与のこととするならば、
一部の差異の緩和のみを目的とした税効果会計は、実ははじめから正鵠を得ていないものだった、ということになるでしょう。
「ピンボケ」という日本語がありますが、税効果会計はまさに、はじめから一部の像(差異)しか見えていなかった、と思います。
人の目もカメラのレンズも、1つの焦点にしか合わせられません。
企業会計上の損益と法人税法上の損益とを合致させることは、複数の焦点に合わせようとすることと同じなのかもしれません。