2015年1月24日(土)
2015年1月13日
株式会社ニトリホールディングス
株主優待制度の変更に関するお知らせ
ttp://www.nitori.co.jp/news/pdf/2014/2ADF5944-B66A-48CA-61C2-AF071BAB4295.pdf
2015年1月23日(金)日本経済新聞
株主優待の新設 SFP、食事券贈呈
(記事)
2015年1月22日
SFPダイニング株式会社
株主優待制度の新設に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1206851
【コメント】
記事やプレスリリースを読んでいて気になった点について、一言だけコメントします。
まず、株式会社ニトリホールディングスからのプレスリリースには、現行の株主優待制度の変更について、
>当社は、平成27年1月13日付の取締役会において、現行の株主優待制度について、 下記のとおり変更することを決議いたしました
と書かれています、
そして、SFPダイニング株式会社からのプレスリリースには、株主優待制度の新設について、
当社は、平成27年1月22日開催の取締役会において、株主優待制度の新設に関し、 下記のとおり決議いたしました
と書かれています。
つまり、株式会社ニトリホールディングスもSFPダイニング株式会社も、株主優待制度を実施することに関して、
「取締役会決議」だけで正式に決定している、ということになります。
会社法の定めや解釈としては、
会社法上定められた株主総会決議によらなければならない限定的な一部の事柄だけは当然株主総会で決議せねばならないが、
それら以外の事柄に関しては、取締役会で決議をすれば事足りる、
ということになっていると思います。
他には例えば、定款で「何々に関しては株主総会の決議によることとする。」と定めればもちろん、株主総会で決議せねばなりませんが、
定款に特段の定めがない場合は取締役会で決議をすれば事足りる、と解釈されるわけです。
この理由は、株主が取締役に対し会社の業務全般に関して包括的に委任を行っているからだ、
という基本的な考え方が株式会社制度にはあるからだと思います。
ですので、株式会社ニトリホールディングスもSFPダイニング株式会社も、株主優待制度を実施することに関しては
取締役会決議のみで正式な決定としているわけですが、法律上(会社法上)はそれで何ら問題ないのだと思います。
>毎年1回、当社定時株主総会終了後の5月中旬に発送いたします。
と書かれてあり、SFPダイニング株式会社(3月期決算)は株主優待券の贈呈(実施)について、
>@3月31日時点の株主様へは、6月中旬頃の発送を予定しております。
>@9月30日時点の株主様へは、1月上旬頃の発送を予定しております。
と書かれてあります。
株式会社ニトリホールディングスもSFPダイニング株式会社も、基本的には定時株主総会終了後に、
株主優待制度を贈呈(実施)する計画であるわけです。
SFPダイニング株式会社は年2回実施するということで、中間期が終了した日から3ヵ月強が過ぎた日に贈呈(実施)する計画であるわけです。
端的に言えば、株主優待制度を実施するのは定時株主総会終了後に、と書いてあるのでふと思ったのですが、
株主優待制度を実施することに株主が反対だとしたら、どうなるのだろうかと思いました。
例えば、定時株主総会で「株主優待制度を廃止することに関する議案」という議案を株主が提案し、
その議案が定時株主総会で可決・承認されたとしたら、会社の株主優待制度はどうなるのだろうか、と思ったのです。
株式会社制度の基本原理を踏まえれば、誰が最高の意思決定者かについては、疑いの余地なく、株主が最高の意思決定者なのであり、
したがって、会社の意思決定力の強さとしては当然に「株主総会決議>取締役会決議」であるわけです。
そうしますと、株主優待制度を廃止することが株主総会で決議されますと、会社としては株主優待制度を廃止する運びとなるわけです。
ただ、法の手続きの流れとしては、株主総会決議だけで法的に正式に株主優待制度は廃止となるのだろうか、と思いました。
というのは、株主優待制度を実施することは「取締役会で決議した」わけですから、
法の手続きの流れとしては、同じ決議機関である取締役会で決議することにより株主優待制度を廃止せねばならない、すなわち、
たとえ上位の決議機関であろうとも、異なる決議機関である株主総会決議だけでは法的に株主優待制度は廃止とはならない、
という考え方になるのではないかと思ったのです。
株主総会決議を受けて、改めて取締役会で同じ趣旨の決議を取らねば、株主優待制度は廃止とはならないのだと思います。
次に、株式会社ニトリホールディングスの決算期について書きます。
株主優待制度のプレスリリースに、「毎年2月20日(基準日)」、と書かれてありましたので気付いたのですが、
なんと株式会社ニトリホールディングスの決算期末日は、「毎年2月20日」となっているようです。
この点については、株式会社ニトリホールディングスのホームページの中の「株主メモ」にも記載があります。
株主メモ
ttp://www.nitorihd.co.jp/ir/stockholder/memo.php
>事業年度 毎年2月21日から翌年2月20日まで
と書かれています。
どの株式会社にも定款の中に、「事業年度」についての記載がありますが、株式会社ニトリホールディングスの場合、
そこには「当会社の事業年度は、毎年2月21日から翌年2月21日とする。」と定められていると思います。
日本では、株式会社の事業年度の末日というと、毎年3月31日と定めているケースが非常に多いと思います。
では、株式会社ニトリホールディングスのように、事業年度の末日は月の途中の日でもよいのかと言えば、
会社法上は事業年度の末日はいつであっても問題はないようです。
会社で日々行う実務のことを考えると、事業年度の末日はやはり月末が一番自然であるとは思いますが。
それで、株主優待制度の実施日(贈呈日)や基準日と関連した論点になるわけですが、
株式会社ニトリホールディングスの株主優待制度の基準日は「2月20日」であり、
先ほどの「株主メモ」によると、定時株主総会の基準日も、
>基準日 定時株主総会 毎年2月20日
となっているわけです。
そして、配当金の支払いの基準日についても、
>基準日 期末配当金 毎年2月20日
となっているわけです。
そもそも株主優待制度自体が本来的にその側面が極めて強いわけですが、
株主優待制度は株主に対する配当の一種であると株式会社ニトリホールディングスでは位置づけていることから、
株主優待制度の基準日と期末配当金の基準日は同じ「2月20日」になっているのだと思います。
それで、株式会社ニトリホールディングスの場合、
会社の事業年度の末日=定時株主総会の基準日=期末配当金の基準日=株主優待制度の基準日(=毎年2月20日)
となっているわけです。
また、会社法上、会社の事業年度の末日付けの計算書類を作成しなければならないわけですから、さらに「=貸借対照表日」でもあります。
これら全ての日が同じなのは当たり前ではないかと思われると思います。
ところが、会社法上は、定時株主総会の基準日は会社の事業年度の末日とは定められていないようなのです。
会社法上は、定時株主総会の基準日は会社が「一定の日」を定める、と規定されているだけなのです。
しかし、定時株主総会の基準日と会社の事業年度の末日とが異なっていてもよいとなりますと、
誰に対して配当金を支払うのか、そして、意思決定を行う株主は一体いつの計算書類を見て配当の意思決定を行うのか、
といった、会計と法理のつながりが崩れてしまうことになると思います。
会社の事業年度の末日の株主が、その日付の計算書類を見て配当金支払いに関する意思決定を行い、
すなわち株主総会で議決権を行使する権利があり、そして、その同じ株主が配当金を受け取る、
という、「会社の事業年度の末日」にまつわる当たり前過ぎる会計と法理のつながりがあるわけです。
会社法上は、大まかに要約すれば、配当金は基準日の株主が受け取る、と定められているようです。
配当金は基準日の株主が受け取るというのは当然の会計と法理のつながりだというのなら、
配当金は会社の事業年度の末日の株主が受け取るというのもまた当然の会計と法理のつながりなのです。
なぜなら、配当金は会社の貸借対照表から支払うわけですが、
その貸借対照表の日付はいつの日付かと言えば、当然に会社の事業年度の末日なのです。
会社は事業年度の末日の貸借対照表から配当金を支払いますから、株主総会の基準日は会社の事業年度の末日であると一意に決まるのです。
配当金支払いに関する議決権を行使した株主と実際に配当金を受け取る株主とが異なっていたらおかしいように、
会社の事業年度の末日の株主以外の株主が定時株主総会で議決権を行使するのもおかしいわけです。
それから、会社法では会社はいつでも剰余金の配当を行うことが可能になった、と言われます。
ただ、法律は変わっても、株式会社制度そのものには変化はないわけです。
会計と法理のつながりにも変化はないわけです。
剰余金の配当を行う場合、会社の貸借対照表から剰余金の配当を行うことには変わりはないわけです。
その意味では、本来は、剰余金の配当を行うたびに計算書類を作成しなければなりません。
さらに、剰余金の配当の財源に関してですが、「利益の分配」ということを考えますと、
剰余金の配当の財源は「法人税を支払った後の利益のみ」、ということになるわけです。
たとえ前期末までに十分な内部留保(法人税を支払った後の利益の留保額)があろうとも、
会社は当期になって巨額の赤字を計上しているかもしれないわけですから、
やはり正確な剰余金の金額を、剰余金の配当を行うに際して、計算書類を作成することで確定させねばならないわけです。
ところが、ここで問題となるのが、法人税なのです。
法人税額が確定するのは1年に1回(12ヵ月に1回)だけなのです。
つまり、剰余金の配当を行うに際して、正確な剰余金の金額を確定させようと思っても、法人税額を確定させられない以上、
正確な剰余金の金額は絶対に確定させられないわけです。
このことから行き着く結論は、「株式会社は1年に1回しか剰余金の配当を行えない」、であるわけです。
さらに、この「剰余金の配当の財源は『法人税を支払った後の利益のみ』」、という点について考察を深めますと、
配当金を支払える時期にも制約が課せられることになります。
税務当局は法人税の納付を受けるという文脈では、株式会社に対する1人の債権者であるわけです。
掛取引を所与のものとしますと、会社は債務の弁済は終わっていなくても利益を計上できたり配当金を支払えたりするわけですが、
配当金を支払うためには現金が必要であるわけですから、利益と現金との結び付き・利益に対する現金の裏付けを鑑みますと、
本来は、利益を計上する時点で、売上債権の回収は完了し、仕入債務の決済も完了していなければならない、
という考え方になるわけです。
そうでないと、貸方に剰余金(配当の財源)はあるが借方に肝心の現金がない、という事態に陥ってしまうわけです。
その意味では、現代では掛取引は所与のものとされてはいますが、基本的には、利益計上(損益取引)に関連する債権債務に関しては、
決算期末日時点で全て現金による決済は完了していなければならない(掛勘定はあってはならない)、という考え方になると思います。