2015年1月14日(水)


2015年1月14日(水)日本経済新聞
ヤマダS×L 3期連続最終赤字
(記事)



2015年1月13日
株式会社ヤマダ・エスバイエルホーム
平成27年2月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.sxl.co.jp/ir/library/pdf/tanshin_64c3.pdf

 


2015年1月13日
株式会社ヤマダ・エスバイエルホーム
業績予想の修正及び特別損失(減損損失)の計上に関するお知らせ
ttp://www.sxl.co.jp/ir/news/pdf/20150113_1.pdf

 



株式会社ヤマダ・エスバイエルホームの決算短信には以下のような記載があります。


1. 当四半期決算に関する定性的情報
(2)財政状態に関する説明
(5/11ページ)


>借入金について金融機関からの短期の借入から親会社である株式会社ヤマダ電機からの長期の借入に変更し、


とあります。
株式会社ヤマダ・エスバイエルホームは、従来は金融機関から資金を借り入れていたようなのですが、
当期に親会社である株式会社ヤマダ電機から資金を借り入れることにしたようです。
その理由については書かれていませんが、おそらく、
@金融機関からの借り入れでは利息を支払う必要があったのだが親会社からの借り入れであれば無利息であるから、
A金融機関からの借り入れは短期借入金であったが親会社からの借り入れは長期借入金ということで、財務の安定化が図れるから、
の2つが理由だと思います。
そして株式会社ヤマダ・エスバイエルホームは、上記のことを”借入を変更”と表現しているわけです。
しかし、この表現は少し注意が必要です。
株式会社ヤマダ・エスバイエルホームは、金融機関からの借入金は現に返済し、そして、改めて親会社から長期借入金を現に借り入れた、
と理解しなければなりません。
株式会社ヤマダ・エスバイエルホームからは現に現金が支出され、そして、借り入れにより会社には現に現金が入ってきているわけです。
何が言いたいと言いますと、”借入を変更”したといっても、借入先や借入条件が変更になったという見方だけでは表面的であり不十分だ、
ということです。
それはどういうことかと言いますと、債権の譲渡を所与のこととしますと、債権債務関係に着目しますと、
金融機関(旧債権者)から親会社(新債権者)へ「株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対する貸付金」(金銭債権)を譲渡しても、
株式会社ヤマダ・エスバイエルホームにとっては”借入を変更”したことになるからです。

 


グループ経営の観点から見ますと、親会社である株式会社ヤマダ電機からすると、
金融機関から「株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対する貸付金」(金銭債権)を譲渡してもらい、
その上で、株式会社ヤマダ電機と株式会社ヤマダ・エスバイエルホームとの間で金銭消費貸借契約の内容を一部修正し、
「株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対する貸付金」(金銭債権)の利率と貸出期間を変更する、
というようなことも、債権の譲渡を所与のこととしますと、可能であるわけです。
グループ経営の観点から、親会社である株式会社ヤマダ電機は、当然、無利息への条件修正に応じるでしょうし、
短期から長期への貸出期間の修正にも応じるでしょう。
子会社の株式会社ヤマダ・エスバイエルホームから見ても、利息は無利息になりますし借入期間も長期化されるということで、
いいことずくめであるわけです。
債権の譲渡を所与のこととしますと、そのようなことも可能であるわけです。
ただ、ここで1つ気が付くのは、株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対してお金を貸し付けていた元々の金融機関のことです。
元々の金融機関と株式会社ヤマダ・エスバイエルホームとの間で締結していた金銭消費貸借契約はどうなったのだろうか、と思うわけです。
「株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対する貸付金」(金銭債権)は株式会社ヤマダ電機へ譲渡したわけだから、
その譲渡に伴い、元々の金融機関と株式会社ヤマダ・エスバイエルホームとの間で締結していた金銭消費貸借契約も
解除と言いますか終了と言いますか、その譲渡に伴い、
少なくとも元々の金融機関と株式会社ヤマダ・エスバイエルホームとの間で締結していた金銭消費貸借契約はない状態になるわけです。
元々の金融機関からすると、債務者本人からの弁済ではないものの、貸付金に関しては一種の繰上返済に応じたような形になりますから
当初受け取る予定であった利息は、
「株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対する貸付金」(金銭債権)の譲渡後は受け取れなくなるわけです。
元々の金融機関としては、そのことは承知した上で、債権の譲渡を行った、ということだとは思いますが。
元々の金融機関は、債権の譲渡と同時に、債務者である株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対して、
貸付金の債権者が株式会社ヤマダ電機へ変更になった旨、通知をする必要があるでしょう。
債務者である株式会社ヤマダ・エスバイエルホームは、債権者が変更になった旨の通知を受け、
旧債権者である元々の金融機関ではなく、新債権者である株式会社ヤマダ電機へ
借入金を返済する(利息もあれば利息も新債権者である株式会社ヤマダ電機へ支払う)、ということになります。
株式会社ヤマダ電機は株式会社ヤマダ・エスバイエルホームの新しい債権者として、債務者である株式会社ヤマダ・エスバイエルホームから
貸付金の返済を受けたり、利息がある場合は利息を受け取ったりするわけです。
元々の金融機関としては、今までの債務者であった株式会社ヤマダ・エスバイエルホームとも債権の譲渡先である株式会社ヤマダ電機とも、
全く関係がない状態になるわけです。

 


債権の譲渡を行いますと、以上のようになるわけです。
このように書きますと、話が非常に複雑に入り組んでいるな、と誰もが感じると思います。
実は、その込み入った債権債務関係こそが、元来は債権の譲渡は法律上行えないことの理由なのだと思います。
債権の譲渡を行いますと、債務者、旧債権者、新債権者、全ての当事者にとって、契約内容が大なり小なり変更になるわけです。
利息や貸出期間が変更になるだけならまだしも、債権者が変更になるとなりますと、
それは実質的に全く新しい契約を締結したことと同じだとすら言っていいわけです。
しかし、債務者としては、利息や借入期間の修正はあるにせよ、引き続き同じお金を借り入れたままである、という状態でもあるわけです。
つまり、以前からの契約もまだ有効であるかのような状態でもあるわけです。
以前からの契約は今度どうなるのか、そして元々の金融機関との関係はどうなるのか、
債務者としては精神衛生上よくないと言いますか、何かもやもやしたものを感じるわけです。
どうせなら、当初の計画通り借りたお金は元々の金融機関に返済して、金銭消費貸借契約を終了したい、
という思いを感じるものではないでしょうか。
もちろん、旧債権者から新債権者への債権の譲渡に伴い、以前からの金銭消費貸借契約はないという状態になりましたし、
元々の金融機関からその後私にお金を支払うように言われるなどということはありません。
しかし、債務者からすると、金銭消費貸借契約が突然変更になったかのように感じるのも確かであるわけです。
債務者としては、お金を借りた人に返すわけではないということにどことなく違和感を感じることになるわけです。
旧債権者としても、お金を貸した人から返してもらったわけではないということにどことなく違和感を感じることになるわけです。
新債権者としても、金銭債権の譲渡を受けた後、他の人から返済を受けるということにどことなく違和感を感じることになるわけです。
何ら問題は生じないだろうけれども、そもそも何か利害関係がずれているかのようにも感じるわけです。
当事者の感覚や感情は別にしても、法理の話をしましても、債権の譲渡を行うと、上記のように、債権債務関係が必ず複雑になります。
全ての契約内容が変更になり、以前の契約は無事に終了(有効に解除)したのかどうかの判別が難しくなります。
一番いいのは、やはり契約は、変更することなく当初定められた通りに、最初から最後まで完遂する、ということだと思います。
このたびの株式会社ヤマダ・エスバイエルホームの事例で言えば、
株式会社ヤマダ・エスバイエルホームは、元々の金融機関にお金を(繰り上げて)返済することで当初の金銭消費貸借契約は無事解除し、
そして改めて、株式会社ヤマダ・エスバイエルホームは親会社である株式会社ヤマダ電機から
新たな条件でお金を借り入れる(親会社である株式会社ヤマダ電機と新たに金銭消費貸借契約を締結する)、
ということをするべきなのです(もちろん株式会社ヤマダ・エスバイエルホームはそうしたのだと思いますが)。
このような手順を踏まえさえすれば、同一契約の債権者が変更になるという法理上の矛盾のようなことは生じませんし、
以前の契約は有効に解除になったことも完全に明確になるわけです。
新たな利害関係者が1つの契約の中に新規に登場する、ということが一番債権債務関係を複雑にするわけです。
1つの契約の利害関係者は、最初から最後まで当初契約を締結した2者のみ(契約は1人対1人で締結する)、
契約というのは、どんなときも、この1対1という関係が一番大事なのです。

 


仮に、株式会社ヤマダ電機が、「株式会社ヤマダ・エスバイエルホームに対する貸付金」(金銭債権)を譲渡してもらえませんか、
と申し出てきた場合は、元々の金融機関は株式会社ヤマダ電機に対し、こう主張せねばなりません。

「や、まだ。」

いや、それはできない、まだ当初の金銭消費貸借契約は終了していないからだ、
という意味です。
株式会社ヤマダ電機さんが株式会社ヤマダ・エスバイエルホームさんに対しお金を貸し付けたいのなら、
私と株式会社ヤマダ・エスバイエルホームさんとの間の金銭消費貸借契約が終了してからにして下さい、
債権の譲渡は債権債務関係を複雑にするだけです、
という意味です。
株式会社ヤマダ・エスバイエルホームには「すまいるりんぐ倶楽部」という住まいのオーナー向けの専用サイトがあるようです。
契約は、最初から最後まで1人対1人で締結し完遂することが、両者がスマイルになるためには必要なことなのです。
株式会社ヤマダ・エスバイエルホームの「エス(S)」には、ブランド戦略上様々な意味が込められていると思いますが、
契約はシンプル(Simple)な利害関係であることが一番スマート(Smart、賢明である)だと思います。
最後はダジャレや言葉遊びみたいになりましたが、
どの種類の契約でも、契約は1人対1人で締結し、そして、他の者を契約に一切入れることなく2人だけで最後まで当初の契約を完遂する、
ということが、法理としても人としても何よりも大切なことだと思います。

 

This transaction seems to be only the change of lenders and terms superficially, but it is the combination of
repayment of existing debts to the existing lender and newly borrowing the same sum from a new lender, actually.
In other words, from a viewpoint of creditors',
this transaction is not a transfer of a loan between the existing creditor and the new creditor.


この取引は、表面上は借入先と借入条件が変更になっただけのように思えるかもしれません。
しかし実際には、この取引は、既存の借入先へ既存の借入金を返済することと新しい借入先から同額を新たに借り入れることとが
セットになった取引なのです。
他の言い方をすれば、債権者の立場から見ると、
この取引は、既存債権者と新債権者との間の貸付金の譲渡ではない、ということです。