2015年1月11日(日)
2015年1月10日(土)日本経済新聞 公告
ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て)に関するお知らせ
サイバーステップ株式会社
(記事)
2015年1月9日
サイバーステップ株式会社
有価証券届出書(組込方式)
(EDINETと同じPDFファイル)
>新株予約権の無償割当て会社法第277条に規定される新株予約権の無償割当てに該当し、
と書かれています。
新株予約権の無償割当てを実施することにより、株主割当増資を行ったことと同じ株主構成にすることができます。
より正確に言えば、新株予約権を行使すれば、既存株主は増資後も議決権割合を維持できるわけです。
新株予約権の無償割当ては、既存株主に配慮した増資方法、と言うことができるでしょう。
では、明治三十二年商法ではどうであったでしょうか。
私は今までに何回も「明治三十二年商法では株主割当増資しかできなかった」と書いてしまったかと思います。
実は「明治三十二年商法では株主割当増資しかできなかった」というのは厳密には未確認でして、
今日改めて明治三十二年商法における増資方法について考えてみました。
すると、「明治三十二年商法では株主割当増資しかできなかった」と考えは間違っているかもしれないな、と思いました。
明治三十二年商法の条文はまだ確認していませんが、
明治期の株式会社制度であればこうであったであろうと推論し、以下、自分の考えを書きたいと思います。
今日辿り着いた結論は、明治期の株式会社制度における法理上の増資方法は、
「新株式の発行価額も発行する新株式数も新株式の引き受け手も全く自由に決めてよい」
です。
これまで何回も書いてきた「明治三十二年商法では株主割当増資しかできなかった」という内容とは極端に異なる(ある意味正反対である)
わけですが、明治期の株式会社制度における法理上の増資方法は「新株式の発行は何から何まで全く自由」、が正しいと思います。
ただし、この増資方法には条件があります。
その条件とは、「その増資に全社員が同意をすること」です。
「全社員の同意」というのが、1つの重要なキーワードになります。
結局のところ、その増資に全社員が同意をするのなら、どのような増資方法でもよい、ということになるわけです。
自身の持株比率が減少するのも第三者が著しく低い価額で新株式を引き受けるのも、
既存の全社員は納得していることだ、という判断になるわけです。
仮に、自身の持株比率が減少するが嫌なのであれば同意をしなければよいわけですし、
仮に、第三者が著しく低い価額で新株式を引き受けるが嫌なのであれば同意をしなければよいわけです。
「全社員の同意」というのは、それほどまでに重いと言いますか、
「全社員が同意している」というのは、その増資方法に異議を唱える株主は1人もいない、という意味なのです。
その増資方法に異議を唱える株主は1人もいない、だから、どのような増資方法でも認められるのです。
以上のことは逆から言えば、増資に際して「全社員の同意」を必要とはしない場合は、法制度としては、
増資方法は限られなければならない、ということになります。
より具体的に言えば、「全社員の同意」を必要とはしない増資を行うとすれば、
それは株主割当増資しかない、ということになるわけです。
なぜならば、株主割当増資であれば、株主の議決権割合は減少しないからです。
つまり、会社の利益の帰属割合は増資後も減少しないからです。
(また、株主割当増資であれば、全株主が引き受けなければ増資自体が無効になると思いますので、
その意味でも(少数)株主の利益保護は結果として図られると思います。)
要するに、増資に際しては、大株主に有利、少数株主に不利、という増資を商法制度としては避けなければならないわけです。
第三者割当増資であれば、それが可能になります。
しかし、株主割当増資であれば、大株主に有利な増資は行えないわけです。
株主割当増資であれば、全株主にとって平等な増資であるわけです。
株主割当増資であれば、増資に異議を唱える株主はいない、と言えるなと私は今までは思っていたわけです。
ただ、私の今までの考えというのは、あることを前提としていました。
それは、「議決権割合による多数決」により増資の意思決定をしていくことです。
増資の意思決定を「議決権割合による多数決」により行っていく場合は、株主割当増資しか行えない(はずだ)、と思っていたわけです。
ところが、明治期の株式会社制度における意思決定は、現代のような議決権割合による多数決ではなく、
「全社員の同意」により行っていく、ということですと、話が一変するわけです。
「全社員の同意」により増資の意思決定を行っていくということになりますと、
途端に「増資方法は全く自由」ということになるわけです。
なぜなら、その増資方法に異議を唱える株主は1人もいないからです。
異議を唱える株主は1人もいないというのは、(少数)株主の利益は完全に保護されている、という意味です。
私のこれまでの間違いと今日書きました内容を簡単にまとめるならば、
株主の多数決により意思決定を行う → 株主割当増資のみ
「全社員の同意」により意思決定を行う → 増資方法は全く自由
ということになります。
法理上は、株式会社の意思決定は「全社員の同意」により行う、という考え方が株主保護の考え方に適うものだと思いますので、
結果、増資の実施に関しても、「全社員の同意」により意思決定を行うのならば、その議案内容(増資方法)は全く会社の自由、
ということになるのだと思います。
言い訳になりますが、「株主の多数決により意思決定を行う」という考え方がこれまで私の頭の中にずっとありましたものですから、
「株主の多数決により意思決定を行う」のならば、(少数)株主保護の観点を鑑みれば、株主割当増資のみしか認められないはずだ、
と思っていたわけです。
仮に一部の株主が決議された株主割当増資の実施に反対ならば、増資を引き受けない(増資を流産させる)、
という対抗策も考えられるな(法理的には決議されたならば必ず引き受けなければならないはずではありますが)、
という思いも漠然と頭にありました。
少なくとも、そのような(少数)株主保護の方法もあるような気がするな、と思いました。
ただ、そういった二次的・対抗策的な(少数)株主保護の方策をあれこれ考えるよりも、
ただ単に「全社員の同意」により意思決定を行う、ということにすれば、(少数)株主の利益は完全に保護されることになるな、
と今日思いました。
これまでのコメントは、「株主の多数決により意思決定を行う」ということを前提としていたと思います。
明治期の株式会社制度においては、株式会社の意思決定は「全社員の同意」だったような気がするな、と思いましたので、
「『全社員の同意』により意思決定を行う」を前提として、これまでの考えを修正してみました。
「明治三十二年商法では株式会社の増資方法は発行価額も発行株式数も割り当て相手も全て完全に自由だった」、
これが株式会社の増資方法に関する私の今の結論です。
ただし、「『全社員の同意』により意思決定を行う」ということが大前提です。
「全社員の同意」により意思決定を行う、だからこそ、発行価額も発行株式数も割り当て相手も全て完全に自由な増資方法が認められる、
ということになるのです。
株主の多数決により意思決定を行う場合は、そのような増資方法は商法制度としては認められないのです。
全く自由な増資方法が商法制度上認められるためには、「全社員の同意」により意思決定を行うことが前提になければならないわけです。
この法理は、明治三十二年当時だけではなく、本来であるならば現代にも当てはまる法理であろうと思います。
仮に、株主の多数決により意思決定を行うのであれば、商法理としては株主割当増資のみが認められるべきであろう、と思います。
現代の「ライツ・オファリング」という増資方法は、上場企業株主の特殊性に配慮そして妥協したその劣化版株主割当増資なのだろうか、
と思いました。
また、これまでのコメントは、「株主は株式の譲渡を行う」ということも前提としていたと思います。
既存株主以外の株主が株式を引き受ける場合は、既存株主から株式の譲渡を受けることによって新しく株主になるべきだ、
というようなことが漠然と頭にあったように思います。
これも結局のところは、(少数)株主の利益保護のことが頭にありました。
議決権割合が減少するのが嫌なのであれば、株式を譲渡しなければよいわけです。
株主の意思に反した議決権割合の減少は、株主の利益保護の観点に反するな、と思ったわけです。
新しく会社に出資をしたいという人物が現れた場合は、株主割当増資を実施した後、各株主が改めて株式を譲渡することにすれば、
株主の意思に反して議決権割合が減少することはない、と思いました。
ただ、これもまた私の勉強不足ですが、明治三十二年商法では、株式の譲渡は認められていなかったのだと思います。
そうしますと、私が考えていたことは完全に的外れであったと思います。
結局のところ、それもこれも、「全社員の同意」により意思決定を行うことにすれば解決するしそもそも問題も生じないことだ、
と思っているところです。
また、「『全社員の同意』により意思決定を行う」という状況下ですと、議決権割合には全く意味がないわけです。
なぜなら、99%所有も1%所有も意思決定に関しては全く同じ意味・法的効力を持つからです。
ですから、意思決定という観点だけから言えば、株主は自分の持株比率が減少することには何ら抵抗はなかったと思います。
当時は、議決権の強さ(議決権の割合)という考え方自体がなかったわけです。
当時は、持株比率は純粋に利益の帰属割合のみを表していたわけです。
結論らしい結論になっているか分かりませんが、「『全社員の同意』により意思決定を行う」ことにすれば、
株式会社において意思決定に関して法理上問題となることは全くない、ということだけは確かなのだろうと思います。