2014年12月29日(月)



2014年12月29日(月)日本経済新聞
法人減税、信金業界は複雑
(記事)


 


【コメント】
信用金庫や信用組合といった「協同組織金融機関」の法人税率は、
株式会社の形態を採っている金融機関やその他一般の事業会社の法人税率よりも軽減されているようです。
「協同組織金融機関」に適用される法人税率(軽減税率)は、一般企業の法人税率(基本税率)よりも6.5%低いようです。
信用金庫や信用組合といった「協同組織金融機関」が設立された理由は、
特に地元の中小・零細企業を対象に、地域に密着した形で融資を行っていくことなのだろうと思います。
また、信用金庫や信用組合といった「協同組織金融機関」は、株式会社の形態を採っている金融機関とは異なり、
営業地域が法律的に制限されているようですので、営利の追求に制限が課されている状態での営業となります。
そういったことを考慮して、信用金庫や信用組合といった「協同組織金融機関」の法人税率は軽減されているのでしょう。
株式会社の形態を採っている金融機関やその他一般の事業会社の法人税率が今後引き下げられるということであれば、
信用金庫や信用組合といった「協同組織金融機関」の法人税率も同時に一定度は引き下げられるべきだ、
というのは一理あろうかと思います。
競争自体がフェアではないわけですから、法人税率が同一なのは逆におかしい、という言い方はある意味できようかと思います。
ただ、それを言うなら、法律的に営業地域を制限し営利の追求に制限を課していること自体がおかしい、と言わねばならないと思います。
私人として営利を目的としているなら営利を目的としているということで、全企業でフェアに商取引は行っていくべきでしょうし、
逆に、国として公共の利益を目的としているなら公共の利益を目的としているということで、課税云々の話はあってはならないでしょう。
また、類似の製品・サービスを提供している企業群を集合的に表現して「業界」という言い方をしますが、
同一業界内に私企業と国の事業(もしくは国営企業)とが混在しているのは決して望ましくないでしょう。
理由は極めて簡単であり、私企業よりも国の事業(もしくは国営企業)の方が比較にならないほど圧倒的に有利だからです。
信用金庫や信用組合といった「協同組織金融機関」の場合とは逆の意味で、その業界では競争自体が全くフェアではないわけです。
同一業界内に私企業と国の事業(もしくは国営企業)とが混在している中で、法人税率が同じというのは逆にフェアではないわけです。
ただ、理論上は、それを言うなら、同一業界内に私企業と国の事業(もしくは国営企業)とが混在していること自体がおかしい、
と言わねばならないと思います。
競争そのものがフェアであることを担保するためには、どの業種業界においても、国は一切の事業を手がけてはならない、
ということになると思います。
逆から言えば、どの業種業界においても、国は一切の事業を手がけないこと、そして、法人の営業に一切の制限が課されていないこと、
の両方の条件が満たされる場合のみに、法人税率は全企業で同一であることが理論上是とされるのだと思います。

 



話の論点を絞るため、ここでは、
どの業種業界においても、国は一切の事業を手がけないこと、そして、法人の営業に一切の制限が課されていないこと、
の両方の条件が満たされているとしましょう。
その場合であれば、理論上、法人税率は全企業で同一であるべきだ、となるでしょう。
確かに、業種業界の違いにより収益性の高さが大きく異なることが考えられます。
すなわち、大きな利益を得やすい業界もあれば少ない利益しか得られない業界もある、という状態が考えられはします。
しかし、本当に完全競争状態であれば、ある法人が別の業界へ移動するのも自由であるわけです。
自身が現在属している業界の収益性が低い(競争が激しくて儲からない)というのなら、
その法人は収益性が高い業界へ参入すればよいわけです。
ですから、理論上は、業種業界の違いは、法人税率に差異を設ける理由にはならないと思います。
このことは逆から言えば、新規参入が法律により制限されている業界に属している法人に対しては、
一般の法人税率よりも高い税率を課するべきだ、という主張の根拠になると思います。
なぜなら、新規参入が法律により制限されていると、既存の法人は大きな利益を得やすいからです。
もちろん、国が法律により新規参入を制限している時点で、何か国として思惑がある(優遇を考えている)ということだろうと思いますので、
その業界に属している法人には一般の法人税率よりも高い税率を課するというふうに国(税務当局)が考えるとは考えづらいわけですが、
純粋に課税理論上の話をすると、他の業界に比べ競争がフェアではない(その業界では高い収益性が得られやすい)ということであれば、
法人税率もそれに応じて高く設定すべきだ、という考え方になるのではないかと思います。

"No taxation without representation." 「代表なくんば課税なし(代表権なきところに納税義務なし)」

という言葉がありますが、

"No same rate without same competition." 「競争条件が同一でないなら税率も同一ではない」

といったところでしょうか。

 



ただ、競争条件が同一でないこと(国が事業を手がけていることや営業に何らかの制限があること)を
どのように法人税率の差異に織り込めばよいかという点に関しては、全く答えは出ないでしょう。
現実の話をし出すとキリがないわけですが、課税理論上は、競争条件は全業種業界全法人で同一だ、と想定する他ないと思います。
そして、競争条件は全業種業界全法人で同一だと想定すると、自然人が営んだ結果獲得した収益に関しても、
法人と全く同一の所得税率が課せられなければならない、という結論に行き着くと思います。
法人の所得税率(法人税率)が自然人の所得税率よりも低いのは、税務理論上はおかしいのです。
法人と自然人とでは事業を営む器に違いがあるだけのことであり、商取引自体には両者に差があるわけではないのですから。
理論上の話をすれば、法人には営めて自然人には営めない事業などないのです。
理論上の話をすれば、自然人が何百人何千人と雇用契約を締結することも可能ですし、
多額の資金が必要なら理論上は自然人であってもいくらでも借り入れることができるわけです。
自然人であっても、機械や設備などもいくらでも取得できますし、原材料もいくらでも仕入れることができます。
ただ、株式会社では、法人に対して出資をするという形態を採っているだけなのです。
ですから、理論上は、法人と自然人とでは同一の事業・商取引を行っていると見なすべきなのです。
同一の商取引を行っているのであれば、所得税率は同じであるべきなのです。

 

The rate of the income tax should be fair or the same whether a tax payer is a natural person or a juristic person.

所得税の税率は、納税者が自然人の場合であろうと法人の場合であろうと、公平すなわち同一税率でなければならない。

 

 


2014年12月16日(火)日本経済新聞
■インドネシア政府 配当性向の規定緩和へ
(記事)


 


【コメント】
詳細を電子版に、と書いてあるからでありませんが、検索してみますと次の記事がヒットしました↓。
日本経済新聞の英語・アジア版のようです。


Indonesia's state-owned banks: Government plans to slash dividend payouts to boost lending
(Nikkei Asian Review December 10, 2014 3:15 pm JST)
ttp://asia.nikkei.com/Business/Trends/Government-plans-to-slash-dividend-payouts-to-boost-lending


最初だけ引用して訳してます。

 

JAKARTA -- Indonesia will lower the dividend payout requirement for state-owned banks to enable them
to provide more funding for underdeveloped sectors, such as infrastructure, the government announced Monday.
The move has won praise from the state-owned banks, as they are facing a slowdown in lending activity amid a sluggish economy.


【参謀訳】
ジャカルタ発―インドネシア政府は月曜日、
インフラストラクチャーのような発展途上にある部門に対してさらに多くの資金を提供できるよう、
国営銀行に適用される配当支払いに関する規制を引き下げる計画である、と発表した。
目下景気低迷の真っ最中であり、貸し出し業務が停滞している事態に直面しているため、
この改正については国営銀行からは賞賛の声が上がっている。

 

 


2014年12月24日(水)日本経済新聞
ポーラHD M&Aなど投資枠300億円 アジア市場を開拓
(記事)

 

2014年11月28日
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
固定資産の譲渡および特別損失の計上ならびに通期業績予想の修正に関するお知らせ
ttp://pdf.irpocket.com/C4927/bSZL/aIZw/nJyA.pdf

 


2014年3月27日
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
2013年12月期(第8期) 有価証券報告書
ttp://ir.po-holdings.co.jp/ja/Library/Financial/IRArchiveDataDownPar/0/IRArchiveDownPar/0/PDFile/yuukashokenhokokusho_2013.pdf

 



【コメント】
記事には、今後の投資枠に関して、

>同社は現預金や投資有価証券などとして600億円強を保有している。
>このうち半分を運転資金、残りをM&Aなどの戦略投資に充てる。
>原則として追加の借り入れは想定しておらず、M&Aは300億円程度を上限にする考えだ。

と書かれています。
「2013年12月期(第8期) 有価証券報告書」を見ますと、確かに一定以上の手許現金は保有しているようです。
ただ、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスは文字通り持株会社制となっていますから、
株式の取得を行うとしたら持株会社自身が取得・所有するようにしないと、グループ経営としてはおかしいでしょう。
つまり、株式の取得に際しては、持株会社自身が株式取得のための現預金を保有していなければならないわけです。
個別貸借対照表を見ますと、株式会社ポーラ・オルビスホールディングス自身が、
現預金も現金化可能な投資有価証券も保有しているようです。
ですので、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスの場合は問題ないと思います。
しかし、例えば、現預金も現金化可能な投資有価証券も、保有しているのは持株会社ではなく事業子会社の方だとしたらどうでしょうか。
一旦、事業子会社から持株会社へ配当金として現金を支払う必要が出てくるでしょう。
しかしその際、事業子会社に十分な利益剰余金がない場合は、持株会社へ現金を支払うことはできません。
株式取得の資金を持株会社が事業子会社から借り入れるというのもおかしな話ですし、
概念的には持株会社は株式を保有することのみが目的なのですから、持株会社自身が負債を抱えるというのもおかしな気がします。
事業子会社が持株会社へ配当金を支払おうにも、たとえ余剰資金があるにしても、利益剰余金以上には支払えないわけです。
皮肉なことに、資本金に相当する会社財産を社内に留保するという資本金制度のせいで、
事業子会社が抱えている余剰資金を持株会社の方へ移せないわけです。
これは、持株会社制の欠点中の欠点だと思います。
グループ経営とは言いますが、柔軟な資金配分を行いなら、持株会社と事業子会社とはむしろ法人として1つであるべきだと思います。
事業の管理に関しても、事業子会社の議決権を100%所有していることと法人の一事業部であることとは、経営上は全く同じでしょう。
グループ経営だからこそ、グループ会社は法人として1つであるべきだと思います。


On the primitive accounting theory, the limit of investment to be done is exactly "Capital" itself.

元祖会計理論上は、投資枠とはまさに「資本金」そのものを指します。