2014年12月10日(水)
2014年12月10日(水)日本経済新聞
基準日設定につき通知公告
ハートフォード生命保険株式会社
発行価格等の決定に関するお知らせ
南海電気鉄道株式会社
(記事)
2014年7月1日
ハートフォード生命保険株式会社
オリックス生命保険株式会社による当社株式の取得および子会社化について
ttp://www.hartfordlife.co.jp/press/pdf/company/press140701.pdf
2014年11月28日
南海電気鉄道株式会社
新株式発行及び自己株式の処分並びに株式売出しに関するお知らせ
ttp://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/141128.pdf
2014年12月9日
南海電気鉄道株式会社
発行価格、処分価格及び売出価格等の決定に関するお知らせ
ttp://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/141209.pdf
【コメント】
ハートフォード生命保険株式会社は、2014年7月1日付けで、オリックス生命保険株式会社の100%子会社となってします。
すなわち、ハートフォード生命保険株式会社の株主はオリックス生命保険株式会社ただ1人なのです。
それなのになぜ、株主総会の基準日を設定したことを公告しているのでしょうか。
株主がただ1人であるのなら、公告の必要は全くないはずです。
では株主の数が何人以上だったら公告の必要があると言えるのかと言えば、
・・・と考えますと、あることに気付きます。
ウィキペディアで「公告」のページを読んで思ったのですが、そもそも「公告」とは「官報公告」のことを指すのではないかと思います。
公告というのは、元来、法律をはじめとする公に関する事柄を、官が広く一般に知らせることを指すのだと思います。
私人が法令上の義務により特定の事項を広く一般に知らせることは、やはり本来の意味からすれば「公告」ではないのだと思います。
株式会社も一定の事柄に関しては公告を行うよう会社法の定めにより義務付けられていますが、
そもそも公告を行う必要がある場面というのが、株式会社にはないように思います。
より正確に言えば、株式会社は、一定の事項に関しては、株式会社の利害関係者(従業員や株主や債権者やその他取引先等)に対しては、
そもそもその都度個別に通知をする義務があるわけです。
個別に通知をするのなら、「公告」の類は一切いらないはずです。
株式会社が日刊新聞紙に「公告」を出すということ自体が、本来の意味の「公告」からすると全く意味不明ということだと思います。
「公告」には「官報公告」しかありません。
そして、「公告」を掲載するのは、本来は官のみなのです。
株式会社が日刊新聞紙や官報に「公告」を出しているというのは、裏を返せば、
株式会社は本質的に公ではないにも関わらずなぜか公のふりをしてきている、ということだと思います。
以前、株式会社の法制度を踏まえれば、株式会社の会計処理方法は収益も費用も全て現金主義によるしかないのではないか、と書きました。
その理由は、株式会社の法制度は、会社の清算を前提としているからです。
同様に、株式会社の法制度は会社の清算を前提としているのなら、
株式会社が将来の事柄について「公告」を行うというのもおかしいのかもしれません。
何か通知しなければならない事柄があれば、その時に個別に通知をすれば十分、ということなのだと思います。
また、新聞社も株式会社であるわけですから、法制度上は清算を前提にしているわけです。
日刊新聞紙に「公告」を出すと言いますが、その新聞社が倒産したらどうするのでしょうか。
その意味においても、「公告」を掲載できるのも、法制度上は官報しかないのだと思います。
まあ、私個人としてましては、日刊新聞紙に「公告」が掲載されているのはコメントの題材に使えるので個人的には重宝しているのですが、
株式会社の法制度の方から考えると、株式会社が日刊新聞紙その他に「公告」を出すということはおかしいということになるのだと思います。
まあ、私個人としてましては、そんなことばかり言っていても建設的ではありませんので、
今まで通りのスタイルでやっていこうと思っているところです。
2014年12月10日(水)日本経済新聞
イオン、特別益300億円 ウエルシア子会社化で 今期
(記事)
2014年11月21日
イオン株式会社
ウエルシアホールディングス株式会社(証券コード3141)に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1198376
【コメント】
イオン株式会社は、2014年11月27日(公開買付けの決済の開始日)付でウエルシアホールディングス株式会社を連結子会社化したことにより、
2015年2月期に、連結上「段階取得に係る差益」を300億円計上する見通しとのことです。
連結上計上される「段階取得に係る差益」は、率直に言えば会計処理の考え方自体に間違っている部分があるように私は思っています。
記事には、連結上計上される「段階取得に係る差益」について、
>段階取得に係る差益とは、もともと株式の一部を保有していた会社を子会社化した時に発生する利益のことを指す。
>イオンはもともと保有していたウエルシア株の簿価と、子会社化した際の取得価格との差に基づき特別利益を計上する。
と書かれていますが、結論だけ言えば「段階取得に係る差益」は利益でも何でもなく全く意味をなさない貸借の差額であるように思います。
従来から所有していた株式の取得価額を変更する(このたびの追加取得と同じ価額に変更する)というような考え方をしているようでして、
それで無理やり株式の価額に差異を生じさせており、連結修正消去仕訳上、貸借の差額が発生しているようなのです。
連結修正消去仕訳上、貸方に差額が発生した場合のことを「段階取得に係る差益」と呼んでいるようなのです。
「段階取得に係る差益」というより、原始取得原価変更差益とでも呼んだ方がよっぽど実態を表しているように感じます。
子会社株式を追加取得しても、連結上「はじめから貸借に差異など生じない」、というのが自然な考え方であり、
会計理論上の正しい考え方だと思います。
いずれにせよ、以前も書きましたように、現行の会計基準では、「段階取得に係る差益」は計上されないことになっているようです。
現行の会計基準では、その貸借の差額は連結資本剰余金に直入するという会計処理を行うようです。
現行の会計基準に基づけば、イオン株式会社の見通しは間違いであろうと思います。
それで、イオン株式会社は、株式公開買付けにより、ウエルシアホールディングス株式の過半数を取得したわけですが、
この点について、記事には、
>持ち株比率は37.4%から50.1%へ上昇した。
と書かれています。
イオン株式会社は、ウエルシアホールディングス株式を半数を超える最少の株式数のみ取得することが目的であったようで、
株式公開買付に上限を設定していました。
「買付予定数の上限」は5,606,000株と設定しており、上限まで買い付けると議決権所有割合は50.15%になるように設定したわけです。
そして、公開買付けの結果についてなのですが、応募があった株式数は上限を超えていたようです。
したがって、イオン株式会社はあん分比例の方式により応募のあった株式を買い付けることにしたようです。
プレスリリースの中から重要な部分をキャプチャーし引用してみます。
T.本公開買付けの結果について
1.買付け等の概要
(4)買付予定の株券等の数
(1〜2/6ページ)
>応募株券等の総数が買付予定数の上限(5,606,000
株)を超える場合は、その超える部分の全部又は一部の買付け等を行わないものとし、
(中略)
>あん分比例の方式により、株券等の買付け等に係る受渡しその他の決済を行います。
>単元未満株式についても、本公開買付けの対象としております。なお、会社法に従って株主による単元未満株式買取請求権が
>行使された場合には、対象者は法令の手続に従い買付け等の期間(以下「公開買付期間」といいます。)中に自己の株式を買取ること
>があります。この場合、対象者は法令及び対象者株式取扱規程に定める価格にて当該株式を買取ります。
>公開買付期間の末日までに対象者の新株予約権の行使により発行又は移転される対象者普通株式も本公開買付けの対象としております。
2.買付け等の結果
(1)公開買付けの成否
(2/6ページ)
>本公開買付けにおいては、応募株券等の総数(13,719,646
株)が買付予定数の上限(5,606,000
株)を超えたため、
>公開買付開始公告及び公開買付届出書に記載のとおり、その超える部分の全部又は一部の買付け等を行わないものとし、
>法第27
条の13 第5項及び府令第32 条に規定するあん分比例の方式により、株券等の買付け等に係る受渡しその他の決済を行います。
2.買付け等の結果
(5)あん分比例方式により買付け等を行う場合の計算
(3〜4/6ページ)
(文言は基本的には上記「(1)公開買付けの成否」と同じです。)
簡単に言えば、イオン株式会社はウエルシアホールディングス株式の50.15%だけを取得したかったわけです。
だから、イオン株式会社はちょうど50.15%になるように買付予定数に上限を設定したわけです。
イオン株式会社はウエルシアホールディングス株式の50.15%だけを取得したかった、
それがどうかしたのかと思われるかもしれません。
しかし、ここには、「株式公開買付とは何か?」という根本的な問いがあるわけです。
また、応募のあった株式を買付者が買い取らないというようなことがあってよいのか、という株式公開買付に関連する問題も別にあるわけです。
いわゆる株式公開買付における全部買付義務のことです。
市場の全投資家(対象者の全株主)に広く株式の売却の機会を与えるというのが株式公開買付の趣旨であるわけです。
それなのに、応募のあった株式を買付者が買い取らないというのは矛盾にも近いわけです。
買付者は応募のあった株式は全部買い付けるべきだ、という考え方はあるわけです。
上限の設定を認める考え方にも全部買付義務を課する考え方にも、どちらにも分があるように思います。
この問いに答えは出ないと思います。
この部分に関しては、国によって実際に定めが大きく異なっているようです。
非常に大まかに言えば、日本とアメリカでは上限の設定を認める考え方を採用しており、
EUの国々では全部買付義務を課する考え方を採用しています。
上限を設定できた方が、買付者にとっては株式公開買付制度は使い勝手がよいものであるのは確かでしょう。
しかしその場合、応募した投資家は応募した株式を一部買い取ってもらえないという矛盾が生じます。
一方で、全部買付義務を課されると、買付者は目的の株式数だけを取得するという経営戦略を全く実行できなくなります。
また、全部買付義務を課されると、株式公開買付の手続きに入るに際し、買付者は自身が既に所有している株式以外の
全ての株式を取得できるだけの資金を事前に用意せねばならなくなります。
それだけでも経営上・財務上十分大変であろうと思いますが、
問題は、全ての株式を取得できるだけの資金を事前に用意したにも関わらず、
応募は極少数しかなかったためその極少数の株式しか買い付けなかった場合、
会社に資金がたくさん余ってしまう状態になってしまうわけです。
会社が株式公開買付のために資金を準備するとは言っても、全て手許現金だけで賄えていればまだよいのですが、
例えば増資その他で全部買付のための資金を調達したという場合ですと、増資自体が無駄になってしまうわけです。
会社は必要なだけ資金を調達するわけですが、全部買付義務を課されると、その必要となる資金額がそもそも不明であるわけです。
敢えて言うなら、全ての株式を買い付けられるだけの資金、ということになるでしょう。
しかしそれは、経営戦略でも何でもないでしょう。
全部買付義務を課されると、株式公開買付を実施する際の会社の負担は非常に大きいものになるわけです。
しかし、全部買付義務を課する考え方の場合、応募した株式は必ず買い取ってもらえるわけですから、投資家の利益は保護されます。
また、全部買付義務とは言っても、それは応募のあった株式は全て買い付けねばならないという意味であって、
その後株式は売却してはならないという意味では決してありません。
全部買付義務は全部保有義務ではないわけです。
すなわち、買付者は、株式公開買付において応募のあった全ての株式を買い付けた後、
改めて株式市場で目的の株式数になるまで対象者株式を売却すればよいわけです。
この株式公開買付後の株式売却において、株式売却益となるのか株式売却損となってしまうかは、
買付価格の水準や株式公開買付後の株価水準に左右されるでしょう。
しかし、少なくとも、上限を設定した場合と全く同じように、目的の株式数だけ対象者株式を取得できるのだけは確かです。
上限の設定を認める考え方、全部買付義務を課する考え方、どちらにも分があります。
やはり、いくら考えても、絶対的な答えはないように思います。
これは煎じ詰めれば、株式公開買付をどのようなものと定義するか、という議論であるわけです。
もう少し具体的に言えば、株式公開買付は買付者の立場・買付者の利便性に重点を置いた株式取得制度であると制度構築するのか、
その正反対に、株式公開買付は投資家の立場・投資家の利益保護に重点を置いた株式取得制度・株式売却制度であると制度構築するのか、
によって、答えが違ってくるというだけなのです。
答えがないというより、正確に言えば、前提や趣旨・目的によって答えが変わる、というだけなのです。
どちらかの趣旨・目的に立てば、答えも自ずと決まってくる、というだけなのです。
また、先ほど、全部買付義務を課する考え方の場合でも、株式公開買付後の株式売却により買付者は目的の株式数だけ対象者株式を取得できる、
と書きましたが、これは実は株式公開買付制度の問題の本質部分に関連することであるわけです。
それはどういう意味かと言うと、「株式を買いたい人はそもそも市場で買うべきなのではないか?」という議論です。
市場で対象者株式を買えば、上限をわざわざ設定する必要はありませんし、また逆に、
投資家が応募した株式を全部買った上で一部をその後売却するなどという二度手間も必要ないわけです。
もちろん、市場で対象者株式を買えば買うほど、対象者の株価はどんどん上昇していくでしょう。
しかし、それは致し方ないことでしょう。
なぜなら、それが市場取引であり市場株価なのですから。
少なくとも、「目的の株式数のみ取得する」という目的に関しては、これは理に適った株式取得方法であることだけは確かです。
そもそもの話をすれば、上場株式というのは市場で買うものではないでしょうか。
そこに株式公開買付制度という、市場取引のような市場取引ではないような、正々堂々とした透明の高い裏口取得方法を持ち込むものですから、
説明の付かない・答えが一意に決まらない事態が生じているのだと思います(法律上は株式公開買付は「市場外」の取引です)。
上限云々、全部買付義務云々以前に、株式公開買付制度は上場株式は市場で売買するものという原理原則を捻じ曲げていることが
そもそもの問題なのだと思います。
株式公開買付制度(上限設定や全部買付義務の是非も含め)に絶対的な答えがないのはある意味当然のことなのかもしれません。
Even if any kind of mandatory purchase of all the shares offered to sell is
given,
a tender offeror can sell the shares without restraint afterward.
応募株式の全てを買い付ける義務がどのような形で課されたとしても、
株式公開買付終了後、買付者は全く自由に取得株式を売却することができます。
This discussion is how a takeover bid itself is defined.
これは、株式公開買付そのものをどのようなものと定義するかの議論なのです。
Ultimately speaking, a person who wants to buy a specific sum of
shares
should buy shares in the stock market from the beginning.
究極的なことを言えば、ある一定の株式数だけ買いたいという人は、はじめから株式市場で株式を買うべきなのです。
It is against the principle of a market price that the market price doesn't
go up at all
when a person is purchasing a listed stock more and more in a
short period.
上場株式が短期間のうちにどんどん買い集められているのに、その市場株価は全く上昇しないというのは、市場株価の原理に反しています。
The proverb "The older the wiser." means that what you call "imprinting" in
animals is no less true of a human, too.
「亀の甲より年の功」という諺は、動物におけるいわゆる「すり込み」は人間にもそっくりそのまま当てはまるという意味なのです。