2014年12月7日(日)



2013年11月9日(土)日本経済新聞
■近畿日本鉄道 20%増益に上方修正
(記事)





2013年11月8日
近畿日本鉄道株式会社
平成26年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.kintetsu.jp/kouhou/syokenkaiji/pdf/2Qkaiji.pdf

 


2014年8月21日
近畿日本鉄道株式会社
新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ
ttp://www.kintetsu.jp/kouhou/syokenkaiji/pdf/newstock.pdf

 

(1年後↓)

2014年11月11日
近畿日本鉄道株式会社
平成27年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.kintetsu.jp/kouhou/syokenkaiji/pdf/hptannsinn141111.pdf

 


【コメント】
1年以上前の記事になりますが、企業行動の結果が財務諸表にどのような影響を及ぼすかを見る趨勢分析に使えると思いました。
昨年と今年の2つの「第2四半期決算短信」を見比べながら理解を進めていきたいと思います。
記事には、

>増資で調達した資金を借入金返済の充て、金融収支が改善する。

と書かれています。
この点については、2014年3月期第2四半期決算短信には、「連結業績予想などの将来予測情報に関する説明」として、

>経常利益は、支払利息が、金利の低下のほか、新株式発行による手取金の一部を借入金の返済に充当することにより減少する見込みのため、

と書かれています(7/19ページ)。
2014年8月21日に近畿日本鉄道株式会社が発表した「新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ」には、資金の使途について、

>今回の新株発行による調達資金は、「あべのハルカス」への設備投資及びこれによって増加した借入金の返済のほか、
>今後の鉄道関連投資に充当する予定であります。
>本資金調達を通じ、「あべのハルカス」から創出される利益の蓄積による資本増強を前倒しすることにより、
>更なる財務体質の改善を図るとともに、グループの総合力を最大限に発揮することにより収益機会の拡大とその向上を実現し、
>株主をはじめとする当社ステークホルダーの皆様の利益の最大化に取り組んでまいります。

と書かれています(1〜2/7ページ)。

 



近畿日本鉄道株式会社は、増資計画の発表日である2014年8月21日以降、
公募及び第三者割当による新株式の発行により資金を調達し、借入金及び社債の返済を進めていく計画であるようです。
連結ベースの数値になりますが、2013年3月期の第2四半期(累計)の営業利益が22,358百万円に対し、支払利息が8,821百万円、
2014年3月期の第2四半期(累計)の営業利益が24,917百万円に対し、支払利息が7,962百万円、
となっています(連結損益計算書、11/19ページ)。
大まかに言えば、毎年、営業利益の優に3分の1以上が支払利息により吹き飛んでいることになります。
費用の削減のためにも財務的安定性の向上のためにも、増資をしてでも借入金及び社債の返済を進めていきたい、
と会社が考えるのも頷けます。
また、決算短信には、「参考資料」 として四半期個別財務諸表も載っているのですが、
単体ベースで見ても、2013年3月期の第2四半期(累計)の営業利益が3,599百万円に対し、営業外費用が8,484百万円、
2014年3月期の第2四半期(累計)の営業利益が5,355百万円に対し、営業外費用が8,047百万円、
となっています(個別損益計算書、17/19ページ)。
確かに、営業外費用には支払利息以外の項目も含まれます。
本業である鉄軌道事業以外の付帯事業に関しても、固定資産規模で見ても営業収益規模で見ても営業費規模で見ても、
個別財務諸表に占める付帯事業の割合というのは、鉄軌道事業の7割以上にも達するほどの大きさとなっています。
例えば借入金及び社債は、主に鉄軌道事業に関連するものなのかそれとも主に付帯事業に関連するものなのか
それとも両事業に同じような割合で関連するものなのかは判然としません。
個別ベースでの支払利息は決算短信からははっきりとは分かりません。
しかし、支払利息は営業外費用の多くを占めることだけは確かでしょう。
そういったことを考えますと、個別ベースで見ると、
毎年、営業利益は、その金額をはるかに超える支払利息により吹き飛んでいることだけは確かだと思います。
個別ベースで見ると、連結ベースだけから判断するよりもはるかに、
費用の削減のためにも財務的安定性の向上のためにも、増資をしてでも借入金及び社債の返済を進めていきたい、
と会社が考えるのはもっともだと思えます。

 



上記の一連の財務改善計画の結果についてですが、
1年後である2014年11月11日に近畿日本鉄道株式会社が発表した「平成27年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」によると、
連結ベースの数値になりますが、2014年3月期の第2四半期(累計)の支払利息が7,962百万円であったのに対し、
2015年3月期の第2四半期(累計)の支払利息は6,991百万円となっており、
支配利息の金額は明らかに減少しています(連結損益計算書、11/19ページ)。
この間、増資を行って借入金及び社債の返済を進めていった効果が明確に出ているかと思います。
近畿日本鉄道株式会社の一連の財務改善計画は成功したようです。
ところで、営業利益の増減具合については、一連の財務改善計画と関連付けて見る必要はありません。
なぜなら、増資を行おうが借入金及び社債の返済を進めようが、売上高そのものは増加しませんし、売上原価そのものも減少しませんし、
販売費及び一般管理費そのものも一切減少しないからです。
増資や借入金及び社債自体は、営業利益の金額には中立な(影響を与えない)のです。
参考までに言いますと、2015年3月期の第2四半期(累計)の営業利益の金額は、
2014年3月期の第2四半期(累計)の営業利益に比べ概ね横ばい(微減)となっています。
しかしその理由は、増資や借入金及び社債の返済とは全く関係ありません。

 



それから、同じく、
2014年11月11日に近畿日本鉄道株式会社が発表した「平成27年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」によると、
「経営成績に関する説明」として、

>営業外費用は金利の低下等による支配利息の減少により減少しました

と書かれています(5/19ページ)。
また、「財政状態に関する説明」として、「キャッシュ・フローの状況に関する分析」には、なんと、

>借入金・社債が増加に転じた

と書かれてあります(7/19ページ)。
これらの記述だけを読みますと、近畿日本鉄道株式会社は増資自体は行ったがまだ借入金及び社債の返済は行っていないのではないか、
と思われるかもしれませんが、それは間違いです。
近畿日本鉄道株式会社は2013年9月下旬に増資を実施し、その後、2014年3月末までに借入金及び社債の返済を行っています。
借入金及び社債の返済を行ったからこそ、2015年3月期の第2四半期(累計)の支払利息は現に減少しているのです。
ではこれらの決算短信の記述は何かと言えば、2014年4月1日から2014年9月30日までの「経営成績に関する説明」であるわけです。
例えば2013年10月1日から2014年3月31日までの「経営成績に関する説明」ではないわけです。
何が言いたいと言えば、経営成績の推移というのは、途中間を空けることなく連続して見ないといけない、ということです。
昨日、累計期間という考え方と財務諸表について、当期の期首日を前期首日とすることはできない、と書きましたが、
今日は逆に、当期の期首日を「前期末日の次の日以外」とすることはできない、と言わねばなりません。
そうでなければ、途中の経営成績や貸借対照表の変動の結果がそっくり抜け落ちてしまうわけです。
他の資産や他の負債の変動であれば、
当期中に新たに取得した新たに増資をしたり新たに借り入れたり新たに返済したりということはありますが、
特に利益剰余金だけは、当期の損益計算書を通じてしか増減しませんから、利益剰余金の残高が合わなくなるわけです。
前期末日から当期首日までの損益が抜け落ますと、利益剰余金のは文字通り、勘定が合わなくなるわけです。

 


こう書きますと、当期首日が前期末日の次の日なのは当たり前なのではないかと思われるかもしれませんが、
しかし、累計期間という考え方では、実際のところは、当期首日は前期首日だと言っていることと同じであるわけです。
なぜなら、四半期財務諸表では、四半期(3ヶ月間)を1つの明確に区切られた会計期間だと見なしているからです。
累計期間という考え方をしているから第2四半期連結累計期間の期首日は累計期間で言う期首日すなわち4月1日だ、
というのは、やはり簿記の原理に反している部分があるわけです。
会計理論上はそして簿記の原理に従えば、第2四半期の財務諸表の前期末日は6月30日なのです。
第2四半期の財務諸表の前期末日は決して3月31日ではないのです。
財務諸表は累計することはできません。
そして、法人が続く限り(会社が存続している限り)、途中の期間を省くこともできないのです。


There is no omitting the span between the closing date of the previous period and the beginning date of the concerned period.
It means that the beginning date of the concerned period is
"the following or the next date" of the closing date of the previous period.

前期末日から当期首日までの間を省くことは絶対にできません。
つまり、当期首日は前期末日の「次の日」という意味です。


Even in case a company suspends operations during some holidays,
for example a New Year's Day season and an Independence Day season,
when it prepares financial statements,
the beginning date of the concerned period should never be
"except the following or the next date of the closing date of the previous period."

会社が何かの休日期間中―例えば年末年始シーズンや独立記念日シーズン―は営業を休業するという場合であっても、
財務諸表を作成するに際しては、当期首日は「前期末日の次の日以外」であってはならないのです。


On financial statements, holidays are also operating days.

財務諸表に関しては、休業日もまた営業日なのです。