2014年9月14日(日)



2014年9月13日(土)日本経済新聞
REIT 支払利息減少 金利低下で 分配金押し上げも
(記事)


 



【コメント】
記事には、不動産投資信託(REIT)は通常6ヶ月ごとに決算する、と書かれています。
しかしこれは、法人所得税のことを考えれば仮決算の側面はやはりあると思います。
法人所得税の計算は1年に1回(12ヶ月間で一単位)ですから、
6ヶ月決算では厳密な意味では税額まで確定した正式な決算とは言えません。
分配金(株式の配当に相当)も、6ヶ月決算では厳密には支払うことはできません。
その利益は法人に帰属している(例えばその利益を配当に使ってよい)と言えるためには、
法人所得税の概念上、法人所得税を支払い終わっていなければならないわけです。
法人所得税を支払い終わってはじめて、その利益は法的に正式に法人に帰属していると見なすことができるのです。
6ヶ月決算では法人所得税を支払いたくても支払えないはずですので、その利益は法人の利益とはまだ言えず、
したがって、6ヶ月決算では法人は配当を支払えないのです。

 



では、明治三十二商法及び当時の所得税法における法人の捉え方・見方そして利益配当の仕方の場合はどうなるでしょうか。
戦前の制度の場合ですと、法人は6ヶ月決算で配当をしても構わないと思います。
任意の期間に区切って仮決算を行い、配当を支払ってよいのだと思います。
戦前の制度の場合ですと、法人は年に何回でも配当を支払うことができた、と言えると思います。
これはなぜかと言うと、利益は全てはじめから出資者に帰属しているからだ、と説明できると思います。
所得税は出資者の方が負担しますので、法人の側では税法上問題があるわけではありません。
また、年に何回も配当をしても債権者の利益は資本金制度により害されることはありません。
年に何回も配当するとは言っても、資本金を取り崩して配当をするわけではありません。
あくまで稼いだ利益を出資者に配当するだけです。
したがって、年に何回も配当をしても、税法上も問題ありませんし商法上も問題ありません。

 


ただ、一つ注意点があります。
それは、商法上は営業年度というのはやはりありますし、
税法上も正確に「12ヶ月間を一単位」とした課税を行っていく必要がある、という点です。
つまり、法人が例えば「12月期決算」であれば、12月末日を営業年度末とした本決算は毎年必ず行わなければならない、
ということになるわけです。
例えば、11月末に仮決算を行い出資者に配当を支払ったばかりだから、この12月末は決算を行うのはやめる、
などということはできないわけです。
これは所得税法が理由になる(結局商法もだと思いますが)わけです。
所得税法は正確に「12ヶ月間を一単位」とした課税を行っていく必要があるわけです。
11月末に仮決算を行って配当を支払ったとは言っても、12月末日には12月の1ヶ月間に稼いだ利益が法人の方に残っているわけです。
所得税法としては、出資者の12ヶ月間の所得を把握せねばなりません。
仮に、法人が12月末日を営業年度末とした本決算を行い利益を出資者に配当してしまわない場合は、
出資者は1か月分の利益を法人内に隠匿した、というふうに所得税法からは見えるわけです。
したがって、法人は営業年度末の本決算は毎年必ず行い、利益は毎年出資者に配当してしまわねばならないわけです。
法人は、営業年度途中の仮決算および営業年度途中の配当は任意に行ってもよいが、
営業年度末の本決算は毎年必ず行い利益は毎年営業年度末に出資者に配当してしまわねばならない、ということになるわけです。
商法も所得税法に合わせる形で本決算は毎年必ず行わねばならない、と定められているのではないかと思います。
そして、季節周期的・所得税法的・常識的に、本決算(1営業年度)とは当然に1年間(12ヶ月間)を商法上は指しているのだと思います。

 


戦前は、制度としては認められていても、
営業年度途中の仮決算および営業年度途中の配当は実際にはあまり行われていなかったであろう、と私は思います。
なぜなら、やはり何だかんだ言って、人間も生活も営業も1年間(12ヶ月間)で1サイクルですから。
ただ、営業年度途中の仮決算および営業年度途中の配当は、戦前の制度の場合は経営上は行いやすいと思います。
その理由は、法人の費用は税法上の損金にはならないからです。
法人が赤字決算でも、所得税法上出資者は赤字分を損金算入できないのです。
つまり、例えば6ヶ月間で仮決算を行うとし、上半期は黒字、下半期は赤字だとします(通期では損益はゼロだとしましょう)。
この場合、現在の制度ですと、仮決算により上半期に利益を配当してしまっていると、
下半期が赤字でもその分は損金算入できなくなりますから、税法上不利であるわけです。
上半期に仮決算を行い利益を計上し配当をしてしまったが、そんなことはしなければよかった、ということになるわけです。
しかし、戦前の制度の場合ですと、下半期が赤字でも損金算入とは関係ありませんから、経営上は資本の欠損が生じるだけで済むのです。
資本の欠損が生じるのなら、債権者の利益を害していることになるのではないかと思われるかもしれませんが、
仮決算で適正な期間損益計算が行われているのなら(粉飾決算が行われていないのなら)、
資本の欠損が生じても債権者の利益を害していることにはならないのです。
配当支払い後、資本の欠損が生じる恐れがあることが債権者の利益を害していることになるのなら、
本決算の場合でも法人はいつまでたっても出資者に配当を支払えない、ということになるでしょう。
資本の欠損の結果法人が倒産しますと、確かに債権者にとっては債権が全額弁済されない事態にはなりますが、
資本金により債権者のために会社財産は社内に留保されている、というのが資本金制度です。
資本の欠損が生じることは債権者の利益を害していることにはならないのです。
仮決算では適切な費用計上を行っていなかったなど、適正な期間損益計算が行われていなかった(粉飾決算が行われていた)となりますと、
それはもちろん利益の過大計上であり、配当を過大に支払っていることになりますし、債権者の利益を害していることになります。
しかし、仮決算で適正な期間損益計算が行われているのなら(粉飾決算が行われていないのなら)、
資本の欠損が生じようがその後法人が倒産しようが、債権者の利益を害していることにはならないのです。
重要なのは、「仮決算でも本決算同様適正な期間損益計算が行われているかどうか(粉飾決算が行われていないかどうか)」であり、
営業年度途中に配当を行うかどうか(営業年度途中に会社財産が社外流出するかどうか)ではないのです。
現在の制度では、法人所得税法上の理由から配当は年に1回しか行えないわけですが、
戦前の制度では、法人の利益は法人自身にとっては税法上は全く関係ないため、年に何回でも配当自体は可能、ということになるわけです。
戦前の制度では、現在の制度以上に、商法は所得税法に定めを合わせる必要があった、と言えるのだと思います。

以上書きましたことは、明治三十二商法及び当時の所得税法の実際の厳密な定めを調べて書いたわけではなく、
「どのような定めや見方であれば理論上整合性が取れるか」を考えて自分で書きました。
ひょっとすると、明治三十二商法及び当時の所得税法の実際の厳密な定めとは異なる部分もあるかもしれませんが、
万が一そのような部分があればご容赦いただきたいと思います。
ただ、理論的には私が以上書いた内容で合っているのではないかと思います。