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2014年9月13日(土)



2014年9月13日(土)日本経済新聞
■東プレ CBで50億円調達
(記事)





2014年9月12日
東プレ株式会社
第2回転換社債型新株予約権付社債発行に関するお知らせ
ttp://www.topre.co.jp/pdf/news/20140912/info_0912.pdf

 


【コメント】
記事には、東プレ株式会社がこのたび発行する転換社債型新株予約権付社債について、

>コールオプション(発行企業による期限前償還条項)が付いてる。
>株価が一定期間、転換価格を3割以上上回った場合、繰り上げ償還されることがある。

と書かれています。
プレスリリースによりますと、このコールオプションとは「130%コールオプション条項」のことのようです。


「第2回転換社債型新株予約権付社債発行に関するお知らせ」
12.償還の方法および期限
(5) 130%コールオプション条項
(5/18ページ)



簡単にまとめると、株価が一定期間、転換価格を3割以上上回った場合、東プレ株式会社は平成29年10月2日以降いつでも、
その時点において未償還の本社債の全部(一部は不可)を繰上償還することができる、
と書かれています。
東プレ株式会社がこのたび発行する転換社債型新株予約権付社債には、社債の償還等に関し、
社債を引き受ける社債権者には新株予約権(新株式を買う権利)が、
社債を発行する東プレ株式会社には繰上償還権(言わば自社社債を買う権利)が付いていることになります。
コールオプションとは「証券を買う権利」のことだと捉えればよいでしょう。
当該転換社債型新株予約権付社債にはには、社債を引き受ける側にも社債を発行する側にもコールオプションが付いているわけです。

 


興味深いのは、東プレ株式会社が繰上償還を行う場合、社債の「全部」を繰上償還するという定めになっている点です。
つまり、社債の「一部」を繰上償還することはできない、という定めになっているわけです。
この理由は、「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」で「1つの社債」(これで一固まり)だからだと思います。
別の言い方をすれば、「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」の社債権者は完全に同順位だから、となります。
「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」の一部のみを繰上償還してしまうと、
債権者平等の原則に反することになるでしょう。
したがって、東プレ株式会社が繰上償還を行う場合は社債の「全部」を繰上償還するという定めになっているわけです。

The reason why not a part of but all of the bond will be repaid is that the equality rule between creditors must be required.
(社債の一部ではなく全部が償還されることとなる理由は、債権者平等の原則が要求されねばならないからです。)


ただ、債権者平等の原則と言い出すと、実はあることを疑問に思います。
社債の全部を繰上償還するとは言っていますが、「その時点において未償還の社債」の全部を繰上償還すると言っているわけです。
確かに、償還済みの社債は二度は償還できません。
また、確かに、新株予約権が行使され株式に転換された社債も償還することはできません。
しかし、同一の「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」なのに、
償還されていない社債と償還済みの社債が存在してよいのだろうか、という疑問があるわけです。
当該社債は、「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」で「1つの社債」(これで一固まり)です。
「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」の社債権者は、
全員が全く同じ平等な取扱いを受けねばならないのではないでしょうか。
「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」の社債権者の中で、
ある社債権者は新株予約権を行使して新株式を手にし、ある社債権者は何らかの形で償還を受け、
そしてまたある社債権者は130%コールオプションに基づき繰上償還を受ける、などということがあってよいのでしょうか。
もちろん、社債に付いている新株予約権を行使すること自体は社債権者に認められた権利に間違いないのですが、
社債権者が新株予約権を行使する場合は、全員が全く同じように平等に新株予約権を行使する必要があるのではないでしょうか。
「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」の社債権者は完全に同一の法的地位にいると言えるわけです。
各社債権者が各々自由に何かの権利を行使したり別々に償還を受けたりということは法理的には認められないのではないでしょうか。

 


「社債権者の法的地位は完全に同一」という点に関して法理的に考えてみますと、
法理的には、「債権と債務は一対一に対応している」、ということではないでしょうか。
別の言い方をすれば、「ある一つの債権債務関係に関して債権者と債務者は一人対一人である」、ということではないでしょうか。
一人と複数の人が同時に同一の契約を締結することはできない、ということではないでしょうか。
AさんがBさんとCさんに同時に100円ずつお金を貸したとします。
これは一見、一人と複数の人が同時に同一の契約を締結しているように感じるかもしれません。
しかしそれは違います。
「AさんはBさんに100円お金を貸した」という一つの契約と、「AさんはCさんに100円お金を貸した」という一つの契約の
合計2つの契約があることになるわけです。
「AさんはBさんに100円お金を貸した」という一つの契約の債権者はAさんであり債務者はBさん(のみ)です。
そして、「AさんはCさんに100円お金を貸した」という一つの契約の債権者はAさんであり債務者はCさん(のみ)です。
一つの契約において、債権者はAさんであり債務者はBさんとCさん、などということはないのではないでしょうか。
「ある一つの債権債務関係に関して債権者と債務者は一人対一人でなければならない」理由は、
簡単に言えば、権利関係が錯綜し取引の安全が害されるおそれがあるからです。
これは、民法上の物権で言うところの「一物一権主義」のイメージに非常に近い(考え方の根本は同じ)のではないかと私は思います。
一つの債権債務関係に対しては一人の債権者と一人の債務者しか成立しない、という考え方になると思います。
債権とは、特定人(債権者)が特定人(債務者)に対して一定の行為を請求することを内容とする権利のことです。
この文脈での特定人とは、まさに特定の「一人」という意味なのだと思います。

 



今手元にあります民法の教科書を見てみますと、
一人の債務者に対して同一内容の複数の債権が存在することが考えられる、と書かれています。
このたび東プレ株式会社が発行する「第2回転換社債型新株予約権付社債」における債権債務関係がちょうど該当するのかもしれません。
このような場合には、債権者は他の債権者を排除することはできず、債権債務関係は有効に併存する(平等である)、と書かれています。
しかし、率直に言えば、この説明は間違いだと思います。
一人の債務者に対して同一内容の複数の債権が存在することはあり得ないでしょう。
債権者と債務者はある一つの同一内容の契約で結び付いている(お互いがお互いに契約の相手方となっている)わけです。
ある一つの同一内容の契約について、債権者と債務者は一人のみです。
債権者は他の債権者を排除することはできない、というのはある意味正しいと思いますが、
それは結局のところ、契約の数自体が複数ある、ということではないでしょうか。
ある債権者は、自分の債務者が別の人とも契約を締結する(別の新たな債権者が生じる)ことを排除できない、という意味ではないでしょうか。
例えば、ある社債権者は、社債発行会社が別の資金の出し手に対して社債を発行することを妨げられない、という意味ではないでしょうか。
債権は物権とは異なり排他性を有しない、と教科書には書かれていますが、債権に関しても、
ある一つの同一内容の契約に関しては自分以外には債権者もしくは債務者は当然にいない、というのが契約の基本概念だと思います。
くだけだ表現をすれば、お金を返してもらう権利は自分にしかない(権利者は自分一人だけ)、という言い方ができると思います。
ただ、債務者が大勢の人からお金を借りている場合は、全債権者が各々の契約に従い同じ主張をする、というだけなのだと思います。
その場合は、債務の弁済については債権者平等の原則に従って処理される、というだけなのだと思います。

 



以上書きましたことをまとめますと、購入者が複数となる社債は発行できないことが分かります。
「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」で「1つの社債」(これで一固まり)であることを考えると、
「第2回転換社債型新株予約権付社債(社債発行総額金50億円)」の債権者(社債の引き受け手)は
実は一人のみでなければならない、ということになる気がします。
「第2回転換社債型新株予約権付社債」を大勢(複数)の投資家が購入すること自体が、実は法理的にはおかしいということだと思います。
「第1回社債」を買えるのは一人のみ、「第2回社債」を買えるのは一人のみ、「第3回社債」を買えるのは一人のみ・・・、
というのが本来の債権債務関係なのではないかと思います。
プレスリリースには、東プレ株式会社は当該社債を(当然複数の投資家を対象に)一般募集すると書かれていますが、
契約の法理に従えば、「第2回転換社債型新株予約権付社債」を購入できるのは実は一人のみなのです。


最後になりますが、「130%コールオプション条項」というのは、債務者の方がお金を早期に返すという権利です。
手許現金に余裕がある状態であれば、債務者としては早期にお金を返してしまいたいと思っているのでしょう。
もちろん、そのことには何の問題もありません。
しかし、一般的なことを言えば、貸付人としては早期に返済されることは難しくはありませんが、
借入人の立場からすると早期に返済することは極めて難しいでしょう。
早期の返済の場合、貸付人は言わばお金を受け取るだけです。
しかし、借入人は借りたお金は通常期限までは何らかの形で運用しているのですから。


Before the due date, it is much easier for a borrower to claim to repay the borrowing
than to be claimed by a lender to pay the lending back.

返済期日前での話ですが、貸付人から貸付金を返済するよう請求されることよりも、
借入金を返済したいと請求することの方が借入人にとってははるかに簡単です。