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2014年9月10日(水)



2014年9月10日(水)日本経済新聞
東ガス、株売却益80億円 今期・来期 収益性低い資産処分
(記事)



 

2014年7月30日(水)日本経済新聞
大ガス、純利益77%増 今期740億円 株売却益124億円
(記事)



 


【コメント】
株式会社が保有する他社株式の価額とは何か、という議論になります。
ここでは論点を絞るために、(本来は株式会社は株式を保有できないのですが)株式会社が他社株式を保有することは所与のこととします。

株式会社が保有する他社株式の簿価と時価が異なることは、会計理論上はどのよう見ればよいでしょうか。
現在の法人の捉え方・見方(株式会社は利益に関して権利能力者であるという法人の考え方・法人税という税の考え方)の場合ですと、
株式会社が利益の内部留保を行うことは何ら問題ないことであるわけです。
この場合、株式会社が保有する他社株式の簿価と時価は当然に異なってきます。
株式会社が保有する他社株式の簿価と時価が異なることは何らおかしくありません。
東京ガスや大阪ガスが株式売却益を計上することは現在の法人の捉え方・見方の場合ですと、全くおかしくないことです。

逆に、戦前の法人の捉え方・見方(株式会社は利益に関して権利能力者ではないという法人の考え方・法人は税を負担しないという税の考え方)
の場合ですと、株式会社が利益の内部留保を行ってしまいますと、出資者の利益を株式会社内に隠匿したという考え方になりますので、
率直に言えば、株式会社の利益の内部留保は出資者の所得税法違反ということになるわけです。
株式会社自体は特段何らかの税法に違反しているということではないと思います。
株式会社自体は器に過ぎませんので、何らかの罪の問いようがない、という捉え方・見方になると思います。
仮に、株式会社の業務執行者(今でいう代表取締役など)が利益を出資者に配当しなかったらとしたらどのような罪になるのかと言えば、
まあ常識的にまずそのようなことは考えられませんが、理屈では株式会社の業務執行者が商法違反ということになるのだろうとは思います。
万が一株式会社の業務執行者が頑として会社の利益を出資者に配当しなかった場合は、
出資者としてはその場合自分達が所得税法違反に問われますので、当該株式会社の業務執行者を臨時株主総会で解任してでも利益を配当する、
というような手続きが必要になってしまうでしょう。
まあこの点は常識的にはまずあり得ないと考えてよいでしょうが。
いずれにせよ、戦前は、商法制度上「株式会社の利益=出資者の利益」という見方・捉え方で貫徹していた、と言えるでしょう。
利益は毎期全額を株主に配当する、そして(その結果)、株式の価額は常に資本金額と一致している、ということになりますので、
戦前の場合は、株式には含み益はなかった、ということになります。
資本の欠損がある場合は、結果として含み損に相当する「株式の取得価額と資本額」との間に差額が生じている状態にはなります。
ただ、理論上は、株式に”含み損”が生じている状態では株式の譲渡は禁止されねばなりません(投資家(株式譲受人)保護のため)。
したがって、イメージとしては・観念的には、「株式の取得価額と資本額」との間に差額が生じている状態のことは含み損と言うのでしょうが、
株式の譲渡自体ができないわけですから、その差額が損失として実現する(発生主義会計上発生する)ということも実際にはないわけです。
株式の譲渡価額は資本金額一本であるわけですから。
”含み損”とは、「今その価格で売却するとするならば取得価額との差額の結果発生するであろう損失額」のことを指すわけです。
「今その価格で売却する」ということ自体が現実にはあり得ない(株式を資本金額以外では譲渡できないから)わけです。
その意味では、法律的には、株式に含み損はない、と表現してよいのではないかと思います。

 



すると、ここで考えたいのは、戦前の考え方を模範としてというわけではないのですが、
「株式に含み益や含み損があることは概念的・理論的に間違いなのか?」という疑問が出てくるわけです。
戦前の法人の捉え方・見方であれば、「株式に含み益や含み損があることはありとあらゆる点で間違いである」という結論になります。
では、現在の法人の捉え方・見方であればどうでしょうか。
現在の法人の捉え方・見方であれば、株式に含み益や含み損があることはむしろ当たり前のことという見方になりますが。
株式を保有しているのが、すなわち、株主が、自然人の場合であろうと法人の場合であろうと、
株式に含み損や含み益があることは概念的・理論的には間違いではないようにも思えます。
株主が株式会社の場合、株式の貸借対照表価額は問題にはなります(特に含み損をどう価額に反映させるかは問題にはなるとは思います)が、
ここではその点は度外視するとすると、
概念的・理論的には株式に含み損や含み益があることは間違いではないように思えます。
税務理論の観点から考えてみるとどうでしょうか。
株式会社が稼いだ利益に関しては、株式会社の段階で既に課税し終わっていますから、
株式会社が利益を出資者に配当しないことは課税の観点から見ても何の問題もないように思えます。
内部留保もしくは損失計上の結果、株式に含み損や含み益が生じることは何もおかしくないように思えます。
株式に含み損や含み益があることは概念的・理論的には間違いであることの理由を無理やり考えてみますと、
「証券の捉え方・見方」にまでさかのぼってみますと、考えられなくはないかもしれません。
つまり、証券と呼ばれるものの根源にまでさかのぼる話になりますが、「証券には含み損や含み益という概念はない」という考え方をすれば、
株式に含み損や含み益があることは概念的・理論的には間違いだ、となるかもしれません。

 


証券の中でもここでは、①売上債権と②貸付債権と③株式の3つを例に考えてみましょう。

まず、①売上債権の場合、商品代金を受領する期日やその金額は明記されていると言いますか、
その売上債権により回収する金額は確定していると言えるでしょう。
商品代金の回収金額、それが売上債権の価額です。
ここには、含み損も含み益もないでしょう。
商取引を思い浮かばれば簡単に分かるかと思いますが、回収する商品代金(売上債権)に含み益など絶対にあり得ないでしょう。
販売した商品代金の分、代金を回収するというだけでしょう。
また、販売先が倒産するなど、当初の商品代金を全額は回収できなくなってしまうことは商取引上あり得ます。
その場合、ここでは企業会計上の話をしますと、その売上債権は回収可能な価額まで価額を切り下げねならないわけです。
商品代金の回収金額を回収可能な価額まで切り下げる、それが売上債権の減損処理です。
売上債権の価額に含み損はあってはならない(売上債権に回収不可能な価額が含まれていてはならない)、ということになろうかと思います。
昨日、貸倒引当金繰入は本当は減損損失だと書きましたが、貸倒引当金繰入では売上債権の価額自体は減少しません。
費用計上により利益剰余金は確かに減少させていますが、「資産の価額(とは何を表すのか)」という捉え方をしますと、
やはり、売上債権の価額自体を切り下げる会計処理を行うべきでしょう。
いずれにせよ、売上債権の価額には含み益も含み損も概念上・理論上はない(あり得ないしあってはならない)、という結論になります。

 



次に、②貸付債権の場合ですが、①売上債権同様、貸付金の返済を受ける期日やその金額は明記されていると言いますか、
その貸付債権により返済を受ける金額は確定していると言えるでしょう。
貸付金の返済金額、それが貸付債権の価額です。
ただし、注意が必要なのは、①売上債権とは異なり、②貸付債権の場合は利息が付されている、という点です。
貸付人が最終的に受け取る現金の合計額は、貸付金の元本と貸付金に付されている利息の合計金額であるわけです。
「貸借対照表の債権の価額は回収できる現金額を表すものでなければならない」、という基本的な考え方はあろうかと思いますが、
利息が付されていることを考えれば、回収できる現金の合計額は貸し付けた金額(=貸付債権の価額)よりも多くなってしまうわけです。
元本に付されている利息は貸借対照表の価額に反映されなくてよいのか、という疑問は分からなくはありません。
借入金の場合でも、借入人は元本の返済の他に、支払利息を別途支払わなければならないわけです。
支払利息の分は借入金の貸借対照表価額に反映させなくてよいのか(借入金額の過少表示ではないのか)、という疑問もなくはありません。
この点については、きれいな説明はできない気もします。
今後支払っていく支払利息まで含めて確定債務であると思います。
貸付人の立場からすると、今後受け取っていく受取利息まで含めて確定債権であるわけです。
法理的には、借入人が貸付人に対し元本だけを期日よりも前に返済することはそれはそれで自由だと思いますが、
利息も法律的に確定した債権債務ですから、当初の約束通りの利息の支払いは行わなければならない、が正しい考え方のように思います。
実は私は以前は、そもそも利息は元本に付されているものだから、元本を返済すれば利息はそれ以上支払わなくてもよいのではないか、
と考えていまして、かつてコメントでもそのようなことを書いたような気がします。
どちらの考え方も正しいように思うのですが、理論的には整合性は取れると思います。
貸付人は期日までは借入人に対しお金を返せとは決して言えないわけです(これは問題ないでしょう)。
その理由は、借入人には貸付人に利息を対価として支払っているのだからお金を期日まで借りておく権利があるからなのです。
貸付人には借入人から利息を対価として受け取っているのだからお金を期日まで貸しておく義務があるのです。
逆から言えば、貸付人はお金を期日まで貸しておく義務を引き受ける見返りとして、借入人から利息を対価として受け取っているわけです。
お互いがお互いに相互に義務と権利を持っているわけです。
そしてその両人の権利と義務は共に法律的に確定しているものです。
したがって、利息はやはり元本に付されているものという性質に間違いはないものの、
借入人がお金を期日まで借りておく権利を放棄することは全く自由である一方、
当初の約束通り利息を支払う義務については借入人は当然放棄できない、という法理の流れになろうかと思います。
とにかく、借入人にとって、借入金に関してはその後の支払利息も含めて確定債務であることは間違いないことでしょう。

 


現在定められている会計処理方法とは異なりますが、支払利息の金額まで含めた会計処理を自分で考えてみました。
元本と支払利息との差額(借り入れたのはあくまで元本額のみだから)は何らかの調整勘定を使って処理する方法を考えました。
私の造語ですが、「借入金利息調整勘定」という勘定科目名を思いつきました。
(注:かつての「社債発行差金」勘定を使った社債発行時の会計処理に一見似ていると感じるかもしれませんが、全く違います。)
仕訳を書けば以下のようになると思います。


借入時

(現金) 100円               / (借入金) 110円
(借入金利息調整勘定) 10円

利息支払時

(支払利息) 10円 / (現金) 10円
(借入金) 10円      (借入金利息調整勘定) 10円

元本返済時

(借入金) 100円 / (現金) 100円

 


この会計処理方法ですと、企業が負っている確定債務の金額を正確に貸借対照表に表示していることになるかと思います。
貸借対照表の借入金の価額は、「実際に借り入れた元本額」ではなく、「実際に負っている債務の総額」を表している、と考えて下さい。
借入金の貸借対照表価額は元本額を表すものでなければならない、という理論的根拠はないかと思います。
確かに、債権者から見ますと、「借入金利息調整勘定」という資産勘定は現金として回収可能な勘定科目ではありません。
その意味では、債権者にとって債権の弁済の唯一の引き当てである会社の資産内容を誤解させてしまう側面はありますが、
資本の金額を増加させてしまう(もしくは費用の計上を遅らせているだけの)勘定科目とは異なりますので、
この会計処理方法は債権者保護の観点に反するということはないと思います。
繰延資産(旧「社債発行差金」)とは異なり、「借入金利息調整勘定」は費用の固まり(費用計上の先送り)ではありません。
借入金利息調整勘定をその後消去(これは償却とすら言わないでしょう)しても費用は一切計上されないのです。
支払利息時に借入金を相手方勘定科目として都度減額していく純粋な貸借調整勘定に過ぎません。
借入金の価額を減少させるのは、支払利息を支払ったことにより「実際に負っている債務の総額」が減少したからです。
この場合借入金勘定の価額は元本額を表すわけではありませんので、元本はまだ返済していないではないか、と考えてはなりません。
「借入金」という勘定科目名のままでは紛らわしいなら、この場合例えば「借入債務」という勘定科目名に変更してはどうでしょうか。

 


自分で言うのも何ですが、この会計処理方法の方が債務の金額を正確に表現している分、
現在定められている会計処理方法よりも優れているような気もします。
借入金の貸借対照表価額は元本額を表すものでなくてもよいわけです。
「借入金利息調整勘定」という勘定科目が一見不恰好と言いますか馴染みがないと言いますか、
何かの調整勘定というのは貸借対照表という計算書類にはふさわしくないのではないかと思われるかもしれませんが、
それは実質的に慣れの問題のようにも思います。
調整勘定は貸借対照表という計算書類の本質を損なわせるものでは決してありません。
借入金に関する元本額と債務総額との間には差異が当然にありますから、むしろ調整勘定が入ることが自然だとも言えるわけです。
「法的に確定しているのであれば、その総額を貸借対照表の負債の部に表示すべき」、との考えの方に分があるようにも思えます。
昨日のリース取引で言えば、現行のリース会計基準とは異なりますが、リース契約の中途解約はここではできないとしますと、
リース料金の支払いが法律的に確定しているのならば、その債務総額を貸借対照表に表示することには合理性があろうかと思います。
仕訳で書けば以下のようになろうかと思います。


リース契約締結時

(リース債務調整勘定) 100円 / (リース債務) 100円

リース料金支払時

(支払リース料) 10円 / (現金) 10円
(リース債務) 10円      (リース債務調整勘定) 10円


労務費や給与の場合は、その労務費や給与の支払額は雇用契約締結時には法律的には確定していません(労働を行ってはじめて確定します)から、
上記のような会計処理方法は行えないかと思います。
雇用契約自体は確かに法律的に確定しています(雇用契約締結により会社はその人物を雇用する法的義務は生じている)が、
その時点で会社に賃金債務が発生しているかと言えば賃金債務は発生していないでしょう。
雇用条件ということで、給与額等の定めは雇用契約に予めあろうかとは思いますが、それと会社の確定債務(賃金債務)とは異なります。
人的資本だ人財だヒューマン・リソースだという時代です、
会社の資産である社員を貸借対照表に載せるべきというような論調も一部にはあるわけですが、
残念ながら財務諸表上は発生時の費用と処理する他ないようです。

 


それで脱線が非常に長くなってしまったのですが、本来の話(証券の含み益と含み損)に戻ります。
ここからは、上記に記載しました利息の会計処理方法(私が独自に考えた会計処理方法)については度外視します。
②貸付債権の場合ですが、もう一度書きますが、貸付金の返済金額が貸付債権の価額です。
ここには、含み損も含み益もないでしょう。
お金を貸した時のことを思い浮かばれば簡単に分かるかと思いますが、
今後返済を受ける貸付金(貸付債権)に含み益など絶対にあり得ないでしょう。
お金は貸した分返ってくるというだけでしょう。
また、貸付先が倒産するなど、当初の貸付金を全額は回収できなくなってしまうことは理屈では残念ながら起こり得ることでしょう。
その場合、ここでは企業会計上の話をしますと、その貸付債権は回収可能な価額まで価額を切り下げねならないわけです。
貸付金の回収金額を回収可能な価額まで切り下げる、それが貸付債権の減損処理です。
貸付債権の価額に含み損はあってはならない(貸付債権に回収不可能な価額が含まれていてはならない)、ということになろうかと思います。
昨日、貸倒引当金繰入は本当は減損損失だと書きましたが、貸倒引当金繰入では貸付債権の価額自体は減少しません。
費用計上により利益剰余金は確かに減少させていますが、「資産の価額(とは何を表すのか)」という捉え方をしますと、
やはり、貸付債権の価額自体を切り下げる会計処理を行うべきでしょう。
いずれにせよ、貸付債権の価額には含み益も含み損も概念上・理論上はない(あり得ないしあってはならない)、という結論になります。

 


最後に、③株式についてです。
以上書きました①売上債権と②貸付債権の性質に比べますと、③株式は極めて説明が難しいと思います。
以上書きました①売上債権と②貸付債権の性質を踏まえますと、
証券の価額には含み益も含み損も概念上・理論上はない(あり得ないしあってはならない)、という結論になりそうではあります。
しかし、③株式の場合は、話が簡単ではないのです。
その理由は、③株式は同じ証券ではあっても、①売上債権と②貸付債権とは異なり、確定債権ではないからです。
私はこれまで、「株式は譲渡相手が確定してはじめてその価額が確定すると言える。譲渡相手が確定していない場合は価額が決められない。
だから、株式会社の貸借対照表に株式勘定は載せられない。(したがって株式会社は他社株式を取得・保有できない。)」
と書いてきましたが、これに非常に近い論理立てになるかもしれませんが、
「株式は確定債権ではないから株式会社の貸借対照表に株式勘定は載せられない。」という言い方をしてもよいのではないかと思います。
逆から言えば、「株式会社の貸借対照表に載せてよい証券は確定債権のみだ。」という言い方になると思います。
①売上債権と②貸付債権の場合とは正反対に、③株式の場合は、現金を受領する期日やその金額は全く明記されていないと言いますか、
その譲渡により現金を回収することは全く確定していないわけです。
現金として回収可能な金額、それが証券の価額です。
会計理論上は、「株式は確定債権ではないから株式会社の貸借対照表に株式勘定は載せられない。」という結論になるのでしょう。
株式勘定は貸借対照表には載っていない、
したがって、「貸借対照表価額」という観点から言えば、もはや株式には含み損も含み益もない、と言ってよいのでしょう。
ただ、ここでは、現代のように、貸借対照表に株式勘定を載せることについて敢えて考えてみますと、
やはり株式の価額をどの価額とするかが問題になるのだろうと思います。
現在の法人の捉え方・見方の場合、イメージとしては・観念的には、株式に含み益が生じている状態というのはやはりあるとは思います。
しかし、その同じ株式は次期にはまた異なった価額となるわけでして、安易に価額を変更する(評価替えを行う)というようなことは
やはり避けるべきでしょう。
また、概念的にも、ころころ価額が変わる勘定科目(会社財産)を貸借対照表に載せることはおかしいとも言えるでしょう。
保有し続けている全く同じ株式なのに、価額だけが毎期変わるというのは、財務諸表利用者の判断を誤らせるだけでしょう。

 



戦前の法人の捉え方・見方であれば、株式の価額は常に資本金額と同じと言うことになりますから、
戦前であれば会計上はある意味株式の価額は”確定”している(それこそ株式の価額と資本の価額に差異はない)わけですが、
その価額と現金として回収可能な価額とはやはり異なる(譲渡相手がまだ確定していないから)、と言わねばならないでしょう。
譲渡相手が確定し譲渡価額が確定してはじめて、株式は確定債権(株式譲渡代金を受け取る金銭債権)となるでしょう。
貸借対照表の各勘定科目に含み益があること自体は会計理論上は何の問題もないと思います。
例えば、棚卸資産は、その貸借対照表価額以上の価額で販売することをそもそも目的としているわけですから、
経営上は棚卸資産には当然含み益がなければならないわけです。
棚卸資産の含み益を問題視する人はこの世に誰もいないでしょう。
もちろん、各資産勘定の含み損の方は減損処理をしていかねばなりませんが。
要するに、貸借対照表に含み益があること自体は何の問題もないわけです。
そうしますと、株式に含み益があること自体は特に何の問題もないとは言えるわけです。
したがって、証券に含み益があること自体も理論上は特に何の問題もないとは言えると思います。
つまり、証券と含み益とは本質的・生来的に相容れない・相矛盾する性質のものであるなどということはないと思います。
ただ、売上債権や貸付債権(そして確定した金銭債権全般)の場合は、上の方で書きましたように、
その証券の価額には含み益も含み損も概念上・理論上はない(あり得ないしあってはならない)、というだけなのだと思います。
証券の所有者が自然人の場合を考えるとさらに理解が深まるかと思います。
自然人が証券の所有者である場合、
売上債権や貸付債権(そして確定した金銭債権全般)にはやはり含み益はない(一応含み損は理屈ではあり得ますが)でしょう。
しかし、株式には含み益も含み損もあるでしょう。
もちろん、自然人が株主の場合でも株式の譲渡相手の問題(価額の確定の問題)は最後まで残りますが。
証券と呼ばれるものの根源にまでさかのぼって考えてみても、「証券には含み損や含み益という概念はある」という考え方になると思います。
ただ、株式会社が所有し得る証券となりますと、そのほとんどが売上債権や貸付債権(そして確定した金銭債権全般)となりますので、
その意味では「証券には含み損や含み益という概念はない」という結論になるのだと思います。
「株式会社が所有し得る証券の中で含み益が発生し得る証券というのはない」、という言い方をしてもよいかもしれません。
大まかな結論としては、株式会社の貸借対照表に載せてよい証券は確定債権だけであり、
確定債権であるならば少なくとも含み益は発生しないはずだ、となろうかと思います。
そして、たとえ現在の法人の捉え方・見方であっても、債権者保護の観点(貸借対照表価額の観点)から言えば、
やはり株式会社は株式を取得したり保有したりはできない、という結論になろうかと思います。
”債権者保護の観点(貸借対照表価額の観点)から言えば”、とは、
「確定債権と株式とでは回収できる現金の確定度合いが根本的に異なる」、という意味です。